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作品名:自殺プロジェクト 作者:天赦人

第4回   4
いつもは出迎えることなどない夫が今日に限って…。
悪いことはしていないのに後ろめたい気持ちになった。

「ただいま」

普段は着ないような華やかなワンピースにヒールの高いパンプス。男と会っていたのがバレたような気がした。
加代子はそれでも構わないと思った。
それくらいの覚悟がなければ[自殺プロジェクト]など立ち上げない。

少しすると祐一からLINEが来た。
「カコさん、お家に無事に着きましたか?今日はありがとうございました。またお逢いしたいです」
その紳士的な言葉に心が弾んだ。そしてまた逢いたい、「会う」ではなく「逢う」という文字を使ってくれたことも嬉しかった。

次の予定がまだ決まってもいないのに、加代子は「逢う」日の服装を考えていた。
祐一は加代子のことを褒めてくれた。
「色白で綺麗」「スタイルがいい」「ワンピースがとても似合っている」等々。
一生分褒めてもらったような気がした。

今度はどこに連れて行ってくれるのだろう?
早く逢いたい…。

祐一は毎日LINEを送って来るようになった。
趣味でやってるスポーツの写真、おはよう、おやすみ、逢うのが楽しみ、と。

面倒くさがりの加代子も、祐一からのLINEは楽しくて待ち遠しかった。

次に逢う日は新しく出来たお洒落なレストランを予約してくれていた。
それなら前よりもっとお洒落をしなきゃ!と、更に高価な服を買った。
祐一に逢うためにお洒落がしたくて、祐一に褒められたくて、バンバン服飾品を買った。
気付いたら50万円を軽く超えていた。
それでも「どうせ死ぬんだから」と自分に言い聞かせ納得する(ふりをした)。

その日、祐一は「カコさんに似合うと思って」とアクセサリーのプレゼントを用意していた。
「付けたところを見せて欲しい」と、かなり強引に誘ってきた。強く出れば加代子は断らないと思ったのだろう。
ビジネスホテルのダブルルームだった。

それから加代子の生活は祐一中心になった。
祐一からのLINEを待ち、甘い言葉に酔いしれて…。

しかし、非日常は長くは続かない。

ビジネスホテルが安いラブホテルになり、祐一からのLINEも誘いも減ってきた、と言うより
ほとんど無くなった。

加代子は不安で気が狂いそうになった。
「何かありましたか?」なるべく重たくならないように気を遣いながらも、ひたすら返事を待った。
2週間待ったその返事は「トラブルがあって」の一言だった。

祐一と出逢って約半年、その間実際には何日逢ったんだろう?10日あっただろうか?
1回だけ旅行もした。祐一がどうしても行きたいと言っていた関東近郊の避暑地へ。
その宿があまりに貧弱だったことを覚えている。トイレも風呂もない部屋だった。

その旅行での祐一の言動が今でも忘れられない。
開口一番「安心して!家には出張って言ってきたから」
その帰りには「家族にお土産を買って帰るけど、カコさんもいる?」だった。
(安心?家族にお土産?) …なんか違う、楽しいはずの初めての旅行なのに。
その頃からだんだんと加代子の心はザワつき、意味の分からない不安と表現出来ない苦しさで食事が喉を通らなくなっていった。
夫は「痩せすぎて気持ち悪い」と言い、周りからは「拒食症?」と言われるまでにやつれ果てた。

肋骨があたって横になるのも痛かった。全ての服や靴が緩くなった。
こうやって死んでいくのか?これが自殺プロジェクトだったのか?




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