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作品名:同じ日を繰り返す人々 作者:森本晃次

第8回   リセット−1

                 第三章 リセット

 オサムは横溝に会った数日後、ツトムに出会った。
 ツトムと、喫茶「イリュージョン」以外で出会うのは初めてだった。その時、オサムは前兆を迎えていて、自分もそのうちに同じ一日を繰り返すのではないかという不安に駆られ始めていた頃だった。
 ツトムと話をしたのは、いつも喫茶「イリュージョン」の中、冷静に話をしていても、どこかに不安があったが、それでも不思議と喫茶「イリュージョン」を一歩出れば、それまでの話がまるでウソのように、
――あそこでは幻想について話をしただけだ――
 と、現実味を感じることはなかった。
 ただ、オサムはその前日、喫茶「イリュージョン」で、ヨシオと呼ばれる人と出会った。ヨシオはその日初めて喫茶「イリュージョン」を訪れたといい、その理由を、
「オサム君に会ってみたかったんだ」
 と述べたのだ。
 最初、彼がヨシオだと気付かなかったので、彼の挙動に不信を感じていたので、怪しい視線を浴びせていたが、ヨシオは、
――何でも分かっているさ――
 と言わんばかりに、オサムを見ていた。
「どうして僕のことをご存じなんですか?」
 以前にツトムからヨシオの存在を聞いていたのだが、本人から聞かなければ、正直ツトムからだけの一方通行なので、信じがたいところがあった。
 ツトムがいうには、ヨシオから自分が同じ日を繰り返しているということを聞かされたという。しかも気になるのは、一人の人にそのことを一人しか告げることはできないということだったはずなのに、
――なぜゆえ、ヨシオは僕の前に現れたのだろう?
 そう感じて当たり前のことだった。
「俺はね、実は科学者なんだ」
「えっ?」
 いきなり何を言い出すのかと思ったが、その話はツトムから聞かされたわけではなかった。ヨシオのことをツトムは知っているようで知らないのかも知れない。あれだけいろいろなことを話したツトムだったが、ヨシオのことは、
――自分に同じ毎日を繰り返しているのを教えてくれた人であり、同じ一日を繰り返していることにパターンがあることを教えてくれた人――
 ということしか聞いていない。
 それ以上のことを知っていて話をしなかったようには思えない。もし、そうなら、ツトムの中にヨシオを隠さなければいけない何かがあったということになる。
「科学者というのはすごいですね」
「そんな風には見えないだろう?」
「そんなことはないですが」
 最初はピンと来なかったが、顔をよく見ると、髭面が妙に貫録を表していて、白衣を着て、手をポケットに突っ込んでいれば、それなりの迫力を感じさせる雰囲気に、思わず、
――なるほど――
 と感じさせるところがあった。
 ヨシオが何を考え、これから何を言おうとしているのか、なかなか想像するのは困難だった。
 オサムはツトムのことを思い出そうとしていた。
――そういえば、あれだけ毎回のように会っていたのに、最近はご無沙汰の気がするな――
 と感じていたが、その思いは横溝にもあったが、横溝に対してとは雰囲気が違った。なぜなら、横溝とはそれほど親しく話をしたことがないだけに、いなくても最初は気にならなかった。
 ツトムに対しては、あれだけ話をしていたので、いなくなると、一抹の寂しさを感じ、一人の孤独を思い知らされる気がした。しかし、それはこれから自分に起こるであろう、
――同じ日を繰り返す――
 ということへの不安が募っていることを表していた。
 そして、二人と会わなくなって数回経つと、今度は立場が逆転しているのに気付かされた。
 ツトムと出会わなくなってもさほど気にならなくなったのに、横溝がいないということが気になってきた。それだけオサムの中での残像が、違った形で残ってしまったということを示しているのだろう。
「ツトムに同じ日を繰り返しているという話をしたのは俺なんだけど、そのことはツトムから聞いているかな?」
「ええ、聞いています。ツトムさんが言うには、同じ日を繰り返していることを告げるのは、一人に対して一人だって言っていました。ツトムさんのお話は分かりやすいんでしょうが、聞いていて信じがたいところもあって、どうにも納得できないところが多いような気がします」
「それはそうでしょうね」
「俺も実は以前、同じ日を繰り返していたんだ。今は元の世界に戻ってきたんだけど、元の世界に戻れずにいる人も結構いる。その中には、向こうの世界がいいと思っている人もいたりするから不思議なんだ」
「ヨシオさんはどうだったんですか?」
「俺は、早くこちらの世界に帰ってきたいとずっと思っていたのさ。どうやったら戻ってこれるかということもいろいろと考えてね。でも、途中で気付いたんだ。俺がこの世界にいるのは、最初に俺がこの世界を創造して、こっちにいることを望んだからだってことをね」
「それはどういう意味なんですか?」
「一口に言えば現実逃避になるんだろうが、俺の場合は少し違う。自分が創造した世界を証明したいという思いに駆られたと言った方がいいかも知れない。だが、俺と同じような気持ちの人がいたんだ。俺よりも少し後に同じ日を繰り返すようになったんだけど、それがツトムだったんだ」
「そういえば、ツトムさんは小説を書いていると言っていましたね」
「そうだね。そして、俺は科学者の端くれ、お互いに共通点はあるような気がしているんだ」
「ツトムさんは、ヨシオさんのことは何も話してくれませんでしたけど、ヨシオさんのことを何も知らなかったんでしょうか?」
「そんなことはない。二人で同じ日を繰り返す世界の話を語り明かしたものさ。彼はそれなりに必死に訴えるものがあったよ。ただ、俺と彼とでは性格的には似ていないと思うところがあってね」
「そうなんですか。でも、お互いに避け合っているというわけではないんでしょう?」
「そんなことはない。ただ、お互いに適度の距離を保とうとしていたのは事実で、一時期微妙な距離を模索していたような気がする。そのせいでぎこちなくなった時期もあったんだけど、だからと言って避け合っていたわけではない。緊張の糸が張りつめていたというのはあったかも知れないね」
「僕はツトムさんから、そのうちに僕も同じ日を繰り返すことになると聞かされて、少し戸惑っているところなんですけど、そのツトムさんとは前はずっと会っていたのに、今は会えなくなったのが少し気になっています。ツトムさんは元気にしているんでしょうか?」
「彼は元気だよ。でも、彼は今、同じ日を繰り返している世界から抜け出そうと必死になっているところなんだ。どうやら、彼は大きな勘違いをしているようで、それが分からないと、あの世界からは抜けられない。もっとも、抜けようという意識が少し違っているような気がするんだ」
 オサムは、ヨシオの話を聞いていると、ツトムが話してくれた内容とは少し違っているように思えたが、突き詰めると、同じところに戻ってくるような気がした。
 ツトムのことを思い出しながらヨシオを見ているのと、ヨシオを見ながらツトムのことを思い出しているのとでは、状況が違ってくるのが分かった。目の前にいるヨシオの方が印象深いと感じるのは仕方がないとしても、ヨシオを見ていると、ツトムへの意識が次第に薄れていくのが感じられ、不思議な感覚に陥っていた。
「ところで、ヨシオさんというのはどういう人なんですか?」
 ヨシオのことを何も知らないから、ツトムのことを思い出そうとしても次第に意識が薄れてくるような気がした。ツトムがヨシオのことに対して何も触れなかったのにも、何か理由があるような気がする。ひょっとすると、ツトムがしようとしていることを、オサムが否定したということと、何か関係があるのかも知れない。
――僕には、ツトムさんに恨まれるような何かをしたという意識はまったくないんだけどな――
 それが、ツトムと出会うかなり前のことであったということを、その時はまだ知らないオサムだった。
 オサムは、疑問に思っていたことをヨシオに聞いてみることにした。
「ヨシオさんは、ツトムさんと同じを繰り返していると言いますが、繰り返し始めたタイミングというのは違いますよね?」
「そうだね」
 ヨシオは笑顔で答えた。
「でも、お二人はどこかで出会って、相手に同じ日を繰り返していることを告げたわけですよね。同じ日しかお互いに繰り返していないはずなのに、そんなことが可能なんですか?」
「同じ日を繰り返しているからと言っても、ずっと薄っぺらいままではないんだよ。薄っぺらい世界が同じ日を重ねるごとに厚くなって重たくなってくる。そのうちに他の人との接点が生まれてくるということは考えられないかね?」
 これは、オサムが横溝から聞いた話だった。あの時は、単純に毎日を生きることへの辛さから、同じ日を繰り返すことを羨ましがるという、今では考えられないことを思っていた時に聞いた言葉だったので、ビックリした。
 そんな表情を感じ取ったのか、
「どうやら、この話を聞くのは、君は初めてではないようだね」
 そう言って、またニッコリと笑った。
 もちろん、この話でツトムとヨシオの接点が見いだせたわけではないが、同じ日を重ねることで厚くなったものが、どこかで接点を持ったとしても、不思議ではないと思えてくるから不思議だった。オサムは最初に横溝と話をした時に感じていた同じ日を繰り返すという意識を、今は完全に怖がっているのが分かった。
――こんなに得体の知れないものだったなんて――
 想像すると、自分が精神的に耐えられるものなのかどうか、疑問に感じてきた。
――恐怖心というのは、これから起こることが分からないから感じるものだ――
 明らかに何かが起こるのは分かっていても、そこからどんなことが派生するか分からない。いい方に考えれば、夢や希望ということになるのだろうが、逆に言えば、恐怖以外の何物でもないということになるだろう。
――必要以上に神経が過敏になり、冷静な判断力を必要とする時ほど、精神的に不安定になってしまうに違いない――
 入る前から不安が募っていては、最初から負の要素を背負ってしまっていることになり、自分が未知数であり、それ以上でもそれ以下でもないことを思い知ることになるだろう。
――僕はこうやっている間にも実際には同じ日を繰り返しているのかも知れない――
 ただ、自覚はない。
 午前零時を過ぎれば何事もなく次の日になっている。そして、前の日とは違う一日を過ごしているのだ。
――だが、昨日と思っている日が本当に昨日だということを考えたことがあっただろうか?
 いや、思いこんでいるだけで、そのことを考えようとはしなかった。
 それは、考えようとしなかったのではなく、考えないようにしていたのかも知れない。
――しなかったというのと、していたというのではまったく解釈は違ってくる――
 そう感じると、今日という日を繰り返すことに知らず知らずに入り込んでいる人も少なくはないに違いない。
――こうやって話をしている人も、同じ日を繰り返しているのかも知れない――
「同じ日を繰り返すことを抜けた」
 と自分から言っている人は、本当にそうなのだろうが、少なくとも、同じ日を繰り返している事実を認識していた人たちだ。
 そんな人たちと今まで会わなかったはずの自分が、急にまわりがそんな人ばかりになるなんて、そんなおかしなことはないだろう。
――やっぱり、前兆からいつの間にか、同じ日を繰り返す世界に入りこんでしまっていたんだ――
 と感じた。
 オサムは、昨夜のことを思い出そうとしていた。すると、一つだけ思い出せることがあった。
――確か、誰か死のうとしている人を助けたような気がしたな――
 自殺しようとしている人を助けるというのは、いいことをしたという気分になるものだが、その時は、後ろめたさを感じた。
 確かに死を意識するほど辛いことのあった人は死んだ方が楽なのかも知れないので、自殺を止めるというのは、後ろめたさを感じても仕方がないが、すぐにそんな思いも薄れてくるものだと思っていた。
 しかし、その時は次第に後ろめたさが膨らんでくる。まるで、
――自殺しても、その人は本当に死ぬとは限らない――
 とでも言わんばかりの考えだった。
 それは、生まれ変わるという発想がその後についていたからだと思ったが、数時間しか経っていないのに、そんなことをすっかりと忘れてしまっていたというのもおかしなことだった。
――やっぱり、午前零時を境に、僕は意識も記憶もリセットされてしまったのだろうか?
 と、感じたのだ。
 自殺をする人をオサムは今までに何度か見たことがあった。
「一生のうちにそんなに何度も自殺の場面に遭遇するなんて、よっぽどのことなのかも知れませんね」
 と、自殺を目撃したことが何度もあることを話した人から言われた。
 話をした相手は女性で、どうしてその人に話す気になったのか、今ではその時の心境を忘れてしまった。しかし、その時まではいい関係を育んできた相手だったので、付き合う寸前まで行っていたのは事実だった。そんな相手に話しをしたのは、何か思うところがあってのはずだったのに、結果としては、完全に裏目に出てしまった。明確な別れの言葉はなかったのだが、それからお互いにぎこちなくなり、付き合うどころか、一緒にいることも苦痛に感じるようになった。
 幸いだったのは、どちらが嫌いになったというわけではなく、自然消滅的な別れに、憔悴感はなかった。
「お互いに距離を置きましょう」
 という一言があっただけで、
「そうだね」
 肯定も否定もする気がなかったオサムは、そう答えるだけだった。相手もそのことを分かったのか、それ以上、何も言わなかった。
――どうして、こんなことになったんだろう?
 ぎこちなくなり始めて最初はいつもそのことを考えていたが、次第に考えないようになった。気持ちが冷めてくるのが分かってくると、別れに対して、何の感情も抱かなくなった。
 会わなくなってからしばらくして、
――自殺の話をしたのがいけなかったのかな?
 と後悔しているわけでもないので、反省もしていない。結果として別れることになったが、きっかけなどどこに転がっているか分からない。自殺の話がきっかけになったとオサムは思っているが、彼女の方は違うことを考えているのかも知れない。
 ただ不思議なことに、自殺の話がいけなかったのではないかと考えたその後、少ししてから、彼女が自殺未遂をしたという話を聞かされた。手首を切っての自殺未遂らしいのだが、理由はハッキリとしないという。完全な衝動的な行動で、その時の彼女の気持ちを計り知ることは、すでにできなくなっていた。
「そうなんだ」
 教えてくれた人に対してそっけない素振りをしたが、相手も修が別れてからかなり経っていることで、
「俺には関係ない」
 と言われても仕方がないという思いがあったに違いない。
 オサムは自分でも冷静な顔になっているのは分かっていた。それまでにない冷静な表情に、表情が引きつっているのではないかという思いに駆られていた。それでもオサムにとってかつて、
――付き合っていたと言ってもいいくらいの相手――
 そんな女性が自殺を試みたというのに、まったくショックがないということはありえないだろう。
「何となく、分かっていたんじゃないかい?」
 と言われたが、
「そんなことはないよ」
 と答えた。その言葉にウソはない。彼女が自殺をするような女性でないと思っていたのは事実だし、
――彼女に限って――
 と考えたのも事実だった。
――人間なんて、いつどこで死にたいと思うか、分からないということか――
 と感じた。
 それは人間の感情に左右されない本能のようなものが見えないが影響しているということになるのだ。
 オサムにとって、自分の中で、
――自殺する人――
 というイメージが頭の中にあったのは事実だが、実際に自殺を目撃した相手が、どんな人だったのかなど、分かるはずもない。元々知らない人が自殺して、生死の境を彷徨っている時の断末魔の表情は、インパクトが強すぎたが、それとは別に感情は冷静だった。
――まるで何も考えていないかのようだ――
 と思えるほどで、しかも、その人が普段どんな人だったのかなど、想像できるはずもなかった。
――自殺しようとする人には、性格的に共通点があるに違いない――
 というのが基本的な考え方だが、何度も自殺の場面を目撃するたびに、その思いがまるで絵に描いた餅のように思えてくるから不思議だった。
――感覚がマヒしてきているのかな?
 と感じた、その思いに間違いはないだろうが、それだけではないような気がしていたのもウソではない。
 今までに何度か自殺を目撃してはいるが、その中に自分の知り合いはいなかった。もしその中に自分の知り合いがいるなどということになれば、それこそ確率的にかなりのものであり、恐ろしさが頭を擡げるに違いないと思ったからだ。
――自殺する人の心境が分からない――
 死ぬしかないと思って死ぬのだろうが、そこまで自分を追いつめるには、もう一人の自分がいないとできないような気がする。
「誰かが背中を押してくれないと、自分から死ぬなんてできないわよね」
 数少ない彼女の言葉の一つでもあった。
 彼女はその時あまり面白くなさそうな顔はしていたが、ほとんど話さなかったわけではない。むしろ、言葉数は多かったのかも知れない。それを思うと彼女が何を考えていたのか分からないまでも、その後自殺することになったのも、その時から繋がりがあったのかも知れないと思った。
――別れることになったのも、「死」というものに対して犯してはいけない神聖なものであるということを彼女の中で確固たる気持ちが存在していたに違いない――
 そう思うと、別れることになったこと、別れてしまってから後悔がなかったことに対して、オサムは自分なりに納得できるような気がしていた。
「オサムさんは、自殺を何度も見ているということは、何かを繰り返しているのかも知れませんね」
 この言葉も彼女の不思議な語録の一つだった。
「繰り返す?」
「ええ、繰り返しているからこそ、自殺を目撃するんですよ。そのうちに嫌でも何かを繰り返すことに遭遇して、死というものを感じる時が来るのかも知れませんね」
 どこまでも謎に満ちた発想だった。
「君の発想が時々怖くなることがある」
 悪気もなかったのに、思わず口走ってしまった。
「それはお互いさまでしょう?」
 彼女も負けてはいない。ただ、勝ち負けの問題ではなく、会話が何かの答えを求めているわけでもなく、淡々と続けられていることに、ゾッとしたものを感じていた。
 オサムが同じ日を繰り返すというのを意識させられたのも、ミクと会ってからだった。
 ミクに対して、何ら他の人との違いを感じたわけではなかったはずなのに、どうしてそう感じたのか、ひょっとすると、以前付き合おうと思っていた彼女とどこか似たところがあったからなのかも知れない。
 ただ、今回はミクに対して何も話をしたわけではない。歴史の話に花を咲かせた程度で、ミクと話をしていて感じた、
――同じ日を繰り返す――
 という発想について口にはしなかった。
 だが、口にしなかっただけで、素振りは普通ではなかったのかも知れない。ミクはそのことを感じ取り、態度に表したことを、逆にオサムが怪しく感じたのかも知れない。
――ミクに対して、どこか怯えたような気持ちがあるのかも知れない――
 初めて会ったはずの人なのに、どこかで会ったことがあると感じたことが今までに何度かあった。その相手に対して必ず怯えのようなものを感じていたが、ミクに対して感じた怯えも、同じような怯えだった。
――でも、ミクのような雰囲気の女性と出会うのは、初めてのはずなんだけどな――
 と感じていた。
 ミクの方はどうなのだろう? 話をしていて違和感はないが、まったく疑問を感じていないというわけではなさそうだ。お互いに手探りだったのは、間違いのないことのようである。
「僕は、同じ日を繰り返しているということを、メカニズムとして証明したいと思って、研究していたんだ。ずっと研究していたんだけど、研究している間は、毎日が先にいくんだ。でも、同じ日を繰り返しているという事実に変わりはない。つまりは、同じ日を繰り返している部分と、先に進む部分の二つが存在しているんだ」


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