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作品名:海の民の伝記 作者:雷花 羽畄砂

第6回   SSC
 SSCとは、Secrecy(極秘)Submarin(潜水艇)Cicada(蜩部隊)の略だそうだ。

 なんでも、蜩が生き残りを神に祈った事で、海神ネレウスの力とキュクプロスの腕で最強のケープを造ってやったらしいのだ。

 『ここにもお伽噺があるのか』

 ヒューイは、秘密基地のある洞窟内の一室で説明を受けていた。

 「夢物語りなどではないぞ。ここには神も存在する。言わばここは、失われた世界なのだ」

 『神か。昨夜バーナードは、地上には異形が沢山いると言っていた』

 「信じられないなら、ヴィステの使い方を覚えたら皆と地上に行ってくるがいい」

 「本当ですか?」

 「嘘など言わぬ。地上の事を知らなければ、この作戦には参加させられぬからな」

 淡々と説明するバクウス隊長。

 「作戦とは何ですか?」

 「いい質問だ。このSSCの目的は、一に神器の奪還。二に帝国の地上部隊の殲滅。三に間者の排除だ。覚えておけ」

 「五人で戦争を仕掛けると言うんですか? 愚かな」

 「言うな。頭の良い奴は嫌いじゃない。地上に出ればわかるが、お前は市民ではあるが飼い主がいる市民だと言う事がわかるだろう」

 「飼い主?」

 「そうだ。生きるも死ぬも自分の意志ではない。お前は、それで良いのだな?」

 「そんな事って……」

 冷たく美しい顔にシワを作った隊長。

 「平和な世界から何故英雄が来る?」

 暗くおぞましい憎悪を覗かせるバクウス。

 一瞬、隊長が得体の知れない者に感じたヒューイは、ゾッとした。

 すぐに、いつもの凍てついた態度に戻したバクウスは、これ以上の説明が面倒になりバーナードに押し付けてしまうのだ。

 「こいつをお前に預けるから、面倒をみてやれ。それから、いつもの調達に同行させろ」

 「私にですか? シェーマン補佐に頼んで下さい」

 口答えしたバーナードは、焼け尽くすような瞳に睨まれて、仕方なく承服する他なかった。

 更に、顎で追い払われる。
 □■

 「ああ、私の運命はどうなっているんだ」

 真面目なバーナードは項垂れていた。

 「迷惑をかけますバーナード」

 「いや、ヒューイが悪いんじゃないんだ。私の運が悪いんだよ……いっそフルブル神に……」

 「えっ?」

 『最後のところがよく聞こえなかったな』

 ハッとして顔を上げたバーナードは、何故か青白く見えた。

 『気のせいだよな? 何だか秘密めいた事ばかりだな』

 その時、ヒューイは呼び出された理由を聞いていない事に気がつき急いで引き返した。

だか、間の悪い事に昨夜紹介されたウィラーが入って行くのを見てしまったのだ。

 結局、バーナードを待たせられないので、引き返したヒューイだった。


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