20代から中高年のための小説投稿 & レビューコミュニティ
 ようこそゲストさん トップページへ ご利用方法 Q&A 操作マニュアル パスワードを忘れた
 ■ 目次へ

作品名:カッチョの恋 作者:りじょうみゆき

最終回   カッチョの恋
カッチョの恋

僕はカッチョ
キョキョキョッと鳴く

野山を餌を求めて駆け回る
奴らに陣地を取られぬように

大きな鷲に捕まらないように
身をひそめて回る



『おや?ツグミの夫婦がいるぞ。
少し脅かしてやるか』

ツンツンツン
と僕が脅かしてやった。

ツグミの夫婦は慌てて逃げて行った。

『ハッハッハッざまぁみろ
俺の陣地に入ると、こうなるのだ。』

僕はカッチョ
キョキョキョッて鳴く。

『げぇ〜!キジが来やがった。
今日は退散して他で遊ぶか。』

僕はカッチョ
キョキョキョッて鳴く。

餌を求めて飛んで行く。


『おや?あのお庭に美味しそうな木の実があるぞ。』

キョキョキョッと鳴きながらお庭の木に止まる。


お庭のお家から綺麗な唄声がする。

『なんて綺麗な声で歌うんだろう』

僕はお家の窓辺に止まって窓ガラスの中をのぞいた。

黄色いカナリアさんの唄声だった。

僕はうっとりしながら聞いていた。
目を閉じて聞いていたら窓辺から落ちそうになって慌ててバタバタ飛んだ。

「あら、こんにちは〜」

と家の中からカナリアさんが声を掛けてくれた。

つぶらな瞳。

綺麗な黄色い羽の色

そして美しい声

僕は一目で恋をした。

僕は慌てて言った。

「カナリアさん、素敵な歌をありがとう。
僕は暴れん坊で、皆んなから嫌われてるんです。
でもカナリアさん、
僕はこれから良い子になりますから、お友達になって下さい。」

「良いですよ。
カッチョさんお友達になって下さい。」

とカナリアさんは優しく言ってくれた。

僕は言う。

「カナリアさんは素敵ですね。
綺麗な黄色の羽をしていてとても綺麗です。
僕の羽は茶色でその下はマダラ模様でお腹が真っ白なんです。
だから綺麗じゃないんです。」

カナリアさんが言った。

「カッチョさん、
あなたは素敵なお目めをしてますね。
お口も可愛いわ。
貴方の茶色い羽も白いお腹もとても素敵ですよ。」

初めて僕のことを褒めてもらった。
いつも

『意地悪カッチョあっち行け!』

て、みんなから嫌われていたから、僕は皆んなに意地悪ばかりしていた。

僕が言った。

「それにとても歌が上手ですね、
僕はキョキョキョッて小さな声でしか鳴け なくて、
綺麗な声で歌えないのです。』

「あらカッチョさん。貴方の声は可愛いわ。
初めてカッチョさんの素敵な声を聞けました。」

「カナリアさんは良いですね。
鷹に襲われることもないし、
餌の心配もしなくて済むし、
僕はいつも餌探しと敵に見つからないように隠れています。
寝床も野山の草むらか、木の枝なんです。」

と僕が言うと、カナリアさんも言う。

「私はあなたが羨ましいわ。
自由に空を飛べて好きなと所へ行けるのですもの。
私はこの鳥籠から一度も外へ出たことがないの。
その美味しそうな木の実も一度も食べた事がないの。
だからカッチョさんが羨ましいわ。
カッチョさん、お外のお話を聞かせて下さいなっ。」

僕はカナリアさんへお外のお話を聞かせてあげた。

僕は毎日お外のお話を聞かせてあげた。


僕はカナリアさんに恋をした。

素敵なカナリアさんに恋をした。


僕はカッチョ
キョキョキョッと鳴く。




カッチョの恋



おしまい



■ 目次

■ 20代から中高年のための小説投稿 & レビューコミュニティ トップページ
アクセス: 298