20代から中高年のための小説投稿 & レビューコミュニティ
 ようこそゲストさん トップページへ ご利用方法 Q&A 操作マニュアル パスワードを忘れた
 ■ 目次へ

作品名:令和10年。財政破綻と強制労働と若い兄妹の絆の物語 作者:なおちー

最終回   賢人「俺は瞳さんの奴隷になってしまった(>_<)」
その次の日の浅田。じゃなくて朝だ。このパソコンの返還どうなってんのよ。
変換だった。マジクソだな。北方四島返還の話がしたいんじゃねえんだよ俺はよ。

「おはよう、あなた(*^▽^*)」

「……あなた?」

「賢人は私の夫なんだから、あなた。
 何かおかしいこと言ったかしら?」

俺は瞳さんに暴力を振るわれたばかりなので、
できれば距離を置きたい。しかし彼女に逆らったら
ボディに重い一撃を食らうだろう。

「ひ、瞳。今日も一段と綺麗だね(;´∀`)」
「あら本当? うれしいわ(*^▽^*)」

なんでつまらない世辞を言ってしまったのか。
瞳が美しいのは全人類共通の認識なのだから今更だが。
マジで瞳を見てブスだと称するアホがこの世にいるのだろうか。

「でも私ね。今朝はまだお化粧してないの。
 それなのに本当に綺麗だと思った?」

「はい? あ、ああ。だって瞳さんは綺麗だよ。
 すっぴんでも全然その辺の女よりは美人さ」

「美雪さんよりも綺麗だと思った?」

「なんでそこで美雪の名前が」

「美雪さんよりも綺麗かって聞いたんだけど」

「いや、別に美雪は関係ないと思うんだけど」

「答えてよ」

「あの」

「いいから答えてよ!!!!」

あまりにも急に怒鳴るから腰を抜かしそうになった。
しかもマジギレしてる時の顔だからやべえぞ。
俺は心臓をわしづかみにされるほどの恐怖に耐えながら口を開く。

「俺は瞳の方が好みだ。君の顔って小顔だし色白だし、
 まつ毛も長くて顔全体が若々しい。目元も美しい。
 いつまでも眺めていたくなるくらい愛らしくて、素敵だよ」

「ふーん(* ̄- ̄)」

瞳は少しだけ口角を上げたが、黙って俺の言葉を待っている。
なんだこの妙な間は? もっと褒めてみるか。

「お、おおおお、俺は前も言ったが、瞳のことが好きだぁ!!
  好きで好きでたまらないんだぁ!! 昨日ことは反省してる。
  これからは瞳を不安にさせたりなんてしない。
  君のことだけを愛すると誓うよ!!」

「あはは(^○^) 口ではなんとでも言えるものね」

「嘘じゃない!! 本当に君のことを愛してるんだぁ!!」

「(* ̄▽ ̄)フフフッ♪ そんなに脅えて言っても説得力がないわ。
 でも私のこと褒めてくれたから今日は許してあげる」

さっきまでの凄まじい殺気が少し収まったようだ。
朝からチビッたのがばれてなければいいが。

「朝ごはんのついでのお弁当作っちゃいましょうか。
 今日から私が賢人君の分も作ってあげるからね(*^▽^*)」

「(´・ω`・)エッ?」

「なにその顔は?(# ゚Д゚)」

「なんでもないよ!!Σ(゚Д゚)」

美雪と喧嘩になる確率100%だぞ。

美雪は俺の服の匂いを嗅ぐのが好きな変態だが、
それと同じくらい俺にお弁当を作るのを生きがいにしていたんだ。
女ってのは、好きな男にそんなに手料理を食べてもらいたいものなのかね。

お昼の挨拶メールでお弁当の出来を
褒めてあげるとポイント高いぞ。
今の瞳さんほどじゃないが、美雪が生理前で
ピリピリしてる時は褒めるコミュニケーションを
増やすことで良好な関係を築けるがコツだ。

瞳さんはいつの間に揃えたのか、
炊飯器のご飯をお弁当箱に詰めて冷ましている。
お買い得だったのであろう、安そうな
冷凍食品を次々に電子レンジで温めていく。

瞳さんって本当に高い食材には手を出さないんだな。
庶民派のところはすごく好感度高いんだけど…

これもいつの間に買ったのか、冷蔵庫の中にある
野菜コーナーからレタスを取り出し、水道水で洗い流している。

ほんといつの間に家電製品が増えていたんだ。
今までの話を読み返しても買いに行くタイミングはなかったと思うのに。
どんだけ適当なんだよこの小説。あと誤字脱字も多すぎるぞ。いい加減にしろ。

「完成(*^▽^*)」
「わー。お昼が待ち遠しいな(;´∀`)」

遅れて起きた美雪(俺と瞳さんは朝5時半起き。
美雪は6時。決して遅くはない)が、

俺用に用意されたお弁当を見て一瞬だけ怖い目をした。
寝起きだから余計に顔が怖いよ…。

「そのお弁当は、瞳さんが自分で二個食べるってことだよね?
 お兄ちゃんのは私が今から作ってあげる(^○^)」

「(# ゚Д゚)」コノ クソガキ……

この空気、やべえ……((((;゚Д゚)))) 

今日から☆修羅場のモーニングサービス☆始めました。
冗談言ってる場合じぇねえけど

「お兄ちゃんは毎回私のお弁当を残さず食べてくれるもん。
 私はお兄ちゃんの嫌いなおかずは入れないようにしてるし、
 栄養バランスもしっかり考えてるからね」

「(# ゚Д゚)」ハァ?…

「つい最近同居するようになった赤の他人には、
 お兄ちゃんの味の好みまで知ってるわけないよね。
 そんなお弁当をお兄ちゃんが食べるわけないんだから
 作るだけ無駄だってことに気づかないのかな」

「美雪。殺す。殺す。殺す。殺してやる小娘。殺してやる」


(゚д゚)!今のは瞳が言ったのか…?

「そこで小声で念仏を唱えている人、大丈夫ですか? 主に頭が」

「あら、ごめんなさい(*^▽^*) 私ったら今何か言ったかしら?」

「……空耳だったみたいです。私の方こそごめんなさい。
 まだ目が完全に覚めてなかったみたいです」

この時の二人の発するプレッシャーは、もはや形容し難い。
美雪は一触即発の状態を想定して包丁を右手で握りしめていた。
瞳は限界まで握りしめた拳に、爪が食い込んで血が出ていた。

ここで戦闘が開始されれば、互いにただでは済まないと察し、
表面上は和解することにしたのだ。団地での朝のひと時が、
もはや米朝首脳会談をほうふつとさせるほどの緊張感に包まれていた。

俺は二人分の弁当を手提げバッグに入れて、玄関を出た。
今日も平日の火曜日。朝から夜遅くまで仕事なのだ。
それにしてもなんつー不自然なバッグだよ。
二個も弁当入れてるから不自然に膨れてるし、それなりに重いぞ。

「賢人のお腹の調子は大丈夫なのかしら」
「ギャグ小説の設定だから完治してるよ」
「そんな設定があったのね(*^▽^*)それは都合が良いわ」

(´・ω`・)エッ?

「だってそうでしょ? 一晩寝れば回復するなら」

――何度でもあなたにお仕置きしてあげられるわ。

俺は腰が抜けてしまい倒れ込んでしまう。

「(´∀`*)ウフフ おびえなくていいのよ。賢人は私の夫。
 夫婦はパートナーよ。これからどんな問題が
 あっても二人で乗り越えて行かなきゃ。ね、賢人もそう思うでしょ?」

「はは……そうだよね。瞳さんの言う通りだ」

「あなたは私の夫。そして私はあなたの妻。そうよね?」

「そうですっ」

「じゃあ美雪さんは?」

俺は本能で察した。

ここで返答を謝れば、確実に制裁(腹パン)される。

「俺の妹。ただの妹。まったくもってそれだけです」

「(´∀`*)ウフフ そうそう。物分かりが良くなったのね」

「昨日も言ったろ? 俺は瞳さんのことを愛してるんだから」

「(´∀`*)ウフフ それでいいのよ。じゃあ次は私への愛を証明しなさい」

「えっと……(;゚Д゚) どうやって証明しようか」

「( ・´ー・`)簡単よ。本当に私だけを愛しているなら」

――そのお弁当を道端に捨てなさい。

俺は、聞き間違えであればどれだけ良かったかと思った。
ダッシュ(―)を使う部分は重要なセリフだ。

つまり聞き間違えなんてありえねえ。
俺の妹が作ってくれたお弁当を……道端に捨てる……だと?

さすがにこれだけは譲れねえ。
トランプの核施設の全面的廃棄の要求に対して
歯向かう金ジョウン朝鮮労働党委員長の気分だ。

「美雪はただの妹だけど、(;・∀・)
 一生懸命作ってくれたお弁当に違いない。
 それに今は不景気だし、食べ物を捨てちゃうのは、
 もったいないかなぁと(゚Д゚;)」

「だからなに? 最初に作ったのは私なんだけど」

「いやでも(;'∀')」

「最初に作ったのは私よね?」

ここですごい殺気を感じ、俺の全身の毛が逆立つほどだった。
逆らったらヤバイ。ひとみの目つきもヤバい。なんて怖い目だ。

「はい。そうです」

「なら、私のを優先しなさい」

なんて高圧的な態度だ。ただの怖い姉じゃないか。
俺の友達で姉がいても怖いだけでメリットがないとか
言ってる奴がいたが、今なら気持ちが分かるぜ。

俺はお弁当を持ち(;´・ω・)ぷるぷる震えていた。
明らかに挙動不審だが、この状況に立たされたら
誰だってこうなると思うよ。

「もたもたしないで。早く捨てなさい」

「あのっ!!(;゚Д゚) 誓って俺は瞳を怒らせるつもりはないんだ。
 でも今は消費税率34%の社会だ。こんな貧しい世の中で
 食べ物を捨てるってのはあんまりにも……」

パァン。
俺は(>_<) 顔が真横を向いていたので
何が起きたのかと思った。ほっぺたがヒリヒリする。
ビンタされたのか。耳のあたりをぶたれてせいで耳鳴りがすごい。

「どうやらあなたは、日本語が理解できないお馬鹿さんのようね」

あ……。あ……。( ゚Д゚)

「私が捨ててほしいって言ったの!!」

「ごめ…」

「夫婦だったら妻がどれだけ嫌な思いをしたのか
 察してよ!! 私の気持ちを分かってよ!!
 そんなに美雪のことが大切!?
 貴方が!! あんな女が作ったお弁当を大切そうに持ってるだけで
 私がどれだけ嫌な思いをしてるか察してよ!!
 私の気持ちを分かってよ!! 
 ぶたれて痛かった? 私の気持ちはもっと痛いんだよ!!」

まさにマシンガン。俺には言い返すタイミングが見つからない。

思い出したぞ。付き合う前の瞳さんと喧嘩?した時も
こんな感じだった。この人が俺と美雪に6話くらいでキスを迫った時があっただろ?
あの時にもしや…と思ったんだが、この人って潜在的なヒステリー持ちなのか?

瞳さんは俺の制服の襟をつかんだまま、ギャーギャーわめいている。
俺は彼女と視線を合わせたくないんだが、真面目に話を聞いてるふりを
しないとまたビンタされそうだ。実は瞳さんも自分で何を言ってるのか
分かってないんじゃないのだろうか。

つーかこの人どんだけストレスを貯めこんでるの。
表面上はおとなしく見える女性ほど実は怖いんだな。
この人のお母さんも暴力制裁を好むらしいが、娘にも
その遺伝子がしっかり引き継がれてるよクソが。

「こんなつまらないことで朝からイライラさせないでよ!!
 仕事にまで影響出ちゃうわ!!
 ほら。どうするの。捨てるの。捨てないの?」

普段は分別があって優しいお嬢様にしか見えなかったが、
人間一緒に住んでみると隠された部分が明らかになるものだ。

「すみません。すみません。今すぐ捨てます」

美雪……(m´・ω・`)m ゴメンヨ…

大切な妹のお弁当を捨てる日が来るとは……。
お弁当を街路樹の近くに放り投げた。
犬や猫が拾えば餌代わりにはなるかな。

もしくは貧しい子供たちに拾ってもらいたい。
栄養バランスは保障するよ。

俺が捨てたのが分かると、瞳さんは嘘みたいに機嫌が良くなった。

「あははー(*^▽^*) さっきはごめんね?
 ひどいこと言っちゃって。なんか賢人が妹の作った
 生ごみを大切そうに持ってたからさぁ」

「あ、あはは。おれの方こそごめんね(;^ω^)」

な、生ごみだと(#^ω^) 
あの子だって早起きして作ってくれてるんだ。
さすがに言って良いことと悪いことがある。

「今朝本当は美雪のこと刺し殺してやろうとかと思ったんだけど、
 向こうもマジで警戒してたからやめてあげたの。
 それにあれでも一応賢人の実の妹だから
 あれが死んだら賢人も悲しむかなって思って」

冗談じゃなくてマジで言ってるから困る。
早めに警察に通報したほうが良いんだろうか。
なんで母さんは俺たちの同棲を提案したんだよ。
むしろ母さんを恨みたくなってきた。

「賢人どうしたの? こっち来て腕組んでよ。
 妹にはしてたわよね。私にはできないの?」

今の精神状態でこんな暴力女と腕組みして歩くのは不可能だ。
だが逆らうわけにいかない。怒りでゆがんだ瞳の表情は、
もはや形容しがたい。密着して歩いていると、
俺の制服の腕に彼女の柔らかい髪の毛がそっと触れるのだった。

こんな時に考えることじゃないんだろうが、なんて綺麗な髪質だ…。
これで性格がまともだったら…

「ほんとムカつくよねーあの妹(*^▽^*)」

「迷惑ばっかりかけてごめんね。
 美雪は昔から口が悪くってさぁ(・ω・)」

「ほんと何様のつもりなんだろうね。
 私と賢人の婚約を邪魔しやがって。
 次ふざけた真似したらぶち殺してやる」

朝からする会話じゃねえ。
彼女の怒りのオーラが電流のように感じられ、俺の胃を圧迫する。
警察の尋問のがマシじゃなか。

「美雪も困ったやつだよね。
 あいつのブラコンも早く卒業させてあげないとね(;´∀`)
 あの年ならすぐイイ男見つけられるだろ」

「ブラコン?」

「え、ああ。ブラコンって言ったんだけど」

「そういうあなたはシスコンじゃない」

「俺は……その……」

「昨夜はお夕飯の時間に美雪さんの告白を
 受け入れてたように見えたわ。最高に不愉快。
 あれ、なんのつもりだったの? 
 ギャグ? それとも私の見間違え?」

「あれは俺の中では終わったことになってるんだけどなぁ。
 俺は瞳と夫婦になるんだから、もうどうでも」

「だめだめ。全然よくないよ」

「え」

「あとで美雪にきちんと言っておきなさいね。
 気持ち悪いから俺の前で彼女面するのはやめろって。
 そうしないとあの子ったらいつまでも
 兄に執着して生きることになるわよ。
 それで将来婚期を逃したらあの子のためにならないわ」

「美雪は一応成人してるし、美雪の人生なんだから
 ある程度はあの子の自由にさせていいんじゃないのか。
 俺が下手に冷たくしても自殺未遂に繋がるし、逆効果だと思うんだ」

「だめだめ。そんなの全然ダメ。妹に甘すぎ。
 あっそうか。賢人は口では私に愛してると言うけど、
 やっぱりそれは嘘で、本心ではあの子のこと愛してるんだもんね。
 だからお尻とか触るんでしょ?」

「……もうしません(>_<)」

「妹に性的嫌がらせをするなんて前代未聞。
 人として恥ずかしいと思わないの?
 妹だから言うことを聞かせたいと思ったんでしょ。
 異常性欲。変態シスコン野郎。ド変態。最低」

「あいつは俺のした行為を嫌がってなかったのですが。
 当該者が嫌がってないことはハラスメントの定義に含まれませんし、
 スキンシップとすることも可能です。
 それにあいつも俺の服の匂いを嗅いでたんだけど…」

「それはいいわけよ。そうやって言い訳をしたら
 何でも許されると思ってるの?
 あなたは犯罪をして警察に捕まっても
 同じ言い訳をするつもりなの?
 それは大人として正しいことをしてるといえるの?」

「犯罪は、また話が違うんじゃ…」

「同じことよ!!」

「瞳さん。冷静になって聞いてくれ。
 今の瞳さんは今までのストレスが蓄積して気が立っているんだよ」

「ええ。そうかもしれないわ。
 そもそも誰のせいでこうなったと思ってるのよ!!
 全部あなたのせいじゃない!! そうでしょ!?」

「だから、謝ってるじゃないか」

「だったら私を不安にさせないって約束してよ!!
 あなたが嘘つきだから悪いのよ!! 何が愛してるよ!!
 口から出まかせばっかり言って私を騙して!!
 私の見てないところで妹とイチャついて!! 
 自分で最低だと思わないの!!」

だめだ……(;´・ω・)
いつまで続くんだよこの警察の尋問みたいな会話(>_<)
女は根に持つ生き物だ。
この人と結婚したら死ぬまで妹ネタでいびられることは確実だ。

ここは金融関係で勤めた経験を生かして損切りをさせてもらおう。

「……もう限界だから正直に話すね。
 やっぱり俺は美雪を愛しているんだよ。
 こんな話をするとヒトミさんを振ったみたいに
 なっちゃうけど、今思うと母さんはこれを
 見越して三人暮らしを…」

「なに? よく聞こえない」

「俺は妹のことを、大切なパートナーとして」

「だから聞こえない。もっと大きな声で言って」

「……君とはこれ以上付き合えないんだよ!!
 いつまでも妹のことを蒸し返されて俺の方だって不愉快だよ!!
 それに何度も謝ってるのに全然許してくれ…」

「待って。それ以上続けたらあなたを銃殺刑にする」

「じゅうさ…え?」

「今私を振ろうとしたでしょ。 
 そんなの絶対に認めないし、許さないから。
 私のパパに頼んであなたを銃殺刑にしてあげる。
 なんなら今朝の朝礼で銃殺にしてあげてもいいわ」

「君は……本気で言っているのか?」

「嘘だと思う?」

「まるで別人……。
 今までの優しかった坂上瞳はどこへ消えたんだ? 
 君は二重人格じゃなくて本物の坂上瞳なのか?」

「私は変わってしまったのよ。本当なら貴方なんて
 捨てて、婚約はなかったことにすればそれで終わり。
 でもくやしくて。なんだか美雪に負けた気がして
 自分が許せなくなったの」

「それが家出からすぐ戻ってきた理由か。
 俺に執着する価値はない。俺にはなんの魅力もない。
 ただの平凡な底辺労働者だ。君みたいに
 社長令嬢じゃなくただの庶民だ。釣り合ってない」

「いいえ。あなたは私から見て十分にステキな男性よ。
 私を情熱的に抱きしめて、愛してるって言ってくれた」

「あれは、なかったことにしてくると助かるよ」

「いいえ。そんなことは不可能よ。
 だってもう言ってしまったのだから」

「言ってしまったら取り消せないってか。
 小学生みたいな理屈じゃないか」

「私にとっては大切なことなのよ。
 運命の人はこの人なんだって感じたから」

「勘違いだよ」

「勘違いじゃないわ」

俺は直感で感じた。この人は32歳で俺より年上だけど
恋愛経験が全くないのだ。付き合った相手と縁がなかったと思えば
早めに終わりにして次の相手を見つけるのが普通だ。

そもそも美人で独身なら、まだまだ男は寄ってくることだろう。
俺みたいな底辺労働者、
時給210円よりまともな男は大勢存在するはずだ。

少女漫画の主人公のように初めて好きになった相手と
結ばれたいと盲目的に信じ込んでしまっている。
この点では美雪とそんなに変わらない。

やっぱり人間は年齢に応じた幅広い経験をしないと
浅い人間になってしまうのだ。
俺も恋愛経験ないから偉そうなことは言えないが。

「瞳さんの主張は十分伝わったよ。
 でも俺にも気持ちの整理がしたいんだ。
 せめて家に帰るまで時間がほしい」

「そんな時間の余裕はないわ。今ここで神様の前で
 宣言して。私と婚約して夫婦として一生を過ごすと」

神様ってどこにいるんだ? 空か宇宙か?
俺はクリスチャンじゃないので作法が分からないけど、
両眼を閉じ、胸に手を当てて宙を仰いだ。

「……誓ったよ。これで満足した?」

「次は妹へメールして。俺にべたべたしてくるなよ。
 キモイって。お弁当を捨てたことも報告しなさい」

もはや子供の喧嘩のレベルだ。
だが瞳の精神状態は普通じゃない。今はいつもの
お嬢様っぽい口調に戻ったが、少しでも機嫌を損ねたら
またいつヒステリーが発動することか。

俺は、言われた通りの文面を美雪にメールした。
もちろんあいつは俺の本心じゃないって理解していることだろう。
だから余計な心配はしていない。お弁当の件はやりすぎだが。

「あんまり妹、妹って、妹の話をしないでよ。
 あの子の話をされると不愉快なのよ」

先に美雪の話をしてきたのは、そっちだろうが!!


そんなこんなで会社に着いた。
俺らの部署の朝礼で、またしても衝撃的な事実が明らかになる。

「労働者の諸君!!」 

いつもの角刈り野郎(主任)だ。
そんなにでかい声出さなくても30人しかここにはいねえよ。

「これは仕事とは直接関係ないことではあるが、
 諸君らも大いに気になっていることであろうと思われる。
 したがって今から結果を報告する!!」

「先日坂上瞳と渋谷賢人をめぐる関係によって
 三者面談が行われた。途中でシブヤの妹が乱入したことによって
 話し合いは大いに混乱した。そこまでは諸君らも知っての通りだ。
 その結果なのだが、坂上瞳と渋谷賢人は婚約者でなく
 もはや夫婦に限りなく近い存在となった!!」

またみんなの前で報告をΣ(゚Д゚) 
いつものパターンなのでそろそろ慣れてきたぞ。

「主任殿。質問があります!!」 
「よろしい。述べてみよ」

でかい声の女だな。
って……質問したの、家具ちゃんじゃねえかΣ(゚Д゚)

「主任のただ今の報告は、先日渋谷美雪さんが
 話した内容と矛盾していると言わざるを得ません!!
 なぜなら美雪さんは賢人君と正式に結婚すると
 勝利宣言をしていたからです!!」

「うむ!! 当然の疑問である!!
 私の口から説明するのは当然の義務だ!!
 先日の美雪さんの宣言だが……あれはすなわち!!」

――ただのフェイク・ニュースだ。

主任は真顔だったぞ。色々おかしくねえか?
昨日の職場の雰囲気は、俺と美雪の関係を
微笑ましく思っている感じだったんだぞ。

主任は何者かの圧力によって無理やり俺と
瞳さんをくっつけようとしている…?
何者かってのは当然瞳さんだろうな。

「労働者のみなさん」

瞳さん……? なぜ主任の横に立っている。

「さきほど主任殿が報告してくれた通り、私と渋谷君が
 結婚するのは事実です。現に私のお父さん、つまり
 この会社の社長閣下が認めてくださいました」

……社長が?(; ・`д・´)

「会社の社長殿のご意思に逆らうことの愚かしさを
 みなさんは知らないわけではないでしょう。
 この事実を否定する人がいるとは思えませんが、
 万が一私と渋谷賢人君の関係を認めない人がいる場合は
 やむを得ません。そういう人は」

――過酷な拷問の末、銃殺刑にします。

(;´∀`) うそー。

俺らの関係を否定するだけでそこまでする……?
瞳さんって実は学園生活の高野ミウちゃんだったの?
生徒会選挙の時のミウちゃんにセリフがそっくりなんだが。

この人、つい最近まで美雪にいじめられてる可愛いキャラだったのに。
(・∀・) たった数話でここまでキャラ変わる?
(゚д゚) 嘘……私のキャラ、変わり過ぎ!?

あとこの小説、長く続きすぎだから第二シーズンに突入していいか?


                      第二シーズンに続く


← 前の回  ■ 目次

■ 20代から中高年のための小説投稿 & レビューコミュニティ トップページ
アクセス: 1856