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作品名:きゅうとジュウ 作者:織田 久

第2回   第2話 黒いものは?
今日は日曜日です
居間に子猫を連れて行きました
「嫌だ、こっちに連れて来ないでよ」
お姉さんと妹が言います
でも、座布団の上にチョコンと座った子猫を見ると
「座布団が大きく見える、あはは」
子猫は大人の手のひらに座れるほど小さかったのでした

「よく見ると可愛いわね」
針金の先に毛糸玉をつけて猫じゃらしを作ると、夢中になって遊びます
「あたしにもやらせて」妹が言います
「今度は私ね」お姉さんも言います
「どれどれ、お父さんにもやらせておくれ」
「そんなにやったら子猫が疲れますよ」
お母さんがそう言って猫じゃらしを取り上げました
子猫は猫じゃらしに飛びつきました
お母さんは驚いて、それから楽し気に猫じゃらしを振りました
「お母さん、ずるい」
こうして、子猫はきゅうちゃんの家の猫となりました

きゅうちゃんは黒いものを考えます
石炭、髪の毛、ホクロ・・・
「お母さん、黒いものって何がある?」
「海苔、ゴマ、ひじき」
「全部、食べ物だね」
「そうよ、毎日ご飯作っているんだから。それより、明日の支度は終わったの?」
お母さんに言われてランドセルに教科書やノートを入れます
算数と社会と習字と・・・あっそうだ墨汁だ
子猫の名はボクジュウ、略してジュウにしました
九の子分が十になるのが面白いと思ったのです

ジュウが食卓に前足を掛けて晩御飯のオカズを見ています
今にも食卓に上って食べそうです
きゅうちゃんが「こらっ」と怒りました
それ以来、食卓に上がるどころか足も掛けません
良い匂いがすると、畳に座って待っています
きゅうちゃんが食べるのを、目をまん丸くして見ています
食べ残しを貰うためです
ジュウの晩飯は済んでいます。だからお腹は空いていません
いつのも猫缶とは違う、いろいろな物を味見したいのです

刺身はジュウの大好物です
途中で一切れやると、もっと欲しくてじーと見ています
催促して鳴くことはありません
行儀をしつけた訳ではありません。自分の分をわきまえているようです
どっちみち二切れめはありません
お母さんが「もったいない」と怒るからです

ジュウは不思議な能力を持っています
きゅうちゃんが帰ると玄関に迎えに来ています
「ニャ〜ン、お帰り。一緒に遊ぼうよ」
きゅうちゃんが出かけようとすると、「ニャ〜ン、外で遊ぼうよ〜」と玄関に来ます
お姉さんや妹が玄関でわざと音を立てても、知らん顔で寝ています
きゅうちゃんがそっと出かけようとすると、ガバッと起きて玄関まで走ってくるのです

ジュウが寝ている時に名前を呼ぶと、尻尾を振って返事します
尻尾がタンスに当りパタンと音がします
「ジュウ」 パタン、パタン
「ジュウ、ジュウ」 パタン、パタン、パタン
ぐっすり寝ているようでも、耳だけは起きているのです
だから、きゅうちゃんの足音を聞き分けているのでしょう
でも、足音を立てずに、そーと玄関に行っても、どうして判るのでしょう?


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