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作品名:令和10年 兄妹の物語 第二シーズン 作者:なおちー

第12回   賢人「ヤマダ電機でショッピングだ(∩´∀`)∩」
※三人称

問1 平日の昼間から会社を休み、
   ヤマダ電機に買い物に行くのはどんな気分ですか?

賢人「少し違う。会社は労働者のストで休業となったから、
   俺たちが好きで休んだわけじゃねえよ。
   買い物自体は楽しみだな。ここが令和10年じゃなければだが」

問2 前話でヤマダ電機が強固に軍事化されたことが明らかになりました。
   どうやって買い物を済ませるつもりですか?

賢人「それについても突っ込ませてもらうが、まず今日の買い物の
   目的は日用品を買うことだ。中にウェルシアとニトリが
   入ってるから何でも買えるだろ。入店方法だが、
   お店の前で身分提示をすればいいんだろ」

問3 山田は現在、お客の襲撃に備えてピリピリしています。
   武装集団は監視用ブンカーのレーダーにより4キロ先から
   検知され榴弾砲で撃たれる可能性があります。

賢人「スマホがあるだろ。お店に電話して害意のない普通の客だから
    入店したいって伝えればどうだ?」

美雪「ねえお兄ちゃん。(⋈◍>◡<◍)。✧♡さっきから誰と話してるの?」
瞳「壁に向かって独り言を言ってると変な人だと思われるわよ( ゚Д゚)」

賢人「いや、俺も何言ってたんだろうな。
   とりあえず様子を見にファッションセンター・しまむらに行くぞ」

しまむらの二階の駐車場は、広々としていて風が気持ちい。
ヤマダ電機の方角を見ると。確かに軍事化されているのがうかがえる。
しかし、想像していたのとは違った。
ナチスドイツ軍の大西洋要塞のような作りなのかと
思いきや、キューポラが5つか6つあるだけで、
件のレーダーサイトなどは見えない。

瞳「(; ・`д・´)確かに地味ね。
  お店入り口の前に少しの塹壕があるだけ。
  武装した店員さんの姿も見えないわ」

美雪「あの情報は嘘だったのかな?
    でもネットで店舗情報を調べると
    すごい軍事化されたって書いてあるけど」

賢人「ネットの情報はあてにならないものさ。
   フェイクだったって可能性もある。
ネットをうのみにした武装集団を騙すなら、
   ある意味有効かもな」

さらに不思議なことが起き、三名は驚愕するのだった。

杖を突いた70代の白髪のおじいさん。
ポロシャツから覗く手が細く、いかにもよぼよぼだ。
同じく年老いた妻がリードして、ヤマダ電機の入り口に近づいた。

瞳「いけない。不用意に近づいたら、あの二人は撃ち殺されるわ!!」
賢人「いや、まだ分からないぞ。あの二人は強盗には見えない」
美雪「でも身分証明とかしてないんじゃないの?
    なんかよく分からないのに買い物に来たって感じじゃん」

キューポラの銃眼から、重機関銃がぬっと出てきた。
罪のない老人二人に照準があう。
機関銃手が引き金を引けば、毎分1200発の連射性を
誇るドイツ製の機関銃が火を噴くのだ。

老婆「おじいさん……あの鉄製のふたの中から、銃が見えますが」
老人「なんじゃ。わしらを打とうとしてるのかい。
   わしらは客じゃ。構わず店の入り口に入ろうじゃないか」

杖を突き、お店入り口へさらにに近づく。
そこは都内の地下鉄駅の入り口のようになっている。

すると男性店員が、キューポラのふたを開けて出て来た。

店員「そこのご老体。このお店で買い物をするには身分証明と
   現金やカードの有無、また非武装であることを
   証明しなければなりません」

老人「はいはい。まず身分証だが、免許証で良いのかい?」

70代でもまだ免許所持。早く返納しろと、
老人被害のご遺族から叫び声が聞こえてきそうである。

(実際は返納後は運転技能証明書というカードが交付される。
 大きさは免許証と同じ。身分証代わりに使用可能)

店員「免許証は結構。現金は8万円持っているようですな。
   今日のお買い物の目的は最新式の扇風機のようですが」

老人「風が体に優しい、11枚羽のタイプを探しておるんじゃ。
    この年なもので、安物の扇風機の風は体にこたえてのう」

店員「さっそくお店にご案内を。おっと、ご婦人の身分証等の
    確認を忘れることろでした」

老婆「おっほっほ。その必要はございませんことよ」

店員「……?」

老婆「なぜなら、あなたが今ここで死ぬからです」

老婆は店員の後ろに素早く回り込み、ダガーナイフで頸動脈を切り裂く。
血がぶわっと飛び散る。定員は首を押さえながら力を失い倒れこむ。
足だけがぴくぴくしている。

老人「さてと」

老人は、店員が持っていた手りゅう弾を奪い、
素早くキューポラの中へ投下。
キューポラの内部で破片が四散する。
人の短い悲鳴が漏れ、通気口から土煙が立ち込める。

老婆「ほいっと」

老婆は、バッグの中に隠し持っていた手りゅう弾を、
各キューポラの中に投下していく。これは簡単なことじゃない。
キューポラは等間隔に五基も設置されていて、
互いの陣地を火線で支援できるようになっている。

つまり一つのキューポラを攻撃している最中に、
別のキューポラから射撃され、一網打尽にされるというわけだ。

老人二人は、身のこなしが異常に早く、しかもキューポラの
銃眼のない部分、すなわち死角をうまく利用し移動を続け、
紙一重で重機関銃の連射を交わしつつ、あっという間に
五つもあったキューポラ陣地を破壊してしまった。

老人「ばあさん。塹壕の中に便利なブツがあったぞい」

背負い式の火炎放射器だった。
老人はフェイクで所持していた杖を投げ捨て、
21キロもあるそれを軽々と背負った。

老人「汚物は消毒じゃな」

さっそくお店の地下入り口へ向けて放射。
これは店にとって深刻な被害を与える。

まず、洞窟内など酸素の薄い場所へと火炎を放つと、
急激な酸素濃度の低下によって、中にいる人はぶっ倒れる。

老人は鬼で、なんと燃料が空になるまで火炎放射器の
トリガーを押し続けた。ばあさんは横で小躍りしながら見ていた。

それからしばらくお店は沈黙していた。
中から武装店員が出てくるわけでもない。
ただ、地下入り口付近で火災が発生し、恐ろしいまでの
黒煙が上がり続けているだけ。

実際の地下がどれだけ深く掘られているかは分からない。
ただ、入り口付近から火炎放射されたので内部が
悲惨な状況になっていることは簡単に想像できる。

老婆「おじいさん。そろそろ帰りましょうか」
老人「そうじゃな」

なんと。このご老体二名。
ただのストレス解消のために
ヤマダ電機を襲撃したのである。

令和10年。年金の支給額は月額660円
(第何号などの各被保険者は問わず一律)

消費税率34%。物価の引き下げなし。
自民党の議員の給料の引き下げなし。
(一人当たり平均で4400万)

これでは、お店を襲撃したくなるのも分からなくはない。
だが、一番倒すべきなのは政治家であろう。店員に罪はないのだ。


ガタガタガタガタガタ ←地面が揺れる音

老人「なんじゃこの音は」 
老婆「戦車のキャタピラーの音ですか?」

地下には巧妙に偽装された、いくつもの出入り口があった。
そこから次々と戦車と兵員輸送車が出撃していく。

メルカバ、レオポルドを主力としてた戦車部隊は、
あっという間に老人二人を包囲してしまった。

戦車だけで軽く40両は超える。
さらに兵員輸送車も10台を超え、総兵力は80名。
定員は、旧ナチスドイツ並みに完全武装されていた。

老人「これはまいったのう。ネットの要塞情報は
   やはりフェイクだったのか」

老婆「これほどの戦車を日本で見ることになるとは思いませんでした。
   若い頃に英国のフォークランド紛争で見たきりですね。ほっほっほ」

老人「そろそろわしらの人生も潮時というわけか」
老婆「お先にどうぞ」
老人「うむ、では。遠慮なく」

老人はピストルでまず老婆の頭を撃ち抜き、
次に自分の頭を撃った。

あまりにも呆気ない、老人二人の死。
キューポラの内部には、殺害された武装店員たちの死体が並ぶ。

戦車の搭乗員たちは、次々に中から出てきて、
死んだ店員を腕に抱き声を上げて泣いた。

こんな日本に誰がしたのか。
貧富の差は拡大し、貧困者は増えるばかりで、
お店でまともに金銭を支払うことすらできない。

貧しいから、奪う。

現実世界の2018年末。
警察庁の統計で小売店での万引き犯の検挙率。
60歳以上が3割を超えている。

これは全国平均である。
つまり今や万引き犯の三人に一人は老人になっているのだ。

消費税率34%の令和10年。
小説に出て来たような、元気でよく訓練されたご老人ならば
品物の強奪、店員の殺害をしても不思議ではない。

自民党の国民貧困化政策の行きつく先は、サービス業の崩壊である。
金銭を使用した売買の崩壊。物は奪う。人は殺す。金は払わない。
これらを実施するためには、法律の壁を破らないといけない。

そのためには
市民の『武装化』が必要になってくる。

店員の側も自らの命とお店を守るため、同じように武装化するしかない。

ヤマダ電機テックランド久喜店は、最終的に防衛陣地の構築を
断念し、機動防御戦術に特化した。
お店の地下倉庫にいつでも出撃できる戦車を用意しておき、
敵の襲撃に備えて出撃。数に物を言わせて逆包囲をして殲滅するのだ。

ヤマダ電機の保有する戦車や輸送車の数はすごい。
自衛隊の二個戦車大隊と同程度の規模だ。

一つの大隊には、戦車二個中隊が含まれている。

中隊の編成
主力戦車   ×7
軽戦車    ×7
通信車両   ×1
大型トラック ×2
小型トラック ×2
兵員輸送車  ×4

老人たちは、形勢不利となるとあっさり自殺した。
彼らは自宅のアパートに遺書を残しているのだが、
そこにはこう書いてあった。

『貧困と絶望の令和で生きていることが苦痛。ただの修行。
 年金が足りず、貯金もなく、一生政府と企業の奴隷。
 こんな世界なら生きてないほうが良い』

底知れない怒り。諦観。絶望。ストレスを感じさせる。

『貧困は自己責任』
自民党のこの主張は、政治家としての義務を放棄したのと同じである。
現実世界でも自分達国会議員の給料引き下げは審議すらせず、
参議院選の定員枠を6名増やすなど暴挙を続けている。

そしてストレスを貯めているのは、店員側も同様であった。

「戦車A中隊!! 貧民狩り部隊!! 前進を開始せよ!!」

戦車中隊が、主力の重戦車を先頭に道路を進み始めた。
日本の舗装路は、韓国のように戦車の通過を想定していないので、
重さに耐え切れず一瞬でボロボロになってしまうだろう。

小説なのでスルーする。彼らの言う貧民とは、
過去にヤマダ電機を襲撃したお客のことである。
前回の襲撃はお店側の完敗に終わり、店内にある商品
255点、計839万円分の商品が奪われた。

そこで自治体がヤマダ電意に復興費として7億円を提供し、
現在の武装戦力を保有するに至るのだ。
7億では足りない気もするが、あえて考えないことにする。

そして自治体は、ヤマダ電機に対し、貧しくて買い物が
できない貧民の殺害を命じた。
ヤマダ電機・戦車中隊がこれから向かうのは
貧しい人が住む公営住宅に対してであった。

前回の襲撃事件の際、小学生の女の子二人がいたと思う。
どんな名前なのかは忘れてしまったが、とにかくあの二人の
いる団地に向けて、戦車中隊は進撃を続けている。

その団地は、まずいことに賢人たちの住みかの市営団地であった。

賢人「おい(# ゚Д゚)」
美雪「なんで私たちの団地が!!」
瞳「私たちの住む場所が無くなっちゃうわ!!」


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