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作品名:Gゼロ 作者:織田 久

第5回   5 発見
深夜、咲楽はふと目を覚ました。水を飲もうと台所の電気を点けた。
 「きゃぁ〜」咲楽は寝室に駆け戻る。
 「海翔!起きて!変な虫が台所にいるの」
 明るい台所に虫は見当たらない。どこか暗い所に隠れているのだろうか。
 「どんな虫だった?」
 「黒光りしていて、サッサッサて素早く逃げてった」
 「カブト虫みたいな色?」
 「そんな格好良くないわよ。平べったくて気持ち悪いのよ」
 「なんだろう?」
 海翔が考えていると、咲楽が「明日は」と言いながら時計を見た。そして言葉を続けた。
 「違った。今日は出勤日なのよ。私、寝るわ」

 咲楽が会社に着くと、海翔からメールが届いた。数枚の写真の中から、咲楽は見つけた。と同時に思い出した。
 「あれはゴキブリ。間違いないわ。CM思い出した。Gゼロ、ゴキブリ全滅、ゼロになる」

  咲楽の返信を見て、海翔は駅前の薬屋に行った。個人経営の小さな店だ。カウンターにいる初老の男が店主のようだ。
 「Gゼロありますか?」
 「どうしました・」
 「ゴキブリが出たんです」
 「ゴキブリ?本当か?」
 「見たのは妻なんです。ネットでゴキブリの画像を見て同じだと断言しました」
 「Gゼロは?」
 「CMを覚えていたんです。Gゼロ、ゴキブリ全滅、ゼロになる」
 「あんたがまだ子供の頃だろ、たいした記憶力だな」店主はそう呟くと海翔を見つめた。そして薬を探しもしないで、メモ用紙を出した。「Gゼロの在庫はない。問い合わせるから、住所氏名電話番号を書いて」
 商売人らしからぬ不愛想な店主に、海翔は違和感を持ったが、言われるままに記入して店を出た。


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