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作品名:セカンド・プラネッツ後伝・・続編  作者:織田 久

第8回   第8話        復活
「ピー、ピー、ピー」
「酸素濃度注意報、酸素濃度19パーセント以下です」
「現在の酸素濃度は?」
「18.8パーセント」
「安全限界まで、まだ余裕がある。その前に・・・何だ、この臭いは?循環システム室を調べろ」
 2名のオペレーターが向かうと、すぐに報告してきた。
「藻が腐ってます。すくい上げて捨てるしかない。応援を頼む」
「分かった、すぐ行く」オペレーターが立ち上がると「ピッ、ピッ」と音がした。立ったまま振り返って言った。
「アルフレッドから報告書が届きました」
「すぐに開け」
「はい」立ったままクリックして、座ろうとすると艦長が命令を変えた。
「いや、応援が先だ。循環システム室に行け」
 残ったオペレーターが艦長に指示を仰いだ。
「酸素濃度18.5パーセントに低下。酸素の供給を開始しますか?」
「酸素タンクの残量を調べて、艦内を濃度20パーセントに保つと何日分になるか計算しろ」
 オペレーターは数字の確認と計算に没頭している。艦長は循環システム室をモニタで見つめていた。

 チヒロはコンピュータに侵入して疑問を持った。そこにチヒロはいなかったからだ。この母船がアメリカ隊ではなくイギリス隊と知って、チヒロは状況を理解した。艦長は惑星シナノで鉄や石炭などの資源がありそうな場所を着陸予定地にした。それは武器の製造であり、原住民との戦いに備えるためだ。イギリス隊をシナノに行かせてはいけない。チヒロはそう判断した。クルーはシナノの原住民を恐れている、それを利用しよう。
 コンピュータのサーチと並行して、転送元の着陸船の様子を見る。床には血が流れ、定員を超えた人数が乗船している。神が箱舟に乗って約束の地へ行くと騒いでいる。パイオニア号のクルーはアメリアだけだ。他の5名は村にいるのだろうか。
 チヒロは考える。村人の乗船を艦長が拒否するのは確実だ。ゴチョウは村に戻るだろうか。望みを失ったゴチョウは、6名のクルーをどうするだろう。チヒロは報告書の言葉を使うことにした。

着陸船の艦内スピーカーから、厳かな声が流れる。
「村の民よ、私は約束の地へ導く神である」
「おおー」村人が驚き、歓喜する。
「私は皆に神の言葉を伝える」
 村人は静まり返り、次の言葉を待った。
「待ちなさい、異教徒が1人いる。その者の耳を黒い耳当てでふさぎなさい」
 ゴチョウが操縦席のヘッドホンをアメリアに付けた。
「神は私にこう告げた。導く神よ、そなたが乗った船で、新しい地へ行くがよい。神の箱舟は去ったからである。神の箱舟が向かったのは、新しい神が、新しい世界を造るからである・・・」
 チヒロは聖書の天地創造を話し始める。同時にヘッドホンでアメリアに話しかけた。
「私はチヒロ。あなたを救助します。私の質問に声を出さずに答えて下さい。あなたの口の動きで判読します」
「はい」アメリアは声を出さずに言った。
「あなたの仲間は無事ですか?」
「ソフィアとオリバーが殺されました。アルフレッドは捕まりました。ジョージとハロルドも捕まったようです。3人は首枷を付けて強制労働です」
「死んだ村人はいますか?」
「いないと思います」
「村人は罪を犯しました。私はチヒロ。私が罪人を裁きます。私は人を殺すことは禁じられています。村人の罪は島流しにします。私の裁きに同意しますか?」
「はい」
「ではそのように計らいましょう。シートベルトをしっかり締めて下さい。着陸船の操縦は私がします」

 チヒロは告げた。
「これから新しい世界、神の世界に向かいます。神の道は選ばれし者のみが通る道です。最初の蛇の道は厳しい道です。次の稲妻の道は耐える道です」
 着陸船が右に曲がる、と左へ曲がった。村人たちは機内で左右に振られる。目が回り、気分が悪くなる。やがて船は急角度で方向転換する。村人はもう立っていられない。床に転がって嘔吐する。
 着陸船は大海原の上を飛ぶ、やがて島が見えてきた。砂浜に着陸するとゲートを開き、そのまま急上昇で離陸した。機内の村人が砂の上に転げ落ちる。
「これより給油のためパイオニア号に向かいます。あなたは母船でしばらく休憩しなさい。私は10名の武装したクルーを乗せてアルフレッドたちの救出に向かいます」


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