戦車競技場とは、何の事はないコロッセオだ。
どれだけの人や伝説の生き物を使って造られたのか、ベンチが石段に代わっただけのように思う。
そして、花びらのように上部の壁が外に開いた形をしている。
戦車とは、あの残忍な双子が乗っていた物だ。
戦車事態は飛ばないが、あの翼のある赤牛(マルキー)が牽いているから飛ぶのだろう。
草の生えたグラウンドでは、それぞれが得意の武器をもって練習していた。
同室者とは連帯責任者であり即ち監視者である。同室者が居なくなればそれは自分の死を意味する事になるからだ。
だから、常に行動を共にするようだ。
亡くなれば、すぐに次の同室者が入る。
幾らでも替えのきく薄っぺらい命なのだ。
だけど、朝食は洞窟で食べていた物よりましで驚いたよ。
久しぶりに温かいスープを飲んだんだ。
それに、賞金も出るって。勝てば6割取られてしまうが、残りはもらう事が出来るそうだ。
奴隷と言っても、破産宣告したのと似たような立場になるだけのようだ。
組まれた試合に出場して、勝ってお金を稼ぐ。
ただし、デスゲーム。
昨日、ガドナが言っていた若者だけど、早々に降参したそうだ。だけど、空中戦では聴こえる筈もなく叩き落とされて落下したと。
朝の食事場では、その噂をヒソヒソしているのが聴こえてきた。
「これから、武器を選んで戦車の操縦をさせられるみたいだ」
ガドナはいったいどこで仕入れてくるのか、俺からすると良く知っているように思えた。
「武器って、大剣とかですか? 重いって聞いているから俺に持てるでしょうか」
「確かに、ヒューイは女みたいに細くて肌が滑らかだ。あ、安心してくれ俺は女好きだからな。だけど、そうじゃない者もいるからここでは気をつけた方がいい」
「大丈夫です。その手には免疫があります」
「若いのに苦労したんだな」
厳つい感じのするガドナは、案外優しい。
「それよりガドナは、何故ここに?」
「俺は、海の民との激戦で、何もかも失っちまって、とうとう税金が治められなくなってこのざまだ」
顔中シワだらけにしているところを見ると、相当大変でいやな出来事だったみたいだ。
「盾は必須だぞ。今から鍛えるしかないな。でなけりゃ明日はない」
ここの管理者と思われる歩兵に従って、中の武器庫に向かった。
我先にと、柄の悪い連中が選んでいる。
だけど、剣(グラディウス)は見当たらない。槍(メイス)や短剣(プギオ)、連接棍棒(フレイ)等しか置いてないようだ。
「盾がないみたいだけど……」
「あそこにある楕円の張りぼて状のやつがそうじゃないか?」
持ってみれば、籐で出来た軽い盾だった。
「これなら、プギオを持った方がいい」
「どうして?」
「あれば、これで身を庇いたくなる。俺達が相手するのは、空挺部隊(エアタンク)の手練れだ。グラディウスで真っ二つにされておしまいだ」
「皆が武器に目を奪われているうちに、俺達は、チェーンメイルをみてしまおう」
この時代の人だからか、やっぱりガドナは良く知っている気がする。
できるだけ身体を露出させない長さの物を選んだよ。
そして武器は、やはりどれも俺には重くて、長時間持っているだけでも無理そうだった。
すると、フレイを選んだガドナは、どこからか機械弓(クロスボウ)を見付けてきたのだ。
確かに、母さんの母国では射的(ショット)をやっていた。
投げた玉を撃つゲーム。
俺は動体視力はいいみたいで、割りと好成績だったんだ。
「これは軽いし、どちらかというと得意かもしれない」
「だが、矢が無くなると不利になるぞ」
「ちょっと利用出来るかもしれないから、試してみるよ」
ガドナは、不思議顔したが実は俺の首にはソットケープが着いたままだったのだ。
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