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作品名:セカンド・プラネッツ後伝 作者:織田 久

第2回   第2話 3627年 シナノ村
 パイオニア号は2回のワープで理想的な惑星を発見した。周回軌道上から畑を見つける。艦長が指示を出した。
「着陸船1号機の準備にかかれ。パイロットはエミリー、予備パイロットはフレデリック。調査員4名と防衛隊5名が出動。念のためフレデリックも自動小銃を、調査員はレーザーガンを携帯しろ。出発は1時間後だ」

 エミリーが操縦席でチェック・リストを読み上げながらスイッチを入れていく。母船のオペレーターがそれを確認した。
「OK、エミリー完璧だ。調査の成功を祈る」
 調査隊が乗り込んでくる。フレデリックがエミリーに言った。
「50ポンドで地上まで、釣りはいらない」
「運賃不足よ、目標上空100ヤードで降りてもらうわ」
「パイロット割引があるだろう」
「あんたがルールを守って船から遠くに行かなかったら割引くわ」
 フレデリックは笑いながら席に着いた。オスカーも腰にレーザーガンを付けて乗り込んでくる。
「あの白いのは飛行機型の宇宙船だと思う。どの国が移住したんだろう?」

 村人は墓を掘る。遺体を埋めると、治の書の死者への言葉を唱え「チヒロが仇を取ったぞ、安らかに眠れ」と付け足した。空飛ぶ大岩が去って3日が過ぎたが、村人総出で森に穴を掘り続けていた。畑に馬の遺骸を取りに行った男たちが慌てて走って来た。
「大変だ、空飛ぶ大岩が戻って来たぞ」
「何だと!チヒロは奴らを殺さなかったのか?」
「死者に仇を取ったと告げたのは嘘だったのか?」
「皆の衆、落ち着け。戻った敵は何人だ?」
「10人出てきた」
「チヒロは空の上に大きな船があると言った。そこには大勢の敵がいたはずだ。チヒロは10人を取り逃がしたのだろう。10人は我らで殺すのじゃ。敵に見つからぬように森の中を東に行け。東の水路は森を出ると空飛ぶ大岩の近くを通る。水路に身を隠して近づくのじゃ」

「着陸船1号機よりパイオニア号へ。家々は破壊されており畑に人影はありません。白い飛行機は日本の宇宙船で、着陸船はチャレンジャー号のものです」
「なんだって!日本と判断した根拠は何だ?」
「宇宙船の中に書類がありました。オスカーが日本語だと断定しました」
「何が書いてあった?」
「彼にそこまでの読解力はないそうです」
「オスカーはそこにいるか?」
「いいえ、調査に戻りました」
「日本は後から惑星探査に参加して、この空域を指定されたのだろう。チャレンジャーはアメリカの宇宙船だが、その空域は反対側だ」
「詳しいことが判明したら報告します」
「奇妙な状況だ、気を付けろ。もしもアメリカと日本が争っているなら君たちは中立を守るんだ。念のため緊急時規則を言ってくれ」
「パイロットは船を離れてはいけない、緊急時には発進して船を守る」
「そういう事態にならないことを祈る」
「了解、通信を終了します」

 オスカーが戻って来た。エミリーは艦長の言葉を伝えると問うた。
「どうして飛行機型の宇宙船なの?」
「日本は金も力も乏しくて大型の母船は作れなかったのだろう」
「あんな小さな船に何人乗れたのかしら?」
「パイオニア号のクルーは36人だが、あの船には乗りきれないしクルーだけで移住はできない」
「少人数でワープできたのは何故かしら?」
「木本賢一だ。天才プログラマーの彼がソフトを開発したんだ」
「彼を知っているの?」
「彼がコンピュータ囲碁で世界一になったのは、僕が日本に留学していた時だ」
「私はその大会で彼と対戦したの。惨敗して自分の能力に見切りをつけたのよ」
「彼はその後で国家プロジェクトに参加した」
「それが少人数でワープできるソフトね」
「着陸船は燃料切れだが現役だ。宇宙船は数百年前から停止している。そして着陸船から宇宙船に電気ケーブルが接続されていた」
「どういうこと?」
「アメリカは木本賢一のソフトを狙ったのかもしれない」
「彼が作ったソフトなら私も興味あるわ」
「コンピュータは長い眠りから覚めたのだろうか」
「試してみる価値はあるわ」
「だがメモリーがない」
「私が持っているわ」
「準備がいいな」
「まだ作ってないのよ」
 エミリーがメモリーステックをオスカーに見せた。「イザベラへ」と書いてある。
「ワープ犬が誕生するかもな」
 オスカーは笑ってメモリーを受け取った。
「ケーブルをパイオニア号につないでコンピュータを起動してみる。船のバッテリー残量は?」
「たっぷりあるわ」


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