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作品名:一日の黄昏 作者:西見せき

第10回   10
▽雨になりそうな雪になりそうな



 まだ心を決められぬか師走空



▽曇りガラス



 向こう側影も姿もぼやけてしまい埋められぬ溝があり





 〜月に願いを〜





  お前はあの月を取れるか



  唐突に訊くものだから



  お前は取れるのか



  と訊き返す



  少しだけ咳き込みお前は答える



  僕には取れない



  病に伏したお前はとても痩せてしまった



  お前に取れぬのなら俺にも取れまい



  咳が止まらなくなったお前の骨の浮き出たその背中をさすりながら



  月が取れたらどうする



  と訊けばお前は途切れ途切れに俺と向き合う



  土産に持っていくよ



  俺は愚かだった



  あいつは月が好きだったからね



  やはり俺には月が取れない


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