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作品名:令和10年。財政破綻と強制労働と若い兄妹の絆の物語 作者:なおちー

第6回   2017年まで大塚家具の利益剰余金はかなりの額だった。
「姫。行きなよ」
「なんであたしが」
「あいつ傷口が化膿したら死んじまうぞ」
「うわぁ……ひどい出血…」
「あの状態で仕事するの無理だろ」
「だったらおまえが助けてやれよ」

主任が去ってからざわつく職場。
ちゃんと俺の姿が見えているようで良かった。

まじで動けねえ。少しでも体を動かすと
背中が焼けるように痛い。あと俺の顔が
泣きすぎて人に見せられねえ状態になっちまってる。

ここ本当に会社なんだよな?
工場って不良品を出すと次の日に物理的に制裁されるのかよ。

日本はブラック企業が多いとは聞いていたが、まじで地獄だったんだな。

「あ、あの」 なんか眼鏡をかけたおとなしそうな20代の女子?
(最近の女は自分のことを女子と呼ぶらしい)が声をかけてくれたんだが、
この子は脅えてるじゃないか。ありがたいけどいいよ。自分の仕事をしてなさい。

「で、でも。死んじゃいますよ」
「そんなに俺を助けたいんだったら救急車でも呼んでくれると助かるよ」

女の子は家具さんを読んでくれた。
家具さんは一瞬だけ嫌そうな顔をしたけど、ついに観念したようだ。

「仕方ない。時間がないの。私に着いてきなさい」
「うぎゃあああ!! 無理やり引っ張るなよ!!」

腕をつかまれた激痛でのたうち回る。
もうね。動くとか無理すぎだろ。俺の背中とか出血がひどすぎて死にたい。

「本当はみんなの見てる前でやりたくはなかったけど、
 今からあなたに魔法をかけます」

「魔法?」

「あなたが傷を負ったという事実は、実は気のせいだったのです」

「気の……せい?」

「そう。気のせいです。あなたは今日は普通に出勤し、そして
 何事もなかったかのように家に帰るのです。さあ、目を閉じて
 心の中で念じなさい。あなたは、今日は何もなかった」

「何も……なかったって……」

無理だろ!! この痛みをどうやったら和らげることができるんだ!!
背中の痛みが焼けつくような感じでどんどんひどくなっていくよ!!
こんなことなら銀行を辞めなければよかったよ!!

「本音をぶっちゃけさせてもらうわ。
 あなたを病院に連れて行くと入院イベントが発生するのよ。
 それだと小説的に冗長になっちゃうので、できれば控えたいの。
 というわけで、今回のむち打ちの件は、ただの気のせいだったのです!!」

かぐや姫は俺に手刀を食らわせてきた。
これはすごい一撃だ。首が重みを感じた瞬間に意識を失い、
目が覚めたころには次の話に飛んでいた。


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