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作品名:海の民の伝記 作者:雷花 羽畄砂

第13回   戦車競技場
 戦車競技場とは、何の事はないコロッセオだ。

 どれだけの人や伝説の生き物を使って造られたのか、ベンチが石段に代わっただけのように思う。

 そして、花びらのように上部の壁が外に開いた形をしている。

 戦車とは、あの残忍な双子が乗っていた物だ。

 戦車事態は飛ばないが、あの翼のある赤牛(マルキー)が牽いているから飛ぶのだろう。

 草の生えたグラウンドでは、それぞれが得意の武器をもって練習していた。

 同室者とは連帯責任者であり即ち監視者である。同室者が居なくなればそれは自分の死を意味する事になるからだ。

 だから、常に行動を共にするようだ。

 亡くなれば、すぐに次の同室者が入る。

 幾らでも替えのきく薄っぺらい命なのだ。

 だけど、朝食は洞窟で食べていた物よりましで驚いたよ。

 久しぶりに温かいスープを飲んだんだ。

 それに、賞金も出るって。勝てば6割取られてしまうが、残りはもらう事が出来るそうだ。

 奴隷と言っても、破産宣告したのと似たような立場になるだけのようだ。

 組まれた試合に出場して、勝ってお金を稼ぐ。

 ただし、デスゲーム。

 昨日、ガドナが言っていた若者だけど、早々に降参したそうだ。だけど、空中戦では聴こえる筈もなく叩き落とされて落下したと。

 朝の食事場では、その噂をヒソヒソしているのが聴こえてきた。

 「これから、武器を選んで戦車の操縦をさせられるみたいだ」

 ガドナはいったいどこで仕入れてくるのか、俺からすると良く知っているように思えた。

 「武器って、大剣とかですか? 重いって聞いているから俺に持てるでしょうか」

 「確かに、ヒューイは女みたいに細くて肌が滑らかだ。あ、安心してくれ俺は女好きだからな。だけど、そうじゃない者もいるからここでは気をつけた方がいい」

 「大丈夫です。その手には免疫があります」

 「若いのに苦労したんだな」

 厳つい感じのするガドナは、案外優しい。

 「それよりガドナは、何故ここに?」

 「俺は、海の民との激戦で、何もかも失っちまって、とうとう税金が治められなくなってこのざまだ」

 顔中シワだらけにしているところを見ると、相当大変でいやな出来事だったみたいだ。

 「盾は必須だぞ。今から鍛えるしかないな。でなけりゃ明日はない」

 ここの管理者と思われる歩兵に従って、中の武器庫に向かった。

 我先にと、柄の悪い連中が選んでいる。

 だけど、剣(グラディウス)は見当たらない。槍(メイス)や短剣(プギオ)、連接棍棒(フレイ)等しか置いてないようだ。

 「盾がないみたいだけど……」

 「あそこにある楕円の張りぼて状のやつがそうじゃないか?」

 持ってみれば、籐で出来た軽い盾だった。

 「これなら、プギオを持った方がいい」

 「どうして?」

 「あれば、これで身を庇いたくなる。俺達が相手するのは、空挺部隊(エアタンク)の手練れだ。グラディウスで真っ二つにされておしまいだ」


 「皆が武器に目を奪われているうちに、俺達は、チェーンメイルをみてしまおう」

 この時代の人だからか、やっぱりガドナは良く知っている気がする。

 できるだけ身体を露出させない長さの物を選んだよ。

 そして武器は、やはりどれも俺には重くて、長時間持っているだけでも無理そうだった。

 すると、フレイを選んだガドナは、どこからか機械弓(クロスボウ)を見付けてきたのだ。

 確かに、母さんの母国では射的(ショット)をやっていた。

 投げた玉を撃つゲーム。

 俺は動体視力はいいみたいで、割りと好成績だったんだ。

 「これは軽いし、どちらかというと得意かもしれない」

 「だが、矢が無くなると不利になるぞ」

 「ちょっと利用出来るかもしれないから、試してみるよ」

 ガドナは、不思議顔したが実は俺の首にはソットケープが着いたままだったのだ。


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