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作品名:令和10年。財政破綻と強制労働と若い兄妹の絆の物語 作者:なおちー

第29回   瞳「美雪さんがうざすぎて困っています(⁰▿⁰)」
※瞳

先日の美雪さんの茶番にはあきれちゃったわ。
あの子ったら、実の兄の前でもヒスってるのね。
店の地下売り場(普通の売り場のこと)でも
衆人環視の中で怒鳴るなんて育ちが悪すぎるわ。

お金は持ってるはずなのに心の中は貧乏人なのかしら。
自慢っぽく聞こえるかもしれないけど、
私が人前で必ずお嬢様扱いされてしまうのは、
母からの厳しいしつけによるものです。

個人資産の額とかに表向きなものに関係なく、
言動仕草、物腰雰囲気に全てその人の育ちが出しまうからです。
成りあがりの人は、お金はあっても品はない。
品性は、あとから身に着けるのは難しいですよ。

朝5時半。私は普通の人より早起きな方だと思います。
団地の部屋は少なく、リビング兼ダイニングが一つ。
他には二つの部屋。トイレとバスルームのみ。

私は一つの部屋を与えられたのでそこで寝ています。
もう一つの部屋は美雪さんの。
賢人君はリビングに布団を敷いて寝ました。

体操とストレッチをして15分。
あとは軽く掃除をして、お弁当を作るんだけど、
三人で同棲してからは美雪さんの仕事よね。

先日ゴミ箱を投げつけられた部分がまだ痛む気がするわ。
自慢の髪が痛んでなければいいんだけど。
私は自他ともに認める倹約家だけど髪質には凝ってるから
外国のシャンプーを使ってるの。

「おはよう。ヒトミさんも早起きなんだね」
「おはよ。賢人君も早いわね。寝癖、ついてるわよ?」

賢人君はあわてて洗面所で髪をいじってる(≧∇≦)
そんな姿も、カワ(・∀・)イイ!!

男の人と同棲するのって初めてだからドキドキしたけど、
なんか会社で毎日顔を合わせるのとそんなに
変わらない気がしてきた。

かえって年下の彼の方が相性がいいのかも。
お互いの私生活が明らかになって
喧嘩することもあるでしょうけど、
なんとか頑張っていきたいものね。

「朝ご飯作ろうか」
「ケント君が作るの? 美雪さんはまだ寝てるかしら」
「ぐっすり寝てる。昨夜は全然寝れなかったみたいだから」
「じゃあ、起こさないでそっとしておいてあげましょう」

彼は手慣れた動作で炊飯器を探していたけど、
そんなものどこにもない。それもそのはず。
私達は急な引っ越しだったから生活用品がなにもないのだ。

「掃除機やダスキンもないから掃除ができないぞ(;・∀・)」
「ケント君って普段から家事とかするの?( ゚Д゚)」
「料理も含めて全部できるよ。あれ。言ってなかった?」

意外でしたΣ(゚Д゚) 彼は小学生の時から
家の料理の支度を任された(結果的に)
美雪さんの負担を減らすために、積極的に
家事を手伝っていたとのこと。

最初はお風呂掃除から初めて、家中の掃除。
日用品の買い出し。料理の補助で野菜を切ったりなど。
ラックの組み立て、エアコンのフィルターの清掃、
棚の上の荷物を取ったり、蛍光灯の電気の交換など
男手が必要なことは父に代わってやっていた。

「カーテンもないから直射日光が直接入っちゃうよ…
 掃除に必要な道具も全然そろってない。
 週末に買いに行かないとな」

ずいぶん主婦的な人だったのね。
今時の男子って感じがしてステキ(≧∇≦)

美雪のアホが惚れる理由も納得!!
あいつがブラコンになったのって、
お兄さんがステキすぎるからじゃないの。
あんな奴にはもったいないお兄さんだわ(≧∇≦)

「ヒトミ」

「えっ」

「今度からは瞳って呼んでもいいかな?
 俺達は婚約者だからさ」

もちろんおkに決まってるわ!!!(*'▽')
むしろもっと早く呼んでほしかったわ!!
ならば私の方も

「ケントって呼ぶわね(^^♪」
「うん(^○^)」

「改めて、おはよう。ひとみ」
「おはよう。けんと」

(´∀`*)ポッ (´∀`*)ポッ (´∀`*)ポッ

いやあぁぁぁぁぁん ヽ(^o^)丿 なんて素敵な朝なの!!
気持ちはまさに,、ふわふわターイム!!
昨日までのイライラが嘘のような展開です!!

しかも会社と違って邪魔をしてくる人がいない!!
最高です!! ばじゃーい (∩´∀`)∩

「おはよ(´ー`)」

ちっ。邪魔者が起きたようです。同居人の渋谷美雪。
ブラコンの末期患者です。病状の深刻さは世界を狙えます。
挨拶すら返したくないけど。礼儀として一応は返しておきましょう。

「ふん(#^ω^)」

奴は視線すら合わせずにそっぽを向きました。

なに……その顔は? (# ゚Д゚)
朝から喧嘩したくないからスルーするけど、
休みの日だったら怒鳴り散らしているところよ。
こちとら礼儀のなってない相手には
もう容赦する気はないんだから。

「あっ、まだ冷蔵庫すらないんだったね」
「俺も朝起きたら気づいたよ。あと買いに行かないとな」

「ごめんねぇ(~_~;)せめて昨夜カスミで
  食パンでも買っておけば良かった」

「通勤途中でコンビニで何か買うよ」

「あっ、うん。お小遣いあげないとね」

妹の財布から兄へと千円札が渡される。
消費税率34%なので、たった千円だと
満足に買い物できないと思うよ…。

それより腹立つのが、まるでこの二人のやり取りが
「夫婦」にしか見えないことです。
普通に考えて妹から食事代を
もらう兄っておかしくありませんか?

数年ぶりの朝ごはん抜き。
歯磨きして化粧など身支度を整え、時間になったので家を出る。
玄関で靴を履いて一言。

「行ってきます(-_-メ)」
「(`´)」シーン

さすがお子様。予想通り無視ね。

「美雪。行ってくるよ(`・ω・´)」←イケメン

「言ってらっしゃぁい (。・ω・。)ノ♡
 今夜もお夕飯作って待ってるね(⋈◍>◡<◍)。✧♡」

ああ……こいつの顔がムカつく……死ね死ね。
今すぐ腹パンしたくなるけど我慢我慢。
今日は転居して初めての平日。
しばらくの間は美雪と距離を取って
最終的に妥協点を見つけるしかない。

人は、どこかで折り合いをつけて生きてくものだから。

月曜の朝はあわただしい。
私と賢人君は激しく車の行き交う交差点で信号待ちをしていました。
たまに戦車や装甲車も混じってる気がするけど、気のせいかしら。

「今なら誰も見てないから手を繋ごうか (`・ω・´)」

「えっ、朝から!?」

それに衆人環視の中で?
朝のこの時間だと通勤途中の
同僚たちに目撃される可能性が高いのに。

「会社に行く時くらいしか、
 君とイチャイチャできないじゃないか」

「(≧∇≦)あっ」

信号はとっくに青に代わっている。
それなのに私が動き出せないのは、
賢人君に熱く抱擁されているからです。

6月の快晴。どうして関東は雨が降らないのかしら。
日差しは刺すほど暑いのに、彼の腕の中にいても
全然暑苦しくないのが不思議。

彼の制服の洗剤の匂いがする…
この匂いは前も嗅いだことがある。

「好きだ。ヒトミ」

(≧∇≦)あ…

「団地の中じゃ恥ずかしくて言えなかったけど、
 本当は君のことだけが好きなんだ。
 好きなんてもんじゃない。この世界の誰よりも愛してる。
 もう二度と君を離すつもりはないからね」

こんなカッコいいセリフを現実世界で言ってくれる男性って
日本にいるの? 私の賢人君だけでしょ。こんなにイケメンなのは!!
(。・ω・。)ノ♡ (*´ε`*) (`・ω・´)b 

彼の真剣なまなざしと低い声で心がふわふわ浮いちゃう。
ふわふわターイム!!!!

「賢人の気持ちはよく伝わったわ(´ー`)
 私もあなたの事を世界で一番愛してるわ。
 でも、そろそろ会社に送れちゃうから行きましょう?」

そして会社に着くと、同伴出勤だの、朝からキスシーンなど
散々な噂を流されました。でも前に社長令嬢だった件が
バレた時の嫌な感じではなくて、面白半分で言ってる風だった。


※ケントくん

会社の昼休みだ。俺と瞳さんがコンビニ飯だったので
目立つに目立ちまくったが、食べ終わった後は
自分の作業台(PCのある机)でうつ伏せで寝られる。
ここには口うるさいおばさん達もいないので
(おばさん達は昼休み終了まで食堂でねばる)
思う存分昼寝ができる。

実は母さんからこんなメールが送られてるんだ。

『イスラム教徒のように二人の女を平等に愛せ。
 美雪か瞳、どちらかと一緒にいる時は愛の告白をしろ。
 どんな嘘っぽい言葉でもいいからあの子達を安心させろ』

というわけだ。実は今朝の愛の告白も母からの指令によるものだ。
おせっかいなことに告白のセリフまで用意してくれた。
俺はできるだけ嘘っぽくならないように情感を込めて
言ったつもりだ。

「ケント君、今話がしたいんだけど大丈夫?」

何かと思ってスマホから顔を上げると、ヒトミがいた。
まだチャイムまで20分もあるぞ。
瞳は自称おともだちグループの輪の中で、
スマホをいじってるはずなのに。

「どうしたんだい。緊急の用事?」

「さっき美雪さんから変な画像が送られてきたの」

俺は目の前が真っ暗になってしまった。
あれは俺が中学生の思春期ど真ん中の時期だったか。

お遊びで膨らみかけた妹の胸を、Tシャツ越しに触ったことがあった。
当時美雪は12歳でブラもしてなかった。
妹だと頭では分かっていても、
初めて触った少女のふくらみは柔らかくて、
俺はつい勃起してしまった。

瞳さんのスマホに映し出されている写真は、誰が撮影したのか
俺が美雪にそのセクハラをしているシーンだった。

「他にもあるんだけど、見たい?」

うん……これも言い訳は不可能だな。
写真の中の俺は、なぜか美雪の洋服タンスを漁っていたのだ。
おそらく下着を探しているのだろう。
当時俺は高校一年生。美雪は中一。
年ごろの男にはありがちなシーンだと理解してもらいたい。

待ってくれ。これは単純に近親相関的なものじゃなくて、
男には中高生の時などに性欲が自制できない時期が誰にでもあるのだ。

誰が撮った写真なのかはどうでもいい。たぶん父さんだろ。
父さんだってとぼけた顔して美雪のことが大好きだ。
美雪が中三の時。お風呂で湯船につかってる美雪にわざわざ
話しかけにいき、怒った美雪にお湯を掛けられていた。
(↑筆者の身近な例で実話あり)

「美雪さんがかわいいから、
 そういうことしたくなるの?」

俺は沈黙で返した。

「やっぱり血のつながったお兄さんでも、
 美人な妹には欲情しちゃうんだ」

逆に君はどうなんだ。妹より君の方が美人だよ。
君こそお兄さんや弟さんにそういう目で見られてるんじゃないのか。
俺の妹より君の方が美人なんだから。

「美雪さんが、年増の行き遅れ女に兄は欲情しないって
 メール(LINE)が来たのね。こういうのってどう思う?」

またしても沈黙する。答えようがないだろ。

「あ、思い出しちゃった。昨夜カスミで仲良さそうに
 お弁当選んでたよね。賢人君ったら胸を押し付けて来た
 美雪さんに鼻の下伸ばしてた」

はい。遺憾ながらフルボッキしていました。

「あ、あの」

「ああいうの、私の前でしないでほしいな」

「ごめんなさいm(__)m」

「すごく……嫌だったよ」

「え?」

「すごくいやだったの……。二度とあんなことしないで」

瞳の瞳から、大粒の涙がこぼれ落ちる。
彼女は大人だから昨日の茶番を見逃していただけで、
本当は叫びたいほどショックだったのだろう。

そうとも知らずに俺は…。
俺は大切な婚約者を傷つけてしまったのだ。

俺は世界一の馬鹿野郎に違いない。
俺は焦るあまり思考がまとまらず、奇行に走ってしまう。
なんと、その場から駆けだしてしまったのだ。

「あ……」

瞳が何か言いたそうだったが、すみません。足は止まりません。

俺はトイレの個室で頭を抱えて時間を過ごした。
そもそもなんであんな写真を美雪が持ってるんだよ。
俺が思春期の時に美雪にセクハラしたのは事実だが、
当事者のはずの美雪が写真を持ってるって客観的に考えてありえねえ。

昼休みが終わる30秒前になって俺は職場へ戻った。
危ない危ない。ギリギリの時間じゃねえか。

「話はまだ終わってないわよ(;^ω^)」

ひとみが腕組して俺の席で待っているわけだが……?

妙な笑顔だが、もしかしてそれ、マジギレてる時の顔かい?

「おうけい。後で聞くから仕事を…」

「仕事なんてしてる場合じゃないでしょうが!!
 私たちのこれからにかかわる大事なことを話しているのよ!!」

なんのことだかさっぱり分からないよ!!
キレてるのは分かったから、ちゃんと順を追って話をしてくれ。

「美雪さんから別のメールがきたのよ。
 あなた達ってケントがこの会社に入社した時から同棲してるのよね?」

「う……うん (;゚Д゚)
 同棲っていってもたった二か月くらいだけど」

「夜寝てる時に兄が布団に忍び込んできて、
 体を触られたって言ってるわよ (; ・`д・´)」

ああ、先月胸を触った時の話か。
ただ胸の大きさを確認しただけだよ。
いかにも大げさに言うけど、美雪だって
寝てるふりをしてただけで起きてたんだろう。

狭いアパートで若い男女が一緒に暮らしてるんだ。
たまにはムラムラして気の迷いを起こす時はある。

だって相手が妹とはいえ、両親がいない男女二人だけの環境なんだぞ。
さすがに最後までヤッちまうほど俺はいかれてないよ。
おっぱいだけ触ってから、ちゃんと自分の布団に戻ったよ。

俺たちは両親が遅くまで銀行で働いていたから
自然と兄弟の仲が親密になっていったんだ。
しかもお互い恋人を作ったことは一度もないという
意外な共通点が。俺は狙ったわけじゃなくて
ただ単に女にモテないだけだが。

今だからはっきり言うよ。
美雪の顔は大好きだ。身内びいきだと思われるだろうが、
乃木坂46のメンバーと比べてもそんなに負けてないと思うぞ。

「あなた達は、いったいどんな関係なの!!
 普通の兄妹だったらそもそも同棲なんてするわけないわ!!」

「美雪だって嫌がってるそぶりはなかったぞ。
 むしろあいつの方が重度のブラコンじゃないか」

「あなたが私のことをどう思ってるのかさえ、
 今では怪しくなってきたわ」

「愛してるって何度も言ったじゃん」

「初めからおかしいと思ったのよ。
 美雪さんと一緒に引っ越すって話になった時も
 あなたは反対しなかった。初めは妹思いの
 優しいお兄さんなのかと思ったら、
 昨日のスーパーでも勃起してたじゃない!!」

あのさー。忘れそうになるけど、今仕事中なんだわ。
とっくに昼休み終わってるからね? ((゚Д゚)

もうね。全従業員が作業を中断してまで
俺たちをガン見してますよ。

色々とまずいので次の話の飛ぶぞ。


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