「Oh!」
吹き抜けのような広い洞には、砂地があって其処から先は碧海だった。
「あ、あれは何です?」
プカプカ浮かぶ小さな潜水艦が停泊している。
「あれね。あれは、私達SSCが乗る潜水艇だよ」
「潜水艇? 皆さんが乗るにしては、小さくないですか?」
「メンバーは今から紹介するけど、隊長と君を入れても五人しかいないから大丈夫なんだよ」
「海底探査でも行うんですか?」
「説明は、明日隊長から聴いてくれないかな。私ではどう話せばいいのかわからないからね」
安心させようと笑顔をつくるバーナード。
『極秘と言っていたから、どこまで俺に話せばいいのかわからないって事か』
ヒューイは、利用されないように注意しなければと身構えた。
「ここから地上に出る道はないからね」
「えっ?」
「ああ、誤解しないで。監禁とかではなくて、単に機密を保持する為だから」
「でも、どうやってここから地上に出るんですか?」
「ああ、それはね」
今まで見えなかったが、バーナードはケープを着けていた。
「これをこうすると……」
画素の光りのようなもので覆われた後、あの石板で見た蜩の格好に変わっていた!
「なに?」
すぐに解除して戻ったバーナードは、説明を始める。
「君も着けている『ソットケープ』は、琥珀のブローチに手を翳すと『セケイダヴィステ』に変わるんだ。そうしてから、ほら、見えるかな? あそこに空いている空気穴から外に出る事が出来るんだよ」
「って事は、空を飛べるの?」
「勿論。他にも色々出来るし、君みたいに個人的に能力を授かるから、やはり、説明は隊長から聴いた方がいいと思う」
「今から、地上の様子を見に行ったら……駄目……ですよね?」
「ここから出るには、許可がいるからね。それに……『シーモンク』のような異形がウジャウジャいるから、覚悟した方がいいよ」
「異形……?」
「余計に混乱させてしまっているよね。中を案内しようと思っただけなんだけど」
真面目なバーナードは、頭を抱えてしまった。
「いえ、案内して下さい。でないと、夜中に漏らしてしまうかもしれないでしょう?」
「!」
「そうだよね。やっぱり困ってしまうよね?」
間違ってはいなかったと安心してもらえたみたい。
『バーナードは、いい人だ』
俺の心にそう刻まれた。
「ここからすぐが、君の知りたかった場所だよ」
砂地の広場から中に入った横にソレは存在した。
「これは……」
「そう。ただの穴だよ」
「ロロロ、ロールは?」
バーナードにニンマリされて、視線の先を辿れば……そこには、桶が置いてあった。
「嫌なら、海綿を買って来るといいよ。勿論、使い捨てじゃないからね」
「バーナードはどうしているの?」
必死の形相で訊くヒューイに、意地悪が過ぎたかなと、奥からツルツルした葉が沢山入った袋を持ってきて見せてやった。
「みんな、これを使って流しているよ。でも、君も流水が使えると思うけどね」
少し安心したヒューイは訊いた。
「流水って何ですか?」
「さっき話した能力だよ」
「俺にもありますか?」
「まあ、ここのメンバー全員持っているから多分……」
『くうっ。なかったら大変じゃないか。なんだか眠れない夜になりそうだよ』
呼ばれて来た事より、状況把握の方に気を取られるリューイだった。
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