※ けんとちゃん
俺と瞳は家電量販店での買い物を断念せざるを得なかった。 戦場跡と化した山田の他には、コジマ電気とケーズデンキもあるのだが、 どこへ行っても同じことだろう。
「家電がダメでも、日用品を買うのにホームセンターに行かないと」
瞳に言われるままにニトリへ向かう。 ニトリは業績不振が続く大塚家具と違い、 色々な意味で絶好調である。
「ずいぶんと消防車が集まっているようだけど…」
ニトリは、よく燃えていた。 俺はあの店が大好きだった。低価格帯の製品を中心に ラインナップも豊富で店内も広さも程よく、快適に買い物ができる。
あの二階建て建物は、周囲の住宅まで巻き込んで燃えていた。 もはや一建物の火災の規模ではない。 久喜市中央部の住宅街を巻き込んだ大火災である。
店の駐車場には遺棄された武器弾薬、戦車と装甲車がある。 戦車が黒煙を上げているのが生々しい。
軍服を着た市民が大量の血を流して倒れている。 警察隊に鎮圧でもされたのだろうか。すごい数の死体である。 ガソリンと鉄の焼ける匂いと、焦げた死体の 生臭い匂いがこっちにまできて吐きそうになる。 死体の匂いって内臓が腐ってるのか知らんが、形容しがたいほどの匂いだ。
⊂⌒~⊃。Д。)⊃⊂⌒~⊃。Д。)⊃⊂⌒~⊃。Д。)⊃ プーン
しかも天気がやばい。空を見ると雲が流れてやがる。 空気も湿ってきて重く感じるし、まもなく雨が降りそうだぞ。 あの死体の山が雨で濡れるなんて想像もしたくねえ。
「なんてこと……私たちは日用品すら買えないのかしら(;゚Д゚)」
「家具が欲しいよぉ(;´・ω・) 俺達ってイスとテーブルすら 買ってない設定だから床で食べてたんだ。ソファも欲しいよ」
「本棚も欲しいわ(;´∀`)あとクローゼットとハンガー。 化粧台。日焼け止めクリーム」
「レースカーテンも買わないと:;(∩´﹏`∩);: あと夏物のシーツ。タオルケット」
冷静に考えると俺たちが欲しい物って生活必需品のほぼ全てじゃねえか。 物が不足してるってレベルじゃねえぞ!!(;´Д`) 日本はGDPの規模で世界三位のはずなのに、 日用品すら満足に買えないっておかしいだろ!!
確かに俺たちの住んでるところは埼玉の地方都市だが、 買うものに不足するほど貧しい地域じゃなかったはずだぞ!!
「ひとみん。もうすぐお昼になるよ(;´・ω・)」
「そうね。実は私お腹ペコペコなのよ(´Д`) 普段から運動してるから代謝が良すぎて11時前からお腹がすくの」
信じられないことに、瞳さんは会社でも間食を頻繁にしているらしい。 カバンの中には常にクッキー類やチョコレート菓子が入っていて、 休み時間の度に食べているとのこと。
お昼休みも昼食後にはグミを食べているそうだ。 そもそもお昼ご飯のお弁当も30代の大人女子にしては多めだ。 (大人女子ってなんだ? でもこう呼ばないと瞳に怒られる)
ふつうこれだけ食べれば、顔にニキビができたり肥満、 高血圧などになりそうだが、前作で描いた通り、 瞳の美しさはおそらく埼玉県でもトップレベルだ。
身長は162センチらしいが、体重は40キロくらいしかないんじゃないか。
これで俺の妹に対して異常な敵意を 向けてこなければ最高だったんだが(;・∀・)
「(*´ω`)スーパーも危なそうだから、コンビニでお昼を買う?」 「(^○^)ちょうど母から渡されたクオカードもあるから、そうしようか」
実は美雪から渡されたんだが、間違っても美雪の名前は口にできん。
そして近くのコンビニ♪ファミリーマート♪へ向かうと、
「ちょ…\(^o^)/オワタ」 「おい……\(^o^)/オワタ」
コンビニのガラス越し(書籍類があるとこ)に、2台の乗用車が突っ込んでいた。 ただそれだけだ。散乱したガラスの破片が店内と駐車場に広がっている。 車の乗員はどこにもいない。そして店内に客もいない。店員も店長もいない。
コンビニに車がつっこんだ状態で放置されているカオスだった。 意味が分からん。どういう経緯でこうなった? なぜ騒ぎになっていないんだ。警察は?
まだ炎上してないだけましだが、不気味すぎて近づけねえ。
「絶対にお店に近寄っちゃだめよ(; ・`д・´)」
「どうしてだい(;゚Д゚)」
「よくレジの裏を見てみなさい。 何人かの男が潜んでいるわ」
「……あっ、確かに黒髪が見ええる」
「不用意に近づいてきたお客を暴行して金目の物を奪うのが目的ね。 文字通り身ぐるみをはがされるわよ」
「ひぃ;つД`)」
「コンビニはあきらめましょう。 今日はどこへ行っても危険よ。 あの首相の演説の影響で市民がおかしくなっているのよ」
老後資金2000万円問題に加えて年金支給額が660円。 市民感情を逆なでし、暴徒とさせてしまったのだ。 本音でしゃべる自由民主党は恐ろしい(゚∀゚)
「俺達はこんな危険な国で生きていけるのかな(>_<)」
「ヨシヨシヾ(・ω・`)私は賢人を守ると決めたわ。 だから安心して。今日はいったん家に帰りましょう? 朝炊いたお米が炊飯器に残っているから、 食べる物がないわけじゃないわ」
その時だった。
瞳が持っていたハンドバッグを、若い女が奪って逃走した。 典型的なひったくりだ。
俺と瞳はイチャイチャしていたこともあり、完全に油断していた。 都合の悪いことに女は自転車を全力で漕いでいる。
「待てえ泥棒\(゜ロ\)(/ロ゜)/」 「この野郎おおおおおおおお!!(;゚Д゚)」
瞳と俺は全力で追いかけるが、距離は広がるばかり。 追いかけても無駄だよ。そう言いたかったが、
「あのバッグにはお父さんのデビットカード(500万)が入っているの!!」
俺はさらに全力で走ったが、やはり女の背中は遠ざかるばかりだ。 だが奴の姿形は覚えたぞ。身長159センチでストレートの黒髪を 後ろでまとめて垂らしている。ずいぶんと髪の量が多いな。
アイドルマスターの我那覇響にそっくりじゃねえか。 ちなみに俺は一瞬で相手の女の身長を当ててしまう特技があるのだ。 何の役にも立ったことがないがね。
悔しくて仕方ないが、俺たちはあきらめざるを得なかった。
「ああ、私の500万が……:;(∩´﹏`∩);: ちくしょう。あの女。殺してやりたい」
瞳さんが泣き崩れるのを始めて見た。 父から預かったお金だけに複雑な思いなのだろう。 瞳はその場にしゃがみ込み、顔を両手で覆って子供のように大泣きをした。
「(ノД`)・゜・。うわああああああああああああああん。 お父さん。ごめんなさーい」
「(;´・ω・)カード会社に電話して利用停止にすれば大丈夫だよ。 落ち着いて。瞳」
「゚(゚´Д`゚)゚ でも私、盗まれちゃったのよ。 お父さんから渡された大切なカードを!! 私は最低の親不孝者だわ!! うわああああああああああ!!」
涙と鼻水でぐしゃぐしゃになってしまった俺の瞳。 彼女風の表現をすれば神から与えられたのであろう、 恵まれた容姿が台無しだぜ。
「:;(∩´﹏`∩);:ご、ごめんねぇ。賢人君。 こんな私じゃ、あなたを 守ってあげる資格なんてないわ」
「(´っ・ω・)っ 君に怪我がなかった。 俺にはそれだけで十分だよヒトミ。 俺達のお金が全部盗まれたわけじゃないんだから大丈夫さ」
「私のお財布に入っていた現金2万円も盗まれてしまったの!!」 私は今日だけでどれだけ多くのお金を盗まれてしまったの!!」 商品券も入っていたはずよ!!」
「いいじゃないか2万円くらい。ヒトミ、そろそろ落ち着こうよ。 いったん家に帰って寝よう。寝れば気分も良くなるさ」
泣きわめく瞳を何とかなだめ、俺たちは帰路に着いた。 カード会社に連絡をしたが全く繋がらない。 おそらくだが、カード会社も テロ集団に襲撃されている恐れがある(´・_・`)
これは瞳の精神に致命的なダメージを与えた。 相手が暗証番号を知らない限りはお金を使えないはずだが、 カードの利用停止ができないのは不安だ。
それに令和10年では国内でサイバーテロが頻発し、 個人情報の漏洩が半端ではない。
普段のラインでのやり取りですら赤の他人に筒抜け。 何も知らずにペイペイやラインペイを利用すれば、 一週間以内に詐欺集団に口座残高を全額盗まれるそうだ。
(↑2019/7月 セブンペイ利用者の口座残高が 全額盗まれる事件が発生。しかも利用開始から たったの4日で。小説じゃねーのかよ)
俺と瞳が現金支払いに凝るのはそのためだ。
「おかえりー。おにい達、今日は会社休みなんだね(^_^)」
平日の13時過ぎだというのに美雪がいた。 ああ、大学三年だと授業数が少ないのか。 今日は一限から三限の授業まで受けて早めに帰って来たらしい。
「み、みゆき。実はな(;゚Д゚)」 「なに? (^_^)」 「いや……やっぱりいい;つД`)」
言えねえ。険悪状態の美雪に対して瞳の落ち度を説明するなんて。 500万の入ったカードを盗まれたなんて言ったら絶対にこいつ 調子に乗って瞳を説教する気だろ。
だが早めに言わないと。遅かれ早かれバレることだ。 家族は共同体。各人が現在までに保有しているお金も共有財産とし、 協力し合って生きていくこと。全部ヒトミお姉さんが決めたことだ。
「なによ。お兄ちゃん。気になるじゃない、早く言って(; ・`д・´)」 「まあ、その、なんだ……? ちょっとスリにあってな(;゚Д゚)」
「スリ……? お財布でも盗まれたってこと? 普段からおにいのお財布には700円くらいしか入ってないでしょ。 多くの現金は持ち歩かないようにしてるんだから」
「いや、俺じゃなくてね。その……ひとみが……」
瞳の泣きはらした顔を見れば一目瞭然だろう。 美女の目元が真っ赤になっている。 化粧が中途半端に落ちてしまっているが、 これでも十分に美しいんだからこの人は化物だよ。
どうして芸能界に入らなかったんだ。
「美雪さん。はっきり言うわ」 「はい」 「私は500万の入ったカードを盗まれてしまったの」 「え……」
詳しいいきさつを説明したのだが、美雪の反応は意外なものだった。
「( ´_ゝ`)フーン」
と言ったきり、興味を失ってしまった。 絶対に怒鳴り散らすと思っていたのに。
「お兄。こっちに来て一緒に通販カタログ読もうよ。 ベルーナの通販でお惣菜がたくさん載っているのよ」
「お、おう(`・ω・´)」
本当に怒ってないのか……? 瞳は罰が悪そうに玄関に立ち尽くしてるんだが。
※ベルーナ 国内の優良株。優待銘柄。 業績、株価共に超安定。財務健全。米中摩擦等の影響も受けず、 堅実に国内の通販事業を中心に実売店舗、ホテル業、金融まで輪を広げる。
2019年度3月決算までのセグメント別売上ではEC部門、 化粧品が特に好調。化粧品はまさに生活必需品である。 世界的な景気減速を受け、東証に上場する企業のほとんどが 打撃を受ける中、安定した売り上げを誇る堅実な企業の代表例と言える。
中間、期末配当でワイン他、ホテルの割引券など選べる。 もちろん配当金(増配した)もくれる。 ヤマダと比べると配当・優待利回りは低いが、 財務安定で株価の下落がないことは最も評価できる。 なぜなら、いざ売却したい時に損益が出ないからだ。
会社の決算内容はよく分からないけど、 まず優待銘柄を持ってみたい、という人には 筆者が自信をもっておすすめする企業。 ちなみにこの会社の株主総会は、他社では例を 見ないほど穏やかであり、株主から良く愛されているが伝わる。
「ベルーナの通販カタログすげえ(゚Д゚;)!!! 魚介類、肉類、お酒からつまみ、和菓子などの菓子類から カレーのレトルト食品まであらゆる食材が揃ってやがる!! しかもワインの豊富さと言ったら!!」
「この会社さんってご婦人向けの洋服ってイメージだけど 食材もすごいんだよね(∩´∀`)∩」
「しかも写真の掲載もでかい!! 印刷状態も良好!! 文字もでかくて老人でも電話注文が簡単!! 中高年を中心に需要が安定するも納得の理由!!」
「しかも株価が割安で10万もあれば買えるよ」
(;一_一)今気づいたが、俺たちはなんで ベルーナの宣伝みたいなセリフをしゃべってるんだ? まあどうでもいいが。
「(^_^)お店が戦争している時は通販は便利だよね」
「冷凍肉やシャケの詰め合わせとかすげえ割安だぞ。 冷蔵庫は買ってある設定だから、 今すぐスマホでネット注文しておくか」
「私たちが買うのは豚の角煮(1キロ)と、シャケの詰め合わせと、 タラコ明太子と、長崎ちゃんぽんと……レトルトカレー10袋と、 お魚の缶詰の詰め合わせと……、アスパラベーコン(お弁当用) あと贅沢して冷凍イクラ」
けっこう買うんだな……。
「5000円以上で送料が安くなるから(^_^)」
なるほど。
「ひとみさんはどれにするの?」
(´・ω`・)えッ?
ヒトミも( ゚д゚)ポカーン としている。
「美雪さん。私は買うものを選べる立場じゃないわ」
「カードを無くしたこと気にしてるの?」
「それはそうでしょ。カード会社と連絡すらついてないのよ」
「別にいいじゃん。仮に全額不正利用されても 授業量だったと思えば。そんなことより早く選んでよ」
そう言って瞳にぶ厚いカタログを手渡した。
瞳はカタログに目を輝かせ、頭を悩ませていた。
「紅茶が飲みたいわ。この、ダージリンのティーパック」
「はいはい(:一_一) さっそく注文しますね」
美雪の話では二日後には食材が届くらしい。 アマゾンと同じレベルで超簡単だ。
今気づいたんだが、ティーパックが届いても 保温するポットもないし、ティーポットもねえ。 あとでアマゾンで注文するべきか。
「お兄ちゃーん。家に物がなさすぎて暇だよぉー」
「はは。可愛い奴め(∩´∀`)∩」 イチャイチャ (੭ु´・ω・`)੭ु⁾⁾ヾ(・ω・`)ラブラブ
「せっかく時間があるんだから映画でもみたいよねー。貞子とか」
「パソコンもないからネットフリックスも使えねえし、 ツタヤにレンタルにも行けないだろうな。たぶん襲撃されてる」
映画といえばショッピングモールも定番だが、 一体どうなってるんだろう。久喜にはアリオがあるが、 ニトリ並みの惨事になってる可能性が高い。
ただでさえ人が密集する所だ。犯罪率の高さも 他店の比ではあるまい。考えないでおこう。
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