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作品名:邪目の毒麦 作者:dokumugi

第3回   いつしま たかお
ここんとこ、となりの部屋のババアの様子がおかしい。

あいつ自称女子大生だけど、たぶん大学なんか行ってない、老婆に近い年齢の、気持ち悪いババアの一人暮らしなんだが。

さいきん奴の個室から、毎日毎日、まるで風呂場で何かを解体しているような音が響いてるんだよ。

骨を砕いて肉を潰し、排水溝に流しているかのような音が。

壁がウエハスよりも薄い、このクソボロアパートは、隣家の音を生々しく伝える。




毎晩ズチャズちゃグチャグチャ、コンコン、ガーガー、ぐちゅ、ぐちゅ、ぐちゅ、ぐちゅ、ぐちゅり、ザアザア、ひたひた。


俺の脳裏に考えたくない映像が放送されて、気が狂いそうだ。



俺は怖い。

ババアは毎日泥なのか血液なのかわからないが、茶黒く濁っている。

茶黒く濁った服、茶黒く濁った目、吐き気のする口臭をプンプンさせて、昼間からアパート内をブツブツ言いながら徘徊してやがる。

何度も警察に通報してるんだが、やつら様子を見にきやしねえ。
まるで
この世界が

異世界のルールに支配されてしまったかのように

夕暮れがこんなに不気味なのに、だあれも助けにこない。



赤い夕焼け、吐き気のする錆びた踊り場の手すり。
ババアは悪臭を撒き散らしながら、自分では可憐だと思っているかのようなステップで踊る。

ババアの古いデザインのハイヒール、10センチはヒールがあるだろうか、それが、ガンガンカンカン鉄の階段に当たり散らして。



一通りアパアトで徘徊したあと、夜は夜でまた不気味な音をたてまくるつもりなのだ。

気が狂っている!



俺は静かに暮らしたいだけなんだ。
俺は静かにここでゆったりと。

俺は俺は俺は、俺のしずけさをじゃまするやつを殺したい。


殺してやる。


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