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作品名:Gゼロ 作者:織田 久

第2回   2 隣家
平日の午後、海翔たちが宝来軒に入ると、客は3人だけだった。席に着いた海翔は書類の入った大きな封筒をテーブルに置いた。2人が食べ終わる頃には、客は海翔たちだけだった。店の女性がその封筒を見て言った。
「役場の書類よね。あなた達、移住して来るの?」
「そうです、当たったんです」咲楽が笑顔で答えた。
「私達もよ、3年前に東京から来たの。あなた達は?」
「私達も東京です」
「当たったの、隣の家でしょ?」
「あっ、はい」
そう返事をすると、女性は厨房に向かって言った。
「パパ、お隣さんよ。移住して来たのよ」

旦那さんが厨房から出てきた。海翔と咲楽が慌てて立ち上がった。
「隣に引っ越して来る、藤本と言います。よろしくお願いします」
「八代です。こちらこそ、よろしく」
「隣と言っても店だけで、住まいは車で10分くらいの町はずれなのよ」
海翔と咲楽は奥さんに笑顔で頷いた。
「お宅の横に空き地があるだろう、そこは店の駐車場なんだ。車の音がうるさいかもしれないけど・・」
「夜の8時までだから、大目に見てね」
「お店を閉めるのが早いんですね」
「この辺の人は早寝早起きなのよ」
「うるさいのは東京で慣れてますし、夜8時は宵の口ですよ」
「お隣さんが東京の人で良かったわ。何か分からないことがあったら、遠慮しないで相談してね」そう言って奥さんが笑った。
咲楽は会話を聞きながら、隣人と仲良くやれそうだと安心した。


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