20代から中高年のための小説投稿 & レビューコミュニティ
 ようこそゲストさん トップページへ ご利用方法 Q&A 操作マニュアル パスワードを忘れた
 ■ 目次へ

作品名:続編 小説「ボラカイ島」 作者:南 右近

第65回   ボンボン
ボンボン

 日本外交省の特別調査室の沢田が死体で発見されてから1週間が経った。いっこうに警察当局は島に来て捜査する気配はなかった。徹底した報道管制が布かれているらしく、この事件に関するニュースはまったく流れなかった。政府間で、それもかなり高いレベルでの取引が行なわれているようだった。

 渡辺電設の支配下にあるマニラの合弁会社、渡辺コーポレーションが岬の家の新しい所有者となった。マニラから二人の社員が岬の家に送り込まれてきていた。

 ボンボンは大きな台風がボラカイ島を通過した翌日に島を去った。島を離れる前に菊千代とネトイを一人ずつ書斎に呼んで最後の別れをした。
「菊ちゃん、ここに一億円の小切手があります。このお金は君と君の子供の為に使って下さい。渡辺さんは君らがここに残ることを、もちろん承諾しています。だから君らがここにいたければ、いつまでもいることは出来ますよ。何の遠慮もいりませんからね。君と君の息子がこれからもこの屋敷で暮らすことは正式に文章で許可されています。島の弁護士のところにそのことが書かれた契約書があるから、誰が何と言っても心配しなくていい。もちろん子供を連れて京都に戻ることも君の自由です。」
「ボンボン、いろいろと有り難う。あなたはどうするの?」
「菊ちゃん、僕は茂木さんや君たちとめぐり逢えたことを神様に感謝していますよ。僕は人間にとって何が一番大切なのかということあなたたちから学びました。この島でわずかの間だったけれど一緒に過ごせたことを誇りにおもいますよ。それから渡辺さんはこの家の日比混血児たちのことも、これまで通り面倒をみると約束していますからね。そのことも弁護士のところにはっきりと文章で記録されています。」
「ねえ、ボンボン。あたしの質問にちゃんと答えていないわよ! ボンボンはこれからどうするつもりなのよ?」
「僕は近々、マニラの署長のところへ行くつもりだ。日本政府に1億円を返却するつもりだからね。それから浜で死んだ沢田さんの家族にも1億円を届けてもらう。そして、その後、自首するつもりだよ。署長には既にそのことは伝えてある。いろいろと整理をする為に時間をもらった。幸い、日本政府も問題を大きくはしたくないとのことでうまく話がついた。」
「自首するって、沢田さんは犬か何かの動物によって噛み殺されたのでしょう。何でボンボンが自首するのよ。」
「君も薄々は分かっていただろうが、沢田さんを殺したのはうちの犬たちだよ。だから僕の責任なんだよ。」
「違うわ、それなら、それは事故じゃないの。ボンボンの責任ではないわ。」
「菊ちゃん。僕はこの家を守らなくてはならない。この家の子供たちを守らなくてはならないんだ!日本政府がこの家に踏み込んで来る前に解決したかった。だから取引に応じたんだ。」
「でも、ボンボン、あなたの責任ではないわ。」
「菊ちゃん、もういいんだよ。君たちはしっかり生き抜いて下さい。」
「ボンボン、駄目だからね!まるで死ぬ為に行くみたいだわ。絶対に駄目だからね。あんな悲しいことは茂木だけでたくさんだからね!」
「分かっているよ。全力で最後までやってみるから、僕のことは心配しなくていい。菊ちゃん、悪いけれど、ネトイに部屋に来るように言ってくれないか。」
「分かりました。ネトイを呼んできます。ボンボン、死んだら駄目ですよ!」
 ボンボンは軽くうなずいて見せた。しばらくすると、弟のネトイが一人で部屋に入ってきた。
「ネトイ、そこに座りなさい。」
 ボンボンは机の上に菊千代と同じ様に1億円の小切手を置いてネトイに見せた。
「ネトイ、この1億円はお前に預ける。この家の子供たちの為に使え!いいな。それから、お前はマニラの渡辺コーポレーションの重役として迎えられることになった。佐藤さんの下で働くことになったが、しっかりこの家を守っていってくれ。」
 ネトイは何も言わなかった。ただ、黙ってボンボンの話を聞いていた。
「お前も渡辺コーポレーションの副社長の地位になるのだから、少しは着るものにも注意しておくように、いいな。俺はこれから、マニラの署長のところへ行く。いいか、後は頼んだぞ!子供たちを守ってくれ、任せたぞ!」
 最後の別れの言葉を聞かされても、ネトイは黙ったままだった。 ボンボンは次に正樹と早苗のいる診療所に行くつもりだった。しかし、警察のヘリコプターがボンボンを迎えに来てしまって、そのまま連行されてしまった。

 正樹と早苗は沢田が死んでから、いつまで経っても捜査が行なわれなかったことを不思議におもっていた。正樹が子供たちの往診の為に岬の家に行っても、誰も口を開かなかったし、ボンボンの姿を見つけることも出来なくなってしまっていた。

 リンダは苦しみと悲しみの中をさ迷い歩いていた。どうしたらよいのか分からないまま、何日も過ごしてしまっていた。だが、堪えきれずに、リンダは正樹がいる診療所に行くことを決心した。リンダは夢中で走った。
 泣きながら診療所に入って来たリンダを正樹と早苗は待合室の長椅子に座らせて、少し落ち着くのを待ってから、話を聞いた。
「ボンボンは警察に連れて行かれてしまったわ。違うの!ボンボンじゃないの!あたしなの!犬たちに餌をあげようとして、犬小屋を開けたら、三頭の犬たちはあたしの脇をすり抜けて、草むらに隠れて何かを調べていた沢田さんに飛びかかったの。沢田さんはナイフを持っていて、最初に飛びかかったジョンの喉を切り裂いてしまったわ。それで残った犬たちは狂ったように沢田さんに食らいついたの。結局、犬たちは全部殺されてしまったわ。沢田さんはよろよろと立ち上がってビーチの方へ歩いて行ってしまったの。だから、ボンボンじゃないのよ。あたしなの。あたしの為に、ボンボンは・・・・・・・・。」
 リンダは泣き崩れてしまった。早苗がリンダの肩を抱きしめた。リンダは早苗の胸に顔をうずめて大声で泣き出してしまった。正樹はもう一度頭の中でリンダの話を整理してみてから言った。
「それは事故だよ!誰の責任でもないよ。事故だ。しかし、ドーベルマンを3頭もナイフ1本で殺すとは凄いね。沢田さんはただ者ではなかったようだね。」
「沢田さんは武道家としても、かなり名は知られていたわ。」
「でも、結局、出血が止まらなかった。そのままビーチまで歩いて行って、そこで倒れてしまった。」
「そうね。やっと、謎が解けたわ。」
「ちょっと、僕、マニラへ行ってくる。署長によく説明してくる。リンダ、君の責任ではないからね、もう泣かなくてもいいよ。みんなによく説明してくるから。そうだ、しばらく、早苗さんとここにいるといいよ。」
 リンダはうなずいただけで言葉は出なかった。

 正樹は迷うことなく、市場の魚屋に向かった。千代菊の旦那のハイドリッチに船を出してもらう為だ。飛行場のある隣の島まで渡るのに、それが一番早いとおもったからだ。ハイドリッチは嫌な顔一つせずに船を出すことを快く引き受けてくれた。彼は店番を千代菊に任せて、すぐに二人で浜へ向かった。
 正樹は手遅れになる前に、早くマニラに着きたかった。茂木さんがあの家を守ったように、あるいはボンボンは日本政府と裏取引をしたのかもしれない。もう獄中での別れは茂木さんとディーンの二人だけでたくさんである。何とかボンボンを止めなくてはならない。急がなければ、普段ならばボラカイの海を渡る時は、ボートはもっとゆっくり進めばよいのにとおもう。それだけ長い間、美しさを堪能出来るからだ。だが今日は別だ。正樹は一分一秒でも早くマニラに到着したかった。
 まずカティクランの飛行場に行ってみた。しかし、もうフライトはなかった。船着場に引き返し、白タクを捜した。お金を出せば誰でもカリボの空港までは車を出してくれる。その日も簡単に車はみつかった。カリボの空港でもすべて飛行機は飛び去った後で、小型機を含めてすべてのフライトの予定はなかった。残された道は船に乗るしかなかった。どんな船でもよかった。マニラへ行く船をさがさなければ、正樹は祈りながら港を歩き回った。やっと貨物船が一時間後に港に寄って、すぐにマニラへ向けて出航することをつきとめた。それに乗れば、明日の朝にはマニラへ着ける。正樹は貨物船の到着をじっと埠頭に座って待った。海は暗く悲しみに満ちていた。暗い海を見つめながら正樹は考えていた。きっとボンボンは捜査当局と何らかの取引をしたのに違いない。流用された日本外交省の公金と沢田さんの死への賠償金を持って自分が出頭する代わりに岬の家を存続させることを願い出たのに違いないと正樹はおもった。
 少し遅れて到着した貨物船には問題なく乗船することが出来た。何故なら、その貨物船の乗組員の一人が岬の家の出身者だったからだ。以前、正樹がマニラの警察から彼の身柄を引き取り、岬の家に連れて行った混血児だったからだ。こうして様々なところで岬の家を巣立って行った子供たちが働いていることはとても嬉しいことであった。
 正樹を乗せた貨物船は予定よりも、かなり早くマニラ港に着いた。船長たちのおもいやりを感じながら正樹は船を後にした。ピエールから警察署までは珍しく渋滞もなかった。

 正樹が署長室に駆け込むと、署長は座ったままでじっとしていた。いつものように立ち上がって握手を求めてこなかった。
「正樹君、すまん。私の力ではどうにもならなかった。」
 署長は深々と頭を下げた。正樹は署長の次の言葉を待った。
「ボンボンは死んでしまったよ。茂木さんと同じ様に自分で命を絶ってしまったよ。」
 何故だ、何故、みんな、そんなに自分の命を粗末にするのだ。正樹は心の中でそう叫んだ。そして署長に言った。
「署長、違うんだ。あれは事故だったんだ。岬の家の者が犬たちに餌を与えようとして、犬小屋の扉を開けたところ、犬たちは草むらに隠れていた沢田さんを見つけた。3頭のドーベルマンたちは忠実にも不法侵入者に向かって突進したんだ。沢田さんは持っていたナイフで犬たちを次々と殺した。しかし、戦いの途中で噛まれた傷口からの出血がひどくて、浜まで来たところで力尽きてしまった。だから、あれは事故だったんだ。」
「正樹君、すまん。遅かったよ。」
「駄目だ。そんなの駄目だよ。みんな、何でそんなに死に急ぐのですか。生き続けることが大事なのに!命をつなぐことが大切なのと違いますか。」

 日本政府は岬の家の徹底的な調査と死んだ沢田さんの遺族への保証、それに犯人が見つかった場合、厳罰に処することを要求していた。署長の力ではどうすることも出来ない高度な政治判断でこの事件は秘密裏に素早く処理されてしまった。それでもボンボンの出頭と署長の努力で何とか岬の家はこれからも増え続ける日比混血児たちの為に残す方向で結論が出た。ボンボンはマニラに連行されると、すぐに非合法的に重い刑が確定した。日本政府への配慮がそこにはあった。しかし、ボンボンは一切弁明はしなかった。それどころか、茂木さんがとった方法を彼も選んでしまった。

 ボンボンの死でもって岬の家に対する調査は完全に打ち切られた。流用された公金は全部で7千万円だったのだが、ボンボンは死ぬ前に署長を通して1億円を日本政府に返還していた。国際問題化した日本外交省の公金流用事件はこうして多くの自殺者を出して、やっと解決した。 ボンボンの死はまったく新聞やテレビでは報道されなかった。岬の家はボンボンに代わって渡辺コーポレーションが所有することになった。

 ネトイもリンダから正樹がマニラへ向かったと聞いて、その日の夜遅くにマニラ東警察署に顔を出した。ネトイが到着した時、正樹はまだ署長室でがっくりとうなだれていた。署長とネトイは初めてである。受け付けの警官に案内されて部屋に入って来たネトイに向かって署長は言った。
「君がボンボンの弟さんですか。大変、残念なことだが、君のお兄さんはお亡くなりになりました。本当にお気の毒なことをしました。岬の家の関係者にとっては悲しみであるとともに大きな損失であります。ご家族の方々には心からお悔やみを申し上げます。」
 ネトイは黙っていた。あの陽気な、天性のピエロが何も言わずに兄のボンボンの定めと向き合っている。正樹はネトイの代わりに、また泣いてしまった。署長が続けた。
「ボンボンさんは茂木さんと同じ様に岬の家を守るために自分の命を犠牲にしてしまいましたよ。徹底的な調査が入る前に、まず浜で死んだ沢田さんと言う日本外交省の調査員の遺族に対して十分な賠償をしました。それから、これは私の推測なのですがね、茂木さんが使ってしまったとおもわれる日本外交省の公金も利息をつけてそっくり返してしまったようです。」
 正樹がネトイに代わって聞いた。
「それで日本政府はどうしたのですか?」
「日本政府は今回の事件を公にはしたくなかったようですね。しかし、岬の家の徹底的な調査と沢田さんを殺した犯人への厳罰を強く要求してきました。これは一歩も譲りませんでした。ボンボンはすべての責任は自分にあると言い張って、処分が決まるのを待たずに、そのまま、留置所で自害してしまいました。」
 悲しみのうちに、正樹が誰にともなく言い捨てた。
「馬鹿だよ!茂木さんもボンボンも、二人とも簡単に命を捨て過ぎる。あきれるくらいに馬鹿だよ。」
 今度はネトイに向かって正樹が言った。
「さっきから涙が止まらないんだ。まったく男のくせしてだらしがないだろう。ネトイ、お前は強いな。」
 兄の死を知っても、冷静なネトイが言った。
「正樹、俺は兄貴が連行される前に、部屋に呼ばれてすべてを聞かされていたよ。その時に、こうなることは分かっていた。兄貴も茂木さんのように、とうとうサムライになっちまったな。」
「違う。」
 正樹がネトイに向かって怒鳴った。
「茂木さんもボンボンもサムライとは違うぞ。確かにサムライは主君や彼らの理想の為に命を惜しまない。勇敢であっぱれな死に方を美徳とするけれど、主君や理想の為ならば、平気で他の者を傷つけたり、殺したりする。そこが違うんだ!精神の根底にある自己犠牲は共通しているけれど、茂木さんやボンボンは他人を傷つけたりはしなかった。僕は初め、ボンボンが岬の家を守る為に沢田さんを殺したとおもっていた。その事でどんなに多くの子供たちが救われたとしても、人を殺してまで岬の家を存続させる意味はないとおもっていたんだよ。だからボンボンに失望していたんだ。ところが、それは間違いだった。沢田さんの死が事故だと知って、僕はボンボンを疑っていた自分を恥じた。だから、僕は彼に会って謝りたかったんだ。でも、もう、それも出来なくなってしまった。こんなに悲しいことはないよ。」
 平然として立っていたネトイがやっと椅子に座って言った。
「あれは事故だったのか。今、正樹はそう言ったよね。では何故、兄貴は俺に事故だと言わなかった。何故、自らの命を犠牲にしたんだ。」
 二人の話を黙って聞いていた署長が今度は言った。
「ボンボンさんは頭の良い人でしたね。日本政府や外交省、それに我が国の政府や警察の動きをすべて計算していた。完璧にわしらの動きを読み取っていたんだ。沢田さんの件が事故であろうとなかろうと、ボンボンさんは極刑を免れなかったとわしはおもう。それに岬の子供たちや既に巣立って行った子供たちに彼は自分の死でもってメッセージを示したかったのに違いないとわしはおもうよ。死刑にされるのと自害するのとでは子供たちに与える影響は大違いだからね。」
「でも、署長、ボンボンが死刑になる可能性はそんなに高かったのですか?」
「ああ、残念だが、そうだった。国の面子が絡んでしまったからな。」
「不完全な人間が不完全な人間を裁くなんてまったくナンセンスですよ。僕は医者ですからね。死刑は絶対に反対ですよ。今回の場合は事故だった。よく調べもしないで!それじゃあ、法律も何もないじゃないですか。岬の家の敷地内に不法に侵入したのは沢田さんの方だ。警察は上からの指示があると、簡単に人を逮捕して、死に追いやることが出来るのですか?」
「正樹君、すまん。わしの力が足りなかったのだよ。この通りだ、本当に申し訳ない。」
「正樹、やめろ!もういい!帰ろう。」
 正樹はネトイに引っ張られながら、署長室を出た。二人は警察署の正面玄関に待機していたタクシーに乗り込み、ケソン市のアパートへと向かった。タクシーの後部座席に並んで座った二人だったが、お互いの国籍は違っていたけれど、二人は兄弟そのものであった。言葉にしなくても、お互いの気持ちが理解出来るようになっていた。
「ボンボン兄さんは俺に渡辺コーポレーションの副社長の地位を残していってくれたよ。佐藤さんの下で働くことになった。」
「そうか、それは良かったな。渡辺社長と違って、佐藤さんはなかなかの人物だと僕はおもうよ。岬の家は渡辺コーポレーションの下に組み込まれたのだから、今度はネトイ、お前があの家のリーダーだ。ボンボンに代わって岬の家を守っていくということだな。いいか、命はそう簡単には捨ててはならないぞ。お前まで死んでしまったら、僕は独りぼっちになってしまうからな。」
「大丈夫だ、俺は死なないよ。」

 揺れる車の中で、正樹はボンボンと初めて会った北海道の中山峠のことを思い出していた。身の丈以上も積もった雪の中山峠の冬景色が昨日のことのように浮かんできた。ボンボンとの出会いがすべての始まりだった。その昔、日本を追われたキリシタン大名の高山右近が病と戦いながら何日も船に揺られて、やっとたどり着いた南の国に自分も今こうして来ている。運命とは不思議である。ボンボンや茂木さん、そしてディーンは自分に彼らの生きざまを鮮やかに示した。彼らの命は実に短かったけれど、激しく燃え上がって尽きた。この世の中には誰一人として良い人間なんていやしない。みんな自分勝手で利己主義で我がまま勝手に生きている。それが本当の人間の姿なのだ。ところが正樹が知り合った、この三人は死ぬ瞬間には完全に人間ではなくなっていた。もし神というものが存在するのであるならば、この三人は限りなく、その神に近づいていたと言える。

 車はパコ駅の前を通り過ぎようとしていた。タクシーの運転手が後ろを振り返り、正樹に言った。
「お客さんは日本人かね? ほら、すぐそこに、日本人の銅像が立っていますよ。お侍さんの銅像ですよ。」
「運転手、ちょっと車を止めてくれるか。」
 正樹は車から一人で降りて、運転手が言っていた銅像の前へ行ってみた。銅像の下にはこう記されてあった。

「高山右近」
 正樹は銅像を見上げて、ぼそっと呟いた
「南の国に来た。右近さんか。」


← 前の回  次の回 → ■ 目次

■ 20代から中高年のための小説投稿 & レビューコミュニティ トップページ
アクセス: 7361