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作品名:令和の大不況。無職になった若者たちの行く末は… 作者:なおちー

第12回   自民党を代表する悪党、首相を捕虜にした。
※ 高倉アユミ

作戦終了後、姉のユウナにさんざん叩かれた。
なんで首相を捕虜にしたのかとか、国会を完全に破壊してない、
死んだのより逃げた議員の数の方が多いとか。

暴力姉。私はあんたのストレス解消の人間じゃないんだから、
頭をペットボトルでポコスカ殴るのやめろよ。
あんたみたいに頭悪くなる。

「この馬鹿!! 大馬鹿ニート!! あんないいところで鉄人を引き返させるなんて
 何考えてるの? あんた脳みそ入ってないの? その頭はピーマンみたいに空っぽ?
 一生で一度の大チャンスだったんだから、霞が関一体まで破壊しないとダメでしょうが!!」

「うるさーい!!」

私も言い返した。

「途中から操作できなくなって、鉄人が勝手に動いてたんだよ!!
 首相を捕虜にするのも私の指示じゃないし!!」

「うそつくんじゃないよ!!」

「ほんとだよ!! 文句があるなら姉ちゃんが自分でやれよ!!」

私たちが言い争うのを、不安そうに見つめる瞳があった。
捕虜にした首相だ。この還暦前のおじさんは、両手と両足首に
手錠をされて床に寝かされている。

私たちは宿舎の食堂に一堂に会し、今後の作戦を練っていたのだ。

〜ふーまれーたーはーなーの、なーまえーもしーらーずぅに〜

「姉ちゃん。電話鳴ってる」
「あんたに言われなくても分かってる!!」

姉はイライラしながら電話に出た。
私の方が百倍むかついてるけど。

「あっ、兄さんだったんですか。ごめんなさい。
 私今ちょっと立て込んでて……え? あ、はい。
 確かに私の指示でやりましたけど。え……? え。そんな。
 それは仕方ないの。兄さんが私の相談には全然乗ってくれないから……。
 え? こっちに向かってるんですか……?」

姉の痴態(ぶりっ子)を食堂にいる全員が
カイジみたいにアゴがとんがった顔で見守っていた。
シリアスすぎて笑えるwwww

姉は超ブラコン。ナツキお兄ちゃんの前ではいつもこう。
妹の私を怒鳴ってストレス解消して、電話中は猫なで声。

私の鳥肌やばい。気持ち悪いなんてレベルを超えてる。
そんなだから兄さんに飽きられてるのに。

「ごほん。みなさん、お見苦しいところをお見せしました」

姉がまじめな顔をして言う。死ねブス。

「ほんとに見苦しかったです」

いや……、私じゃないよ?
姉に文句を言った勇者はいったい誰なのか。
一人の女子が挙手していた。

「……なにか言ったかしら? 同志川村アヤ?」
「……なにも。話の途中なのにお邪魔してすみません」

この間、たったの10秒。
ガラスの二枚や三枚は割れたんじゃないかと思うほどの
空気の圧迫感だった。

男子の同志たちは、ピンチになったカイジの顔をしてる。
他の女子たちはオロオロして見守っていた。

「話を戻します!! 私の兄である同志ナツキが、
 今この訓練所へ向かっているようです!!」

「勝手な作戦を発動した姉さんに説教しに来るとか?」

「残念ながら、そうなのよ」

スーツでびしっと固めた兄さんが到着してから、
本当に姉が説教されていた。
しかもみんなが見てる前で。姉からしたら屈辱の極みのはず。
二重の極み、あああああああああああああああああああ!!

だけど姉は、正座して説教されているはずのに、頬を赤く染めている。
なんなのこいつ……バカなの死ぬの? マゾなの怒られて気持ちいの?

「まじめだったはずのお前が、僕ら市議会の許可もなく
 秘密兵器を勝手に使ってしまうとは思わなかった。
 だいたい、この訓練兵たちはなんだ!! 
 僕は孤島に訓練兵を連れてくるなんて話は聞いてないぞ」

「ごめんなさい、兄さん」

「どれだけ多くの人に迷惑をかけたと思ってるんだ!!
 お前にはあとで二人きりで話をする必要がある!!
 首相も捕虜にしたと報告を受けているんだが!?
 首相はどこにいるんだ? 
 彼の身柄をすぐに市議会に引き渡してもらうぞ!!」

「はいっ。直ちに引き渡しますわ!!」

姉があせる。私もあせる。
だっていないんだもん。首相が。
あれー? おかしーな? ついさっきまで床で転んでたよね?
おしっこを漏らした後はあるけど。自力で逃げた?
まさか。芋虫じゃあるまいし、どうやって逃げるの。

「うんこ漏らしてて臭いんで、海に捨ててきました」

女勇者が発言した。さっき姉に歯向かった子だ。アイちゃんだっけ?

「き、君はアヤちゃん。君がやったのか……なんてことを……!!」
「私は父を首相に殺されたようなんだから我慢できなくて、つい」

つい、ゴミをポイ捨てした。そんな軽いノリだった。
アヤちゃんはかわいい女の子で、そんな子が目に一杯の
涙をためて言うものだから、兄さんは逆に慌てた。

「あっ……いや、いいんだよ。どうせ生かしておいても
 しょうがない人間だ。森かけ問題も最後まであやふやにして、
 さくらの会の問題も含めて国民の税金を15億円以上使い込んだ男だ」

「許してくださるんですか?」

「今回だけは……特別だよ」

ナツキさんは後頭部をかき、照れてる感じだった。
運動部のイケメンが女子に
突然チョコを渡されたシーンを見てるかのよう。

「ありがとうございます。ナツキ様」
「あっ……アヤちゃん。だめだよ。みんなが見てるのに」

この二人はできてる?
私も兄が好きな妹の一人だから、人前で堂々と抱擁されると
胸がズキンとしてしまう。でもお兄ちゃん……。
30手前の社会人なのに女子高生と付き合うとか……。

「あっ、手が滑った」
「ごはぁ!!」

アヤがぶっ飛ばされていた。私の姉に。

「こらユウナ!! いきなり何を!!」
「いきなり暴力です!!」

いきなりステーキ!! 
コロナ前から出店計画を誤り、最終赤字、絶賛増量中!!

  うわっ……!! 私の赤字……増えすぎ!?
  決算短信をチラ見するだけで、事業計画の破綻が分かってしまう。
  今なら5分で無料診断。短期的な資金繰りの可否。将来の見通し。


アヤはふらふらと、KO寸前の
ボクサーのように立ち上がり、ユウナを指さした。

「ナツキ様!! この女は私をぶったのです!!
 ナツキ様の恋人であるこの私を!!
 さあ直ちに制裁をしてください!!」

「ユウナは実の妹だ。僕が妹に手を挙げる人間に見えるかい?」

それなら私がと、代わりに姉を殴った。
ブスが、くるくると回転して宙を舞った。

「おーい、死んだのかー? 豚ちゃーん。
 ここ数年運動不足だからスカートの
 ウエストきつくなってるでしょ?」

姉は私にお尻を蹴られても、ピクリとも動かない。
お尻を上に突き出した恥ずかしい恰好で倒れてて笑えるwww

姉は、がばっと起き上がり、

「どえりゃーことしてくれたでね、おみゃーさん、
 ぶちくらわすぞ、ごらあああ!!」

犬夜叉のような顔をして両手を振り上げ、襲い掛かって来た。
妹に殴られたのがそんなに許せなかったのか。
頭に血が上りすぎて標準語にまで影響出ちゃってる。

私はウルトラマンがスペシウム光線を放つ構えをして、
迎え撃つことにした。ウルトラマンに興味を持ったきかっけは、
兄さんの部屋にウルトラマンのソフビ(バンダイ)が置いてあったから。

私は姉ともみあいになり、床の上を転がって互いの髪を引っ張り合った。
こいつ……私と同じシャンプーの香りがする!!
なぜなら家族だからだ!! ブスにはもったいないくらいの高級品だ!!
だからこそ許せないこともある!!

「ああ、ナツキ様……こんな絶海の孤島で会えるなんて」
「アヤちゃん。気持ちは分かるけど、訓練兵のみんなが見てるからね」
「でも私うれしくて!! 気持ちが抑えきれないんです!!」
「わかったわかった。仕事が終わってから二人きりになろう」

彼らのラブコメを、訓練兵たちはシリアスな顔で見守っていた。
こいつら……まじやべえ。訓練する場所間違えたか……って顔だ。

今気づいた。誰も私たち姉妹の喧嘩に関心がない!!
兄さんが仲裁に入ってくるまで、私と姉は殴り合いを
続けてしまうのだった。ブスのせいで髪が三本も抜けてしまった。
私の貴重なDNAが!!

「喧嘩は両成敗だ。アユミ、お姉ちゃんに謝りなさい。
 そのあとはユウナもだ。言うことを聞かないと本気で怒るぞ」

私は平坦な声で謝罪した。姉は兄さんの前だからか、ぶりっこして
泣き顔をしていた。なにその顔。乙女の顔? 超きもいんだよ!!

「泣くことないだろユウナ。おまえは小さい頃から泣き虫だったな。
 どうして今回は鉄人を発進させたりしたんだ。おまえのせいで
 日本政府からボリシェビキが狙われることになったんだぞ」

そう。これはシャレにならない。今頃政府の中枢では
赤狩り(共産主義者一層キャンペーン☆)が計画されていると
考えて間違いない。私らの住んでる栃木県足利市は、たぶん両手で
抱えきれないほどのミサイル攻撃をプレゼントされる。

「兄さんが、私の誕生日なのに家に帰ってきてくれないから、やりました」

バカが何か言ってる。

「私は、兄さんがいてくれたら。それだけでよかったのに!!
 兄さん、どうして町中のマンションで一人暮らししてるのよ!!
 私は兄さんと一緒に夕飯を食べたいと思ってた!!
 兄さんのために料理の勉強もしたわ!! なんで嫌そうな顔するの!?
 私たちは家族なんだから一緒にいるべきよね、そうでしょう!!」

兄さんは辛抱強くこいつの恥ずかしいポエムを聞いていた。

我が姉の愚かしさは、兄にうざがられてることを本当は
分かっているくせに認めないことだ。調子に乗ると兄のベッドに
夜這いをかけるほどのフットワークの軽さが売り。しかも風呂上りに全裸で。

この世に変態のドラフト会議があったとしたら、
全球団から一巡目指名されてもおかしくないレベル。

兄さんだって若い男なんだから、万が一過ちが起きて
妊娠したらどうなるとか考えないのかな。

二次元で近親相関とか定番のネタだけど、あれは創作だから
面白いわけで……。リアルでやろうとするなよ!! 
こんな奴が身内にいるのが耐えられない!!

「訓練兵たちがあきれているよ。
 僕の胸に顔をうずめてないで周りを見てみなさい」

「そうやっていつも逃げるじゃない!!
 私は兄さんが一緒に住んでくれるって言うまで
 このまま離れないわ!!」

「僕は……ユウナのことをかわいいと思ってる。
 でもそれは妹としてだ。それ以上の関係を
 僕に求めるつもりなら、それは無理な相談だ」

「どうしてそんなこと言うんですか!!
 そこのガキと付き合ってるからですか!?
 高校生なんてクソガキですよ!!」

勇者アヤちゃんをガキ呼ばわりかい。20代後半のおばさんよ。

「いや、僕は他に付き合ってる人がいるんだ」
「え……誰ですか!! 私の知ってる女ですか!!」
「男だよ。寺沢アツト君」

ユウナは衝撃で大きくのけぞった。

「ごめん。嘘なんだ」
「はいぃい!?」

兄さんはいよいよ気がふれたのか、
ユウナ姉さんと……キスを……した。おえっ。だめだ吐きそう。

「ユウナ。僕はこのくらい君のことを大切に思ってるんだ」
「あう……」

ユウナはオホーツク海に生息するクラカケアザラシの
顔をして甘えてる。うぜえし、うっさいからキスで黙らせたのね。

「訓練所に集まった同志諸君に告ぐ!!
 僕は今夜この宿舎に泊まることにする!!
 妹のユウナが取り乱して迷惑をかけてすまなかった!!
 僕はこれからユウナと二人で作戦を練る。
 諸君らは夕食の時間まで好きに過ごしてよろしい!!」

えっと……? 話はそれだけ……?


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