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作品名:ママエフ・クルガン(102高地)〜川口ミキオの物語〜 作者:なおちー

第14回   ハルナが学園に入りたいと言った。
「私も兄貴の学校に入りたいんだけど」

おい……? な、何を言って……。

「最近投資がブームじゃん? 私も株とかFXに興味あるんだよね。
 お父さんが、兄貴の学校なら投資の専門教育が行われているから
 見学に行ってくれば?って言ってくれたんだけど」

親父よ……。俺の学園を投資セミナーか何かと勘違いしてるようだな。
最近の株ブームは笑止千万だ。
ラインのアプリで100円から投資を始めるとかな。
そんな少額で運用できるほど資産運用の世界は甘くねえよ。

俺は諜報部で実施された授業でこう叩きこまれた。
資産運用は、投じた資産の額に応じて運用益が大きく変わる。
少ないのは論外。だが多すぎても資産の変動幅が広がって
精神的な苦痛が増加し、結果的には判断を誤り損失を出す例が多数ある。

親父の話から聞いた話だが、保険会社は、ボラ(変動幅)が少ない資産で
安定した利回りを求めるらしい。保険の資産運用部は、顧客から預かった
膨大な保険料を原資にしている。急な保険金の支払い、解約に備えなければ
ならないため、ポートフォリオは国債を中心とした債券が中心となる。

ちなみに債券市場において、米国債の保有数のトップが日本と中国だ。
日本は年金基金と保険会社が米国債の最大保有者。
総額は200兆円以上保有している。


「兄貴のカバンに入ってたビラを勝手に読ませてもらったよ。
 別に返さなくていいよね? 地下に屋内プール、
 四階にプラネタリウムあり。庭はイングリッシュガーデン。
 噴水広場にはお弁当を食べるベンチがたくさんある。
文化芸術を推奨。学校行事には予算をつぎ込み、
教師も生徒と一体となり常に全力で取り組む。楽しそうな学校じゃん」

表向きは……な。
そのビラは新入生歓迎用のものだ。俺は身内に妹がいるからってんで、
広報部から渡されてカバンに入れっぱなしにしていた。

ビラの内容ではボリシェビキや強制収容所の存在はふせてある。
広報部の奴らが巧妙に隠してるからな。
そこに書いてあるイラストは、堀の野郎のお絵描きだよ。

「それよりおまえ、俺のカバン勝手に開けんじゃねーよ」

「別にやましいものが入ってるわけじゃないんだから、いーじゃん」

「やましいものってなんだよ」

「兄貴の好きなアニメのエロ本とか? カンコレの大和が好きなんだよね」 

「……ませたこと言ってんじゃねえよ。ガキが」

ざわざわ……。
なんで……こいつは俺の秘蔵の同人誌を知ってるんだ……? 
まあいい。

機密関係の書類は絶対に持ち帰らないことが規則で決まってる。
実は家族に見つかったらやばいのはこっちなんだよ。

「来週から夏休みだから
 オープン・スクール(キャンパス)に連れて行ってよ」

何を言うのか……!!

ボリシェビキとしては喜ぶべきこと。兄貴の立場としては反対だ。

几帳面な俺と、ずぼらな妹とは幼い頃から気が合わず、喧嘩ばかりしていたが、
(何事にも面倒くさがりな妹を俺が怒鳴りつけていただけだ)
大切な肉親であることに変わりない。
ハルナみたいな奴が学園の生徒になったら、
いつ生徒会に粛清されてもおかしくない。いや、きっと粛清される。

あの学園は、入学した瞬間に世界が変わる。
自分が普通の日本の学校じゃなくて「ソビエト」に入ったのだと思い知らされ、
学内で発生したことを口外することを固く禁じられる。
不用意に学園の秘密をSNSで漏らして諜報部につかまり、
収容所行きになる奴は後を絶たない。2号室の女子の囚人の過半数がこれらしい。

「やっぱりお前には無理だ。学力が足りねえよ」

「は? 前と言ってること違くね。推薦なら学力は関係ないじゃなかったん?」

「俺だって勉強に着ていくのに必死なんだぞ。おまえテスト勉強ちゃんとできるのか?」

「頭の良い友達を作って教えてもらえばおk。最悪兄貴が教えてくれるんだよね?」

簡単に言いやがる……。これだから小娘は……。

「あまり金のことは言いたくないけどな、
 親父の再就職だってうまくいくか分からねえんだ。
 学園は日本で上から4番目に学費がかかる高校だって知ってるんだよな?」

「その話は前もしたじゃん。お父さんは46歳だから転職活動は難しいし、
 再就職先ではお給料が半分になる可能性があるんでしょ?
 だからこそだよ。私が一円でも多くのお金を稼ぐ勉強をしなくちゃ」

こいつの定義する金儲けってのは、投資だ。
ハルナは汗水を流さずに金を得る方法を知りたがっている。
投資の究極の形は不労所得。
ソ連ではな、そういう奴から全財産と生きる権利を奪うんだよ。

俺は椅子をきしませ、頭痛を押さえるためにおでこのあたりを押さえた。
エアコンの利いた快適な自室で、金融の勉強をしてたらこれだ。
ハルナが俺の部屋に入ってくるなんて、漫画を借りに来る時以外は
ありえなかったんだがな……。

「チューボーのくせに、資本主義的な考えをするなよな……」

「いいじゃん、資本主義。なんかカッコいいし。
 昨日テレビで株で46億稼いだ男性がでてたよ」

うわぁ……。

「最初は100万しかなかったのに、
 それを元手に数年で1億円まで増やしたんだって!!
 マジかっけー!! 憧れる!!
 他にもそういう話、たくさん聞くじゃない」

子供のざれ言だな……。聞くに堪えねえんだよ。

「ちょっと。途中から私の話聞いてないじゃん」

だから、聞くに値しねえんだよ。

「兄貴は投資に詳しいくせに、自分では投資をしない。
 それって兄貴がボリシェビキだから?」

え……?

「なっ……おまっ、今……なんつった? 
 ボリシェビキって言ったのか!!」

「兄貴は高ニ病だからボリシェビキなんだよね」

「高ニ病ってなんだよ!! 中二病なら聞いたことあるが!!
 ボリシェビキは高ニ病なんて粗末なもんじゃねえよ!!」

「やーい。引っかかった。兄貴はやっぱりボリシェビキなんだ」

「ばっ……おまえなっ。めったなことを口にするんじゃねえよ!!
 つかこのことは誰にも秘密……っていうか、どこでそのことを知った!?」

「学校の先輩だよ。女テニ(女子テニス部)の井上さんっているじゃん。
 今でも、たまにうちに遊びに来る人」

「ああ、アイちゃんか。井上さんって呼ぶから誰のことかと思った。
 アイちゃんが、なんでボリシェビキのことを知ってるんだ?」

同じ住宅街に住んでるから、俺とは幼馴染みたいな子だ。
浅黒い肌のスポーツ娘って感じの子。
小学校の低学年くらいの時までは俺も一緒に遊んでやった覚えがある。

「アイちゃんのお姉さんが、ボリシェビキの偉い人らしいから」

「なに!? アイちゃんって姉がいたのか」

「知らなかったの? お姉さんは兄貴と同じ学校に通ってるんだよ」

「名前は!?」

こんなに世間が狭いとは知らなかった。
人の運命を作り出している神様ってのは、たぶんどこかにいるんだろう。

それから数日後、学園の食堂にて。

「確かに面白い偶然だね。
 うちの妹が川口君の妹さんと同じ中学に通っていて、
 ふたりが先輩後輩だったとはね」

俺は井上マリカさんと食事をとるのが自然の流れとなっていた。
今日はマリンがいないので「休みなんですか?」と聞いたら、
「家の都合で休んでるそうよ」との返事が。

「井上さんも、俺の妹のことは知らなかったんですか?」

「うちの妹、家では全然しゃべらない子なんだよ。
 お母さんと仲が悪くて、顔を合わせたくないみたいで
 食事の時以外はずっと部屋でスマホいじってる。勉強も全然しないけど
 遊ぶことには一生懸命だからお父さんにお小遣いを前借りしたりして、
 それがお母さんに見つかって口論になったりして。
 私は静かに勉強や読書がしたいから迷惑なんだよね」

井上マリカ先輩の妹は、井上アイ。三歳下の妹さんだ。
俺の妹も三つ下だが、俺は高2で井上さんは高3。
面白いことに全員の学年は一個ずつずれている。

マリカさんは、自宅の勉強に集中するためだと言い、お父様に
おねだりして3万もする高級イヤホンを買ってもらったらしい。
収入に余裕のあるご家庭はうらやましいぜ。

うちなんて失業してるんだからな。

「川口君のお父さんも、学生の子供がいる身で退職を決断されたのは、
 大変な苦労があってのことだと思うよ。お金の運用のプロの人だから、
 子供が満18歳を迎えるまでの学費が払える見通しがあるからこそ、
 今の段階で失業したとも考えられるね」

「株とか保険を売っちまえば、それなりにお金は都合できるらしいですけどね。
 親父の再就職先も心配ですが、俺の大学の学費は、
 もう絶望的と考えた方がいいですかね」

「大学なら、奨学金制度があるけど……」

「あれって典型的な悪徳商売っすよね……」

「うん。残念ながらそうなのよ」

奨学金制度は、元金(借入総額)を利息付きで返済するのだ。
大学を出たばかりの若者の平均年収は想像以上に低く、
仮に都内で独り暮らしをしたと仮定すると、
実質手取り金額の過半を住居費で失われる試算になる。

親元を離れ独り暮らしをすると、食費、光熱費、租税など
生活コストが極端に上がるだけでなく、
都会の物価が高さが追い打ちをかける。
さらに若者は3年以内に離職する率が高い。

一時的に無収入になり、しかも貯蓄がない場合は、
債務の返済は繰り延べとなり、
通常の金融機関なら罰として利息を引き上げる。

これでは、返済の見通しは全く立たないと言っていい。

現在までに奨学金基金は、債務不履行者が圧倒的に増加して破綻寸前にある。
我が国においては『実質的に一生返せない借金制度』となっている。

債務の返済において最も重要なのは「元金」である。
4年私立大を例にすると、学費全額を借り入れたとして400万程度が相場。
元金を利息付きで長年かけて返済するとなると、
『20キロの重石を背負いながら箱根駅伝の完走に挑戦する』のに等しい。

以上は井上先輩の、ためになるお話だ。先輩の聡明さには本当に頭が下がる。

うちの学園では悪徳商売について学ぶこともできるから貴重だぜ。
他の学校でも金利の勉強とかさせるべきだと俺は思う。

ちなみに奨学金に代わる制度で
自民党が考えた給付型の奨学制度も、あるにはあるらしいがな……。

「井上さんの家がうらやましいっすよ。
 お父様が法律家だから高収入なんでしょ?」

「それがねぇ。実際はそうでもないのよ」

先輩のお父様は、法律事務所を運営している所長殿だ。
長年、人の事務所で働いていたが、40を過ぎたのを契機に独立。
それで商売が必ずしもうまくいったわけでもなかった。

自ら事務所(不動産)を保有したことから、経営は大赤字から始まる。
何より辛いのが「自分で看板を立てないと」仕事がもらえないことだ。
自分がそのものが店の看板なのだ。
「井上法律事務所」の名前と信用こそがすべてってわけだな。

お父様は、M&Aやファイナンスなど最先端の企業法務を取り扱う法律事務所から、
離婚や相続などの個人の法律問題を解決する弁護士へ転向した。
都会型から田舎型への転向。地域に密着した事務所を目指していた。

これは異業種へ転向したようなもので、
些細な手続が分からなかったり、顧客の人間関係で苦労したりして、
なかなか前に進めない泥沼を味わい、ストレスから金遣いが荒くなった。

(あんまり大きな声では言えないが、都会の人より田舎の人の方が
 教養のないバカが多く、対応するのに苦労するらしい)

顧客の債務整理の相談に乗る一方、
遊びに目覚めて自分の債務を増やしちまうような、
困った時代もあったそうだ。井上先輩が中三の時らしい。

「川口君の家は借金がないだけましだよ。
 うちなんて事業をやってるのと同じだから常に赤字を抱えてるんだよ。
 借金を返すために必死で働かないといけない。お父さんが
 50代になるまで借金を返し続けないと黒字にならないんだって」

「そうなんですか……。やっぱどこの家庭も苦労してるものなんすね」

「人の家庭の事情なんて、ふたを開けてみないとわからないものだよ。
 資本主義の世の中は信用と借金で成り立ってるようなものだから。
 たとえば、外見は立派な庭付きの一軒家だけど、
 実は家計が大赤字で住宅ローンを滞納していたりとかね」

井上さんは法律の専門家の父上をお持ちなので、
そっち方面はずば抜けて詳しい。

俺は今日、すげえタメになる話を聞けた。

「俺の車、って男の人は言うでしょ? 
 あれって実は正しくない表現なのね」

車を購入する人の8割はローンを使用する。

ところが法律的には、彼の車ではないとされる。
理由はこれだ。

占有権 → 彼にある。
所有権 → ローン会社(金融機関)にある。

「債務の返済が済んでない状態では、車の所有権は搭乗者に帰属しないのね。
 正確には、車の代金を払い終えてないんだから、一時的に使わせてもらっている。
 これを占有権と呼ぶ。将来、必ずローンを完済しますって約束の元、
車の占有権を得ている。こういうシステムなの。
住宅の場合も全く同じ。お金の規模が違うだけで」

例:公園のベンチに座る。
  →占有権を得ている。でも「俺のベンチだ!!」とは誰も言わない。

金を一括で払える奴は、直ちに車や住宅の所有権を得られる。
しかも金利を支払う必要もないので、
トータルで考えると、かなり金が浮いた計算になる。

まさにストレスフリー。
金融の世界ではストレスをためないことも重要だとされている。

「ずばり、資本主義の本質は金を持ってる奴が圧倒的に有利。
 資本主義の法律は、金持ちほど偉くなるように作られている」

「そういうこと。お金持ちの人ほど、生活に余裕があって
 よく勉強するから、投資が上手でさらにお金を増やせる。
 国のレベルだと、税収の多い国ほど、大胆な税制策を行って
 ますます国が豊かになる。
 これって逆に言うと、貧乏人は死ねって言ってるんだよ」

「確かに……。貧乏な国ほど、普段の生活に必死だから
 勉強する時間が取れなくて、ますます貧しくなってる感じはありますね」

「だからうちのボリシェビキの人たちは、このふざけた制度を
 まず法律の面から改革しようとしてるんだけど……その前にまずは憲法からかな。
 憲法の話をしたら止まらなくなるからここでは控えるけど、
 革命を起こして貧乏人中心の世の中にしようだなんて、夢物語なんだけどね」

「井上さんほど聡明な方でも、そう思うんですか?」

「聡明? ありがと。昔ね、イギリスのチャーチルがこういう格言を残していてね」

・経済学を学び、若くして社会主義に目覚めない者は、情熱が足りない!!
・いい歳してまだ社会主義を信じてる奴は、知性が足りない!!

「過去の判例……じゃなかった。過去の失敗事例をいくつも照らし合わせれば分かること。
 東欧、南欧、東南アジア、中南米で社会主義国家が生まれたけど、
 いずれの国も資本主義国より豊かになってないんだよ。経済学の観点から見ると、
 これは完全に失敗してる。社会主義は資本主義より劣ると結論付けるに値すると思う」

「あの、失礼ですけど、それでも井上さんはボリシェビキとして働いてるんですよね?」

「ナツキがしつこいから……仕方なくね。
 本当は今すぐ自分のクラスに復帰してクラス委員長でもやっていたいんだけど」

井上先輩は中央委員部に所属している。アドバイザー的な立場にいるらしい。
会議にはすべて出席して、代表らから相談されたことに着いて意見を言うのが仕事。

他にも助言が必要な部には幅広く対応する。
この時、初めて教えてもらったんだが、
広報部のビラで日本の政治批判の文章を書いてるのは、なんと彼女だったのだ。

「私の持論なんだけど、もし日本の政治がナツキたちの言うように本当に
 腐りきってるとしたら、勝手に崩壊するのを待てばいい。
 日本国民だって、そこまでバカじゃないだろうから、自民党が今と同じ
 悪事をあと30年も続けたら、さすがに国民も我慢の限界になるだろうし、
 他の政党を選ぶ可能性だって十分に考えられる。
 もちろん国政選挙ってまともな方法でね。暴力革命はダメだよ」

『腐った納屋』の話を聞かせてくれた。その昔、アドルフ・ヒトラーが
ソ連の脆弱性を揶揄して使った言葉だが、井上さんも好んで使う言葉らしい。

自民党支持基盤である、経済界の連中や高齢層の人間も、あと30年もすれば全員死ぬ。
その頃には自民党が第一党でいられる支持基盤を失うことになるわけだから、
別の党にも必ずチャンスが巡る。新興政党もたくさんできることだろう。

「どんな政権も長く続けば、世襲人事を採用するようになる。
 盛者必衰の理。どんな強い国も必ず滅びている。
 昔ヒトラーが言っていた千年帝国なんてものは、実は存在しない。
 大国は分裂したり合併を繰り返して衰退し、やがては他国に攻め滅ぼされている」

「今の自民党も国家の衰退期の象徴だと、
 あなたの文章(ビラ)には書かれていましたね」

「一番わかりやすい例が、為替かな」

「えっ、為替ってあれですか? 外国為替?」

「そうそう」

ここからは金融の話になった。なぜ為替が日本の政治に関係があるのか?

「スマホのリアルタイムチャートとかで調べて見なよ。
 対円で、主要通貨のここ数か月間の値動きはどうなってる?」

「今年に入ってからすげえ円安になってますね。
 円安に歯止めがかからないってことは……
 円が主要通貨に対して売られまくってるってことですか!!」

「さっすがだね。君はよく勉強してるお利口さんだ」

井上さんが楽しそうに微笑む。弟に接してるみたいな態度に少し照れ臭くなる。

「これは現実世界の話になっちゃうけど、日本政府は2021年の春前に
 発生した変異株に対するコロナ対応の遅れから、
 直近では1-3月期のGDP成長率がマイナス成長になってしまった。
 中国、アメリカ、ドイツに大きく差をつけられてしまった。
 6月以降も事態宣言が延長となれば、
 短期的には日本は景気後退期に差し掛かっているといえる」

                 ※この文章は2021/5/25 に執筆しています。
                  キャラもなぜか現実の話をしています。                      

「2020年度予算案では、特別会計で10兆円の予備費を計上しながら、
 日本政府はコロナ対策について何もしなかった。だっておかしいでしょ?
 現在までにOECD加盟38か国の中で接種率が最低。生きるか死ぬかの
 内戦で苦しんでいるミャンマーと同等の接種率って」

「しかも余ったワクチンが、たくさんあったそうですね。
 消費期限が切れたのは廃棄するしかないとか。もう馬鹿すぎますよ。
 そうなる前に何で打たなかったんでしょうか?」

「さあ? 支持基盤の老人が副作用で死んだら支持率が下がると思ったんじゃない?
 今やワクチンの接種率は、国内総生産に最も影響を与える条件となった。
 接種率の高い国ほどリセッションから回復の傾向にある。でも日本は?
 今さら五輪を開催するために急いで接種会場を用意しても、
 電話回線は混乱。ネット予約は開始後30分で満員」

「接種率はイスラエルは6割、イギリスで5割、アメリカは3割でしたっけ?
 それに対して日本はたったの0.5%。話になりませんね」

「外国為替市場では、今年の2月ごろから、どんどん日本円が売られている。
 ポンド、カナダドル、スイスフラン、オーストラリアドルなど、
 どこの通貨に対しても日本の円は弱い。買われる理由がないからだよ」

「今は各国の中央銀行が盛大に規制緩和をして市場をドーピング。
 ビットコインも暴落しましたよね。
 株式市場も、いつこのバブルがはじけてもおかしくない。
 金先物価格が上昇してる状況で、
 日本円が安全通貨として買われないのはおかしいです」

「そうそう。日本は財政赤字がすごいけど、対外純資産において世界のトップ
 つまり為替市場、債券市場では日本円の価値は本来なら高いはず。
 それなのに売られてる。なぜなら……」

※ここからは三人称

外国為替市場は、こう言っているのだ。
 
「日本の政治はアホだ」
「円を買う価値などない」
「日本株も買う価値がない」
       ↑3月以降、東京市場には外資から買いが入らないどころか、
       日経平均を構成する主要な株は本決算後に「盛大に」暴落してる。
       東京市場の時価総額の7割が外人に支配されている現状では致命的である。

外貨とは、その国の政治情勢を考慮して買われるものである。
政治が不安定な国の通貨は売られるのが自然の流れだ。

たとえばトルコのような政情不安定な国は、政府が発行した
国債の信用が失われるたびに国債が大量に売られ、結果的に通貨も暴落する。

五輪開催に関しても、先進各国の新聞記事では

フランス紙「日本政府はバカだ」
ドイツ紙 「日本政府は頭が悪い」
アメリカ紙「日本政府は頭がおかしい。バッハはもっとおかしい」

と言っているのだ。
これらの記事はワイドショーやニュースでも散々ネタになってる。

我が国民の反応も

「スガ政権はバカだ」
「自民党は狂ってる」
「国民の生命と財産を守るどころか、奪ってるじゃねーか」

と言われ、5月時点でついに支持率を不支持率が上回った。
ふつうなら解散総選挙の流れである。

国民の世論の過半数が五輪を支持しないのに、強硬開催を目指すとは。
おまけに五輪のブラックボランティアの問題もある。
自民党とは民意を無視した独裁政権と考えて間違いないだろう。

そのため、5月の日経新聞の記事に、「竹槍」で武装する戦時中の
女性のイラストが公開され、全世界に波紋を呼ぶことになった。

これは、日本経済新聞社が、

「五輪に挑む無謀な政府。80年前から進化してない」

と皮肉ったものであり、正真正銘の実話である。
普段から自民寄りな記事が目立つ、
日本の金融の大御所でさえ、半自民党を表明したのである。

マネックス証券のチーフ・ステラデジストの『広木隆』さん。
専門家の中でも日本株において最も強気な見通しを示し、
2021年度初頭の日経平均三万越えを、
1年前の大暴落時から正確に予言していた「慧眼の持ち主」
と定評のあるこの人物でさえ、日本の政治をこう評価した。

「世界から見て、日本はもう後進国と見なされてると思いますよ。
 僕としても政府がここまでひどいと、もう先進国と見なすのは難しいです。
 今日本株が買われないのは、日本が後進国だからでいいと思います」

アノマリーによると日本株は、4月の強気相場で力強い外資からの
買いが入るはずが、日経225を構成する主要なグロース銘柄が
大暴落を続けた。執筆時点まで株価回復の見通しは全くなく、
活況な欧米各国の株式市場に対し、出遅れているのが現状である。

日本株に対し買いをつける外資とは

BNPパリバ
ABNアムロ
クレディ・スイス
ドイツ銀行
シティ・グループ
JPモルガン
ゴールドマン・サックス

などのかつての列強国(独仏英蘭瑞米)の大手金融機関である。
日経の上昇相場を支えるのは彼ら『巨人』であり、
日本の金融機関ではない。

なお、日系企業は、4、5月の本決算で過去最高益、
増配を記録した企業が目立ち、業績は好調である。
にもかかわらず、

株式市場の答えは、「日本株は全部売っちまえ」である。
その答えは政治への不安である。

彼らの多くが東京五輪強硬開催が、日本を震源地とした新たな
クラスターの発生になると懸念。またワクチン接種も一向に進まないので
「日本政府は世界で一番頭が悪い」と評価しているのである。

この作品では諜報広報委員部のスパイが、将来国家を転覆させようと
考えているようだが、本当のスパイとは自由民主党の閣僚たちであろう。
なぜなら、誰に頼まれたわけでもないのに、勝手に国家を衰退させてくれるのだから。


東京都都知事→ 「うわーん。IOCに罰金払いたくないよー」
日本政府  → 「うわーん。東京都の赤字補填したくないよー」
バッハ   → 「電通の放送権利料、億単位のお金、ほしいよー」

上の事情により中止を決定せずに、
五輪強硬開催を目指す彼らは、
国際テロリストと同等の存在だと私は考えている。


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