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作品名:雨粒坊やの冒険 作者:りじょうみゆき

最終回   1
雨粒坊やの冒険


旅に出る為子供達は、雲のお父さんとお母さんに別れを言って地上に降りて行った。

僕は雨粒の生まれたばかりの子供。

お父さんが僕に言った。

坊やよく見ておくんだよ
もうすぐ坊やもお兄ちゃんやお姉ちゃん達のように、地上に降りて行くんだからね。
そしていろんな冒険をして戻って来るんだよ。


僕より少し大きなお兄ちゃんやお姉ちゃん達は次々に雲のお父さんとお母さんに、

行ってきます!

と言って旅に出て行った。

それから、僕も少し大きくなった。

そろそろ坊やも旅に出る番だね〜

そうお父さんに言われて、次の雨の降る夕方
僕はお父さんとお母さんに

行ってきます。

と雲のお家から地上に降りて行った。


途中の空で鴨の親子に出会った
鴨のお母さんが

雨粒の坊や初めて地上に降りるのかい?

はいそうなんです。

そうかい地上には楽しい事もあるけど怖い事もあるから気をつけて行っておいで。

と言ってくれた。
そして雨の中、鴨のお母さんは子供達と飛びながら帰って行った。

沢山の雨粒のお兄ちゃんやお姉ちゃん達もどんどん降りて来た。
僕のように初めて旅に出る小さな雨粒達も沢山いた。
風に流されて遠くに行ってしまった雨粒達もいた。
皆んなはもうバラバラになっていった。

やっと、地上に降りた。

僕はある庭先の紫陽花(アジサイ)の葉っぱの幹の所に止まった

後から降りて来る雨粒達は少なくなって、もう雨粒は降りてこなくなった。


風が吹いた。
僕は紫陽花の葉っぱの幹にしがみついた。
同じように紫陽花の葉っぱや、お花に降りて来た雨粒達はどんどん風に飛ばされて行ったり、自分から地面へ降りて行ったりした。

僕はどうして良いのかわからず、夜はじっとして紫陽花の葉っぱの幹の所で眠った。

朝が来てお日様が出て来た。

ガラガラ〜と紫陽花の庭がある家から、小さな男の子が出て来た。

ママ〜もう雨止んだよ〜。

そう言って男の子は軒先に置いてあった三輪車に乗って遊び始めた。
家の中から男の子のお母さんが出て来た。

あら〜ほんとね。
雨止んだね〜
しんちゃん、お買い物に行こっか?
何が食べたい?

うん僕ねハンバーグ!

そう言って小さな男の子とお母さんは出かけて行った。

僕は雲のお父さんとお母さんが恋しくなった。
お家に帰りたくなってシクシク泣いた。

その時また風が吹いて僕は紫陽花の葉っぱの滑り台に乗ってゆっくり庭先に降りて行った。

先に降りていたお姉ちゃんやお兄ちゃん達はどんどん庭のお水になってどこかへ流れて行った。
僕も一緒に流されて行った。
そして庭から溝の様な所へ流されて行った。

しばらくすると暗いトンネルになった。
暗くて臭くて息苦しかった。
大きなネズミが声をかけてきた

おい、お前新米だな!
俺の子分になれ!

そう言われた。
子分ってなんだろう?
他のお兄ちゃんや、お姉ちゃん達はどんどん流れて行った。
僕はネズミがなんだか怖くて

ごめんなさい、僕は旅をしてるんです
旅が済んだら雲のお家に戻るんです。

そういうとネズミは
ハッハッと笑いながら

そうか、人間には気をつけろよ、
人間ってのは怖いものさ、無事に家に帰れると良いな。

そう言った。
僕はネズミと別れて、またどんどん流されて行った。

しばらくすると暗いトンネルから出た。
そこは川になっていた。
僕は初めて川を見た。
僕は川の中にいた。

向こうから自転車に乗って若い男の人がやってきた。
その人は音楽のようなものを聴きいているのか?耳にイヤホンをしていて片手には、缶ジュースを飲みながら自転車をこいでいた。
その自転車の人は僕の方へポチャンと空き缶を投げた。
僕はその空き缶に当たった。
僕は空き缶のお船に乗ってゆらゆらと流されて行った。


夜がきた。

暗くて少し寒い、お空は星が出ている。

お空のお父さんやお母さんは何処にいるのかな?

僕は空き缶のお船の中で眠った。

また朝がきた。

ぷかぷかと空き缶の船は流されて行く。
初めは小さな小川だったのに、いつの間にか向こう岸が見えないくらい大きな川になっていた。

川の水となったお兄ちゃんやお姉ちゃんは見分けがつかない。

しばらく流されていると
おじさんが魚釣りをしているようだ。
魚と間違って僕が乗っている空き缶を釣った。
おじさんは

なんだ、空き缶か!

と言って僕ごとまた川に投げた。

ポチャンと空き缶はまた川に戻った。

しばらくすると子供達が遊んでいた。
その中のひとりが、僕が乗っている空き缶を見つけて拾った。

そして僕を振り払って空き缶をゴミ箱まで持って行ってくれた。

僕は水滴のようになってペチャンと川に戻った。

水滴になった僕はどんどんと川を流れて行く。

すると川は海となった。

小さな魚が僕に挨拶する

こんにちは水の坊や、
川から海になると塩っぱいだろ。

そうだ今までは何も味がしなかったのに、海なると塩っぱかった。
僕はお魚さんに聞いた。

海は水なのになんで塩っぱいの?

小さな魚さんが言った。

川と海を、分けるためさ。
川には川の魚
海には海の魚しか住めないからな。
海には色んな大きな魚が沢山いるから気をつけなよ。
僕達も大きな魚に食べられないように沖にはいかないのさ。

と小さな魚さんは言った。

有難う
でも僕は旅をして、また雲のお家に帰るんです。
どこにどう流されるのかわかりません。
お魚さんも気をつけてね。

と僕は小さなお魚さんに別れを言った。

小さなお魚さんは人間のおじさんに釣られて行った。

僕は海の波に乗ってどんどん沖へ流されて行った。
海は広くて色んな魚さんや綺麗なサンゴがたくさんあった。

大きなクジラさんに出会った

やあ水の坊や
何処まで行くのかい?

わかりません。
雲のお家から旅に出て、旅が終わったらまた雲のお家に帰るんです。

そうかい。

そう言ってクジラさんは大きな口を開けて僕を飲み込んだ。

クジラさんのお腹の中は真っ暗だった。
一緒に色々な魚さんも食べられた。

僕は勢いよくクジラさんの背中から外に出された。

ウワァ〜っと僕は何回もクルクルとひっくり返った。
目が回った。

外に出た僕はクジラさんの横に行って

有難うクジラさん僕を外に出してくれて、

とお礼を言った。

坊や
早くお家に帰れると良いな。

クジラさんはゆっくり目を閉じて遠くに去って行った。

少し暗くなった。
ポツリポツリと雨が降り始めた。
雨粒のお兄ちゃんやお姉ちゃん達がやって来た。

坊や久しぶり
元気だったかい

うん僕色んな冒険をしたよ。

それは良かったね

僕 もうお家に、帰れるのかな?

さあ
どうかな?
私たちがまた地上に降りて来たということはしばらくは無理かな?

どんどんと雨粒のお兄ちゃんやお姉ちゃん達が降りて来た。

海は雨と風で荒れて、しけになった。
グワングワンと僕は揺れた
お兄ちゃんやお姉ちゃん達も一緒に揺れた。

沖で船が沈没しそうになっていた。

船長!この嵐では陸に無線が届きません!
このままでは沈没しそうです!

船は大きく傾いた。
その時
あのクジラさんが下の方で船を支えて陸の近くまで運んでくれた。

船に乗っていた人達はクジラさんにお礼を言った。

しばらくして雨は止んで
雨粒達はもう降りてこなかった。

朝日がキラキラしてが眩しかった。
お日様が真上まで来た頃、少しづつ仲間達が上に登って行った。

僕も早く上に登って行きたいな〜

と近くにいたお姉ちゃんに言った。

坊や
冒険はもう済んだの?

うん冒険はすんだよ。

じゃあ
もらう次は坊やの番だね。

そうお姉ちゃんに言われた瞬間、僕の体が小さくなった。
そしてお日様に照らされて僕はどんどんお空を登って行った。

途中
鴨のお母さんに出会った。

あら坊や
お家に戻るのかい

ハイ。

と僕は答えた。
そしてどんどんとお空を登って行った。
そして懐かしい雲のお家に戻った。


ただいま!

と僕がお父さんとお母さんに飛びついた。

坊や
よく頑張ったね。

と、お父さんとお母さんが僕を抱っこして頭を撫でてくれた。

お父さんが

地上の冒険はどうだったかい?
怖くなかったかい?

と聞いた。


全然 !怖くなかったよ!
あのね、鴨さんや人間やネズミさんとかクジラさんとかに会ったよ。
楽しかったよ。
それから、・・・人間は空き缶をゴミとして捨てる人がいたけど、その空き缶を拾った人がいたよ!

そうかい。
地上では人間が一番怖くて、一番優しいのよ。

とお母さんが教えてくれた。

僕はまた地上に降りるために大きくなる。
今度はどんな冒険が待ってるのかな?
楽しみだ。


雨粒坊やの冒険






おしまい





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