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作品名:令和10年 兄妹の物語 第二シーズン 作者:なおちー

第18回   美雪「瞳をぶっ殺したい!!」 瞳「それはこっちのセリフよ!!」
帰宅後の夕飯の時間である。

今日もベルーナで仕入れた冷凍肉を自然解凍して食べる。
最近市内では停電が頻発しており、
電気が使えないので電子レンジはただの箱。
蛍光灯も使えないため食卓には二本のろうそくが立てられている。

このろうそくとてお店で買ったわけではない。
行政サービスとして市民に配給されたものだ。
賢人らの団地では各家庭に10本が支給された。

チャッカマンは贅沢品なのでマッチで火をつける。
困ったことにマッチを満足に使える人が
いなかったので、一本の火をつけるだけで大いに苦労した。

ご飯は、朝炊いた分が残っていたので助かったが、
三人分には足りない量だ。賢人は女たちに遠慮し、
瞳は賢人に遠慮し、美雪も彼に遠慮した。

そして瞳が、美雪はデブだからご飯を抜いたほうが良いと主張し、
美雪は瞳がおばさんだからご飯抜きでカロリー制限すべきだと言い返し、
いつもの口論が始まった。

瞳「前から思ってたんだけど、美雪さんのお腹周り大丈夫?
  ちょっと肉付きが良いのを通り越して小太り。いえデブよね。
  あなたって胸が大きいけどお腹も出てるのは気のせいかしら」

美雪「お兄ちゃんは、がりがりの女より
   ふくよかな人の方が素敵だって言ってましたけど」

瞳「いやいや。何言ってるのかしら。デブとふくよかは違うのよ。
  参考までに体重計に乗ってみたら? 女子大生の平均より重いはずよ。
  お菓子の食べ過ぎで顔にニキビも出来てるじゃない」

美雪「なんだと!! あんたみたいな厚化粧に言われたくないよ!!」

瞳「私はナチュラルメイクだって何度言ったら理解できるの?
  あなたみたいに化粧に時間かけないし、化粧をしても
  ほとんどすっぴんと変わらないって賢人も言ってたわよ。
  ね? けんと (*^▽^*)」

賢人「う、うん (>_<)」

美雪「お兄ちゃんからもこのおばさんを叱ってあげてよ。
   最近事あるごとに私に喧嘩売ってきてマジうざすぎ。
   これだからお年寄りと暮らすのはストレスたまるよ」

賢人「は、はは (>_<) まあまあ ( ゚Д゚)」

瞳 (# ゚Д゚)ギャーギャー 美雪(#^ω^)ワーワー

賢人(何気ない口喧嘩に思えるが、二人の殺気がすごい。
    胃が痛くて飯が食えねえ……ヽ(^o^)丿
    しかもたまに俺に同意を求められるから
    聞いてないふりをしてもだめだ)

ここまではいい。
だが今日の喧嘩はいつもと少し違った。

瞳「あの人(前話参照)たちが死んだのは美雪さんのせいよ!!」
美雪「 ( ゚Д゚)ハァ?」

瞳「あなたが嘘でもいいからお金をあげるって言ってしまえばよかったのよ。
  そうすれば、あの人たちはあの日は気を取り直して帰ったと思うわ」

美雪「瞳さんって頭悪いんですか?
   すぐばれる嘘をついたところで実際にお金をあげないんだから
   最後は同じ運命ですよ」

瞳「たとえ一時の希望でも良かったのよ。
  人間は明日への希望があれば生きていけるわ!!
  だって希望のない人生なんてただの苦痛よ。
  そんなの生きているって言えないわ。
  愛がなければ生きている意味はない。愛は希望なのよ!!」

美雪「 (;゚Д゚)何言ってんのこいつ…」

賢人(いまのは聖パウロのコリントの信者への手紙だと思うぞ…
   ひとみんってたまに新約聖書の引用をするんだよね。
   ガチのキリシタンってやつだ……。
   その辺の女より神々しい美しさがあるのは宗教も影響しているのかな)

賢人も聖書に少しは詳しくなった。

瞳にしつこくすすめられて、聖書を読むようになったのだ。
本物の聖書は重い。あまりの文章量の多さに圧倒されたが、
簡略版の聖書も渡されたのでそっちを読ませてもらった。

いちページごとに絵が付いていおり具体的だ。
賢人は、読みだしたらすっと頭に入ったのでびっくりした。
(ドレの旧約、新約聖書シリーズ。筆者のおすすめ)

瞳「私はね美雪さん。あなたの自分勝手で自分中心に
  物事が回ると信じている、幼稚な発想や考え方がムカつくわ」

美雪「あんたこそ人のこと言えるんか、こら。
   今までうちの兄の前で何回ヒスッたか数えてみいや」

瞳「あなたには信仰心がないからダメなのよ (; ・`д・´) 」

美雪「しんこ……はい? ( ゚д゚)」

瞳「やはり人間はお金や政治のことばかり考えて
  生きても幸せにはなれない。
  神の道(ロード)を歩むことはできないのよ。
  いい? 信仰心がない人は、盲目の状態で
  道を歩いているのと同じだと主・イエスが…」

美雪「(;一_一) あーちょっと待ってもらっていいですか。
   いきなり我が家で宗教勧誘するのとか
   すごく迷惑なんで、よそのお宅でやってもらっていいですか?」

瞳「でも、本当に大切なことをあなたに教えてるのよ!!
  愚かで無知なあなたのためにね!!」

美雪「うざ ('Д') 瞳さんって本当に変わり者って感じ。
   何が神よ。神なんているわけないじゃん。だって誰も見たこともないし。
   その聖書ってのも誰かが考えて書いただけでしょ」

瞳「はぁ……( &#728;ω&#728; ) やっぱりこの子はすでに手遅れね。
  目で見た者しか信じない。典型的な日本人の発想だわ。かわいそう」

美雪「おい (^_^メ) 喧嘩売ってんのか。その顔やめえや」

賢人「俺は瞳さんの言ってることはなんとなく伝わっているよ。
   確かにお金お金ってこの小説はお金のことばかり
   話してて俗社会のことしか考えてない。たぶん作者は馬鹿なんだろう」

美雪「私はお金の知識を得るのはむしろ正しいことだと思う。
   だってお金がなくてどうやって幸せになるのよ。
   信仰心でお腹が膨れるならいいけど」

瞳「死んだ後の世界にまで、お金を積んでおくことはできないのよ!!」

美雪「 (´・ω`・)エッ?」

瞳「美雪さん、あなたは現世では億単位の資産を保有しているわね。
   でも死んだ後もそのお金を持っていけるのかしら?
   違うわよね」

美雪「は? 死後の世界って何? そんなもん存在すんの?
   死んだら無に変えるだけでしょ」

瞳「あー、もうだめね。この子。
   どうしてこんな子に育っちゃったのかしら」

美雪「こら。いまなんて…」

賢人「はいはい喧嘩しない。ヒトミさん。
    俺の妹は無神論者だから神様とか一切信じないんだよ
    もちろん仏教も神道も信じてない。幽霊の存在もね」

美雪「ちょっと待って。幽霊って?」

賢人「いるだろ幽霊」

瞳「うん。いるわね」

美雪「 ( ゚д゚)」

この団地にも普通に死んだ女や老人の霊が夜うろついており、
賢人や瞳は何度も外の通路や階段などで目撃している。

先日飛び降り自殺した隣の部屋の奥さんと旦那の例は、
ベランダの外で無表情で宙に浮いていたという。
瞳に至っては霊感が特に強く、子供の幽霊と会話する直前まで至ったらしい。

美雪「((((;゚Д゚))))ガクガクブルブル
   いやぁぁぁあああああぁぁぁぁぁぁぁあぁあぁ
   この団地から出ていくぅぅぅぅぅ!!」

賢人「別に実害があるわけじゃないから大丈夫だと思うぞ」

美雪「いやいやいや。幽霊がわんさかいるってだけで
   普通に考えてアウトでしょ!! ほんまにあかんわ!!
   この団地が安いのってやっぱ理由があったんや!!」

瞳「あなたは信仰心がないからすぐ取り乱すのよ」

美雪「信仰心と関係あるの!?」

瞳「心持ちようよ。聖書では目に見えない者の力、精霊の存在、
  主の奇跡を見ずして信じられる者が幸いだとされているわ。
  神様に愛される人ってそう言う人のことを指すのよ」

美雪「宗教勧誘やかましいわ!! そんな能書き垂れとる場合と
   ちゃうやろが!! 自分なに普通に話すすめとんねん!!」

賢人「分かった分かった。そろそろ落ち着こうか」

美雪「これが落ち着いてられるかい!!
   自分の住みかで幽霊がでとんや!!
   大問題を通り越して直ちに転居を考えなあかんレベルやぁ!!」

瞳「幽霊ごときでガタガタ言わないで頂戴」

美雪「ガタガタ言うわ!! むしろ瞳が冷静過ぎやろ!!」

賢人「だから、悪さをする霊じゃないんだって」

その後、美雪は深夜までギャーギャー騒いだが、
実害がない幽霊じゃないことで納得し、ようやく収まって寝た。

どのみち美雪は霊感が弱いので目には見えないのだ。

ちなみに筆者も幽霊はとある職場で何度か見たことがある。
私の後ろを14歳くらいの、着物を着てタビを履いた少女が
タッタッタッと走り去っていった。その時は寒気よりも
可愛い女の子っぽいオーラを感じて不思議な気分だった。

だが恐ろしかったのは、『足音』『床を蹴る感触』を
確実に感じたことだ。影だけが、私の後ろを去って行った。
しかもその影は無色透明で、朝日を浴びて七色に輝いていたように見えた。

他にトイレから定期的に出てくる初老の男性なのだが、
『黒い残像』なのである。
会社では社長の亡くなった親の霊だとされていて、
会社の経営が心配で我々を見守ってくれているらしい。
これは筆者の見間違えでなく、従業員の6割の人の目撃証言がある。

その職場は、霊感の強さは関係なくほとんどの人が
見えてしまうほど霊の力が強いのであろう。
私はその会社に勤める前までは幽霊を見たことがなかった。

書いている間にまた怖くなってしまったので
デノンのミニコンポで音楽でも流すことにしよう。


美雪が兄と一緒に寝たいと言うので、いつも通り寝たのだが、
賢人は妹が寝静まったのを見計らってそっと布団から出た。

賢人 (>_<)。o00 ねてるのかな……?

瞳の部屋の扉を小さく開け、中を覗く賢人。
瞳は布団にうつぶせになって聖書を読んでいた。

部屋は真っ暗だ。どこで買ったのか、電気スタンドの明かりを
頼りに真剣なまなざしで神の書を読んでいる。

瞳 Σ(゚Д゚)..o00 ケント君?

驚いたのは瞳も同じだった。
賢人は夜這いに来たことは一度も無い。
実は瞳の側としては、いつでも来ておkだったのだが、
女の恥じらいがあるので自分からは言い出せないでいた。

だからこの時も、瞳は賢人がそこにいることを気づいていながら
聖書に目を落とすふりをすることにした。だが、すでに婚約を
結んでいるのに何を今さらと思い直し、自分から声をかけた。

「そこにいるのは賢人ね。こんな時間にどうしたの?」
「君に会いに来たんだ」

ついに来たのかと、瞳は身構えるよりもうれしい気持ちが勝った。
今日は生理が終わって2日目であり、一般的には安全日である。
実は薬局でこっそり買っておいたコンドームもある。

瞳は超絶美人なのになんと処女だったのだが
結婚するまで純潔を守ったのは信仰心の強さの証であると
むしろ誇っているほどだった。

「賢人。いいわよ」
「え?」

瞳の時間が一瞬止まる。
彼がなぜ呆けたのか、にわかには理解しがたかった。

「私はいいわよって言ったの」
「なにが?」

分かっているくせに、
女の側から言わせるつもりなのかと、瞳は少し苛立った。

そのまま待っていても、彼が何も言いだそうとしないので
やけになってしまった。瞳は聖書を投げ捨て、布団から
勢いよく起き上がって賢人の頬をつかみ、キスをした。

「な、なんでいきなりキスしたの?」

瞳は、はげしく混乱した。

賢人と瞳は、すでに婚約を結んでおり、同居をしている。
互いの母の同意は得ている。そして今日の場合は
賢人がついに夜這いをしに来たと考えるのが妥当だろう。

筆者から見ても瞳に非はない。
ではいったい何が間違っているのだろうか…。

「俺は聖書の内容が難しくてよく分からないから
 瞳に解説してもらおうと思ったんだけど」

「あなたって人は……どこまで……人の気持ちに鈍感なのよおおお!!」

坂上瞳。今年の夏で33歳の誕生日を迎える彼女は、ついに切れた。
深夜の1時半のことであった。

「どんだけ女心が分からないのよ!!
 もう怒ったわ!! 妹とだけは添い寝する癖に
 私のとこには全然来てくれないのは、私のことを結局は
 女として見てないってことなんでしょうが!!」

「添い寝? ああ、そういうこと。
 だって俺達まだ結婚してないんだし、
 そういうのはまだ早いんじゃないのかなぁ」

この男はすでに枯れているのか……?

草食系男子が増えたと言われて久しいが、
こんなタイプの男性が今のスタンダードなのだろうか。
筆者の常識では男性が女性と付き合いたい理由の
大半はそっち目的だと思うのだが……。

「賢人おおおおおお!!」
「はぃぃい!? Σ(゚Д゚)」

「あなたって一体なんなのよおおおおお!!
 私が悪いの? 私の体に魅力がないから悪いの!?
 それとも私が30過ぎの女だからなの!?
 体が細いからダメなの? あなたが望むなら
 運動を止めて妹みたいに太ろうか?」

「 (´・_・`)  体型は関係ないって。
  瞳さんは美人ですごく俺の好みだよ。
  何度も言ってるだろ」

「じゃあ、なんでぇ!? どうして妹とは一緒に
 寝てるのに私とは寝てくれないの!?」

「妹と寝てるのはノーカンだよ。寝たうちに入らない。
 だってただの妹じゃないか」

「その年で添い寝とか、言っちゃ悪いけど
 セックスしてるとしか思えないのよ!!」

「胸やおしりを触るだけで最後までヤッてるわけじゃないって。
 それに小さい頃からたまに一緒の布団で寝てたからその延長だよ」

「そんなのいいから。もうはっきり言ってくれる?
 あなたは私に興味ないのね? つまり、そういうことなのよね?」

「興味なかったら婚約してないって。瞳のことは好きだよ」

「うそうそ。そんなのうそ。嘘だああ!! もうだまされないんだから!!
 賢人は私のことなんてなんとも思ってなかったのよ!!」

「あのさぁ(´・ω・`) そんなに瞳さんは俺に手を出してほしいのかい?」

「 うっ ('Д')……そ、そうよ悪い!? 
  だって私とあなたはこれから夫婦になるのよ!? 
   夫婦なら夜の生活があるのは当たり前じゃない!! 
  そ、そもそもセックスレスは離婚しやすいって言われているのよ!!」

「そっか。じゃあ、おやすみなさい (=゚ω゚)ノ」

「ちょっと待ちなさい (; ・`д・´) なに勝手に部屋に帰ろうとしてるの。
 今の流れのどこでおやすみの挨拶をするタイミングがあったの」

「話が長くなりそうだったから」

「あなたねえ……(-_-メ) ふざけないでよ(; ・`д・´)!!
 私は真剣に話をしてるのよ!!!」

「前も言ったけど瞳さんのヒスは苦手だから 
 相手にしないことに決めたんだ。じゃあ、おやす…」

「逃がさないわよ卑怯者!!」

「なにするんだ。やめろー」

瞳のすごい握力で腕を握られてしまい、
「あぎゃー(´ρ`)」賢人は麻酔銃で撃たれた
チンパンジーの顔をして脱力した。

瞳は恐るべき怪力で片手で賢人を布団の上に寝かせ、
その上に自分がまたがった。女が優位になった大勢である。

賢人はなんとか彼女のマウントを外そうと必死に
あがくが、瞳は体重をかけているのでどうやっても
逃れることはできない。瞳は早朝ジョギングで足腰も鍛えられているのだ。

賢人はまさか女に貞操を奪われることに屈辱を感じていたが、
彼の胸にぽつぽつと零れ落ちるのは、瞳の涙であった。

「け、賢人には……もう裏切られることないんだって
 安心してたけど……もうだめなの……?
 私のこと女として見てないってことなでしょ。
 私の性格がこんなだから、いけないんだよね……」

「待ってくれ。文章量が…」


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