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作品名:令和10年。財政破綻と強制労働と若い兄妹の絆の物語 作者:なおちー

第28回   賢人「俺が妹と瞳さんと三人で暮らすことになった!?Σ(゚Д゚)」
※賢人

ちょっと待ってくれ。

確かに母さんが俺たち三人でくっつけとか
ふざけたことを言ってたが、本当にやるなよ!!

「ケント君……(=゚ω゚)」

俺を心配そうな瞳で見つめる瞳。瞳の瞳はいとおしい。

瞳と一緒に入れる時間が増えるのはうれしいよ。

会社から少し離れた場所にある団地に契約した。
どこにでもありそうな家族で住む団地で、
これと言って描写する必要がない。
前もこの言い回しを使った気がするぞ。

俺たちが住んでいるのは市営団地だ。
入居するのには次の条件がある。

・一定基準以下の収入であること
・同居(予定含む)の家族がいること
・現在住居に困っていること
・保証人がいること

俺たちは入居の条件をクリアーするのに嘘をついちまった。

瞳は俺の婚約者。(婚約者でもおkらしい)
今まで一緒に住んでいたレオパレス21の屋根が
吹き飛んだため、住居に困ってる。

妹の美雪も大学生のため収入がないため同居する。
保証人は俺の母親。母は都内在住。
親父はモンゴル在住。

親父って全く連絡とってないけど、まじでモンゴルにいるのか?
なんでモンゴルなんだよ!!
俺の郵貯のカード返せよな!!(-_-メ)

「入居条件のためとはいえ、瞳さんがお兄ちゃんの婚約者?
 笑えない冗談だよね(;^ω^)」

「まあまあ美雪(∩´∀`)∩ これから三人で
 暮らさなきゃならないんだ。仲良くやっていこうじゃないか」

ぶっちゃけ昼ドラ確定だと思う。
美雪と瞳さんに関しては、今までの話数を
読んでもらえば分かると思うが、険悪だ。

かといって、どちらかを追い出すわけにもいかない。
むしろ俺が出て行きたいくらいだが、小説の設定だから
我慢するしかない。まじでいつまで出演すればいいのよこのクソ小説。

「美雪さん、この際だからはっきり言っておくわ!(; ・`д・´)」

めずらしく怒鳴ったなヒトミさん。

「家事の分担は大事だと思うのよ!!
  私と賢人君は社会人で一日16時間勤務だから
  家事をしてる時間が取れないわ!!
  よって平日の夕飯の支度などは…( ゚Д゚)」

「あーはいはい。('Д')ケッ
  今まで通り私が作りますよ。
  ちゃんと三人分作りますし、瞳さんの
  料理も手を抜かずに作らせていただきます」

「聞いて!! 私だってあなたと同居するのは
 不愉快の極みだわ!! 政治家的に表現すると遺憾よ!!」

初日から喧嘩するのは、イカンよね。侵略イカ娘。

「だからといって、すぐ喧嘩腰になるのは子供することよ!!
  (; ・`д・´) お互い生活を友のする以上は
 家族なのだから協力しましょうよ!!
 ケント君のお母様も、私たちに協力して生き延びる術を
 身につけてほしかったのではないかしら」

「ふーん(* ̄- ̄) でもさぁ(・ω・)」

美雪?

「私と兄は同棲して何も問題なかったし、助け合っていたし、
 精神的にも金銭的にも満足していましたが? (* ̄- ̄)」

「残念なこと美雪さんは勘違いしているようね!! 
 (; ・`д・´) 私と賢人君は本来なら婚約者だから
 2人だけで住むべきなのよ。なのにお母さまがお優しいから
 あなたとの同居を認めてあげたのよ」

「婚約者……? 認める? さっきから上から目線なのが
  癇に障るんですけど、顔をぶん殴っていいですか?」

「いいから最後まで話を聞きなさい!!( ゚Д゚)」

「うるせえ!!」

今のうるせえ、は俺の妹のセリフだ。
やべー( ゚Д゚) 美雪の奴、完全にスイッチが入っちまったようだ。
ヨーダ。ダースベイダー。だるまさんが転んだ。
しりとりしてる理由は、現実逃避したいからだ。

「自称兄の婚約者だからって調子乗りやがって!!
  こっちだって我慢してあんたと一緒に暮らすことに
  してやってんだよ!!」

「……」

「だいたい。そっちこそ何様なんだよ? 
  兄と私のキス動画を拡散させたクソ野郎のくせに、
  私の見てないところで兄と良い関係になりやがって!!
  私からしたらあんたはただの赤の他人。邪魔者なんだよ!!」

「美雪さん。あなたの言葉を今はなかったことにしてあげるわ。
 だから落ち着いて話をしましょう」

「だったらその婚約者って言葉を取り消せ!!
  不愉快なんだよ!! あんたはよくて兄の同僚でしょうが!!」

「婚約は当事者間で決めることよ。
 私と賢人君は互いに恋人同士と認めているわ。
 確かに婚約者は言いすぎたかもしれないけど、
 市営団地の入居条件を満たすためには仕方なく…」

「仕方なくじゃなくて本当に婚約してたんだろうが!!」

「そうね。お互いの親の同意が得られれば正式に婚約したいわ。
 そしてあなたが彼のこと大好きなことも
 十分すぎるくらいに伝わったわ。
 もっとも。あんたみたいなわがまま小娘じゃ
 彼に選んでもらえないでしょうけど」

「なんだとぉ!!」

っていうか婚約してなかったか?
俺の記憶違いじゃなければ、互いの母親が認めていたような……?
あるぇ? 読み返してみると美雪が俺の正妻にもなってる? 
どうなってんだこの小説。
金の運用の話ばかりで恋愛の描写が足りなさすぎるぞ。

それより大変だ。
二人の乙女は口喧嘩を超えてリアルフェイトに突入した。
フェイトじゃなくてファイトだった。フェイトってなんだよ。
運命って意味は間違ってないかもしれないが。

殴りかかった美雪の拳を軽くかわすヒトミさん。
鮮やかな動作だ。お返しにびんたを一発。

「いったぁ……」

ああ、確かにすごい音だった。
風船が割れたのかと思ったよ。

俺はカンガルーのような動作で瞳さんに近づいた。

「まあまあヒトミさん。暴力は良くないよ(;´・ω・)」

「あら、それはなんじゃないの? 暴力ですって? 
 私の方からは何もしてないわ。
 だって向こうから殴りかかって来たのだから、
 今のは正当防衛と言うべきじゃないかしら」←超早口

「仕掛けたのは美雪だ。確かにそうだ。
 でも美雪は俺の妹なんだけどなぁ…(;・∀・)」

「妹だから何? 例え暴力を振るわれても特別扱いしろと?
 あらそう。あなたはそんなにも妹さんの味方をしたいのね。
 じゃあなにかしら。仮に私がけがを負わされて
 会社で仕事をするのが困難になって、
 仮に欠勤することになってもいいというの?
 ねえどうなのよ。はっきり言ってちょうだい」

やべえぞ。瞳さんがマジギレしてる。
普段温厚な人だから切れるとヤバそうだ。
この人、俺より7歳も年上なんだよなぁ…(>_<)
しかもチョー早口だ。良く途中で噛まないな。

俺は背中を氷の刃で突き刺されるほどの
プレッシャーを感じ、委縮してしまう。

「クソ……よくもやりやがったな…」

ゆっくり振り返ると、やはり美雪も相当怒っていた。
激おこぷんぷん丸って表現できるレベルじゃねえ。
まさにリアル昼ドラだ。ドヤ焼き食べたい。

「お、おい美雪……さん? ((((;゚Д゚))))」
「お兄ちゃん邪魔。危ないから、そこどいて」

俺がヒトミさんの近くから離れたら、
戦いのゴングが鳴るのは必死だ。

赤コーナー、ヒトミ選手。青コーナー、美雪選手。
とすると審判は俺か。この二人の暴走を
止められるのは俺しかいない。

そもそも、なぜこうなった?
二人が俺を奪い合う理由が分からん。
二人とも主義思想の違いはあれ、美人だよ。
俺には釣り合わないほどにな。
これはあれか。小説の主人公補正ってやつか。

ラノベの主人公や少女漫画の主人公も
平凡な設定なのに異性にモテまくるし。
俺が仮に女だったら、俺みたいな底辺労働者は
絶対夫に選ばねえけど。だって収入が不安定なんだぞ。

この沈黙を破ったのは、ひとみんだった。

「はぁ……にらみ合ってても無駄に時間が過ぎるだけね。
 限りある時間を有意義に過ごしたいものだわ。
 賢人君。これから夕飯の買い出しに行きましょうか」

「へ? 買い物?」

俺はやはりカンガルーの顔で壁掛け時計を見た。
だが何もなかった。引越初日で荷物を何も持ってきてないのだ。
唯一あるものといえば、かあさんが送ってくれた布団が三人分。
歯ブラシ三人分と歯磨き粉。タオル類。シャンプーとリンスと石鹸。

なんと冷蔵庫や電子レンジすらないのだから笑える。
エアコンだけは初めから設置してあるから助かった。
今は6月の中旬の設定だから夜は蒸してしょうがない。

そもそも引っ越すのが決まったのも突然だったから、
まだ美雪と一緒に住んでいたアパートの解約すら住んでない。
早く解約しねえと金がガガ!! 勇者・ガオガイガー!!

「さあ行きましょうか賢人君?」

行きたいけど、行けねえ。
二人きりで買い物なんかしたら美雪がヒスるのは確実。
晩飯のおかずが、ミンチにされた俺になっちまうよ。

ぶっちゃけ瞳さんと買い物できるなんてカップル気分が
味わえて最高のイベントなんだが……

「行きたいなら行けば?」

美雪がそっぽを向きながら言った。

怒りのオーラがはんぱねえよ。
こいつ絶対納得してねえだろ。
あーもー。どうすればいいんだよこの修羅場( ゚Д゚)
これに比べたら金の話をしてた時は平和だったな…。

俺は震えながらこう言うしかなかった。

「やっぱり仲良く3人で行こうじゃないか!!
 だって俺たちは今日から家族になるんだろ!?」

「は?」 
「……はい? 何言ってるの」
「誰がこんな奴と一緒に」
「私だっていやよ。こんなわがままと」
「なんだと年増」
「何か言った? クソガキ。精神年齢10歳」
「苦労知らずの社長令嬢」

「あんただって金持ちじゃない」
「私はあんたと違って毎月生活費払ってますから」
「あんたって呼ぶな。年上には敬語使え」
「お兄ちゃんも敬語使ってないけど?」
「彼は特別だから。あんたは使え」
「そうね。おばあさんは敬わないとね」
「……何か言った?」
「クソババアって言ったんですけど、耳悪いんですか?」

「うふふ。あっそう。(´∀`*)もう一回殴ってあげようか?」
「どうぞどうぞ。今なら兄も見てますから」
「美雪さんはいちいち私に喧嘩売らないと気が済まないのね」
「それはこっちのセリフだ!!」

その後、7分ほど口論した結果、
三人で買い物に行くことで同意した。

たかが買い物に行く人数を決めるのに、
今後の追加関税をめぐる、
米中の貿易交渉並みの修羅場になっちまった。

まじで俺の胃がもたねえよ(>_<)
スーパーで胃薬は売ってねえよな……

銀行辞める前は毎週飲んでたなぁ……
過酷すぎる営業ノルマ……
上司からの命令で顧客へ不正融資の勧誘……
元本割れする金融商品の販売、
その後、クソ老人からのクレーム……
銀行カードローンの貸付……金利によるローン地獄……

今の金融業界は利ザヤが稼げない。
だから客を騙すしかないんだ。
月のノルマを達成しないと
家族まで人質にとると上司に脅され……
だめだ。思い出したくねぇ(>_<)

銀行時代の悪夢は、妹の美雪にさえ話してないほどなんだ…
早く忘れないと(>_<)

「あ、あのさぁ…」

俺は後ろを振り返ったが、それ以上何も言えない。

スーパーは歩いて10分ほどの距離(結構遠いな)に
あるんだが、二人とも俺の後ろを歩いている。

 俺
瞳 美雪

↑小説だと伝わりにくいだろうが、
このフォーメーションになってる。

ワールドカップ男子の日本代表を意識したのか、
俺がワントップのフォワードで、
美雪たちは攻撃的ミッドフィルダーになっている。

しかも両MFは、互いの顔すら見ないほど険悪。
連係の悪さでは世界を狙えるレベルになっている。

楽しいお買い物のはずが、
マジでただの苦痛であり、一種の修行と化している。
三人で行こうなんて言うんじゃなかった!!


ズドドドド、どかああぁぁnん ズバアアン キュイーン

夜の6時。タイムセールの時間。
スーパーはお金のないお客が、戦車や装甲車で暴れまわり、
店側は迫撃砲やロケットランチャーで迎撃するなど
令和10年の小売り事情は熾烈を極めている。

毎回思うんだが、あいつら金はないのに
武器だけは豊富に持ってるんだな。
戦車って10億くらいするんじゃねえのか。

「美雪。さっさと買い物を済ませるぞ。
  半額のカツどん弁当を狙うんだ」

「うん。でも今日はちょっと無理そうじゃない?
 いつもより派手に銃弾が飛び交ってるよ」

俺たちは宙を轟音が通り過ぎていくのを感じたので、
急いでその場に伏せた。

ひゅーーーー。ずごおおおおおおおん!!

ひゅーずごごごおごごっごん!!

ひゅーひゅー、ずごごごっごおごごごごん!!

副店長が主力となってお店の迫撃砲部隊が
お客を威嚇しているのだ。すげえ連続攻撃だ。
休む間もなく砲弾がさく裂し、火炎と破片をまき散らして
武装したお客さん達を吹き飛ばしていく

「ぎゃああ」「いやあああ」

中年の夫婦が人形みたいに宙へ跳ねた。
彼らのちぎれた腕や足が、駐車場に転がる。
うわ……どす黒い血が広がっていく……(~_~;)

この駐車場から店の入り口にかけてが、
お店側とお客側の境界線。戦線を構築している。

お店側は強盗の侵入を防ぐため、
入り口前に土嚢による塹壕陣地を構築している。
重機関銃が睨みをきかせ、
不用意に近づいてきた奴を撃ち殺すのだ。

この正面入り口以外は全面的に封鎖されていて、
ここ以外の場所から店に入ることはできない。

スーパーの機関銃手はどこも射撃の名手だ。
下手な客だと一発で頭を撃ち抜かれるぞ。
なにせパートさんの募集要項が、
射撃の訓練課程30時間以上となっている。

このスーパーは「カスミ」
我々北関東の民にとってはなじみの深いお店だ。

実は親会社が上場していて、
ユナイテッド・スーパーマーケット・ホールディングスという。
無駄にカッコいい名前だな。株主優待券は
お店で使える割引券6000円分か、お米券だったと思う。
雑誌に載っていたぞ。あと学園生活の高野ミウさんが
株主優待を使っていたシーンがあった。

また株の話をしちまった。
ぼーっとしていたら俺たちも
破片を食らって再起不能になっちまうから急がないと。

「ケント君。この状態でどうやってお買い物をするのよ」

「まず自分が武装してないことを証明しつつ、
 塹壕にゆっくりと近づくんだ。
 そして塹壕の前で財布とポイントカードと身分証明書を
 提示すれば中に入れてもらえる」

スーパーの中まで入れば安心だ。
令和10年のスーパーは耐久性を強化している。
壁や天井は5メートルのコンクリで固められているから、
重爆撃機に空爆されてもそこそこ耐えられるレベルだ。

分かりにくい人は、第一次大戦のベルギーが誇った、
『リエージュ要塞』を検索してほしい。あんな感じだ。

買い物ができるスペースは要塞の地下に用意されているのだ。

「渋谷賢人25歳。ふむ…。常連客。前科歴なし。
 入ってよろしい。後ろの二人は?」

「俺の婚約者と妹です。名前は坂上瞳と渋谷美雪です。
 2人とも1万円以上の現金を持っています」

「よろしい。身分証の提示は省略する。速やかに買い物を済ませろ」

「は、はいっ」

令和10年では、お客は神様ではない。
お客は定員様に土下座をしてでも買い物を済ませないといけない。
強盗など不審な客は撃ち殺される。

1000円以上の現金、金券、もしくはクレカを持ってない奴も
強盗とみなされ、やはり撃ち殺される。
確かに強盗が多いとはいえ、ひどいもんだよ。
俺たちは食べる物がないと生きていけないのに…。

「おにいちゃーん。お弁当がたくさん売ってるよぉ。
 どれ買うか迷っちゃうね (*´ω`)」

「そ、そうだなっ」

別の意味で生きた心地がしねえ。
だって瞳さんが親の仇を見るような眼でこっちを見てくる。
今すぐにも爆発しそうだ。

美雪よ。お前のことは嫌いじゃないんだが、
瞳さんの見てる前で腕組みはしないでくれ。

「カツ丼もいいけど、
 こっちのお寿司弁当も安くない?
 半額だから240円で買えるよ」

「そ、そうだな。美雪がいいと言うならそれで」

「んもー。お兄ちゃん、さっきから適当に答えてるだけじゃん」

「あはは……。どれもおいしそうに見えちゃったからさ」

むぎゅっと、俺の腕にわざとらしく美雪の……
美雪の…その、…なんだ? 
おっぱいが押し付けられている(>_<)

こんなこと描写してて自分が馬鹿らしくなるが、
スレンダーな瞳さんじゃこの感触は味わえないと思う。
ブラの硬さと胸の弾力が合わさって、色々ヤバい(*´Д`)

6月なので俺は半そでのTシャツ。
ちらっと見ると美雪のぶかぶかのキャミの
すきまから紺色の落ち着いたデザインのブラが見えちまう…。
妹のくせに紺なのか…(;゚∀゚)=3

美雪の短パンから見える白い足もすごい。
何て肌が白いんだ。それに肉付きもいい。
つい触りたくなっちまう。

「くすくす」美雪が俺のズボンを見てほほ笑んでいる。
もう何度目になるか分からないが、俺はズボンにテントを張っていた。
つまりフルボッキだ。

俺ってやっぱり普通の男じゃなかったのか。
前にこいつとキスした時はおえーってなったのに、
なんで体には反応しちまうんだ。

血を分けあった妹だってことは本能で理解している。
美雪の裸を見た時も、押し倒そうとまでは思ったことはない。
だが、美雪が俺に婚約届まで持ってきたもんだから、
自然とこいつを異性として意識してるのかもしれない。

それはまさに……禁断の恋。
午後2時55分に何かが起こる〜の本村兄妹の再現だ。
あっちはマジで妹さんが妊娠しちまったからな。

「賢人って意外と初心なんだね(*´з`)」

け、けんとだとぉ!? Σ(゚Д゚)

妹はごくまれに俺の名前を呼び捨てにする。
最初は嫌われたのかと思い焦ったが、あとで
本気の恋愛感情の表れだと説明されて驚いたものだ。

しかし、こんなラブシーンは長く続かない。

「ちょっとあなたねぇ、いい加減に彼から離れなさいよ!! 
 さっきから嫌がってるじゃない!!」

「きゃああああ (~_~;)」

美雪はひとみんに突き飛ばされ、パン売り場の棚へ突っ込んだ。
最近は児童の列に高齢者の車が突っ込むのが流行してるな。
作者も言ってたけど、あの流行そろそろ終わっとけよ。
未来ある子供を高齢者が殺してどうするんだ。

「ケント君 (≧∇≦) こっち向いて(。・ω・。)ノ&#9825;」
「ひと…」

(●´Д`)ε`○) (●´Д`)ε`○) (*´ε`*)チュッチュ

ちょっとだけ舌も入れられた。
この小説って官能的な表現もあるんだな。
いきなり積極的すぎるし、
発情した瞳さんの顔がエロすぎだろ…

ここが店先じゃなかったら最後まで行っていたのは
間違いない。つーか今さらだが店内でキスしちまった!!

「えへへ (。・ω・。)ノ&#9825; キスしちゃったね(*'▽')」

俺の首の後ろに両手を回し、はしゃいだ様子の瞳さん。
何の脈略もない突然のキスだったが、
俺は男なので興奮しちまう。

男は女と違って雰囲気とか心の準備が
いらねえから便利なのだ。まさにオスの本能。

その次の瞬間だった。
瞳さんの側頭部に、ごみ箱が投げつけられたのは。

戦車の主砲のごとく軌道を描いた店内ゴミ箱は、
瞳さんの体を竹トンボのように吹き飛ばしてしまった。
アンパンマンの必殺技、アンパンチをまともに
食らってしまったバイキンマンだな。

あれ、普通に考えて死ぬよな。

あれだけ殴られても、次の週には
パン工場への襲撃を計画するバイキンマンの根性。
肉体的、精神的なタフさ。次々と新たな企画を練る発想力。
どれをとっても営業職にぴったりだ。

さらにユーフォ―型の乗り物?バイキン号?
を独自開発できることから、理系の研究分野でも
才能を発揮している。日本中から引っ張りだこに
なってもおかしくないほどの逸材である。

「うん。そうだね。バイキンマンってすごい人材だね。
 でも今はそれよりも話すべきことがあるはずだよね」

「美雪ちゃん……はは。もしかして怒ってるのかなぁ?」

「私がどうして怒ってるのか当ててみて」

「俺が、坂上ひとみさんと、接吻をしたからです」

「正解」

「はは……」

「私に何か言うことないの?」

「すみません(>_<)」

なんで俺は謝ってるんだ?
妻に浮気がばれたわけじゃあるまいし。
そもそも瞳が俺の婚約者なんだが、困ったことに
婚約者は美雪が切れるワード・ナンバーワンになっちまってる。

「あんな行き遅れのおばさんとキスしてあげるなんて
 お兄ちゃんはボランティア精神にあふれてるんだね」

いつもなら美雪の暴言を叱るところだが、
あまりの迫力に何も言い返せないのが辛い(>_<)

「ごめん」
「謝るくらいなら初めからしないで」
「ごめんなさい。もうしません」
「だから、謝ったからって解決することじゃないから」

じゃあ、どうすればいいだ。
相手が怒ってるなら謝るしかないだろJK。

「私はね、最近のお兄ちゃんの態度全体にムカついてるの。
 お兄ちゃんって私の見てないところでは
 すぐ変な女に騙されちゃうんだから。
 会社ってそんなに素敵な出会いがあるところなの?
 お兄ちゃんは会社に仕事しに行ってるんだよね?」

「俺はちゃんと働いてるつもりだが」

「仕事中にあの女の方ばっかり見てるんじゃないの?
 だから仕事でミスして主任にムチ打ち食らうんだよ」

「あの時は過労で睡眠不足だったからだよ。
 ミスなんてうちの部署の連中はみんなしてるぞ」

「この前スーパーに行った時もかぐや姫さんと
 仲良さそうにしてたよね。ああいうの、なんなの?」

「なんなのって言われても……」

「私を怒らせて楽しいのかって聞いてるの。
 最近はお兄ちゃんも私を怒らせる名人になりつつあるよね。
 私とお兄ちゃんは、助け合って生きていかないと
 ダメだよってパパからも言われたのにさ」

「なあ、まだお説教は続くのか?
 早く買い物を済ませて帰ろうぜ。
 早く帰らないと明日も仕事なんだよ…」

「そうやってすぐ逃げようとするんだから!!
 二言目には仕事仕事って!!」

「…じゃあ逆に訊くが、仕事しないで
 どうやって生きていくんだ?」

「お兄ちゃんの安月給なんて家賃代にすら
 ならないじゃん」

「おまっ…給料のことは言うなよ!!
 令和10年の埼玉県の賃金水準を
 知ったうえで言ってるのか!!」

「あーそうですか。労働者は大変だよね。
 だからこそ、お兄ちゃんの生活費の管理はこの私が!! 
 他でもない妹の私がやってあげてるの!!
 お弁当も毎朝早起きして作ってるし、
 税金の支払いも全部私がやってるんだけど!?」

「それに関しては感謝してるって……。
 毎月同じ話してるのは気のせいか?」

「だったら最初から私を怒らせないでよ!!
 私を不愉快にさせることを今後しないって約束してよ!!
 こうやってつまらないことで喧嘩して誰の得になるの!! 
 ねえ、私何か間違えたこと言ってる!?」

美雪の世界は、なんでもかんでも自分中心だ。
俺の事情なんて考えてくれない。
俺が会社で死ぬ思いで働いてることなんて
学生の美雪には想像もできないだろう。

あと一度切れるとなんで毎回昔のことを蒸し返すんだ?
女ってみんなこうなのか?
めんどくさすぎて笑っちゃうレベルだ。

私を怒らせるなって言うけど、
そんなこと言ったら俺は美雪の機嫌を
損ねないように細心の注意を払って生活することになるぞ。

カンボジアの仏教徒の修行じゃねえんだ。
そろそろ俺も本気で怒っていいかなヽ(^o^)丿

「貴様ら、先ほどから話してばかりで
 買い物をする気配がないようだが」

怖い顔をした女性定員が、俺らにピストルを向けている。
これは非常にまずいぞ。どうやら瞳さんが
ひそかに店員さんに通報してしまったらしい。

瞳さんは余裕の笑みでお弁当とお茶のペットボトルの
袋詰めを終えている。いつの間に買ったと言いたいが、
いつでも帰るタイミングあったよね。俺と美雪の喧嘩長かったもん。

俺は謝罪し、妹と手を繋いで適当なお弁当を買った。
仲良しのアピールだと小声で言うと、まんざらでも
なさそうな顔で助かった。マジギレしてる時の
こいつに下手に触れると、兄にさえ拳を振りかねないからな。


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