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作品名:Go to 収容所 キャンペーン、実施中☆(令和12年) 作者:なおちー

第15回   「アキちゃん。ご飯できたわよ」
「おまたせ〜。お腹すいたでしょう? 
 今日はアキちゃんの好きな、オムそばを作ったのよ」

「わあ。美味しそう」

「たんとお食べ」

「はーい」

「食べさせてあげるからね。はい、お口アーんして」

「あーん」

( ゚Д゚)   もぐもぐ

(*´▽`*) おいしい?

(^ω^)   うん。

(*´▽`*) もっとお食べ。

(´Д`)  わーい

まるで赤子に対するやり取りなわけだが、これが二人の食事風景なのである。
ミスズは彼氏のお世話をすることが生きがいなのだ。
言い換えれば彼をミスズなしには生きられない状態にすることが目的だ。

そのため日常のあらゆる生活に干渉した。
普段着はミスズが選んで買ってきた服を着させる。
服は着替えさせてあげるし、お風呂にも一緒に入る。

食事の際はアキはお箸を持つことが禁じられた。
上に書いた会話の流れで食べさせることが暗黙の了解となっていた。

アキオの携帯は解約させられてしまった。
理由はミスズ以外の人間との連絡を絶つためらしい。
それでもどうしても外部の人間と連絡したい場合は、ミスズの携帯を
貸してあげる。彼が電話した内容は自動で音声録音するようにしている。

パソコンの検索履歴から彼が巨乳好きなことも知っている。
厚めのパットが入ったブラをたくさん買ってきた。
髪型も彼が好きそうなサイドポニーに変えてみた。
艦これのキャラに対抗するために黒髪を茶色に染めた。

アキオは修学旅行生でもないのに基本的に外出禁止だ。
望むものはミスズが何でも買ってきてあげる。
株式投資も好きだけさせてあげる。

ミスズは何としても彼が脱走をしないよう、自分を捨てることがないよう、
ありとあらゆる手段を用いて彼をダメ人間にしようとしていた。

炊事洗濯掃除も全てミスズがやった。
彼を24時間監視するために、ガストのバイトも辞めてしまう徹底ぶりだった。
もっとも彼女の場合はバイトせずともお金に困らないのだが……。


1月の最後の週のことだった。突然東証が暴落した。
次の日も。その次の日も下がった。

「うわぁぁ!! 今日も株価が暴落してる!!」

「あらあら。そうなの?」

「やばいって!! 日経がここ一週間で3000円も下がった!!
 岸田のせいで100兆円が東証から吹き飛んだらしいぞ!!」

「あらまあ。100兆円も。それは大変ねぇ」

「あわあわわわ!! あわわわ!! 泡〜〜〜!!
 俺の資産が、資産がぁ!! 溶けていくぅ!!」

「資産額に対して、含み損がマイナス17%ね。
 金額にして119万円。ふーん。なるほど。
 まあ暴落した時はこんなものじゃないの?」

「うわああああぁぁぁあぁあああ!! 胃が痛いい!!
 吐き気がするぅ!! うんこが漏れそうだ!!
 もう日本は終わりだ!! 株なんてやめて普通に働くべきなんだ!!」

「別に日本は終わってないと思うけど……」

それから数時間後。

「はぅあああ!! ああ!! ああぁー−−−!?
 ついに日経平均が26130円まで下がっちまった!!
 もっと下がる前に売らないと!!」

「そうかしら? 市場が暴落してるのって米金利の急騰によって
 PERの高いグロース株中心に売られてるわけでしょ。
 それでグロース中心で構成されている日経が下がるのよね。
 バリューも巻き添え食らってトピックスも下がる。
 これって会社の問題じゃなくて市場の需給の問題よね。
 むしろ、時期を見て買い増しを」

「はぁ? 買うだって!? この状況で!?
 村田製作所が来週も下がり続けて半値になるかもしれないのに!?」

「半値になったらナンピンすればいいじゃない。
 買い増しをする余裕がないなら、お小遣いあげましょうか?」

「いまお金なんてもらってどうしろってんだ!!
 ミスズはなに考えてんだ!! いいから損切りするぞ!!」

「損切りはダメ!! 現物で買ってる人は信用と違って
 売る必要なんてないんだから!!」

「ちょ、なんでPCの電源を切るんだ!! おい!! うわあああ!!」

ミスズは、しばらく株の取引は禁止だと宣言した。
大好きな彼からPCを取り上げ、押し入れの中に仕舞ってしまう。
ミスズの許可がない限り出してはいけない決まりとなった。

それから一週間。アキオは、株価を見ることができないから、
今頃自分の資産は半値になってるのだと思った。
そしてミスズからもらったお小遣い(およそ700万)を
無駄にしてしまったとばかり思い、深く頭を下げた。

ミスズは、彼の頭を膝の上に乗せて、優しく撫でてあげた。

「決済(売り注文)してないんだから、損失は発生してないのよ。
 確かに見た目の株価は上下しちゃうけど、
 株は決済しない限り損にはならないのよ」

「で、でも。お、おれは高値と知らずにたくさんの株を
 買っちまったから、こんなことになるんだ。
 もう一生株価が上がらないんじゃないのか……。
 今年は外資の金が日本から逃げていくんだぁ」

「よしよし。泣かないで。大丈夫。大丈夫だから」

「ごめんよぉ。ごめんよミスズ。
 君からもらったお金を無駄にしちまった。
 今夜にでも首をつって死ぬから、それで許してくれ」

「うふふ。変な冗談はやめてよね。
 アキちゃんが死ぬ必要なんてないのよ。
 株なんてしばらく放置しておけば回復するんだから」




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