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作品名:令和10年。財政破綻と強制労働と若い兄妹の絆の物語 作者:なおちー

第20回   愛とは何か? お金も愛である。
※三人称

坂上瞳は軍艦から降りる際、父から帰りの旅費を心配された。
これは、坂上家ではよくある場面である。

「少ないけど5万円で足りるかな(´▽`)」
「そんなにいらないよ。
 今日は多めに10万円おろしてきたから(^−^)」

隣にいた美雪は見逃さなかった。(ちっ……ムカつく(-_-))
父がこっそりと娘に「カード」を手渡していたのを。

実は美雪は、一人暮らしをする際に
父からクレジットカードを渡されていた。
利用限度額が200万までに定められている。

長い人生、何があるか分からない。
急な出費が合ったり、瞳がむしゃくしゃして旅行に
行きたくなった時のためにパパが用意してくれたのだ。

もちろんパパの口座に直結しているから、
使ったお金は分のお金はチャージしてくれる。

瞳は一度もカードを使ったことがないかと言えばウソになる。
何話前に書いたか忘れたが、高い化粧品の買い物にはカードを使った。

瞳はパパに申し訳ないと思いつつ、これも愛の形だと
正しく認識し、散財をした。満足だった。

「お父さん。私はもうカードはいらないのよ(´-ω-`)」

「でも、持っておきなさい。
 私はいくつになっても瞳のことが心配なのだよ。
 お金はいくら持っても困ることはないだろう(-∀-)」

今回渡されたのは、デビットカードである。
口座残高が500万以上。限度額は口座残高の分まで。
つまり、たくさん使えるのだ。

3年ぶりの再会で父は浮足立っていたのだ。
娘に与えるお小遣い(生活費?)にしては過剰が過ぎる。

筆者はそう思うが、こういったご家庭も
日本にはあるのだと納得しよう。

瞳は、旅仲間の美雪から殺意のこもった視線を感じた。
(#^ω^) ←こんな顔

だが軽くスルーした( ´∀` )

確かに自分で稼いだお金ではない。
とは言っても、父がぜひにとくれるものを
突き返すのも悪い気がした。

パパも今の地位を一代で築いたわけではない。
瞳は幼いころからママに聞かされたことがある。
お父様の、その先代の代から、坂上家は多くの不動産を
所有する家絵柄だった。

事業が成功したのはおじいさんの代からだった。
父は婿。坂上家は代々、外から経営の才能のある
優秀な婿を選ぶことで家の繁栄を維持してきたという。

だからママはこう言うのだ。

「ヒトミは私達両親に生活を依存してるのは事実ですが、
 私達もまたご先祖様の残してくれた遺産によって
 生かされているのです。人とは、常に誰かに依存して
 生きている物なのですよ。そしてそれは当然のことなのです」

お金持ちはお金を減らさないように努力するのが普通。
持たざる者は増やすことばかり考える。(そして使ってしまう)
すでに財産を持っている者は、むしろ減ることの方が怖いのだ

瞳は、中学生までは物欲の強い娘だった。
洋服屋さんに行ってほしい物は何でもねだり、母を困らせていた。
毎年夏休みは欧州各国を旅行し、取った写真を友達に自慢さえしていた。

ママと同じブランドの化粧品カタログを眺めるのが好きだった。
宝石にも興味を示した時はひどかった。
とても中学生が買えるレベルではないネックレスや
指輪に手を出したのは、まだ14歳の時だった。

瞳は今でも覚えている。パパに大学には将来
行かないからと、多めにお小遣いをねだり、
中二から中三に掛けて月11万円のお小遣いをもらっていたのを。

大切な貴金属を勉強机の二番目の引き出しに締まっておき、
家に帰っては引き出しの中を眺め、悦に浸った。

そして高校に進学する頃、それが当たり前ではないことに
だんだんと気づき始めた。中高一貫のお嬢様校では
周りはお金持ちの人ばかりだから感覚が狂っていたのかもしれない。

高校に進学し、勉強を頑張るようになる。
中学では下から数えたほうが早かったのに
クラスで上位の成績を取った時は浮かれた。

親はもっとお小遣いをくれるようになったのだが、
ヒトミは逆に全部貯金するようになった。

理由は分からない。世界に恵まれない子供たちがいることを
テレビで知ったからなのかもしれない。
アメリカの大富豪ウォーレン・バフェット氏が質素倹約な生活を
好むことを知ったからかもしれない。

「親が一生懸命働いて得たお金なのに、
 私が無駄遣いしたらもったいないわね。
 ご先祖様達に対しても申し訳ないわ」

最初はささいなことから始めた。
学校帰りの楽しみだった、コンビニ通いをやめた。
ハーゲンダッツなど高いアイスを買うのが趣味だったのだ。

お洋服は、流行遅れになるまで買い換えないようにした。
大学生の頃は他の子よりも地味な服だったと思う。

化粧品やコスメはコンビニやマツキヨでも十分な気がした。
お母さんが使っている高い化粧品には触れないようにした。

お金を使わなくなると、お小遣いがどんどん溜まっていった。
それが逆にむなしかった。自分で働いたお金でもないのに。
毎年のお年玉も銀行口座の残高に変わっていく。

周りにの人から見たら瞳は倹約家ではなく、ただのケチだった。
父の事業が失敗したのかとまで疑われ、友達付き合いが悪くなる。

だがヒトミは不思議な子で、女の子にしては珍しく
孤独なのが嫌じゃなかった。
大学の図書館は圧倒的な蔵書を誇る。
図書館なのでお金もかからない。
図書館によって小説を読むのが日課になってしまう。

日本人作家のサスペンスものがお気に入りだった。
退屈な現実世界と違い、小説の世界は刺激的だ。

恋愛に関しては冷めきっていた。
幼いころから見ていた父と母の不仲のせいもあった。
威張るのが好きな兄も大嫌いだった。

だから男に幻想も抱かない。何よりお金なら余るほど持っている。
坂上瞳は経済的に男に依存する必要がなかったから、
そもそも男に求めている要素がほとんどないのだ。

家に置いてある漫画は、弟が飽きて読まなくなった少年漫画ばかり。
少女漫画は小6の時に馬鹿らしくなって読むのを止めてしまった。
誰もが夢見る乙女チックな恋愛なんて、
現実にはあるわけないし、理想を抱くのは好きじゃかった。

背が高くイケメンの男子を見ればカッコいいなぁとは思うが、
それだけである。付き合いたいとか、そういう感情までは抱かない。
好きな芸能人や俳優も特にいない。

顔が美しいので男子から遊びに誘われることはあったが、全て断っていた。
高校時代の友達が次々に結婚していくのを、冷めた顔で見守っていた。
自分と同じく独身を貫いている友達とは、たまに食事に行くことがある。

(一生独身でいるのも少し寂しい)

とは思うことはある。

子供は欲しい。だが一番いらないのは旦那である。
こう思う女性は世の中に一定数存在することだろう。

家で今夜の夕飯の献立を考えながら旦那の帰りを待つ主婦。
そんな自分の姿を想像するとなぜか不愉快だった。
やはり自分には主婦になる資格はないのかと、少し残念に思った。

「なあヒトミさん。お金ってなんなんだろうな」

そこには賢人がいた。

「最近離婚率が増えているけど、昔の離婚が少なかったのは
 妻が旦那に経済的に依存していたからなんだってさ。
 お金さえ自由に手に入れば夫婦関係なんて長続きしないんだよ」

金は、男女の仲さえ引き裂いてしまう。
逆に男女の仲をつなぎとめることもある。
子供の存在も重要ではある。だが子供を育てるのにもやはり金が必要だ。

「私なりにこの作品について考えて見たの。
 きっと作者にとって物語の起承転結は十条じゃないのよ」

「俺も同意するよ。
 お金について学ぶ機会を読者のみんなに与えたい。
 そんな思いがひしひしと伝わってくるんだ」

そんな時だった。

ここは空母の停泊する港(軍港?)である。
堤防沿いに釣り人達が居並ぶ一角に、深く帽子をかぶった一人の男がいた。

男は32歳の男で、この作品の作者だった。
彼は一見すると釣り人に思えるが、釣り竿を思っておらず、
5月の日差しが乱反射する水面を、体育座りをしながら見守っていた。

「あいつっ……!!」

「おにいちゃ…」

妹の静止も聞かずに賢人は駆けた。

ぽんぽんと、リストラを意識した肩の叩き方をし、作者を動揺させた。

「なっ……?」

作者は
賢人の姿を頭の先から足のつま先まで見渡した後、
なぜか逃げ出そうとした。

「逃がさないわよ!!」

追いかけて来た美雪がダイブし、作者と共に転げる。
作者はあきらめの悪い男で、のしかかる美雪をのけて、
さらに逃走を始めた。

肌は浅黒く、中肉中背の黒髪でこれといって特徴のない男だ。
よく見るとお腹が出ていて、持久力に問題がありそうな外見だった。

「待ちなさい!!(; ・`д・´)」

今度は、坂上瞳嬢が両手を広げて立ちはだかる。
レオナルド・ダ・ヴィンチの解体新書のような
ポーズだと作者は笑いそうになる。

「俺は悪くない」

「はい(*'▽')?」

電話口では50代の男性によく間違われるほど低い声だ。
作者は誰に何も言われたわけでもないのに、今回の作品について
言い訳を始めた。

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※ヒトミの一人称

「俺は最初に設定を考えた。あとは君たちに展開を任せた」

一人称リレー形式のとこでしょうか。

「たまに、指示を出したこともある」

ああ、あれですね(´-ω-`)
美雪さんがレズになったり、賢人君が熱烈なシスコンになったり。

「そこそこ面白い試みだったと自画自賛してる。
 ぶっちゃけ終わり方なんて考えてなかった。
 終わりなんてどうでもいいんだよ」

それだけ言ってまた駆けだしました。
この人走るの好きですね。フォームだけはプロっぽいんですけど。

「まちなさーい!!(´゚д゚`)」 「このやろぉおおう!!(ー_ー)!!」

近親相関のネタにされた渋谷兄妹が、
鬼の形相で追いかけています。
捕まったら腹パンされるのは必死ですから作者も必死です。

若い人達は元気で羨ましいわ。

ざざーん。堤防に打ち付ける波の音。
くわーくわー。カモメさんが飛び交う、平和な港の風景です。
潮風を全身に感じるわ。自慢の髪が痛んでしまうわ。
あーバカらしい。お腹すいたから漁港でお寿司でも食べようかしら。

「お寿司だったらお嬢さんには僕が案内してあげようかな」
「あなたは……」
「美雪の父。名前は義隆(よしたか)なんだ」
「卓也さんじゃありませんでた?」

「自分の名前を忘れちゃったよ。最近物忘れが激しくてね」
「おほほ。面白い方ですね」

モンゴルに行かなくていいのかしら。
ご馳走してくれるそうだから、私はこのおっとりした
おじさんと肩を並べて歩き出しました。

一件落着。 これにて後日談は終わりです (嘘)


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