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作品名:きゅうとジュウ 作者:織田 久

第4回   第4話 本当のお母さん
猫を飼っていると、いい事ばかりではありません
トカゲを家に持ってくるのです
「これ、捕まえたぞ〜」と得意な顔で帰ってきます
そしてトカゲを家の中で放します
「きゃあ〜」お姉さんや妹は大騒ぎです
ジュウはびっくりしてトカゲを逃がしてしまいます
大掃除の日には冷蔵庫の下や押入れの中からトカゲのミイラが見つかるのでした
ネズミやスズメを捕まえてきた時もありました
きゅうちゃんが取り上げて外に投げ捨てると、慌てて追いかけます
しばらくすると、しょんぼりと帰って来てフテ寝してしまいました

一番困ったのはノミでした
お姉さんと妹がノミに刺されて、また大騒ぎです
きゅうちゃんは毎日ノミ取りです
まずブラシで毛並みを整えます
ノミ取りの細かい櫛の通りをよくするためです
ジュウはノミ取りが嫌いです
ブラシをみると「フニャ」と鳴いて逃げようとします
「駄目だよ」と頭を押さえると仕方なく座っています

喧嘩でできた傷に櫛が当たると「フギャ」と怒ります
ノミの代わりにカサブタが取れるのです
「ごめん、ごめん」そう言いながらも、きゅうちゃんはノミ取りを続けます
櫛に挟まれたノミが足をバタバタ動かしています
それをツメでプチンと潰します
多い日は10匹以上も取れるのでした
毎日のブラッシングでジュウは近所でも評判の綺麗な猫になりました

お母さんが毛皮のコートを買いました
黒い毛皮のロング・コートです
お母さんは嬉しくて、家でコートを着てうっとりしていました
そこへジュウが帰って来ました
黒い毛皮のコートを見ると、近寄ってクンクン匂いを嗅ぎました
するとコートにまつわりついて離れません
「ミャー、ミャー」と子猫のような声を出してコートにすりより、舐めようとします
お母さんは買い立てのコートを汚されまいと必死に逃げます
ジュウも必死に追いかけます
みんなは、あきれて二人を見ていました
お母さんが「きゅうちゃん、ジュウを押さえて!」と叫びました
きゅうちゃんがジュウを抱き上げてから、急に可笑しくなってみんなで笑いました
お母さんが笑いながら言いました
「どうしたんでしょう?お母さん猫を思い出したのかしら?」
「ずっとそれ着て、ジュウの本当のお母さんになったら?」
「嫌ですよ。大事なコートなんだから」
そう言って、お母さんはまた笑いました


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