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作品名:きゅうとジュウ 作者:織田 久

第1回   第1話 雨の夜
ひさし君は友達にきゅうちゃんと呼ばれます
久という字はきゅうとも読めるからです
それを知ったお姉さんもきゅうちゃんと呼びだしました
妹と母も面白がってきゅうちゃんと言います
とうとうお父さんもきゅうちゃんと呼ぶようになりました
たまに「ひさし」と言う時は、お小言です

きゅうちゃんはかすかな音を耳にしました
何だろう?窓を開けました
冬の夜で雨が降っています
「にゃ〜〜〜ん、にゃ〜〜〜ん」と小さな鳴き声が聞こえます
きゅうちゃんは窓の下を覗き込みました
真っ暗で何も見えません

小さなカゴにヒモを付けて降ろしてみました
ヒモを引き上げると、ちょっとだけ重くなっています
カゴの中には、真っ黒い子猫が座っていました
乳離れしたばかりのような小さな猫でした
そっと触ってみると、柔らかい毛が寒さに震えています
きゅうちゃんの目を覗くように「にゃ〜〜〜ん」と鳴きました

こんなに小さな猫って、何を食べるのかな?
牛乳、削り節、煮干を持ってきました
子猫は牛乳をちょっとしか飲みません
削り節は美味しそうに食べました
煮干も小さく割ると、カリカリと小さな音を立てて食べました

それから、どうしていいのか、きゅうちゃんは判りません
子猫も、どうしていいのか判りません
二人でぼんやり見つめ合っています
明日になれば、お父さんとお母さんが
「家では猫は飼えませんよ、捨ててらっしゃい」と言うでしょう
お姉さんと妹も「猫は嫌い。黒猫はもっと嫌い」と言うでしょう
きゅうちゃんも猫は嫌いだったはずです

子猫が部屋から出て行かないようにカゴに入れました
きゅうちゃんがお風呂から出ると、子猫がカゴの中でもそもそ動いています
きゅうちゃんを見ると「にゃ〜ん、にゃ〜ん」と鳴きました
「まだお腹が空いているのかな? 高い所が嫌いなのかな?」
どうしていいのか判らないでいると、子猫はカゴの中でウンチをしました
「ウンチ、ウンチ」の「にゃ〜ん、にゃ〜ん」だったのでした
そして狭いカゴの中でウンチを踏んづけてしまいました
「うわぁ〜汚ったねぇ〜」
このまま、外に出しちゃおうかな?でも、寒いし雨も降っているし・・・ちゃんとウンチって教えたからな

きゅうちゃんは子猫を洗うことにしました
片手で子猫を持つと、お湯をかけてウンチを流し石鹸でゴシゴシ洗いました
子猫は嫌がって大きな声で鳴きました
みんなが驚いて風呂場に集まりました
「嫌だ、猫なんか家に入れて」
「今日だけだよ、だって雨降っているから」
「どうして猫を洗っているの?」
「ウンチが付いたんだよ」
「あっはっは、ウンチ掃除、頑張ってね。明日になったら捨ててくるんだよ」

足を拭いても、子猫はブルブル震えています
「風邪ひいたら死んじゃうかも」
きゅうちゃんは自分のパジャマの中に子猫を入れました
子猫はすっぽりパジャマの中です
お腹のボタンの間から顔だけ出しています
暖かくなったからか安心したからか、子猫はスヤスヤ寝てしまいました
お母さんがぼろきれを入れた空き箱を持ってきました
きゅうちゃんはお腹から子猫を出すと寝床に入れました

明け方、きゅうちゃんはビックリして目が覚めました
子猫がきゅうちゃんの顔を舐めたのです
すっかり元気になって遊びたいようです
きゅうちゃんは右手をそっと蒲団から出して、畳をカリカリ掻いてみました
子猫はパッと音のする方へ飛んで行きます
今度は左手で、カリカリ音を出しました
子猫は布団の上を走り抜けて、反対側へ行きます
また右、左、右、左・・・
子猫は走り回るのが楽しいように、きゅうちゃんの上を行ったり来たりします
その度に感じるかすかな重さが不思議と心地良いのでした


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