「どうだ、目覚めたのか?」
「まだですよ」
「英雄様ってのは、随分と綺麗な肌をしているねぇ。スベスベ」
「ウィラー、ふざけてないで皆に食事を配れ」
「ラジャー」
ウィラーと呼ばれた男は、ツン髪をわざとらしく上げてから部屋を出た。
「バーナード、まだ起きる気配はないのか?」
キツい眼差しもご褒美になるくらい、美しい女性上官のバクウスが尋ねたのだ。
「呼吸は安定していますから、心配されずとも自然に起きますよ」
真面目で温和なバーナードは、丁寧に返事をした。
「うっ、ゲホゲホゲホ……」
「目覚めましたよ。海水でも飲んだのでしょうか?」
「さあな」
バーナードの生真面目な質問に、バクウス隊長はどうでもよさそうだ。
「ここは……ハリケーンは? ああ! 伝説のシーモンクが」
「だいぶ混乱しているな」
ヒューイ(竜斗)の様子を冷静に観察する隊長を避けて、バーナードは水を差しだした。
「大丈夫? お水をどうぞ」
しばらく二人の顔を見てから、「Thanks」と言って水を受け取った。
「お前達の同胞だったか」
「そのようですね」
水を飲み干したヒューイは、ようやくここが何処なのかを質問したのだ。
岩肌のままの壁がお洒落な、洞穴のような部屋に寝かされていたヒューイ。
「ここは、見ての通り洞窟だ。我々は、極秘部隊の『SSC』だ」
「洞窟……極秘部隊」
「説明は、また明日にしよう。今日はゆっくりするといい」
ハリウッド女優のような女性は、それだけ言うと出て行ってしまった。
「今のが、『SSC』のバクウス隊長。私は、バーナードだ。宜しくね」
「リューイです。俺は、遭難して助けていただいたんでしょうか?」
「わかるよ。私も最初は受け入れられなかったからね」
握手をした手を軽く叩かれた。
「はっ?」
「君は、英雄としてこの部隊に誘致されたんですよ」
「エイユウ?」
「そうです。私達は、遭難して救出されましたが、君は、英雄としてここに呼ばれたんですよ」
酷く同情したような顔をされている?
「うーん、俺は遭難していない?」
「そうです。呼ばれただけです」
「呼ばれたって誰にですか?」
「色々と納得出来ないのに、ゆっくりするなんて無理だよね」
諦めたようにため息をついてから、「come with」と言ったのだ。
『ここは合衆国なのか?』
俺は、ベッドから立ち上がると、何も身に付け着ていないかったので焦ってしまった。
「そうだった」
バーナードがベッドに畳んであった布を器用に巻いて、革ベルトで止めてくれたのだ。
それから、紐のようなサンダルを履かされた。
「よしっ! 取り敢えずこれで我慢して」
古代人のような格好をさせられたが、それより今は、状況把握が先だとバーナードの後に続いたのだった。
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