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作品名:Go to 収容所 キャンペーン、実施中☆(令和12年) 作者:なおちー

第9回   「株主優待株を持ってても資産が増えないって本当か?」
タイトルのことをアキオが言うので、
彼女のミスズはニコニコしながらうなづいた。

「まずお金の交換価値とはなにかわかる?」

株主優待株は、テレビや雑誌でよく宣伝されていて。
女性投資家を中心に人気がある。
それを美鈴はお金と時間の無駄だと断言する。

「仮に吉野家の優待券が3000円分あるとします。
 ホンダの配当金が3000円あるとします。
 さあ、どちらの方が価値があるでしょう?」

「ええっと……どっちも三千円分使えるから、あっわかった!!
 配当金の方が利便性が高いのか。なんにでも使えるから」

「そうそう。その通りよアキちゃん」

「お金の方が交換価値が高い。だけど優待券の場合は
 所定の店でしか使えない。割引券だから」

「配当金は現金。紙幣とは日本銀行券を指し、その価値は日本銀行が保証する。
 配当金ほど便利な物はないのよ。しかも配当金を再投資にも使える」

「配当金を使って新しい株を買うと、さらに多くの配当金がもらえる。
 つまり福利の効果で資産が増えるってことだよね?」

「シーゲル博士の言葉を借りるなら株式の価値の
 源泉とは配当金であり、売却益ではない。
 まあこれは超長期投資の視点では、ってことになるけどね」

「でも優待株は個人がずっと持ってるから、
 あまり株価が変動しないって言われてないか?」

「それは嘘。直近の例を見てごらんなさい。コロナショック、トランプの貿易戦争、
 東日本大震災、リーマンショックでも優待株はしっかりと下落しているじゃないの」

「あっ、本当だ。吉野家HDを例にしてみると下がってんじゃん。
 これじゃ安全資産って呼べないわな」

「ダリオの言葉を借りるわ。株は株なの。いわゆるディフェンシブセクターと呼ばれる
 ヘルスケアや公益銘柄に投資したって株式はリスク資産なことに変わりはない。
 債券に比べて株式のリスクは三倍もあるのよ。実際にこんなものを
 持ち続けたとしても、ちっとも暴落時に資産を守ってくれない」

「言いたいことは分かるよ。もし暴落時に生活にお金が
 必要だった場合は、損切りして現金に戻さないといけないんだろ?」

「そうそう。投資は余裕資金で。向こう10年先まで使わないお金でやるのベスト。
 高齢者の方なんてお孫さんの大学の入学資金のためにやってたりするわ。
 いくら若い人だからって、お給料を全額株につぎ込むなんて
 どれだけ自分の大切なお金をリスク(人質)として差し出していることか」

「耳が痛い話だ。筆者の知り合いにも毎月の給料を全額つぎ込んで
 株式投資してる奴がいて、俺はディフェンシブセクターの
 電力や医療銘柄も混ぜてるから完璧だとか思ってる人がいたんだってな。
 総資産額は800万円で現金は常にゼロだ」

「銀行預金をしておくと低金利だし、インフレ率を考慮したら
 お金の価値が減って大変だからと銀行預金を極端に嫌って、
 給料が振り込まれたら即証券口座に入金。余剰資金は一切残さないタイプの人ね」

「なるほど。全部株を買ってるから悪いって言いたいんだろ?
 つまり俺のことなわけだが」

「分かってるじゃない。ズバリ言うけど、アキちゃんは馬鹿よ」

「うっ……(;^ω^) はっきり言われるときついな」

「例えば債券、ゴールド、商品、リート、その他のETF(インバースなど)
 全部違う値動きをする商品を組み合わせるとリスクが分散できる」

「うん。リスクの分散を勘違いしてる人が多いってことだよね?
 また遠回しに俺のことを言ってるんだろうけどさ……。
 株だけを仮に100銘柄持っていたとしても、例えば日経が
 大暴落したら全銘柄が一斉に売られるわけだから意味がない」

「だけど債券やゴールドはアルファ指数と言って、ベータ(株価指数の平均値)
 に対して、違う値動き(平均の上か、あるいは下)をするから資産が守れる。
 逆に大きく損する時もあるけど、だいたいは株が下がると上がってくれる」

「レイ・ダリオが言っていることは、株だけをたくさん持つことの無意味さか。
 株とは違う値動きをするためには、株以外のアセット(資産)クラスに分類する」

「重要なのは値動きの異なるアセットを組み入れること。
 それと不安なら現金をしっかりと持つこと」

「現金の比率ってどれくらいが理想なの?」

「素人投資家なら5割」

「5割も!? それはちょっと多すぎない?
 投資資金が少ないと資産が増えないじゃないの?」

「素人なら下手にリスク資産なんて持つべきじゃないのよ。
 そこで今から20年前のコロナショックを振り返ってみましょう」

例1 バカ
 資産200万。全額を優待銘柄に投資。

例2 バカ2
 資産200万。信用取引をして借金し、600万円分を投資。

例3 賢い人
 資産200万。米国株式を50万。
        10年米国債を50万。残りは日本円の現金100万円。

ここでコロナショックが起きたとする。

例1は
資産額が最大で30%程度マイナスになり、完全に塩漬け。
実質金利がマイナス圏で推移し、中央銀行が資産の買い入れ(規制緩和)を行っている
状況では、国境封鎖の影響に伴う不景気の受けにくい情報技術(GAFA)を
始めとしたハイテクセクターが浮上する一方、優待銘柄である小売りや
外食産業などには当分の間、買いは入らなかった。

企業の業績悪化によって優待廃止、優待改悪、配当金の減額が発生する。
仮に優待が廃止となったら保有するメリットはない。

世界中でウイルスが蔓延し、当時はワクチンもなく、全世界に
絶望と混乱が巻き起こり、貿易が極端に制限され、サービス業が破壊され、
もはや中国の最近兵器による第三次世界大戦に近い状態となっていた。

この場合、株主は大きな精神的ストレスを抱え、
将来を悲観して株を売ってしまう可能性がある。

もっとも2022年以降まで売らずに持ち続ければ株価が
回復する見込みの方が高いのだが、ほとんどの投資家はそこまで待てない。

さらに低迷した株に対してナンピン買いをしかけて株の平均取得単価を
下げておく判断も、おそらくできないだろう。
なぜなら優待銘柄が好きで購入する層は、
「雑誌で見たから」「キリタニさんをテレビで見たから」
などと軽い気持ちで購入しており、深くは考えてない。

またキリタニさんは資産総額が3億を超えるほどの富裕層であり、
そもそも投資などする必要がない人なのだ。しかも彼は
そもそも将棋のプロであり、マクロ経済の分析もできないどころか、
個別企業の決算書類すら読めないのは有名な話だ。

すなわち「優待生活」「優待銘柄でお気楽に」とは、
かなりお金に余裕のある人の娯楽であり道楽であり、
資産を増やす目的の「投資」や「運用」とはかけ離れている。

そもそも最強の優待券とは、実質的には「現金」であり、
割引券など使わずに、儲けた金額を使って買い物をすればよい。

株式の運用とは資産運用の一部であり、家計における財務活動の一環である。
(筆者は家計の財務を「高度なおままごと」と定義している)
ファイナンシャル・プランナーの立場で考えてみると、
株価下落のリスクを背負ってまで長期で優待株を
保有するメリットは「ゼロ」と言い換えても問題はない。


例2は
資産額の大幅マイナスは上と同じだが、信用取引なので
資産評価額の減少分に応じて追証(おいしょう)が発生する。
平たく言って証券会社に払う借金のようなものである。

追加証拠金を払おうにも、持ち株の全てが暴落しており、
差し入れ可能な代替資産がない。追証が払えないと、
今のポジション(株の買い玉)は強制決済される。
そして損した分(元本が割れた分)の現金を払うことになる。

証券会社に借金を返済するのだ。
もちろん自己資金はないので、他の金融機関から借り入れる(高利貸し)か、
親、兄弟、親戚、友人に泣きついてお金を借りるしかない。

仮に証券会社への支払いを無視した場合、
遅延損害金が発生するかどうかは証券会社によって対応が異なるが、
場合により『年10%』を超える遅延損害金が発生することもある。
それでも払わない場合は「裁判所」から督促状が来る。

繰り返すが、コロナ発生当時は第三次世界大戦並みの衝撃を世界に与えていた。
こうなってしまうと株主は破産だけでは収まらず、最悪自殺も考えられる。
2020年度のコロナショックで多くの人が市場から退場したが、
主な原因はこれだった。株取引だけでなくFX(外国為替証拠金取引)も同様である。
『委託保証金』を使う取引とは完全なる投機なのである。


例3は
株が30%下落しても投資額が少ないために、
資産総額に対しての変動幅(ボラティリティ)は低い。
つまりダメージが少ない。

一方で10年国債は、暴落からひと月も立たずに上昇を初めていき、
買い値より2割以上の高値で売却できる(株に対してαを取った)

国債を全て売却した後、現金を合わせてだいたい、160万円ほどが手元にある計算だ。
しかも日本円で持っていた100万は、円高時に米ドルへ
両替できることから、長い目で見て為替差益(円安になると儲かる)も狙える。

(金融ショックの時は円安から円高へ振れやすい傾向にある。
 外国為替市場ではリスクオフのために安全資産の円が買われやすいからだ)

さらに、この人の場合は、暴落してバーゲンセールとなった
株式、リート、金、原油などを160万円全額を使って買い集め、
一年ほどよく寝てから売却すると、さらに資産が増える。

この場合は3割を軽く超える大幅な値上がり益が狙えるだろう。
しかも一年間寝ていた間に権利が確定し、配当金や分配金も入ることから、
キャッシュインフローで考えると、かなりのお金が手に入る計算だ。


「なんてこったい……。確かに現金を持ってる投資家の方が
 はるかに高いリターンが得られるってことか。
 しかも退場もしないし自殺する必要もないってことね」

「全額投資はね、本来ならば暴落時にのみ使える魔法のカードなのよ。
 例えば日本株式市場は真のエキスパートのみが生き残れる、
 先進国の中でも最上級難易度の市場となっているわけだけど、
 東証で絶対に儲けようとするなら、暴落するまで何もしないのも手なのよね」

「何もしない?」

「そう。何もしない」

「さわかみファンドみたいな考え方だね」

※さわかみファンド。
 日本最古のノーロードファンドとして超有名。
 実質的に日本株のみを運用するアクティブファンド。
 徹底したファンダメンタル分析のもとに銘柄を選定し、集中投資をする。
 暴落時に逆張り投資をして長期保有することで利益を狙う。
 
 当ファンドはR&I(格付け投資センター)ファンド大賞の
 バリュー部門で二年連続(2020、2021)で最優秀賞を受賞している。
 なお、当ファンドの組み入れ比率最上位銘柄は「日本電産」である。
 余談になるが筆者も日本電産は長期で保有している。


「個人投資家には、プロと違って最大の強みがあるのよ。
 それは何もしなくても許されること」

「えっとそれはつまり、株を買わずに現金で持ったまま暴落を待つってこと?」

「そう。しかも大暴落を待つの。10年に一度の大暴落を」

「な、なるほど。株がバーゲンセールになってる
 状態で買えたら、楽に儲かるよね」

「しかも個別銘柄だと回復に差が出ちゃうからETFがいいわ」

「ああ、ETFね」

※ETF。上場投資信託のことで、株のように証券市場で任意に売買できる。
 これを通じて日経平均株価やダウ平均株価などの「指数」全体に投資できる。
 リートやゴールドなどもETFとして販売されている。

「日本の株式市場全体をマークしたいのなら、トピックスのETFが
 最もバランスがいいわね。著名な海外投資家の人もコロナ化の
 4月からトピックスのETFを毎月買い集めていたそうよ。
 一年以上続けたらすごい含み益になっていたことでしょうね」

「指数を買うのは長期的には最も安全だってシーゲル博士も薦めていたよね」

「そもそも個別を買えるほどの知恵
 (業績や財務分析、マクロ経済の分析)
 がない人が買うべきものじゃないのよ」

「手厳しいなぁ。全部俺のことを言われてるみたいだよ。
 なんだか優待の話からずいぶんとそれちゃったね」

「まとめると、優待銘柄は大金持ちが遊びで長期保有するものだと考えて。
 これからお金を増やしたい若者が保有するべきじゃないわ」

「わかったよ。どうもありがとう」

※あくまで執筆時点(2022年1月)の話になりますが、
 オリックスやヤマダ電機は優待銘柄として有名ですが
 配当利回りが高く、今後も成長も見込めることから、
 資産株としての価値が十分にあります。


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