20代から中高年のための小説投稿 & レビューコミュニティ
 ようこそゲストさん トップページへ ご利用方法 Q&A 操作マニュアル パスワードを忘れた
 ■ 目次へ

作品名:令和10年。財政破綻と強制労働と若い兄妹の絆の物語 作者:なおちー

第25回   美雪「紹介しますね。私の夫の賢人です(^O^)/」 賢人「なっ…(´゚д゚`)」
プトレマイオス朝のエジプトにて。
クレオパトラは実の弟の結婚していたと
高校時代の世界史教師が言っていた。

政治的な理由があるのか知らないが、
実の弟と結婚とは他人事でも吐き気がするものである。

近親相関ものは広く愛されている。
兄と妹ものはAV、アニメの同人誌を初め、さんざん使いまわされてきた。

ヘンゼルとグレーテルで有名な、あのグリム童話を例にしても、
その物語はドイツの森深くに住む、おばあちゃんから孫へと、
またその孫へと数百年も語り継がれて来たものを
元ネタに、賢者グリム兄弟が編集(脚色有り)したものだ。

グリム童話には、『兄と妹』というタイトルの問題作がある。
詳細は省くが、堂々と近親相関を題材にした作品である。
ヘンデルとグレーテルにしても脚色された日本版でなく
原作のグリム童話を読んでみると、それらしい描写が……
よく読むとなかった。申し訳ない。

改めて各人物の関係を整理しよう。

・『坂上瞳』は、賢人の愛人
・賢人の正妻は、『美雪』
・『賢人』は二人の女性をできるだけ平等に愛する

「これにて物語は一件落着ぅ( ̄▽ ̄)」

と賢人のママは言うが、どこが落着したのか。
私は瞳を愛人として描くつもりはない。

むしろ物語の真の主人公は瞳だったとすら思っている。
主要人物のひとりであった、かぐや姫さんはなんだったのか。
むしろ妹の美雪もわき役でも構わない。

実は瞳さんのモデルとなった女性が私の身近にいるのだが、
実際に小説として描いてみると、実に個性豊かで素晴らしいキャラである。
エガシ…午後2時55分のマリー・アントワネット嬢に匹敵するか、それ以上である。

「賢人の奥さんにヒトミさんは……ちょっと美人過ぎるねぇ(; ・`д・´)」

ええ。実在の彼女に出会ったことのある人なら、みな同じことを言うでしょう
廊下ですれ違っただけでほとんどの人が振り返りますからね。
彼女が歩いてくると光り輝くようなオーラを発している。
体つきは細くてあんまり色気はないんですが、とにかく顔が整ってる。

しかも実在の彼女も未婚で彼氏もいません。
あれほどの美人がなぜ……? まさかレズなのだろうか…?
もはやギリシア哲学的考察が必要なレベル。

「ほんっとにヒトミちゃんは綺麗な子だよ。
 お肌も若々しくて綺麗。髪がさらっさら。
 日本人形? もう女優じゃん。
 どんなシャンプー使ってんの?
 少し気が弱くて動作に品もあるのもGOOD。
 まさに愛されキャラ( ・´ー・`)」

私もそう思いますが、それが何か?

「賢人にはもったいないよ」

だからそれが何?

「だーかーらー。美雪が嫉妬して瞳ちゃんを
 殺しちゃうに決まってるジャン★ (ノД`)・゜・。」

なんと………

美雪「そういうわけだから、お兄ちゃん。婚姻届け持ってきたよ」

賢人「美雪……。おまえは自分が言ってることを理解してるのか?
    俺とお前は兄弟だと何度も」

美雪「私って男だったんだ」

賢人「間違えた!! いつもの五時だよ!!」

美雪「今は2時だよ」

賢人「はいはい。さーせん!!(>_<) もうどうでもいいよ!!」

ふむ。ところで婚姻届けは無効になると思うのだが…
(2親等以内の近親者の婚姻を法律は認めていない。
 よって役所が受理しない)

美雪「令和10年ならおk。色々と法改正してるから」

賢人「すげー都合の良い設定だな。
   あのなぁ。俺からこんなこと言うのもあれだが…」

なぜ法律が近親婚を認めないか考えてみよう。
夫婦であれば当然夜の夜の生活がある。
兄と妹の間で子供を作ってしまう場合が大問題なのである。
奇形児、障害児が生まれる可能性が大である。
それに世間体も悪い。

周囲の反対を押し切って結ばれたところで、
最終的には『午後2時55分〜』の終盤で描かれた、
ケイスケとミホの関係になってしまうことであろう。

「私とは今まで通り普通に暮らせばいいのよ。
 今までと同じなんだから簡単だと思うんだけど。
 それにお兄ちゃんは、お風呂上りに
 私の裸を見ても興奮しなかったでしょ?( `ー´)ノ」

私の記憶が確かなら、この男は過去に三回くらいボッキしていた。
つまり興奮していたと考えるのが妥当だ。
美雪はかなりの美人で乃木坂46でセンターを狙えそうなレベルだが、
はたして実の妹の裸を見て兄貴は興奮するのか? 

私は親戚に妹らしき女の子がいるにはいるが、
実の妹はいないので想像もつかない。
兄は血の繋がりのある妹を美人として認識するのか。
またしてもギリシア哲学である。

「あのぉ。そろそろくだらない戯言(ざれごと)を
 やめてもらっていいかしら? 私久しぶりに切れちゃったわ。
 もうね。自分でもおかしいくらいに、ぷっつんきちゃいました(*^_^*)」

瞳はどこから持ってきたのか、鉄パイプを持っている。
元ネタは私が高校生との気によくプレイした、
サイレントヒル3で主人公が使っていた鉄パイプである。

鉄パイプは字面からは想像もできないほどの凶器である。
勢いよく振り回せば人を殺してしまうかもしれない。
もちろん瞳さんは人を殺すために用意したのだろう。

やはり殺すのは美雪ですか?

「いぐざくとりー(。-`ω-) 」(そのとーり)

この女の腕は細い。だがなめてはいけない。
動きは俊敏だし、握力も持続力かなりある。
単純な運動神経は10代の女子と比べても問題ない。

すでに瞳は愛人呼ばわりされたことで極限まで
ストレスをため込んでおり、今にも爆発しそうだ。
彼女が本気を出せば、美雪の首など簡単に落としてしまうのだろうか。

「よう愛人。ちーっす (^O^)/」
「美雪さんの臨終の言葉はそれでいいのね?」
「お兄ちゃんは殺人犯とは付き合えないって言ってるよ」

「むしろあなたを殺せればそれでいいわ。
 実は前からずっと殺してあげようかなって思っていたのよ」

「私は瞳さんが生きても死んでもどっちでも……
 だってヒトミさんそのものに興味ありませんから。
 私にとって瞳さんの価値はありません。むしろゼロです」

「黙れ。ブス」

「ぶ……ブス?」

「ブスブス。ドブス。あんたの顔なんて見れたもんじゃないわ。
 賢人君は美形なのに妹のあんたはどうしてそんなに醜いの」

「わ、私は、ブスじゃないもん!!」

「嘘よ。だってブスじゃない(主に性格が)
 化粧してもブスなのは隠せないわね。
 お金の無駄だから化粧品買うのやめたら?」

「うるさい……三十路のくせに!! このおばさん!! 
 年齢の割に若作りだからって調子に乗らないで!!」

「私はあなたより年が上だけど、あなたより美人な自覚はあるわ。
 本当は人前で見せたくはなかったけど、これを見てごらんなさい」

スマホの写真には……
なんと、大学のミス・コンテストの記念写真があるではないか!!
ミスに選ばれたのは、大学一年生、文学部の坂上瞳。二学年時も同様。

三学年時と四学年時はなし。(大学では何回生とも呼ぶが…)
なぜかというと、三学年以降は瞳が出場を辞退したからである。
辞退した理由は、周りからチヤホヤされることを嫌ったためだ。

「うそでしょ……」

写真の瞳嬢は、それは輝かんばかりの美しさであった。
大学祭に来ていた、当時の人気男性歌手とツーショットで映っている。

坂上瞳はモデルでもないし芸能界の人ではないから、
緊張して口角だけを上げた笑い方は決して上手ではない。
だが、どこまでも綺麗だった。

初心な男性ならその写真をじっと見つめたあと、
大切に保存しておくかもしれない。

「美雪さんは今大学三年生だったはずよね。
 美雪さんはミス・コンテストで優勝した経験はあるかしら?」

あるわけがなかった。美雪は一年生の時に出場したが
選ばれなかったので、それ以降は諦めた。

美雪が容姿端麗なのは何度も説明した。
しかしコンテストで賞を取る人は、何かが違う。
単純な顔の作りだけでなく、芸能人が持っている例の
特殊なオーラに代表されるような、
初対面の人を振り向かせるほどの『何か』なのである。

その輝きが美雪にはなかった。
ただの美人では坂上瞳には勝てないのだった。

(信じられない……ヒトミさん。君はおそらくすっぴんでも…)

賢人はその事実に深く感動し、涙さえ流していた。

実は瞳のすっぴん姿は、第4話あたりで見たことがある。
例の…瞳のアパートを燃やそうとした時だ。コンビニ帰りの
ガリガリ君タイムの瞳嬢は、なんと夜だったこともあり、
お風呂でメイク落としをした後だったのだ。

今考えれば、すっぴんを見るのはこれが初めてじゃなかった。
すなわち、瞳嬢は決して化粧品に頼っているわけではない。

「ひ、ヒトミさんって大学時代とほとんど顔が変わらないんだね。
 手足も細くて肌がきめ細かくて、今でも十分に美しいよ(ノД`)・゜・。」

「そっそんなこと… (≧∇≦) 
 あっ、お世辞よね? Σ(゚Д゚) 
 つい舞い上がっちゃうところだった」

「俺の心からの…本心だよ。嘘なんか言ってどうするんだ」

「ほ、本当に?(≧∇≦)」
 
「どうして君はこんなにも綺麗なんだ( ;∀;)
 こんな美人と結婚できるなんて夢みたいだ。
 なんでか分からねえけど、涙がとまらなくなってしまう」

「けんとくーん(。・ω・。)ノ&#9825; 大好きー(●´Д`)ε`○)」

ふむ……。何をしてるかは顔文字を見れば、
だいたい伝わることであろう。

「び、美人だから何!?」

妹ちゃんのターンである。怒りで声が震えている。

「美人なんて芸能界にはごろごろいるし、
 だいたい芸能人って料理も出来ないし
 子供作ったらすぐ離婚するバカばっかじゃん」

「私は中等部まで家庭科調理部にいましたけど?
 独り暮らしの時も自炊してましたけど?」

「どうせわがままに育てられたお嬢様なんだから、
 おにいと喧嘩したらすぐ嫌になって出て行くんでしょ!!」

「あなたこそ、自殺未遂が趣味とか相当変わってるわよ。
 あなたが血だらけでバスタブを汚した時に
 ケント君が陰で嫌がっていたの知らないんでしょ」

「ふ、ふん。でもお兄ちゃんは最後は私の味方をしてくれるもん!!」

「その年でお兄ちゃんお兄ちゃんってキモイのよ。
 本当に頭のねじが外れてるんじゃないかしら。
 ばっか…じゃないの?
 兄以外にイイ男見つけられないのもアホの子って感じがする」

「うるさい、うるさい!! 瞳だってその年まで
 結婚相手見つけられなかった売れ残りのくせに!!」

「結婚相手なら今見つけられたんだから問題ないわよ。
 それに今は晩婚化の時代なんだから30過ぎで結婚するのは普通よ。
 だいたいね。私はかあさまが持ち込んでくる、くだらない縁談を毎回…」

「あーあー聞こえません!! 私のママが私と兄の結婚を
 許可してくれた以上、あなたは兄の愛人として収まってください。
 それが嫌なら私たちの目に入らない場所へと消えてください。以上!!」

「美雪さんって経済のことは詳しいけど中身は子供なのね。
 人の言い分を最後まで聞かずにさえぎって。自分の言い分だけ
 言いたい放題。小学生の女の子と会話してるのかと思った」

「ならお兄ちゃんに訊いてみましょうか!!
 残念ながら子供の私と大人な瞳さんでは
 話が平行線をたどるだけなので!!」

「え…」←けんと

賢人は、国語の授業中に居眠りしていたが、
突然先生に指名されてしまい、何ページの
文章を音読したらいいか分からず、周囲の
キョロキョロしている男子生徒そのものだった。

「賢人君が困ってるわよ。そもそもどうして
 賢人君に訊くの? 口では私に勝てないから
 お兄さんに味方してもらおうとしたの?」

「違いまーす。あなたとは価値観が合わないから
 第三者の意見を聞こうと思っただけですけど?」

「出た。若者の大好きな言葉。価値観。
 美雪さんは学生だから、人の上に立ったことがないでしょ?
 人間は考えてることがそれぞれ違うのよ。
 主義、主張、立場が違うのは当たり前。
 社会では異なる考えの人をある程度はまとめ、最終的には
 同じ方向に向けて歩ませる力が必要とされるのよ」

「ぐぬぬ。偉そうに」

「価値観が違うから何? 当たり前じゃない。
 あなたと私は赤の他人なのだから。
 坂上家では幼い頃から組織論を教わって育ったものですから、
 口喧嘩のまとめ方くらいは心得てるつもりだけどね。
 すぐ夫と喧嘩して離婚するのは美雪さん。
 あなたのほうじゃないかしら」

「くっ……」

美雪ちゃんは、さめざめと泣いてしまいました。
自分より美人なお姉さんの瞳さんに論破されたことが
プライドに触ったのでしょう。
肩は怒り、握りしめた拳が小刻みに震えています。

政治経済の話をした時は自分の方が頭が良いと確信していましたが、
夫婦になるには頭脳より精神面での成長が大切なのだと
思い知らされました。

目の前にいる恋敵は、おそらく兄のことを本当に
分かってくれる存在ではないかと思えてしまう。
すると自分の存在がだんだんとこの世から
消え去ってしまうんじゃないかと思ってしまう

やはり育ちの良い人間は何もかも違うのだ。
坂上家は企業経営で成り上がった家計。
それもたかが一代の話ではない。

瞳を一番かわいがっていたのはおじいさんだった。
孫から声へと、しっかりと教えは受け継がれていく。
わがままなお嬢様は、むしろ美雪の方だったといえるだろう。

美雪はなんでも自分を中心に物事を考えて来た。
少女の年齢を終え、成人してからも自分を中心に
周りが動いてくれないと気が済まなかった。

話の合わない同級生は切り離し、兄との生活を望んだ。
自分がどれだけ身勝手なことをしても、兄は最後は笑って許してくれる。
だから大好きだった。ブラコンになった理由はそれだけじゃない。

なんとなく、小学生の時から賢人のことが好きだった。
本当は理由なんてないのかもしれない。ただ好きなのだ。
一緒にいると安心するのだ。
仕事帰りの兄に、自分の作った料理を食べてもらう瞬間が一番好きだった。

賢人が中学高校と彼女ができるんじゃないかとハラハラしたが、
最後まで作らなかったことを美雪は喜んでいた。

「美雪(*'▽')」

賢人は、妹の頭をポンポンと優しく叩いた。
本気で悔しがって涙を流す妹もまた、可愛いものだった。
人生とはぶつかりあって傷つき、成長するものである。

「おにいちゃん!!」 兄の腕にしがみついた。
もう絶対に離さないと言わんばかりに。

(さあて)

もうどっちも選べない。
選ぶ資格すら自分にはないことを賢人は知っていた。


← 前の回  次の回 → ■ 目次

■ 20代から中高年のための小説投稿 & レビューコミュニティ トップページ
アクセス: 1836