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作品名:セカンド・プラネッツ後伝 作者:織田 久

第3回   第3話  同 年 奇襲
エミリーは胸ポケットをそっと押さえた。ソフトを手に入れたので早く母船に戻りたい。だが、まだ調査が続いている。操縦席に座って待ちながら考える。どうして家々は破壊されたのだろう?どうして畑に人がいないのだろう?振り返ると開いたリヤゲートから宇宙船と調査員が見える。防衛隊は散らばって見張っている。フレデリックだけが着陸船の側にいる。
エミリーは立ち上がるとリヤゲートの上に立った。フレデリックが振り返ると草原を指さして言った。
「変な物がある、ちょっと見てくる」
「駄目よ、船から離れないで」
「規則は100ヤード以内だ、あれはもっと近い」
「200ヤード近くあるわよ」
 エミリーの言葉を無視してフレデリックは走り出した。近寄ればそれは十字架に見える。そこの地面が盛り上がっている。これはキリスト教徒の墓だ。皆に知らせよう、フレデリックは振り返ると「おーい」と叫んだ、皆がフレデリックに注目した、と彼の胸に矢が刺さった。誰かが「敵襲」と叫ぶと同時に矢を受けて倒れた。「うわっ」「やられた」次々と仲間が倒れる。ダダッダダッと自動小銃の音が響いたが直ぐに止んだ。オスカーの声が聞こえた。「船を出せ!」声の方を見るとオスカーがレーザーガンを撃っている。その先に弓を持った男たちがいる。あれは日本人?アメリカ人?オスカーが振り向くと撃った、エミリーの近くで悲鳴が聞こえる。倒れる男の姿が一瞬見えた。視線を戻しながら「早く乗って」と叫ぶとオスカーの姿がない。エミリーはリヤゲートの閉ボタンを押した。

飛び立とうとして警告ランプに気付いた。リヤゲートが閉まっていない!振り向くと男が一人挟まっている。それを助けようとゲートを両手で掴んでいる男、隙間から弓矢を構えている男もいる。頭を低くして操縦桿を握る。「痛っ」足に矢が刺さった。上昇すると急旋回する。二人の男が落ちていった。地上を見れば敵だらけだ。
「こちら着陸船1号機、緊急事態発生。調査隊が襲われました。生存者は自分1人です」
「詳しく報告しろ」
「突然、矢が飛んできて船外にいた者は全員やられました」
「君は大丈夫か?」
「足をやられました、痛みはありますが出血はわずかです」
「今の状況は?」
「調査地点の上空です。リヤゲートに敵が一人挟まっていて閉まりません。帰還不能です」
「そいつの状態は?」
「足が挟まって逆さ吊りです。襲われる心配はありません」
「攻撃してきたのは日本か?アメリカか?」
「いいえ、人間に似た宇宙人に思えます」
「100キロ南に草原がある。そこに着陸して待機せよ。2号機で救助に向かう」
「了解、南に100キロの地点に着陸します」

エミリーは速度を上げた。リヤゲートの隙間から強風が巻き込む。男は息をするのも苦しいはずだ。そしてゲートの力は強く、挟まった足を抜くのは不可能だ。救助隊が男を始末するだろう。
着陸するとエミリーは宇宙人を見ようと思った。立ち上がると刺さった矢が椅子に触れる。「うっ」強い痛みに一瞬息が止まる。そっと歩いて近寄ってみれば、男はナイフを握ったまま気絶している。背中を向けていて顔が見えない。エミリーは席に戻った。歩いたせいか足から血が流れている。座ったままで救助隊を待つことにする。背後でカツッ、カツッと音がする。振り向いたエミリーは背筋が凍り付いた。男が挟まれた自分の足を切っている。ドサッと男が落ちた。

「キャー」エミリーが悲鳴をあげると、男は片足立ちで向かってくる。エミリーは咄嗟に工具箱へ走り寄ると蓋を開いた。男はすぐに倒れ血だらけのナイフを手に這ってくる。エミリーはペンチを男に投げつけた。背中に当たったが男はひるまない。ドライバーを投げ、ハンマーを投げる。男は唸りながら這ってくる。長いスパナを手にするとエミリーは、素早く男の後ろへ回り込んだ。男の足を叩く。男が叫びながら身体をひねってナイフを振り回した。エミリーの右手から血が飛び散った。エミリーは両手でスパナを握ると男の頭を叩いた。「ギャー」男が苦痛に悶えながら反転した。スパナを振りかぶるエミリーにナイフを突き出す。男の顔がはっきり見えた。「キャー」叫びながらスパナを振り下ろす。男のナイフがエミリーの肩に刺さった。かまわずエミリーは叩く、もっと叩く、さらに叩く、叩く・・・・

 男の顔は血だらけで原形を留めていない。エミリーは放心したようにスパナを落とした。その床にも血だまりがある。エミリーは足を見た。矢が折れて傷口が広がり出血がひどい。肩の血で胸が真っ赤だ。不思議と痛みはない。背中が寒い、それなのに胸は熱い気がする・・・


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