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作品名:令和10年 兄妹の物語 第二シーズン 作者:なおちー

第26回   まり・いずみ「ヒマラヤ山脈に行ったら死ぬよ」
・ブリタニカ国際大百科事典

ヒマラヤ山脈
ヒマラヤさんみゃく
Himalaya Range

インドと中国のチベット高原の間に西から東に走る山脈。
山名はサンスクリット語の himaālaya(雪のすみか)を意味し,
中国では喜馬拉雅の字をあてる。

西はインダス川から東はブラマプトラ川にいたる全長約 2500km,
南北の幅は 200〜400kmの山地。
世界の最高峰エベレストをはじめ多くの 7000m級,8000m級の高峰を含む。

ヒマラヤに挑む前に色々と問題があった。まず賢人は金がない。
小銭入れに740円しか入っていないことは前述した。

さらに外国に行ったことがないのでパスポートを持っていない。
いずみとまりも同様だ。加えて彼女ら二人は未成年であり、
親の同意なしに連れ出すことは難しい。

最も重大な問題は、賢人に登山の経験が無いことだ。
登山には足腰を中心とした体力の他には、
山の過酷な気候条件を乗り切るための知恵と経験が必要である。

タイトルで説明した通り、山を舐めている者は死ぬ。

本格的な登山となると、16キロ〜20キロ近いザックに
テント、食材、医療品を含めた各種道具を満載して登ることになる。

ヒマラヤはチベット高原であり、まず空気が薄い。そして寒い。
平地を歩くだけでもフラフラするほど過酷なのに登山とは、笑止千万である。

(∩´∀`)∩ おにーちゃんは、おバカさんなんだね

賢人「う、うるせー。ヒマラヤは冗談に決まってるだろ」

(^○^)それより、どーするのー? お兄ちゃんが早く行き先を
   決めてくれないと、明日にでも美雪のおばさんが、やってきちゃうよ

(#^ω^).oo0(さっきからミユキをおばさんって呼ぶなよ)

(;゚Д゚) な? どうしてだい? 美雪に俺の居場所をばらしたのかい?

(^○^) ちーがうよ。お兄ちゃんのスマホが
    位置情報を勝手に送信してるんだよぉ

( ˘ω˘ ) 美雪さんがお兄ちゃんのスマホに
     スパイウェアを仕込んでるから、位置がバレちゃうんだよ

(スマホのマップ機能かよ!! くそ、めんどくせーことになった!!)

決して美雪のことは嫌ってない。むしろ愛してる。
でも今は会いたくなかった。
賢人は、むしゃくしゃしたのでスマホを捨てようかと思ったが、
不思議なことにすでに電源が切られている。何度押しても電源が入らない。

(´-`).。oO そういえば…

10話くらい前に、瞳によって電気ポットに投下されて
お釈迦になったことを思い出した。

賢人「よく考えたら俺のスマホ壊れてるじゃん!!」

(∩´∀`)∩ そーなのー?
(=゚ω゚)ノ なら位置はバレてないねー

(;゚Д゚) だとしても時間の問題だよ。美雪の執念はすさまじいんだぞ。
      どんな手を使っても俺の居場所を探し出すことだろう。

ここから逃げよう。と賢人は言う。

逃げる。

文字にするとたったの三文字。
その意味は思ったよりも深い。

逃げてどうにかなるのか。
最愛の妹を含む女二人を、あの団地に残して。
そんな身勝手が許されるのか。
いや許されるのだろう。

賢人は今日まで美雪と瞳の執着とよく戦ってきた。
逃げたいと思ったことは一度や二度ではない。
結果的に彼は女によくモテた。それも不特定多数の女性からではなく
身近にいる特定の女性からよくモテた。ちょっと異常だった。

(坂上嬢ほどの美人が、なんであんな奴に…)

社内でこう思う男性従業員はたくさんいた。
実は鬼軍曹の主任も同じように思っていた。

困ったことに賢人自身も同様の認識であり、
年齢はともかくルックス、金、生まれの違い。どう考えても釣り合わない。
実際賢人の容姿は端麗な方なのだが、自己評価は低かった。
どのみち渋谷兄妹のルックスでは瞳の美しさに遠く及ばないのは事実だが。


(´っ・ω・)っ おにーちゃん、どーするのぉ?
(・ω・)ノ ゆーじゅーふだーん。早く行き先決めてよー。


賢人はアリストテレスの顔で考えた。
一分経った。ついに行き先が思いつかず、

――君たちに任せるよ。

(^_^) ←の顔で言った。
   ただの笑顔でなく諦観も混じっていた。

小学生の女の子が遊びに行きたいところ、ここはちょうど千葉県なので
ディズニーやら幕張メッセなど楽しそうな場所はたくさんある。
JRで都内に行くのもいいだろう。都会の人込みなら妹の追跡も容易ではないはずだ。


「強制収容所を見に行きたい」

( ゚Д゚)……????

聞き間違えに違いない。そう思いたかった。


「マリも強制収容所がいいよぉ☆」

⊂⌒~⊃。Д。)⊃ ???

なるほど。この子達は市役所に遊びに行くのが趣味な子供達だ。
人が死んだり青酸カリを飲んでいるところを見ても動揺しないほどの。

令和10年。強制収容所はすでに日本各地にあり、反自民党的な分子は
ことごとく収容され、民間企業以上の奴隷労働を強いられている。

カグちゃんの娘さんは普通の子ではないことを賢人は知っている。
だから可能な限り自然に返した。

――どこの強制収容所がいいの?

「あの有名な栃木県のぉ」

思わず気を失いたくなる。

栃木といえば北関東。埼玉県の隣の県である。
栃木県の南部には、フラワーパーク、7福伸の神様(神社)、
足利学校など様々な観光地で有名な足利市(あしかがし)がある。

その足利氏とは、日本国の行政区画から独立しており、
実質日本にして日本にあらずと、多くの国民に恐れられている場所である。

足利市の行政を報道しに行ったマスコミたちは、直ちに身柄を拘束され、
強制収容所へ送られ、現在までに70人の報道関係者が強制労働させられている。
さらに足利市に隣接する、隣近所の市町村からも反革命分子を見つけては
強制連行しているとの噂である。

『ソビエト社会主義』

足利市の行政は資本主義を採用していない。
ソ連を再現した共産主義体制が敷かれていて、
市の行政に反対する者は、反革命主義者とみなされ、
容赦なく強制収容所にぶち込まれる。

国際スパイ組織・第三インターナショナル。別名コミンテルン。
その本部は足利市にある。
全世界から熱烈な革命的意思を持つ共産主義者が集まっているのだ。

住民らは自らをソ連人と呼び、日本人とは呼ばない。
そんな呼び方をする奴は反革命分子だ。

『栃木県の足利市はぁ……www
 ちょっと危険そうなので放置しますねwwww』

自民党独裁のトップ。アベ首相でさえ手を出すのをためらわれるほどである。
経団連の奴隷。企業の利益のために
全国民を虐待することを是正とする自民党が、共産主義の
自治体を容認するなど、異例の事態といえる。

現在の足利市の軍事力は、陸軍兵力が予備役含めて500万。
これは現実世界の韓国陸軍と同等の兵力であり、
軍事強国ひしめく極東地域の中でもトップクラスである。

※予備役
徴兵経験者は、普段は日常生活(仕事)を送っていて、
緊急時に召集されて兵隊になる。緊急用の戦力と覚えればよろしい。

戦車などの機甲戦力は削減が薦められ、現在は5000両ほどだが、
その分ミサイルに力を入れている。足利市が東京に向けて
照準している短距離ミサイルは、最低でも2000基と言われているから、
北朝鮮が保有する短距離ミサイルのほぼ2倍の規模である。

もっとも恐ろしいのは、自動報復装置の存在である。
これは、自衛隊などの軍隊に攻撃を受けた場合、コンピュータが
自動的に危機を判断し、足利市の全てのミサイル基地から無差別に
ミサイルが発射されるシステムである。

このシステムはかつてソ連のモスクワにも存在し、
アメリカ本土を三度焼き尽くすほどの
核ミサイルが発射されるようになっていた。

「足利に言ったら死ぬぞ」

賢人は真顔で言う。

ヾ(≧▽≦)ノ ちょっと遊びに行くだけだから大丈夫だよ
(∩´∀`)∩ 知り合いのおねーさんがいるから 会いに行きたいのー

賢人は死ぬのが怖い以上に、自分が強制収容所送りに
される可能性を悟り、ついにパニックを起こした。
死ぬより恐ろしいことは、永遠に痛めつけられることである。

手足をジタバタさせて散々駄々をこね、マリとイズミをあきれさせたのだが。

『早く行きなさい』

作者からの指令によって無理やり行かされることになってしまった。


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彼らは栃木県の佐野市に入ってから、市の境の山沿いに掛けて
明らかに不自然なバリケードがそびえ立っていることに気づいた。
賢人のレンタカーのハンドルを握る手に力が入る。

検問所が見えた。
武装したソビエト人が二人立っている。
男性と女性の兵隊のようだ。
目がギョロっとしていて、髪の色は金髪だ。
背は日本人よりずっと高くて、軍服越しにも細身なのがわかる。

「そこのクルマ。トマレ」

賢人は、震えて声も出せない。
古い友人に会うためだと説明しろと。後部座席の
マリとイズミに言われるが、いざ本物のソ連人の男女を
目の前にすると恐怖で気が狂いそうになる。

「びィ− ヤーポニィエース。だぁ?」
「は、はい。僕は日本人です」
「えーた、ザリイェース、サビぃエツキ、スタァーンチカ。にーシェぼォー」
「????」

さすがに露語を続けられると何も分からない。
賢人はスマホで調べた簡単な挨拶しか分からない。

「うぃ かむ ひあ とぅ しー みう たかのぉ」
「わっと?」

真理が、何か言っている。

「みう いず あわ おぅるど ふれんど。
 うぃ りりぃ わんと とぅ しぃ はぁ」

下手くそな発音だが、英語のようだ。

真理が、スマホで大人の女性とツーショットで映っている写真を見せると、
急に敬礼をするのだった。しかも最敬礼である。

「ミウ閣下のお知り合いの方でしたか!!
 そうとも知らず大変に失礼なことをしてしまいました!!」

(^○^) 私たちは気にしてないよー 
(´∀`) ねー

「ミウ様は現在学園の本部におられるはずです。
 よろしければ直接ご案内いたしましょうか?」

相手は小学生の女の子だと言うのに、この口調。
何よりびっくりなのが、ソビエト人と思われた二人が
日本語がペラペラなことだ。変なアクセントもない。

(^○^)案内はいらないよ。住所だけ教えてー
(´∀`) お兄ちゃんのナビで行けるからねー

「はっ、左様でございますか。お嬢様方!!
 直ちに検問所のゲートを開放。
 お嬢様方の車は狙撃の対象から外すように
 兵に指示を出しておきます」

実は二名のソビエト人は、金髪に染めただけの日本人の男女だった。
ソ陸軍の軍服を着こなしてロシア語を話すとそれらしくみえただけのことだった。

ちなみに不審な車が国境(県境や市境)のゲートを通過した場合、
まず運転手が狙撃される。それでも死ななかった場合、対戦車用
ロケットランチャーが発射される。

それでもダメな場合、攻撃用のヘリ、精密爆撃機、短距離弾道ミサイルの
準で攻撃を受けることになる。はたしてそこまで必要なのか。
普通に考えてロケランを食らった時点で終わりだと思う。


(*'▽')   おにーちゃん。早くナビに住所入れて
(´っ・ω・)っ お、おう。めんどくせえから郵便番号を入力だ
ヾ(≧▽≦)ノ  わー。でたぁー


〒326-0004 栃木県足利市樺崎町1723

足利インターを降りてすぐのところは、山のふともの小さな町と
なっていて、八幡宮がある。由緒正しき神社なのだろう。
面積は決して広くない。いかにも田舎にありそうな神社だ。
大きな一本杉が特徴であある。某エロゲ原作のアニメが
放送された時に、舞台となったこの町がちょっと有名になった。

足利市には7福伸の名の通り有名な7つの神社があるが、その一角がここである。

そして恐るべきことに、この神社のすぐそばに件の「学園」が存在した。


Σ(゚Д゚) この巨大な軍事施設が、学園……なのか?

過去作。学園生活シリーズに登場した「学園」である。
学内で共産主義革命が起きる前は、法人経営なので
学校法人○○学園と言った名前が存在した。

しかし共産主義者にとって法人が経営することが
資本家による富の独占と映るので、学園に付属する部分の名前を廃止した。
よってこの学校の名前は「学園」なのである。

「貴様らはダレだ」

校舎の前には、20を下らない警備兵が立っていて、賢人らへ
銃を向けていた。真理ちゃんが検問所で渡された入園許可書を
見せると、またしても警備兵らはひれ伏し、直ちに学園内部へ案内された。

門の前は巨大なバリケード。そこを通過すると、
学園内を囲うように大きな4つの監視塔が目に入る。
監視塔には重機関銃と巨大な大砲、サーチライト、レーダーが設置されている。

A、B、Cの三つの棟が渡り廊下によって繋がっている。
上空から見ると、各校舎がコの字になって連結している。

なぜか英国風の緑が豊かな庭園。ギリシア風の彫刻のある噴水。
庭園内をぐるりと回れる、アーチを描く美しい遊歩道。
中庭に入ってみると、そこにも素晴らしい四季折々の花が咲く
花壇が合って、お昼休みに学園内を散歩するだけで、
ちょっとした観光気分に浸れるほどだ。

お花とセットで裸婦を中心としたブロンズの彫刻が、
いたるところに並んでいる。一見しただけで
この学校の経営者が美を愛する人なのだと分かる。

校門の延長線上にはB棟がある。
B棟の玄関の前で、いかつい警備兵の中心に一人の女性が立っていた。

年は、賢人より少し上だろうか。
背丈は157センチ。気取った様子はないが、
目鼻立ちは整っており、遠くからでも存在感がある。

フレンチスリーブ・デザインのチェックのベージュ柄ワンピースを着ていた。
ハイウエストで腰が程よく引き締まっている。
決して足が長い方ではないが、よく似合っていた。
動きやすそうなカジュアルタイプのサンダルを履いている。

「初めまして」

その目つきには不思議な威圧感があり、近寄りがたい。
両手を膝の前で合わせ、客人をもてなす態度をしているのだが、

(>_<)。o00 なんかこの人、怖いぞ

賢人はこの人のうわさを聞いたことがあった。
実質栃木県の行政をすべて支配し、その頂点に君臨する女性。

元々はクラスで目立たない少女だった。
人より変わったところと言えば、帰国子女で英語がペラペラなことくらい。
彼女はクラスカーストでは、女子のモテない方のグループに属していた。
それなのに生まれ持った美しさから男子によく話しかけられたので、
中学では同級生の女子の嫉妬に苦しめられた。

やがて紆余曲折を経てこの学園で筆頭のボリシェビキとなり、
卒業後も学園に君臨し続け、現在では校長の地位にいる女性。

「私の名前は名乗らなくてもたぶん知っているよね?
 学園の見学希望だって聞いてるから、
 私が直接案内してあげる。こっちへ来て」

高野ミウだった。令和10年。年は27になるから、賢人の二個上だ。

「( &#728;&#8226;ω&#8226;&#728; ) ママー。あの人たちだれー」
「お客さんよ。良い子にしてないとだめよ?」

ミウのスカートの裾をつまむ、小さな男の子がいた。
聞いてみるとミウの息子だと言う。年は2歳。
まだまだ幼児言葉が抜けず愛嬌がある。
息子の愛嬌のある垂れ目は、少なくとも目元は母親には似てなかった。
顔の輪郭部分は母にそっくりでほっそりしている。

「あそこの監視棟はね」

ミウは、息子と手を繋ぎながら、国家予算並みの費用が
かかった監視塔の説明をしている。監視棟一つ立てるのに
自衛隊の戦闘機が14機も買えるという。

6角形で高さが6メートルを超える、コンクリート製の棟だが、
むしろ要塞と呼んだ方がふさわしい。イスラームのミナレットを
モデルにデザインされており、厳かで美しくすらある。

高性能レーダーをはじめ最新式の迎撃装置が満載されており、
ある程度の空爆やミサイル攻撃にも対処できる、
陸上型迎撃システムなのである。

(∩´∀`)∩ わー。学園の軍事施設。始めて見た―。かっこいー
(*‘ω‘ *) 写メ取りたーい

「真理ちゃんと泉ちゃんだっけ? 
 残念ながら学園内は撮影禁止になっているのね。
 銃殺刑になってもいいなら写真撮ってもいいけど」

(ノД`)・゜・。 ごめんなさーい
((((;゚Д゚)))) ガクガクブルブル ひえー

「なーんてね。ジョークです。大切なお客様を銃殺するわけないでしょ」

ミウの周りを警備している兵隊の数、軽く40を超える。
皇族の方並みの護衛である。
ところでここまでの会話で気づいた方もいるかもしれないが

賢人('Д')(マリとイズミってミウさんの友達じゃなかったの?)

そう。ミウとこの二人は初対面だった。
件の警備兵に嘘をついて学園に入ってしまったのだ。

ミウも、もちろん分かったうえで見学許可を出している。
部下から不審な車がいると報告を受けた時、
子供がぐずって言うことを聞かない時だった

『(ノД`)・゜・。うわーン。ママー。
 僕もテレビで見たユニバに行ってみたいよー』

『ダメよ。外の世界は危険がいっぱいなのよ。
 あなたは物心がつく年齢になるまで
 学園の中で生活をしなさい』

モニター越しに賢人のレンタカー(プリウス)を
見た時は、直ちに銃殺の指示を出そうと思っていたのだが、
なぜだか気分が乗らなくて、彼女らの嘘をそのまま通してしまった。

(新しいおもちゃが、自分からやってきたと思えば)

ミウは、賢人、イズミ、真理の三人を薬づけにして
子供用のおもちゃにしようと企んでいた。
子供がわがままを言う時は、拷問用のおもちゃを
あたえてストレスを解消させる。これが、高野ミウが
思いついた究極の子育ての方法だった。


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