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作品名:令和10年 兄妹の物語 第二シーズン 作者:なおちー

第27回   賢人「ミウさんは反対主義者の拷問が趣味なんですか」
この作品は、クロスオーバーを意識して書いたわけではないのだが、
書いてるうちになぜかこうなってしまった。それだけ私にとって
学園生活は思い入れがあり、名残惜しい作品なのだろう。
要はまだまだ書き足りないのだ。

令和10年は、資本主義の行き着く先にある貧困の極限化。地獄を描いた。
学園快活は共産主義の地獄を描いた。双方は政治思想的に真反対だが
行きつく先は地獄、という共通点を持っている。

結局我々の生まれた日本は必ず衰退するのだ。
今後、資本主義の壁を打ち破るような
奇跡の方法でも見つからない限りは、
多くの国民が老後に飢え死にしてもおかしくない。

「よいしょ。よいしょ」

女子生徒二人が、一輪車に満載した肥料を運んでいる。
八月の炎天下の元、大汗をかきながらの作業だ。
首から撒いたスポーツタオルで汗をぬぐう。

ここは中庭。彼女らは花壇の手入れをしているのだ。
長く伸ばされたホースが地面の上に転がっている。
先端にはシャワーヘッドがついている。
その近くにはジョウロも置いてある。

ミウ一行が近づくのが見えると、生徒達は作業を中断して敬礼をする。

「同士閣下!! お疲れ様です」
「ミウ様!! 本日も良いお天気でございます!!」

「ごきげんよう同士。今日も日差しが強いね。
 熱中症に気を付けて、適度に休憩を入れながら作業をしなさい」

「はっ!!」
「分かりました。同士閣下っ!!」

令和10年の会社とはまた違うな、と賢人は思った。
女の子たちは顔が思いっきり引きつっている。
言葉では言い表せないほどの、圧倒的な地位の違い。ミウに対する畏怖が
良く伝わってくる。この学園ではミウの存在は、まさに神様に等しいのだ。

ぴろりーん♪

(やべっ)

賢人のラインが鳴ってしまった。
部外者が学内を見学中に携帯を鳴らしてしまうのは
ミウに対し失礼かと思い、緊張したが

「携帯、見なくていいの?」

と言われたので、画面を開く。
美雪からのラインだった。

『強力な電波妨害でお兄ちゃんの居場所わかんない(~_~)
 今どこにいるの? 早く帰って来てヨ。
 お兄がいないと瞳のアホがやばいんだよ。
 あのアホそろそろ死んでくれないかな』

送られた写真には、変わり果てた姿の瞳が映っていた。

瞳は自分の部屋の壁のいたるところに賢人の写真を張り付けており、
その一枚一枚に愛おしそうにキスしていた。

瞳(*´ε`*)チュッチュ  賢人ぉ。早く帰って来てね

しかもキャミにパンツだけの格好である。
男性目線からしたら色気十分なのだが、
やってることが常軌を逸している。

(*´ε`*)チュッチュ

美雪の話によると、夜も同じことをしているらしい。
賢人に襲われた時のことを思い出して自分を慰めているとのこと。
声が美雪の部屋まで漏れているのにおかまいなし。
清楚で可憐な瞳嬢はどこへ消えてしまったのか。

お風呂場も無駄に長くて、賢人の名前を切なそうな声で
呼び続けているらしい。美雪は瞳がキモすぎて
文句を言う気にもならず、ひたすら距離を取るに至る。
賢人が家出してまだ2日目なのだが、すでに末期である。

写真は、スマホで隠し撮りしたのを
キヤノン製プリンターで拡大印刷したもので、無駄に高画質である。

賢人(うわぁ(;゚Д゚) どうしちゃったんだよこの人……。
   ますます帰りたくねえ。むしろヒスってないだけましなのか)

すると瞳からのメールが送られてきた。
どうせろくでもない内容に決まってる。
無視しようと思えばできる。
だが開かないと、あとで何を言われるか……

しぶしぶ開くしかなかった。(シブヤだけに)

『やっぱりあの時、殺しておけばよかった』

(;゚Д゚)!???

『美雪の馬鹿が家出した時のこと、覚えてる?
 賢人が朝から美雪を探しに行こうって言うから
 私が必死に止めたじゃない。なのに。賢人は
 私に冷たくして結局は美雪の元へ行ってしまった』

『すごく、くやしくって。賢人と心も体も繋がったと思ったら、
 最後は裏切られて。パパにも認めてもらえたのに今度は
 賢人が家出しちゃって。今は完全に行方不明。
 ねえ今どこにいるの? せめて場所だけでも教えてよ』

それから愛のポエムが送られてきた。
瞳は自分のことを捨て犬やうさぎに例えて、
いかに不幸な身分なのかを語る。よく読んでみると
中々深い文章であり、瞳にはそっちの才能があるのかもしれなかった。

賢人は自分が見学中なことを思い出し、
スマホの電源を切ろうとして気づいた。

(あれ? 俺の携帯って壊れてたんじゃ……)

細かいことは気にしたら負けだ。

「君は、面白い彼女さんがいるんだね」

「Σ(゚Д゚)あ。こ、これはその……」

メールに夢中だったのでミウが画面を
のぞき込んでいることに気づかなかった。

「君の彼女、寂しがってるみたいだよ。
 電話してあげなくていいの?」

「……(>_<) お、俺は瞳、あっ、俺の婚約者?というか
 友達って感じで…名前が瞳って人なんですけど。
 俺はこの人の相手をするのが疲れちゃったんです。
 だからちょっと距離を置きたくて、社会勉強のために
 この学園の見学を希望したんです」

ミウは、一瞬だけ鷹のように鋭い視線で賢人を射抜いてから

「へえ」

と言った。

今の会話で賢人が女たらしで逃避癖があることを見抜いていた。
そしてそれが、愛する太盛と全く同じ癖であることも。

「そのヒトミさんを、君は拒絶しちゃってるんだ?」
「は、はい」
「そんなことされたら、女の子は傷つくと思うなぁ」

―おまえは、誰だ? おまえは俺の知っている高野ミウじゃない。
―ミウは変わったな。
―断るよ。だって高野さんは……赤の他人だろう?

記憶の奥底へ沈み込んでいたミウの記憶が蘇る。
現在の旦那は堀太盛。現在は高野家に婿入りしたので高野太盛となっているが、
結婚する前の彼にひどいことを言われたのだ。いまから10年前に。

結婚を機に二人の仲は劇的に改善し、太盛も栃木県を
代表するボリシェビキへと成長してくれたのだが、
昔の記憶までは取り消すことはできない、

「(>_<)俺だって、たくさん傷つきましたよ。
 たくさん顔をぶたれ、怒鳴られ、
 2兆円の借金を背負わされたりしたんですから」

―ねえ太盛君? お願いだから私の話を聞いて
―私は太盛君を救うために必死で、クラスを敵に回してまで
―それなのにマリーを取るの?

「女はみんな勝手な奴ばかりです。みんな自分中心で
 俺の気持ちなんて全然考えてくれない。
 俺だってたまには一人になりたいときくらいあります。
 ミウさんはそう思いませんか?」

「全然そう思わないんだけど」

「えΣ(゚Д゚」

「私ね、あなたの話を聞いていたらムカムカしてきちゃって。
 だって自分勝手なのは、あなたの方じゃない。
 どうして素直に女の子の気持ちを受けて止めてあげないのかな」

ミウの顔から微笑は消えていて、賢人を差すような視線で見ていた。

「あ、あの(>_<)」
 
「この怒りをどこにぶつければいいんだろうね。
 あー。なんだか賢人君のこと拷問したくなっちゃった」

つーっと、賢人の顔に汗がしたたり落ちる。
真夏なのに血の気が引いてしまい、寒いくらいだ。

返答に困り果て、かといって黙っているのも印象が悪い。
適当にごまかすしかない。

「は、はは。僕とミウさんはまだ知り合ったばかりじゃないですか。
 いきなり拷問だなんて。そんなジョークを言われるとは思いませんでしたよ」

するとミウは、賢人でなく息子に話しかけていた。

「ジュニア。ジュニアはこのお兄さんを
 おもちゃにして遊びたくない?」

「(*'▽')うん。お兄さんを僕のおもちゃにしたーい
 遊んで遊んでー(・ω・)ノ」

子供の名前は太盛jr。フルネームは高野太盛・ジュニアと言う。
摩訶不思議な名前である。
摩訶不思議アドベンチャーとは、初代ドラゴンゴールのOPのことである。
それはどうでもいいが、英国育ちのミウにしては米国っぽい名前の付け方だ。

「(*'▽')僕の新しいおもちゃー、早くチョーだーい」

ミウは幼子を抱っこし、頬に優しくキスをした。
男の子はくすぐったそうにしていた。
母性のあるミウの横顔の美しさは、見慣れた学園関係者でさえ
虜にするほどの魅力があった。

長いまつ毛の下に愛らしい瞳が覗く。
茶色に染めた髪は、肩から下に掛けてウェーブがかかっている。

ふんわりとした、大人の女子といった雰囲気。
子を産んでからも体形が崩れておらず、
ほとんど学生時代と変わっていない。

胸はさほどではないが、腰にはくびれがある。

賢人は、その美しさの裏に隠れた凶器を知ることになる。

「(*'▽')ママー。おもちゃー」

「はいはい。今あげるからね」

「だってさ。賢人君」

――なにが? そう言いたい衝動を必死にこらえる。

子供の『おもちゃ』にされるとは何か。
普通の世界に生きている人間からしたら、意味不明である。


これはソ連時代からよく行われていたことであった。
ソビエト内務人民委員部は、民主主義の国での内務省に当たる組織である。

秘密警察を含む、国内の警察組織のトップが彼らなのである。
内務人民委員部の長官を務めた人物で有名人といえば、

・ニコライ・エジェフ
・ラブレンチー・ベリヤ

世界史に名だたる銃殺、拷問マニアである。
言い方を変えると神聖キチガイである。
気になった人にはWikiで調べてほしいくらいだ。

反対主義者と思われる人物と、その周辺人物まで
まとめて逮捕し、拷問し、最後は銃殺刑にする。
ソビエトはユーラシアにまたがる広大な国土を誇り、
総人口が3億人にも達するのだが、上の二人だけで
7000万人はくだらないソ連人が粛清されたのではないだろうか(たぶん)

ソヴィエトでは、司法権、立法権、行政権はソビエト(評議会)に集約される。
じつは政治局、書記局による権力分化もあるにはあったのだが、
最終的には一つにまとめられた(スターリンの陰謀により書記局の方が強くなった)

これがいわゆる独裁政権である。
今の安倍政権も独裁という点では何ら変わりはない。
政治の内容が多少違うだけである。

日本国では司法はともかく、立法権と行政権は
今後も末永く自民党によって独占されるであろう恐るべき国家である。

「ジュニアはどんなことして遊びたいのかな?」
「うーんとね。バッドマンごっこやってほしい!!(*'▽')」

バッドマンごっことは。
まず賢人にダークナイトのコスプレをしてもらう。
そして校舎の屋上からバンジージャンプ(ロープはギリギリ)
をしてもらい、生死の境をさまよっている時に、
子供がロケットランチャーで撃ち殺すというものだ。

拷問ではなく虐殺の類であった。

「(*'▽')殺しちゃってもいいんだよね?」
「(^^♪ 代わりならいくらでもいるから、好きにしていいよ」

他のプランもあった。
裸になった賢人の全身に蝋(ろう)を塗りたくり、マッチ棒で点火させる。
火だるまになり、半狂乱で校庭を走り回る賢人を銃で撃って殺すというものだ。
できるだけ苦しんでから死ぬように、まず足から撃って、次に腕、腹、頭と狙っていく。

ミウはこう言う。

ユニバ―サル・スタジオ・ジャパンよりも大迫力のアトラクションが、
学園にはある。ディズニーすら超え、大きな遊園地のジェットコースターをも
超える、本物の感動と興奮。それは……

「人の断末魔。かな」

ミウが語る。

「人間って面白いんだよ。どんな不利な状況になって、絶対に生き残れないって
 分かっていても助けを求めるし、ソ連では禁止されている神様の名前を
 叫んだりする。生き残った人を恨む人もいる。ふふ。何より楽しいのがね」

――私を恨みのこもった目で見てくる、あの瞬間だよ。

ミウの陰口を言ったことがばれて、連行された女子がいた。
全部で4名だった。ミウは。4人に短剣を渡して、体育館の舞台の上で
殺し合いをしろと命じた。生き延びた者は釈放すると嘘をついて。

女たちは殺し合を初め、最初の二人はあっけなく刺殺された。
残された二人は力が互角だったため、互いに致命傷を負うが、
中々決着がつかない。やがて片方が、こんなことしても無意味だと
泣きわめき、ミウに頭を撃ちぬいてもらうことを提案した。

ミウは当然断り、自分の命令に従わなかった罰として、
二人を地下の拷問部屋のベッドに寝かせた。

一人は、生きたまま腹を裂き、ウインナーのように連結された
腸を限界まで引っ張り出し、天井からつるすのだった。
恐怖。失禁。絶叫。血の匂い。吐き気を催す内蔵の匂い。
死んでいるはずなのに。死にたいのに。
腸が天井まで吊るされてもまだ意識があるこの世の地獄だった。

もう一人は、その拷問が終わった後にどうしようかとミウは考えたが、
気まぐれな彼女はこれと取った拷問方法が思いつかず、
その場に放置しまま帰ってしまった。

(助かった……?)

そうではなかった。彼女はベッドに四肢をベルトで固定された状態だ。
ミウが去った後、背の高い男の看守が何人もやってきて、
代わる代わる彼女の貞操を奪っていくのだった。
一人や二人ではない。おそらく夜の間までに40人の相手をしたかもしれない。

看守達とて学園の規則を破れば粛清される身である。
女の囚人をいたぶるのが嗜好の趣味となっていたのだ。

膣の中が血と精液であふれ、腰が上がらぬほど使いまわされたのち、
夜明け前に舌を噛んで死のうかと考えた。
すると待ってましたとばかりにミウが地下へ戻ってきて、

「すっかり忘れてたよ。放置しちゃってごめんね?」

ミウの手にリードが握られている。
非常に飢えた大型犬を二匹連れていたのだ。

ミウがリードを離すと、大型犬は生きたまま彼女に食らいつくのだった。
食い荒らされた内臓が床に落ち、血しぶきがあがる。
首を噛まれた時に一番の悲鳴が上がった。

賢人は、ここまでの内容をしっかり聞くように命じられていた。
噴水には円形の石段がある。美しい石段に並んで座り
残酷な内容を聞かされた賢人は:;(∩´&#65103;`∩);: ←こうなるしかなかった。

「賢人君は拷問されるの、いや?」

もう、震えるだけで返事さえできない。

「私はあなたに直接恨みがあるわけじゃないから、助けてあげても
 いいんだよ。今すぐ瞳さんって人と仲直してあげたら許してあげる。
 写真の中の瞳さん、かいわそうだよね?
 この子を見てると昔の私を思い出すの。
 私の旦那、学生時代は彼氏だったんだけど、
 彼に会えなかった時は写真を大切に持っていてね、それで…」

「あ…あ…はい」

賢人には突っ込む余裕がなかったが、
ミウは瞳を年下だと思っているようだ。
若作りにしても程がある。

「私の活躍はナツキ会長や生徒会にも認められ、副会長に地位にぼりつめたの。
 思い出したくもないけど太盛君にはカナって仲の良い女がいてね、
 私は優しいから拷問しなかったけど、私以外の女だったら
 普通は殺してるところだよね? ね、そうでしょ?」

「…はい」

「そうそう。邪魔をしてくる女と言ったらアナスタシアもいたな。
 相性がナージャっていって、胸がでかいコーカサス系のハーフ女。
 あいつは特にムカついたから、あいつの兄と一緒に地下の大きな釜の中で
 生きたままゆでてやったの。五右衛門風呂の拷問って知ってる?
 石川五右衛門が殺される時に使われたやつなんだけど、お湯の代わりに
 油を入れて、下から火でたっぷりあぶってあげるの」

「は、はい。聞いたことはあります」

「賢人君にもやってあげようか?」

「(´Д⊂ヽた、高野ミウ様。それだけはご勘弁を(ノД`)・゜・。」

「うそうそ。賢人君にはそんなことしないよ」

「:;(∩´&#65103;`∩);:ほ、ほんとうですか」

「うん。だってあなたのおびえた顔、
 学生の時の旦那にそっくりで可愛いんだもん」

ミウの口角が上がった。ゆがんだ笑みだが、
それでも美形のミウなのである程度は整って見える。

「(>_<) ママ。さっきからお兄さんと
 話してばっかり―。僕と遊んでよー」

「ママは今大切なお話をしているの。
 しばらくそこで良い子にしてなさい」

「(>_<)やだやだー。お兄さんをおもちゃにして遊ぶー」

「お兄さんをおもちゃにするのは冗談だったの」

「えー(・´з`・) ママの嘘つきー」

「真理ちゃんと泉ちゃんがいるから、少し遊んでもらいなさい」

しばらくセリフがなかったので存在を忘れていたが、
マリとイズミのこの場にいたのだ。
ちなみにミウの護衛の人も40余名いる。

小説は文字だけのメディアなのだ。
セリフがないと誰がここにいるのか把握できない。
しかも「」でしゃべらせると状況描写もせねばらなず、正直めんどくさい。

そのため台本形式
まり「」いずみ「」
で表記するのは合理的だと思う。

「ヽ(^o^)丿おねーちゃーんたち。あーそーぼ」

まり Σ(゚Д゚)ガチで
いずみ(;^ω^)やべー

ミウの息子は無邪気にもウージー(小型機関銃)を
片手に追いかけっこを始めた。
水鉄砲を撃つ感覚でトリガーを押している。

家具の娘たちはよく訓練されているのでうまく逃げ回っている。
負うつの小学生だったら流れ弾に当たって即死に違いない。


ぎゃーぎゃー わーわー

「ところで、賢人君」
「はいっ」
「年はいくつなの? 私と同じくらいだと思うけど」
「25です(>_<)」
「あっ、じゃあ二個下なんだ(*^▽^*)」

(;´・ω・)。o0 げっ、笑顔がひとみんにそっくりじゃねえか。
この人も瞳に負けないくらいの美人だ。
ミウさんは栃木県代表の美女なんだろうか。

「(*^▽^*) 私ね。今まで年下の男の子とおしゃべりしたことなかったかも。
 なんだか新鮮。それに初めて話す人とは思えないほどすらすら話せる。ふしぎー」

「ぼくも みうさん とは 幼馴染のお姉さんと久しぶりに話してる気分ですよ。
 みうさんってお綺麗ですし、こんなきれいな人と結婚できる旦那さんがうやましいな」

「あらやだ。綺麗だなんて言われたの久しぶりなんだけど(&#8904;&#9677;>&#9697;<&#9677;)。&#10023;&#9825;
 昔は旦那も良く褒めてくれたのよ。髪型変えたり新しい服を着た時も
 必ず褒めてくれたのぉ。まっ、私もそんなにルックスは悪くない方だと思ってるのよ」

「悪くないどころか、栃木県代表レベルの美女ですよ。
 僕の瞳は大学時代にミスコンに選ばれたことがあるんですが、
 ミウさんは出場のご経験とかは?」

「やだやだ。そんあのあるわけないでしょー!!
 私なんかがでたらお客さんに笑われちゃうよぉ。
 そもそも代表候補に選ばれないでしょ(´ー`)」

「へえ。美人の自覚がないタイプの方なんですか。
 僕から見てミウさんはすごく綺麗だし美人だと思いますよ」

(;´・ω・)。o0 自分を美人と思ってないところも瞳に被るとは……。
       この人たちは良い意味で鏡で自分の顔を見たことないんだろうか。

もう(*'▽') 賢人君ったら(≧∇≦) 口がうまいのねぇ(^○^)
 
ミウは、ばしんばしんと、賢人の背中を叩いて
足をふらふらさせている。しかも声もでかい。賢人は知る由もなったが、
ミウが座った状態で足を上下させるのは最高に気分が良い証拠である。

賢人は困ったことに女性を口説くのがうまい男だった。
決して仕事ができるタイプではないが、
ホストみたいな能力が自然と備わっていた。

 ミウ(なんでこんなにうれしくなっちゃうんだろ(*'▽')

賢人は女性を褒める時に真顔で言うので
無駄に説得力がある。低くてよく通る声もポイントが高い。
瞳を口説くときもこの手法を自然と使い、
今では賢人依存症にまですることに成功した。
まさにモテ男である。

ミウは、自分が全国紙(主に週刊誌)で共産主義の
美女として紹介されていることを知っている。
27歳の美人校長先生としてBBC日本支部のインタビューにも答えたこともある。

学生時代は全く美人の自覚がなく、
ライバルのマリーやエリカに激しく嫉妬していたが、
今になると自分の正しい価値に気づき始めて来たのだ。

だから誉め言葉は素直に受け取る。

「賢人君。よかったら本部で夕飯でも食べてくぅ?」

「は……よろしいんですか。僕はただの見学者なのですが」

(どうでもいいが、この人って既婚者なんだよな……)

「気にしなくていいのよ!!
 真理ちゃんと泉ちゃんもうちのジュニアとすっかり
 仲良しになってくれたし!!」

太盛ジュニアは、ウージーが一瞬で弾切れになって大泣きしていた。
マリとイズミはなとかしてこの敷地から脱走する方法を考えていたが、
やがて不可能だと悟り、ジュニアが泣き止むまであやしてあげていた。

「本部には空き部屋があるからしばらく泊って行っても良いよ!!」
「は、はぁ。ミウ様がそうおっしゃるのでしたら」

賢人はラインの着信音を消していたが、みゆきから 
ガンガンメールが送られてきてるのは画面越しに確認していた。
美雪は女のカンで賢人がまずい状況なのを悟っているのだろう。

冷静に考えたらまずいのかもしれない。
ここは中庭。校内の生徒からも丸見えだろう。
ミウは子持ちの女性である。
人妻を口説いているとでも噂されるかもしれない。

「あの(>_<)」
「ん?(^○^)どしたの深刻な顔して」

「僕がミウさんのことあんまり仲良くすると
 旦那さんに嫉妬されちゃうかなって。あはは」

「へ……(;一_一)?」

ミウは、鳩が豆鉄砲を食らった顔をして黙り、賢人を狼狽させた。
彼女が口を開くまでのたったの5秒間が辛かった。
仮に地雷を踏んだとしたら拷問されるのは確実。

「あははははっは。あっははは。あはははは。あはっははははは」

爆笑。

「あははははっはははははは!! あはははははは!!
 面白過ぎて笑い転げそう!! なになに今何て言ったの!!!
 りぴーとぃっと プリーズ マイ・ディアマン!! haa!?
 私の旦那が嫉妬?!??? あははははっははははは!! 
 嫉妬なんてするわけないじゃん!!!!!」

ミウは文字通り笑い転げた。
すると髪の毛とワンピースが泥汚れになってしまう。

「ミウ様っ!!」 「ミウ様のお顔が!!!」

護衛のソビエト人たちが、ウエットティッシュでミウの顔をぬぐう。
学園のイカれた女神を怪我した原因である賢人を一斉に睨む。
シャリシャリ出てきてミウと仲良しになってるのも気に入らなかった。

(´-`).。oO やべー。殺される。

「あー、面白かったあ!! あっ、ごめんね。一人で爆笑しちゃって。
 賢人には私の旦那が今どうなってるのか伝えてなかったよね!!」

ミウは護衛に指示し、ミウの旦那である高野太盛を連れてこさせた。

護衛の一人がそーっと車椅子を押して現れた。

「⊂⌒~⊃。Д。)⊃」

↑車椅子に乗った太盛。なんと廃人となっていた。

Д゚;) なに、これれえええええええええええええ!?

私はくどい文書を書くのを嫌う。
太盛の状態を文章化するよりも
「レーニン。最後」でぐぐってもらった方が早いと思う。
まさにこんな感じなのである。

口は開きっぱなし、体の左半分がマヒ。首も横に曲がっている。
目が宙を向いている。かつての天才の面影はそこにはない。

レーニンはストレスと消耗で脳の病気になり、三回くらい倒れた。

彼が最初に倒れた時は、すごい国際情勢だった。
(前身はロシア帝国)ソ連は第一次大戦から離脱し建国。
生まれたばかりの国なので国内政治に専念したい時期だった。

(連合国、各国による)シベリア干渉、対ポ戦争が発生。

※ぽ。ぽーらんどのこと
 う。うくらいな
 露 ろしあ

建国後さっそく外国との戦争。
それに加えて内戦も始まった。

シベリアのコルチャク軍
バイカルのセミョーノフ軍
ウクライナのデニーキン軍

等が、レーニンとトロツキーが作ったソビエト赤軍を
滅ぼすために三方からモスクワを目指して侵攻していた。

今の日本で例えると、安倍政権を倒すために
愛知県、山形県、奈良県あたりからそれぞれ
まったく別の反乱軍(たぶん80万)が東京へ向けて進行しているのだ。

さらに外国軍として中国、韓国、朝鮮、印度、露の
内政干渉軍(革命の阻止を目的)総勢16万が日本国内にすでに侵入している。
これに対ポ戦争を加えると、韓国陸軍の主力40万が大阪辺りに
出現して、陸自と血まみれの死闘をしている状況だ。

ロシア史上まれにみるほどの危機的な状況であり、
明日にでも国家が破滅してもおかしくなかった。
(これに比べたら日本のデフレなど可愛いものである)

だがレーニン達ボリシェビキは天才の集まりだった。

国防人民委員のレフ・トロツキーの活躍もあって
最終的にこれらの撃退に成功するが、
いずれも紙一重の結果であり、ソビエトは建国してから
このような事態に何度も直面していた。

最低でも三回から四回は滅亡の危機に陥っていたといっていい。

 ソビエト連邦建国の父。
地球人類を資本家の搾取から救うため、世界で初めての
社会主義国家を建国した、天才革命家のウラジーミル・イリイチ・レーニン。
初代人民委員会議・議長の

「⊂⌒~⊃。Д。)⊃」 晩年のお姿がこれである。

ストレスがたまった、などという次元ではない。

上の例に続いてやばかったのが、WW2の対ドイツ戦。
当初はドイツ一国だけの軍事力でもソ連軍を全滅させるほどの勢いがあり、
実際に開戦後一か月で地獄のモスクワ攻防戦が生起したほどだ。

あの世界最強のドイツ軍が国境線1400キロに渡り
侵攻を開始しており、すでにソ連軍の主力が200万近く撃破されており、
ウクライナ、ポーランド、ベラルーシが敵の手に落ちている。

スターリン 「:;(∩´&#65103;`∩);: ドイツ強すぎワロタ」

開戦後、パニックを起こしたスターリンは、執務室に2週間も引きこもって
一切の戦争指導を放棄した。2週間後に部下が様子を見に行ったら、
ストレスと消耗で体重が10キロくらい減っていたそうだ。

仮にドイツ軍がモスクワを陥落させていたら
自殺していたかもしれない。こちらもストレスなどと言う次元ではなかった。
国家破滅の危機が訪れているのである。


太盛「⊂⌒~⊃。Д。)⊃」

彼の場合は精神的ストレスと消耗のためだ。

レーニン、スターリンと似たような理由なのだが、
彼は別に国家の最高指導者だったわけではない。
戦争指導の経験もない。では、なぜこうなってしまったのか。

旧姓。堀太盛。過去作『孤島生活』『モンゴルへの逃避』の主人公だった人物だ。
『学園生活シリーズ』では主人公ミウの恋人役として登場し、
共産主義に振り回され右往左往。はっきり言って最低の人生を送っていた。

今作ではわき役として登場した彼は、なんと高野ミウの夫になっていたのだ。
彼らが結婚していたことに筆者も驚きだ。

結婚後、苗字が高野に代わった太盛は、
狂暴で、疑い深く、圧倒的な権力を持ち、
拷問が趣味の妻との夫婦生活を送ることになったのだ。

考えても見てほしい。

ミウの趣味は「反対主義者の拷問」である。
世界中を広く見渡しても
このような妻はまず存在しないだろう。

太盛がミウを憎んでいたのは言うまでもない。
月末の金曜日に学園地下の拷問ショーに強制参加させられたのが一番こたえた。
ミウの命令で罪のない生徒と教員を実際に拷問したのだ。
罪悪感が半端ではない。

夕飯に出された豚肉は、皿の上で吐き出してしまうほどだった。
赤ワインも人の血液にしか見えず、遠慮すると言ったらまた妻と口論になる。
ストレスで食事がとれないと顔がやつれ、肌が荒れ、思考力が奪われていく。

夜の生活も地獄だった。ミウが美人だが拷問狂なので台無しだ。
当然女として意識はできない。人の皮をかぶった悪魔に男のモノが
立つわけもなく、しなびたアサガオにみたいになってしまう。

ミウの手入れされた美しい髪の毛、きめ細かくて艶のある
肌に触れても、何も感じない。ミウは不満を言う。
レスになると妻との仲が犬猿になり、最悪拷問されるかもしれない。
そう思うと恐怖からますます立たなくなる。

この夫婦がまともに行為ができたのは最初の一週間だけだった。
運用それで妊娠できたから子宝には恵まれたのだが。

「拷問のショックでこうなってしまったんだ」

苦しい言い訳だが、ミウはしぶしぶ聞いてくれた。
とりあえず愛する太盛に寄り添った状態で
朝を迎えれば、ある程度は満足するらしい。

太盛はミウに気を使って、学園の仕事の補佐をしていた。
執事のようにミウのスケジュールを把握して
お付きの人となるだけの仕事である。

とにかくミウと一緒にいる時間を増やす。職場でも
家(住まいは学園本部)でもミウは太盛といるのを好む。
ミウを寂しがらせたら、学内の粛清が拡大するので大変だ。

美味しくもないご飯でもおいしい、と言い、笑い、
朝になったらおはよう。夜はおやすみなさい。
ミウの話はどんなにつまらなくて興味のあるふりをする。

ミウはどちらかというと口数の少ない少女だったが、
結婚後多弁になり、帰宅後、仕事の愚痴を
飽きずに2時間も話すこともめずらしくない。

共産主義権力のトップになると栃木県の行政だけでなく
国際機関との関わりも増え、多くの話題は外交と軍事だ。

ミウは新聞の電子版を欠かさず読んでいて、
英国生まれなのでロイターの英語版を読んでいた。

「Surprise news ever!! its all from the same man
 US president guddem tranp !!」

「The U.S. imports goods from China totaling
  $539.5 billion and the U.S. trade deficit stood at
  $419.2 billion in 2018, according to the Office of the U.S.」

トランプ氏の対中追加関税を言っているのだ。
太盛の妻はたまに日本語を話しているつもりで英語を
話してしまう癖があった。

「You see that? semaru. the world market says
the end of capitalism has begun.
 ohh sorry.it was a tittle of famous book.」

(太盛君も分かる? 国際市場が資本主義の終焉を
 予期しているようなものなんだよ。あっ、資本主義の
 終焉って言葉は私じゃなくて本のタイトルなんだけど…)

本人には自覚がないのだから、このクセは治らないのだ。
英語で話されても太盛は聞き取れない。
日常会話ならギリギリ分かるが、今回は外交の話だ。
よって時間の無駄以外のなにものでもない。

太盛は自らの男性機能が失われつつあるのが、
次第に怖くなってきて、
夜こっそりベッドから抜け出しすことがあった。

トイレにこもり、スマホでアダルトサイトを観覧していたのだ。 
(*´Д`)ハァハァ

見ず知らずの女たちの裸には普通に興奮できた。
例え一度も話したこともないAV女優でも、
男性は視覚情報で性的興奮を覚えるから欲情できるのだ。
プラトニックな恋愛の延長に性交渉を求める女性とは対照的だ。

(*´Д`)ハァハァ
やはり自分は若い男であり、決して不能者ではないのだ。
(*´Д`)ハァハァ 太盛はトイレに30分こもってから十分に満足し
廊下に出ると、笑顔の妻が腕組して待っていた。

(^−^)トイレにこもってナニをしていたの?
(;^ω^) 起きて…たのかい…

ミウは動画の中の女にさえ嫉妬し、太盛から
ネットを閲覧する権利をはく奪してしまう。
スマホもパソコンも取り合あげられ、代わりに
幼児用の絵本を手渡された。なぜ絵本…?

そんな生活を続けると
彼の精神をすごい勢いで消耗させ、それが蓄積していくうちに

「⊂⌒~⊃。Д。)⊃」 結婚後半年でこうなってしまった。

ミウが何度話しかけても返事をしない。
自分で食事もとれないので点滴に頼り、
筋肉が加速度的に衰え、骨も軟弱になる。

実年齢24歳の時に
肉体年齢82歳の老人と診断された彼は、
まさに生きる屍と称するにふさわしい。

さすがのミウでさえ太盛への興味を失ってしまった。
正直いつ寿命を迎えてくれても良いくらいだった。

太盛jr「ママー(∩´∀`)∩ おなかすいたー」

一方、子宝には恵まれた。

太盛によく似て、おっとりしたたぬき顔の愛息子。
ぷっくりした唇。くりくりして愛らしい瞳。
女装すれば一瞬で女の子に変身できるほど、女っぽい顔

息子にしては珍しく父親によく似ていた。

ミウが慈愛に満ちた瞳で彼を見つめ、頭を撫でてあげた。

よしよしヾ(・ω・`) あとでおやつ食べましょうね。
えへへ(*´σ`) 

「さて賢人君。さっきの話の続きだけど、私に旦那はいません」

「な、なるほど。こんな言い方をしたらお気に触る
 かもしれませんが、ミウさんは未亡人ということに……?」

「うん。自分ではバツイチだと思っているよ」

「なぁあんだ……なら初めから全然気にしなくて良かったんですね!!」

「そうそう。私たちって初対面の割には仲良しじゃん!?
 きっと気が合うんだよ」

「たしかに。俺達って愛称良いのかもしれませんね!!」

「うん! (*^▽^*) もう敬語は使わなくていいからね」

「はい?」

「だから、敬語。私は親しい人に敬語を使われるの嫌なの。
 あと名前もミウでいいから。さんはつけないでくれる?」

「年上の方なのに、いいんですか? ……じゃなくていいの?」

「いいんだよ!!(*^▽^*)」

「分かったよ!! ミウ!!(∩´∀`)∩」

「賢人は話が分かる子だね!!(^○^)」

賢人はしばらく学園本部へ泊まらせてもらうことになった。
そしてこれが、全ての惨劇の幕開けになるとも知らず。


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