20代から中高年のための小説投稿 & レビューコミュニティ
 ようこそゲストさん トップページへ ご利用方法 Q&A 操作マニュアル パスワードを忘れた
 ■ 目次へ

作品名:『彪〜Age13〜 お姫様との大冒険1』 『無間邪術』編 作者:淳虎

第24回   第十八章 『合』の能力とは
「『合』様のお力の一つには、亡くなられた奥様からの恨みの『念』を自分に取り込む形の、『怨念』の内包もあったようですが。……どうやら、このお二人、お互いに、『仙士』の方に、お相手を『呪詛』するお力をいただいていたようですね。……同じ『仙士』様にかどうかはわかりませんが」
「……『仙士』は、街にはたくさんいるし、普通なら、同じ人だとは考えられないけどね」
 まだ呆然とつぶやいている彪の言葉に、暎蓮は、うなずきつつ、つづけた。
「ええ。……『術』がほどけにくかったのは、羅羅様の『呪詛』のものは、あらかじめ、『三十年間』という『時限式』の技を施されていたからかもしれませんが、『合』様のお持ちだった、ご自分の持つ『邪念』を隠すものと、奥様の遺体の『気配』を隠すほうのものは、この三十年間の間、数度にわたって、同じ効果のある『術』を、『仙士』様から施されていたからかもしれませんね」
 そう言っている間にも、羅羅と『合』の戦いはつづいていた。羅羅の長い髪が、『入らずの布陣』内を跋扈し、『合』が、持っていた短刀に『邪気』を集め、その髪を切り裂き、その刃で羅羅を襲う。
「『合』様は、『仙士』様からの力のおかげで、すでに、常の人間としての能力を越えた『妖物』に近くなっていますし、羅羅様は、魂だけとはいえ、これだけの『怨念』の持ち主。……これは。やはり、お互いの力でしばらく削り合っていただかないと、滅するのも浄化するのも、難しそうですね」
 そう言っていた暎蓮の足元に、『合』が口から吹いた流れ弾の『邪気』の塊が飛んでくる。彪は、あわててそれを、片手に『聖気』を集めて、防いだ。彼女の体を、下がらせる。
 その時、羅羅が、信じられないことをやろうとした。
『お前の妻の体を、呼び起こしてやる!』
 羅羅は叫ぶと、窓から部屋の外に飛び出し、土中に埋められた妻の遺体の場所に向かって行き、『合』を振り返って、にやりと笑った。
 彼女が、自らの『怨念』を、埋められた遺体に込めて、妻をよみがえらせようと、霊体である両手を地面にかざす。
 彪が、はっとした。叫ぶ。
「だめだ、羅羅さん!……離れて!」
 しかし、彪の叫びは遅かった。次の瞬間、羅羅の霊体は、いきなり、土の表面で『邪気』でできた網のようなものに捕えられた。……これも、なにかの『術』の力が働いているのだ。
「『合』、貴様……!……これも、『仙士』の『術』かい!」
「お前の魂を捕え、『地獄界』に落とすためさ」
 『合』はそう言って、高笑いした。
 羅羅が、土中に引きずり込まれつつ、髪を振り乱しながら、『合』をにらみつける。
「今度は、私の番だ。これから、お前の魂を妻の遺体に入れて、よみがえらせる。そして、この短刀でおまえを妻ごともう一度殺し、今度こそ、『地獄界』に落としてやる。……そこの『巫覡』たちも。事情を知られたからには、邪魔だ。ついでに殺す」
「そんなこったろうと、思ったよ!」
 彪が、眉間にしわを寄せて、毒づいた。
 暎蓮も、
「やはり、そのおつもりでしたか」
 と、言う。
 そう言っている間に、羅羅の霊体は『術』に絡み取られ、どんどん、遺体の埋まっている土中に引きずり込まれていく。
「まずい、魂なしで、遺体をよみがえらせれば、魔物になってよみがえる可能性が高いけれど、奥さんの遺体に羅羅さんの魂を入れてよみがえらせて、その体をあの短刀で刺したりしたら、それこそ『符』の力で、羅羅さんの魂は滅されてしまう!」
 彪が、立ちすくんだ。
「『合』さんは、それを狙っていたんだ!」
『入らずの布陣』内で、地鳴りがし始めた。
「……遺体が、よみがえる……!」
 彪と暎蓮は、寄り添ったまま、土中を見つめた。


← 前の回  次の回 → ■ 目次

■ 20代から中高年のための小説投稿 & レビューコミュニティ トップページ
アクセス: 3773