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作品名:浜辺恋愛 作者:konyuu

第3回  
希は父、母と三人で暮らしている。

父はサラリーマン 母は専業主婦。今は三人だが以前は六人で暮らしていた。おじいちゃんおばあちゃんそして、希が大好きな兄爽真。

爽真は希の2歳上の12歳。4歳の時、事故に遭い既に8年間もの間入院していた。
爽真が事故に遭ったとき希はまだ2歳だった。兄がいなくなっても判らなかった。両親は週末になると必ず希を病院へ連れた行った。

「爽真兄はなんでいっつもベットで寝てるの?」そう聞いてくるようになった希。母は涙ぐみ言葉を詰まらせた。父もどう説明したらよいものか迷っていた。

爽真は生きてはいるものの目を覚まさない。8年間昏睡状態だった。爽真が眠り続けている間におじいちゃんおばあちゃんが亡くなった。爽真の元気な姿を見ることなく。

希は病室に入るといつも元気に爽真に挨拶をする。
「爽真兄おはよう。今日はとっても天気がいいよ。お母さん沢山洗濯したんだよ。」

返事をする訳でもないが希達はひたすら声かけをしていた。病室では涙を見せない いつの日からか家族の決まりになっていた。
希がまだ幼い頃は病院がとても退屈な所だった。ある日母親から叩かれたことがあった。希が言った一言に。

「爽真兄はどうせ寝てるんだから早く帰ろうよ。」

「希!」その瞬間ほっぺたが熱くなった。その日1度だけだった。その1度を希は忘れないでいた。その日を境に希は声かけをするようになった。

両親が先生の所へ話を聞きに行っている間病室には二人きり。希は話しかけた。

「爽真兄 私10歳になったよ。もう一人ででもここに来れるようにもなったんだ。」
「私が一人の時目を覚ましてくれないかなぁ」
一瞬握っていた手の指が動いた。
「えっ」希は見逃さなかった。がその後何度も話かけても指は動く事はなかった。なんだったんだろう。気のせいかしら。いや確かに少しだが
動いたのだ。父や母にも伝え先生も確認してもらったが動くことはなくなんの反応も見せなかった。

「お母さん、今日の帰り海に行こうよ。」 

病院から帰る途中にある浜辺が好きだった希。よく両親と手を繋ぎ砂浜を歩いていた。今日も三人で手を繋ぎ歩いていると
ふと 何か懐かしい思いがこみあげてきた。なにげに希は手を振った。誰もいない砂浜に。


希 10歳の夏




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