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作品名:『彪〜Age13〜 お姫様との大冒険1』 『無間邪術』編 作者:淳虎

第22回   第十六章 『羅羅』と『合』の邂逅
 暎蓮も、どうにか、『巫覡』の一端として、勇気を出したらしい。
「ごきげんよう、『合』様。……あなた様にお会いしたいというお方をお連れしてきています。どうぞこちらへ」
「……その占天省のお衣装と、御髪(おぐし)!あなた様はもしや」
 もと『巫覡』の『合』が、暎蓮の髪の結い方に覚えがあるように、驚きの声を上げる。 暎蓮は、それを制するように、言った。
「ええ、まあ。ですが、今はわたくしのことより、あなた様のことです。お部屋から出られないのであれば、せめてもう少し窓際においでください」
「恐れながら、おうかがいしますが、……私に誰が会いたいというのです?なぜ、こんな形で?」
「事情は、すぐにわかります。……でも、その前に。……こちらからも、お訊きしたいことが、あります」
「私に?……なんでしょう」
「……なぜ、三十年前に、『瀬 羅羅』様を、裏切り、他の女性のもとへ走ったのか、です」
『合』は、顔をしかめた。
「どうして、そんなことを?」
「調査上の機密事項です。お答えください」
 暎蓮は、畳み掛けた。その彼女の言葉に、『合』は、苦い顔で、仕方なさそうに、言った。
「……男というものは、一人ではいられないものなのです。特に、私は『巫覡』だったとはいえ、若かった。……一人でいるのは、耐えられなかったのです」
「この国に残されていた、羅羅様のお気持ちは、お考えにならなかったのですか」
「別の国で暮らすことに懸命になっていた私には、そこまで考えが及びませんでした。すがるものが必要だったのです。それが、新しい妻でした」
 暎蓮は、顔から表情を消して、言った。
「御事情は、それだけですか」
「それが、事実です」
 暎蓮には、羅羅が怒る気持ちを想像することができた。もし、自分が同じ目に遭ったら。しかも、相手の言い分がこれでは……。
「なるほど。……これは……。……擁護の余地は、ないようですね。……では、『合』様。あなた様にお会いしていただきたいお方と、ご面会を。……彪様。お願いします」
「うん」
 彪が目を閉じ、もう一度羅羅を呼び出す。今度は、慣れたせいか、気配がすぐにつかめ、魂を捉えられた。
「……いくよ」
「お願いします」
 彪が息を吸い込み、吐き出す。
 ……中空に、先ほどの瀬 羅羅の顔が浮かび上がる。
 『合』の顔つきが変わった。
「…………やはり、お前か、羅羅!」
『『合』!ようやっとお前に会えたね!』
 羅羅が、怒りのあまり、青ざめた顔で叫んだ。霊体のはずなのに、その額に青筋が浮かんでいる。
「先ほどなにかを感じた気がしたんだ!あれはやはり、お前の『気』だったのか」
『へえ?あれに気付いていたのかい。……ならば話は早い!』
「!」
 彪が持っていた、羅羅の髪の入った壺がいきなり派手に割れ、壺の破片が下に散らばった。その場に一気に、濃度の濃い『邪気』が広がる。
 彪は、仰天して、とっさに暎蓮と自分を囲う形で、『結界術』を張って壁を作った。
 壺の破片の中から羅羅の白く色あせた長い髪が流れ出、その髪はまるで蛇のようにうねった。それが、次の瞬間には、鋭いとげのようになって飛び、『合』に向かう。
 羅羅の霊体が窓から部屋に飛び込み、その、『合』の妻を殺すために切ったという、短かい髪も、長く伸び、まるで網のごとく姿を変えて『合』を捕えようとした。


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