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作品名:学校で大人気の男子に告白されたのだけど…… 作者:なおちー

第2回   「何やってんだお前ら!!」と達也先輩が悪女らに吠え……
身を抱きしめ小さく震える美奈。
その様、さながら雨水に濡れた子犬のごとし。
長いまつ毛にかかった水滴が、目の前に滴り落ちる。

「ぷっ、泣いてるよ。バッカじゃねえの。ねえねえ。こいつどうする?」
「学校の裏の川に捨てちゃおうか」
「まじで? 川、けっこう深いし流れ早いから死ぬんじゃない?」

「違う違う。胴体にロープを巻いて溺れないようにしてさ、
 永遠と川を泳がせるんだよ。こう、流れに逆らって頑張って泳ぐ感じで」

「なにそれウけるー!!」

平安貴族として育てられし美奈。運動音痴なりて
体育の成績は小学の時より長らく最下位を維持する。
まして泳ぐなど言語道断で、手足の自由の利かぬ上、
多量の水を飲みこみ死に至るかもしれぬ。
果てして自らの身に死が迫ると思うと、
恐ろしくなり歯のかみ合わせが合わなくなる。

恨む。この女人に対してではない。無論悪女らは憎むべき
対象であるが、それ以上に恨みが募るのは、
布施達也である。彼はなにゆえ美奈に告白したのか。

彼は学園の偶像(アイドル)なりて、その名、実に校内の隅々まで
知れわたる。サッカー部の現役時代はフアンの女学童らが、
その練習風景を熱く見守ること多々ありけり。

またフアンの娘の黄色い声援に答えるため、明るく手を振ることを常とし、
まこと好少年として校内に名を馳せる。その彼まさしく、自らの人気を自覚し、
軽々しく一学年の女童(めのわらわ)に恋文など送ろうものなら、
自らのファンが激怒し、果てはいじめに発展すると想像できぬものか。

「おい。おまえら、そこで何やってんだよ!!」

そこに男、現れり。件の男子、達也なり。

「あぁ、かわいそうに。こんなに濡れちまって。
 今ハンカチ貸してやるからな」

達也のハンカチ程度では、全身に水をかぶる美奈の
前髪をなでる程度であった。

「おい!! ストーカー女ども!!」

「は、はい!!」

「てめえらのうち、誰でもいい。今すぐ保健室に行って大きめの
 タオルを持ってこい。あと替えのジャージもだ。早くしろおらぁ!!」

「ただいま持ってきますわ!!」

駆ける女の一人、その後ろ姿は欧州に広く生息するヘラジカのごとく。
残された二名は、オロオロと激しく心を乱し合掌して謝罪を始める。

「こ、これはね。違うのよ。私達はその子をいじめてなんかないわ!!」
「達也様ぁ。私達はちょっとお水で遊んでいただけなのです。本当ですわ」

その醜さたるや、万の言葉を尽くしても語り足りぬ。
いじめの最中とは打って変わって別人の語り口なり。

「どう見たって、てめらがいじめてたんだろ!!
 よりによって俺のお気に入りの新名さんを、こんな目に
 あわせやがって……どうなるかわかってんだろうな!!」

乱心した達也。髪の毛がライオンのごとく逆立つ。
ぱしん、ぱしんと、悪女の頬を順番にはたく。

「いったぁい……ひどいわ。女の子に暴力だなんて……」
「あぁ……達也様にぶってもらえた……」

女子座りして、ひっぱたかれた頬を押さえる姿に反省の色などなく、
達也に悟られぬよう、チラツと美奈を見るや、その恨みの恐ろしさに
美奈の奥歯が震える。悪の娘達は猫をかぶりながらも美奈への恨みを
まるで抑えておらぬ。

これではいずれ報復される可能性大として、美奈はどうしたものかと
考える。タオルとジャージを手に駆けてきた女から、達也は乱暴に
物を受け取ると、美奈を連れてその場を去る。

美奈は女子トイレで着替えてから、達也の待つ保健室へとやってくる。
ジャージに着替えたところで下着が冷たく替えが欲しいと願うが、
女の恥じらいから左様なことを口にするわけにいかず。

ドライヤアなる文明の利器が、都合よく保健室にありけり。
さあとて使うてみると、たいそう早くも美奈の髪につやが戻る。

「ありがと……ございます。先輩」

「いやいや。お礼を言われるほどのもんじゃないさ。
 あのストーカー女どもが、すっげえ迷惑かけた。
 本当にすまなかった」

真摯に首を垂れる。上級生が下級の生徒にかような態度をとること、
常とは言えず、彼の心持ちが好く伝わるというもの。
このやうな事態を好機と捉えた美奈は、かねてより
感じていた疑問を垂れる。

「あの人達は、布施先輩のストーカーなのですか?」
「ストーカーなんてもんじゃないぞ。あれは完全に病気だ!!」

達也、身振りを大きくして大いに語る。

いわく、悪の女囚と関りを持つに至るは、偶然にも
中学の二学年時に同じクラスになつたことを始めとする。
当初三人の娘は互いを敵と見なし、
言い争いを続けていたがやがて和解した。

そして三人の意志を一つにし、達也を離れた場所から見守ることを是正とし、
彼に好意を寄せる女生徒らを排除することを良しとするに至る。
彼女らは達也に声をかけることはせず、あくまで距離を取りたがる。
時も場所もわきまえず、彼を忍びのごとく追尾し
何時なん時でも彼の様子を把握せり。

盗難の被害多数ありけり。内容は達也の衣服なり。
Yシャツを筆頭に部室で脱衣したアンダーシャツなどなど。
犯行に及んだのが、ストオカアなる件の
女学生らであること周知の事実なり。

達也にとり身の毛もよだつほどの事態なりて、
いっそう神経を過敏にする。
学校では当然として休みの日でさえ自室の窓の外に
人の視線を感じてしまう。アマゾンで注文した品を届ける
宅配便の業者にさえ脅えて玄関を開けることためらわれる。

サッカー部を引退してからというもの、休日は自宅で過ごすこと多し。
妹と買い出しに行こうものなら、背後に迫るストオカアの気配に心を乱す。
もはや心の寄りどころが見つからず、ますます女人への不信が増す一方で、
かような生活をつづけた達也の心の疲労はいよいよ極限に達せり。

「俺がまだサッカー部だった頃、君が歩いてるところを見ていたんだ。
 君はよく夏休みに学校に来ていたよね?」

「夏休みですか。確かにわたくしは読書を好むため、
 夏休みのを利用して学園の図書館通いをしておりました」

「俺が校庭で練習している時、ちょうど君が校庭の横を通って、
 昇降口の方に歩いて行くんだ。ああ、可愛らしい子だなってずっと前から
 思ってた。ああいう子が彼女だったら人生楽しいかなって」

可愛らしい。
親族を除く殿方に言われたこと無き言葉。
美奈の心がにわかに温まる。

「俺、妹がいるんだよ。君と同じ学年にね。
 妹から君のこと聞いててさ。でっかいお屋敷に住んでるお嬢様だって
 聞いて、ますます興味がわいちゃったんだ。さすがにいきなり
 告白するのはやりすぎだったって思ってるけどね。あはは」

一年四組に布施なる名字の女生徒あり。美奈は彼の話に耳を傾けつつも
頭に顔を浮かべる。美奈と同じく美化委員に所属し、委員の全体会合の時に
顔を見たものの話したことはついになく、その顔は兄者のごとく
美形とはとても言えぬ。10人並みの顔立ちと記憶する。

「この前の告白さ、やっぱり無かったことにしてくれ」

と申す達也。

「なにを申されるのですか……」

まさしく驚天動地のミーナ。
こつんと頭を小槌で叩かれたかのごとく。

「俺は三年だ。もうすぐ受験を控えてるから、気分転換に女の子と
 付き合いたくなったのかもしれない。やっぱり俺は馬鹿だ。
 うん。すまなったね。本当に……ああっ、やっぱり
 こんなこと君に話してもつまんないだろうけど聞いてくれ」

この際だからと、彼が直面したストオカアなる新しき人類による
性的な被害について語る。これに美奈は真剣に聞き入る。

いわく、彼は小学の学童の頃より彼のファンクラブなる組織が存在した。
クラブの会員は同じクラスを初め下級の生徒も含み、
彼が6学年の頃を最盛期とした。

バレンタインなる現代人の考える摩訶不思議な行事にてそれは
特に顕著になり、チヨコレイトなる西洋菓子を過分にプレゼントされる。
その数、実に30を超える。娘らは恥じらいのためか直接に手渡すことはせず
下駄箱や机の引き出しに菓子を入れることを好む。

謎の液体が混入されたチョコあり。
使用済みと思われるパンツが箱の中に存在せり。
その他はこれと言って描写するに堪えず。
まともなプレゼントの方が少ないとは皮肉の極みなり。

布施達也。齢12にして女性不振が極みに達し、身内の母上と妹者を除けば、
一切の女子児童との会話をせぬことを誓う。しかしながら、
彼が女子らとの接触を避けたところで遠目から観察されることに
支障をきたすわけもなく心の休まる時がない。

中学に進学してからも達也の光り輝く容姿と華麗なる蹴球(さっかー)の
腕前により、早くも学園の花となりけり。時より女子学生に告白される
ことありけりとも、達也は頑なに懇意になることを拒絶する。
あちら側から好意を寄せられても、達也の側から女人を求めること、
ついに三学年の秋になるまで無きに等しく。

ゆえに達也の美奈に対する恋は初恋といえる。
また彼は容姿の整った女子よりも、少しくらいふくよかで
おっとりした顔つきの女子を好ましいと感じるのだ。

「俺は君とは今日で終わりにして、今後は一切関わらないことにする。
 あのバカ女どもには俺から伝えておく。そうしたら奴らも君に
 危害を加えないと思うんだ。俺は君が傷つくって知ってて自分の意志を
 通すほど愚かな男じゃないつもりだ。本当にごめん。それじゃあ」

まるで美奈に語る暇など与えず、まくし立てた達也。
ぴしゃりと保健室の戸が閉じられ、戻る気配はない。

去り際に彼の瞳に涙が浮かぶのを確かに見た。
ゆえに彼の思いは決して偽りではなく、
美奈を大事に思う心もまた真なのだと思われた。

その日、美奈は日課の長風呂に肩までつかりながら

『可愛らしい子だなって思って』左のセリフがリフレインする。

尼(おんな)としてこの世に生を受け、見目麗しい殿方から
褒められたら喜ばしいものである。
その相手、まさしく校内で偶像ともてはやされる殿方なりて、もはや誉である。

彼は言った。二度と美奈と関わらないと。

「しかしそれでは……」と美奈は思う。

二度と彼と言葉を交わすこと叶わぬ。赤の他人に戻ればリセツトされる。

本当にそれでよいのか。
美奈は気が付いたら彼を心で慕うようになる。
その思いは日が過ぎるごとに強さを増し、2週間が経過する頃には
美奈の側から彼の姿を目に留めたいと願うようになる。
意を決した美奈は、三年生の教室が並ぶ廊下へと足を踏み入れる。

一学年という若年者には敵国の領土に足を踏み入れるのと
等しきことなりて、美奈の鼓動がこれでもかというほど高まる。
難なく彼の教室を見つける。三年二組なるプレートあり。

「あのぉ。そこにいらっしゃる先輩。人を呼んでほしいのですが」
「見ない顔だけど、一年生の子かな? で、誰を呼んでほしいの?」
「布施先輩でございます。布施達也様」

二組の教室が、それはもう騒がしくなる。
まもなく受験を控え殺伐とする教室内であるが、色恋沙汰が生気せりと
多くの生徒が身を乗り出し、戸の前で話し込む二人の男女に聞く耳を立てる。

「き、君の方から呼び出すなんてめずらしいね。何か困りごと?」

「特に用などございませぬが、あなた様と久しぶりに
 言葉を交わしたいと思いまして、こちらにやって来た次第でございます」

すると、面白いくらいに愉悦の表情をする達也。周囲の目など
気にせず美奈を抱きしてしまう。美奈は食べることを好み
その体系は常の女性と比べて太ましく、実に抱き心地が好いものと
達也はむしろ関心した。大太りとはいえず、小太りをわずかに超えた体系である。

美奈もまた舞い上がるほどに高揚し、彼の背中に手を回して
体をますます寄せる。彼の肉体ときたら、筋肉の鎧に覆われたかのごとく。
男性の体とは、かように力強いものかと美奈の体の奥が火照る。

この様は彼らが恋人の関係にあることを世間に呈したも同然であった。

美奈は背中に焼け付くかの如く鋭き視線を感じ振り向く。
廊下のカドの目立たぬところに立つのは、件の女三人である。
この世のものとは思えぬほど形相を醜くゆがめ、美奈を見る。

(絶対に許さないから。この小娘が!!)

上の内容を目で訴える。美奈は恐ろしさに耐えきれず失禁してしまう。
これに心を激しく乱した達也が美奈を抱え上げ、ただちに保健室へと走り、
さすがに今回ばかりはと替えの下着も用意してやる。昨今の倭国(日本)、
学園の保健室にて女子用の替えの下着を用意すること常のことなり。

美奈はふしぎと体に対する恥じらいがなく、達也の目前で
堂々とパンツを脱ぎ変える。これには達也はたまらず目をそらす。
彼女のお腹周りには確かな脂肪がついてる。

「俺は君のことが好きだ。
 いいや、好きなんてもんじゃなかったよ。
 もう愛してしまっているんだ」

「わたくしも、あなた様のことを心よりお慕い申しております。
 ここ最近と言えば、夜は月明かりのもと琴を引きながらあなた様のことを
 思い出し、二度と口も聞けぬまま、卒業されるのを待つだけのなのかと
 枕を涙で濡らしたものであります」

とても現代人の語り口とは思えぬ美奈の口説き文句。
達也は嫌煙するどころか、一層の新鮮さを感じ、
いよいよこの娘を抱かなければ家に帰らぬとまで思う。

常の女人らに絶望した達也だからこそたどり着く極地。
これが彼の側からした美奈の美しさであった。

「動かないでくれ。すぐ終わるし痛くしないから」

さらさらと、美奈の上着のボタンが脱がされていく。
ブラ越しにも大きな胸だ。ふっくらした肉体が露になり、
達也もズボンを脱ぎ棄て戦闘の準備を始める。

二人は時が経つの忘れてベッドの上で交じり合う。
美奈は脂肪が多いためか、一年も前に初潮を迎えており
男性を迎え入れる準備はできていた。とはいえ実際に交わるのは
これが初めてのことで、保健室のベッドに赤い染みができる。

感じたことのない痛みと戦うミーナ。
くすぐったさと内臓の痛みに身をよじり、彼の思うとおりにさせてあげる。
挿入されるごとに、長い黒髪が左右に揺れた。ついに精液を出し尽くした
達也は正気を取り戻したのか、激しく謝罪を繰り返してくる。

美奈は初めから恨みなどないのですぐに打ち解ける。はたして
鮮血と男の液体に染まるシーツはどうしたものかと考えていると。

「あなた達!! そこで何をしてるのよ!!」

一年六組の担任襲来セリ。名を森由紀という。
参考にした人物は宇宙戦艦ヤマトのヒロインなり。
故人・松本零士がデザインしたアニメ史に残る比類なき美女なり。

「ベッドシーツに血が……なんで新見さんは裸なの?
 え……まさかうそでしょ……。うちの生徒がこんな……。
 大人の私だってまだ古代君と経験したことないのに」

森由紀は齢26にて独身なり。齢19の時より付き合いし古代進とは
関係が停滞して久しく、ついに肌を重ね合わせることなく現在に至る。

森由紀は怒りを発散せしめんと、腹に力を込めて怒鳴る。
保健室から発信された音の波が、窓ガラスをぶち割り、小山市の
広大な田園地帯を通過し、ついには鉄塔まで破壊してしまうほどだった。

「先生様。ここはひとつ穏便に手を打ちましょう」

「はい!?」

「学生としてあるまじき行為をした自覚はございます。
 しかしながら、これは一つの男女の真の愛の証でもありますゆえ、
 どうか内密にしていただきたいのでございます」

「内緒になんかできるわけないでしょ!!
 すぐに教頭に報告してやるわ!!
 あんた達、中学生のくせになんて破廉恥なことを
 学校でやってんのよ!! 保健室はAVの撮影場所じゃないのよ!!」

「ならば、これで手を打ちましょう」

どさっと、床に札の束が落とされる。
一万円の札が、すくなくとも100枚以上あり。

「さーて。仕事仕事。もうすぐ昼休み終わっちゃうものね。
 あなた達は特別に体調不良で保健室で休んでるってことに
 しておいてあげるから」

森由紀は札の束を落とさぬようしっかりと抱えながら去ってゆく。
もしものためにと用意しておいた大金がこんなところで役に立つとは。
美奈は愉悦を感じ微笑む。

それから時は経ち、美奈は齢14の誕生日を迎える前に懐妊することになる。
彼とのたった一度の過ちが、子を宿すことにつながったとは奇跡に近い。


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