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作品名:きゅうとジュウ 作者:織田 久

第3回   第3話 何して遊ぶ?
ジュウの好きな遊びは隠れんぼです
カーテンの陰に隠れて「ニャ〜ン」と、きゅうちゃんを呼びます
「あれ? ジュウの声はするけど、姿が見えないぞ」と探すふりをします
襖や家具の扉を開け閉めして「ジュウ」と呼んでも返事はしません
尻尾も動かさずにじっとしています
でもカーテンはジュウの形にふくらんでいます
「見つけた」とカーテンをめくると、慌ててカーテンをよじ登ります
途中で捕まえて放り投げます
猫だから上手に着地します
そして、急いで逃げて行きます

鬼ごっこの始まりです
きゅうちゃんは「うぉー」と叫んで、ドタドタッと追いかけます
ジュウは必死になって逃げます
廊下をカチカチと爪を鳴らして走ります
木の床では爪が立たないので急に曲がれません
ツーと滑ってお尻を壁にドーンとぶつけながら、部屋に逃げ込みます

今度はきゅうちゃんが隠れます
「ジュウ〜」と呼んでカーテンの陰に隠れます
ジュウは真っ直ぐカーテンに駆け寄ると、きゅうちゃんの足に触ります
きゅうちゃんが顔をだすと、ジュウはすぐに見つけて得意顔です
カーテンをバッと開いて「うわぁ〜見つかった!」と叫ぶと、ジュウが逃げます
追いかけながら、考えます。今度はどっちが隠れる番なんだろう?
「二人とも、うるさいよ」お母さんの一言で遊びはおしまいです

きゅうちゃんの好きな遊びは、ケンカごっこです
自分の手袋の上にお父さんのお古の皮手袋をします
これで、準備が出来ました
ジュウを呼びます
まずは軽くパンチです。ジュウも前足で応戦します
だんだんジュウは興奮して、尻尾が太くなります
手袋をしているから、ケンカごっこだと判っているのです
前足できゅうちゃんの手を抱え込み、指に噛み付きます
後ろ足は、激しくきゅうちゃんの肘をキックします
手袋を二重にしていても、指が痛くなります
血がにじむこともあります

「もう終わり。おしまい」と言っても、ジュウは興奮していて止めません
尻尾だけでなく、全身の毛が逆立っています
「フッー、フギャー」と鳴き声もいつもと違います
どうしても止めない時は最後の手段です
手袋をパッと取ってしまうのです
噛み付こうとしていた手が素手になると、ジュウは困ったような顔をします
そして仕方なさそうに、きゅうちゃんの手を舐め始めます
教えたわけではありません。怒られて覚えたわけでもありません
ジュウは小さい時から、一度もきゅうちゃんに噛み付いたことはないのです

冬になって雪が降りました
ジュウは初めて見る雪を不思議そうに見ていました
「ニャ〜ン、窓を開けてくれ〜」
外に出るとジュウは嬉しそうに走り回っています
きゅうちゃんも外に出てジュウと駆け回ります
雪の上が二人の足跡だらけになりました
家に帰って、きゅうちゃんは思いつきました
「お手」
そう言ってジュウの手を取りました
ジュウは嫌がって手を引っ込めます
きゅうちゃんは残念です
ジュウが芸をすれば、友達に自慢できると思ったからでした


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