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作品名:Gゼロ 作者:織田 久

最終回   15 強運
海翔が家に帰ると咲楽は留守だった。海翔は引っ越し先を検討しようとパソコンを点けた。毎日のようにゴキブリを検索したので広告が出る。以前はゴキブリの生態などを調べていた。今、海翔が探しているのはゴキブリの忌避剤だ。引っ越し先に連れていかないためだ。だが、広告はゴキブリ型ロボットや模型だ。ゴキブリはカブト虫やクワガタ虫のように人気があるのだろうか?希少昆虫だからか?消えた生き物への郷愁?どれも海翔には共感出来ない。

ふと気付けば新しい広告がある。ゴキブリに強い関心があると出る広告のようだ。期待を込めてクリックして海翔は驚いた。生きたゴキブリを売っている。オス8万円、メス10万円と希少昆虫だけに高額だ。環境省と教授の言葉からは、ゴキブリの売買などあり得ないはずだ。あの2人の話は建前と脅しではないのか?ゴキブリは意外とあちこちで繁殖しているに違いない。

咲楽が家に帰って来た。海翔は玄関に向かいながら叫んだ。
「やった、大成功。引っ越しは来月だ」
「来月?どうして?」
「移住支援金を返して引っ越すけど、その支援金が戻ってくるかもしれない」
海翔は元根町100周年の文集の話をした。
「そっか、海翔ならきっと優勝出来るわ」
「引っ越し先にゴキブリを連れて行かないようにしないと」
「大丈夫よ、ゴキブリはミントの香りが嫌いなんだって。たくさん買ってきたわ」
「どうして知ってるの?僕もずいぶん調べたけど、どこにも書いてなかった」
「今はゴキブリがいないから、広告はないわ。でも昔ならあったでしょ」
「昔の広告?」
「あの古いGゼロの雑誌よ、あれに『ミントの香りで寄せ付けない』って広告があったの。虫が鼻をつまんで、しかめっ面してる下手なマンガよ。それがゴキブリの絵だったと、今日気づいたの」
「ホコリだらけだったのに、よく読めたね」
「捨てるのに端をつまんだらページが開いて、そこに広告があったのよ」

やはり強運の持ち主は、咲楽だ。


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