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作品名:令和10年。財政破綻と強制労働と若い兄妹の絆の物語 作者:なおちー

第14回   坂上瞳「賢人君がセクハラで逮捕された?」
タイトルに書いた内容が、部署の朝礼で発表されました。

「シブヤは……うむ。きっと魔が差したのだろう」

腕を後ろで組んだ鬼軍曹(主任)が続けます。渋い顔で。

「昨今ストレスによるうつ病が社会的に大変な問題になっている」

私達は一日16時間労働を強いられてるんだから、
ストレスどころか発狂して強盗まで犯すレベルなんですけど。

昨夜もスーパーのタイムセールに行ったら駐車場に
パラシュート部隊(強盗)が降下してきた。
身の危険を感じて帰って来ちゃったよ。

「シブヤがいないのは戦力的には痛いな。
 奴もそれなりに使えるようになってきた頃だっただけに」

主任は大きく息を吸い、

「諸君!!」 と呼びかけた。

「これは私の意見であるが、渋谷はきっと無実なのだと思う!!
 とある情報筋の話によると、渋谷は実の妹さんにセクハラをしたそうだが…。
 真相は不明である!! 正直私も奴がなぜ逮捕されたのか
 気になって夜も眠れぬのだよ。嘘だがな」

いやいや、嘘って自分で言ったよこの人。

「そこで、坂上瞳に使いを頼みたいのだ。
 警察署(拘置所か?)まで行って奴と面会して来い。
 そして事件の真相を解き明かすのだ!!」

今日の生産は……

「そんなことは気にしなくてよろしい!!
 早退届は私が代わりに書いておく。直ちに出発したまえ」

「あのーすみません。ちなみにどこの警察署ですか。久喜ですか?」

※久喜市(埼玉県の地方にある)

「いや、八王子だ」
「なんで八王子まで!!」

理由は分からないけど彼は八王子市で逮捕そうなの。
八王子でセクハラしたの……?
文句を言っても聞き入れてもらえないのは分かってる。
仕方ないので家に帰って私服に着替え、JRの電車に揺られることにした。

「お久しぶりです」

そしたら、なぜかデイリー・ヤマザキの前(久喜駅西口のロータリー)で
☆MI・YU ・KI☆ さんが待っていた。
美雪さんは大学三年生。
一、二年の時より授業数が減って平日は暇だったりするのかしら。

「実はぁ……とある事情があってぇ
 大学にはしばらく通えなくなっちゃんタンですよぉ」

なにその喋り方は。かわいこぶって言わなわいで。
ぶりっこ口調って不愉快なの。

「えぇー!! 私ったら変でしたかぁ?
 普通にしゃべってるつもぉりなんですけどぉ(⋈◍>◡<◍)。✧♡」

「本当に腹パンしたくなるからその辺にして。
 あなた、前はそんな喋り方じゃなかったじゃない」

「何言ってるんですかぁ。もともとこんな感じだったんですよぉ!!」

「語尾を伸ばさないでくれれば何でもいいわ。あと巻き舌っぽい発音も止めて」

「だーかーらぁ。普通に話してるつもりなのにぃ。
 そんなこと言われたら、美雪、困っちゃう!!」

変な物でも食べたのかな?

美雪さんは長い髪の毛をサイドポニーにして、左の肩に垂らしている。
今日の日差しは強いのに彼女は寒がりなのか、
ベージュのトレンチコートを着こなしている。
高そうなヒールを履いているわね。しかもヴィトンのバッグ……

女子大生にしては大人っぽい雰囲気ね。
服もお金を掛けてる方だと思うわ。
前話でしまむらで買い揃えてると言ってたのは嘘なのね。

人通りの少ない平日に会うとこの子の美貌が際立つわ。
美人さんは羨ましいわね。若いし肌も綺麗。

私は白いデニムパンツに春物の明るいカーディガン。
ファッションにあまり興味ないから地味ね。
まっ私の顔なんて見てる人なんていないでしょうからいいんだけど。

話を進めるけど、この娘も八王子まで来てくれるそうなのね。
警察署なんて行ったことなくて正直困っていたから助かる。

「あ、やば……」
「どうしたんですか、お姉さん」

お姉さん…って。今はそれどころじゃないの。

「お財布忘れた……」 
「ええ!?」

「Suicaもない。アパートメントに置いてきちゃった」
「なんでアパートを正式名称で言うんですか」
「正式名称ならレオパレス21よ」
「どっちでもいいです。レオパレスってよく燃えそうですよね」
「あと台風とか来たら天井がもっていかれそうね」

それよりどうしよ……いったん家に帰る? それとも…

「悪いけれど、お金貸してくれない?」
「もちろんいいですよ。大好きなお姉さんのためですから」

大好き……? お姉さん……?

「むしろ差し上げます。はい、二万円。往復代です」
「くれるのはうれしいんだけど、そんなにいらないわ」
「むしろ二万でも足らないくらいですよ」
「八王子は一応都内だから、そんなにかからないと思うよ」
「八王子って私はもっと離れてるイメージでした。例えば日本とドイツぐらい」

日本とドイツ……?
日本からみて地球の反対側にあるドイツをなぜ例にあげたのか。
そもそもおかしい。この子は八王子の大学に普段から通ってるはず。

「冗談ですよぉ!! 真剣な顔で悩まないでくださいよぉ(=゚ω゚)ノ」

真顔で冗談を言わないでくれる。反応に困ってしまうわ。

「お姉さん。そろそろ行かないと電車に乗り遅れてしまいますわ」
「はいはい。今行くわよ」

お姉さんて呼び方は何が狙いなんだろう。

「手を繋い歩きましょうか」
「は?」
「私達は仲良しじゃないですか」

女同士でも……親友だとしたら手を繋ぐのは、なくはない。
でもそれは学生同士とかでしょ。そもそも私とこの子で10歳も離れてる上に、
『そもそも仲良しじゃない』どっちかっていうと恋敵。

美雪さんは彼の妹とはいえ、お互い同じ男を好きになってしまったのだから。

「手を繋いでくれないならお金は返してください」

だから真顔で言わないで。その顔、怖いのよ。
手を繋げばいいんでしょ。

「えへへ。お姉さんと一緒だぁ(^○^)」
「なんだか不思議な気分ね……。他の人に変な目で見られなければ良いけど」

私達はエスカレーターを登り、一番線ホームへ。
ここで待っているとJR宇都宮線の上り電車が来る。
これに乗って埼玉県の南部まで移動ね。ちなみに東京駅まで直通の便もあるわ。

※宇都宮
栃木県にある都市。宇都宮タワー、大谷石、餃子などが有名。道の駅はまさに広大。

「なに手を離そうとしているんですか」
「えっ?」
「電車の中でも手を繋ぐんですよ」

嘘でしょ? 平日とはいえ、車内は見知らぬ人がたくさん載ってるのよ。
女同士でイチャイチャしてると思われたらどうするのよ。

「事実だから問題ありません」
「へ?」
「私たちってけっこうラブラブですよね(^^)」

この声に背筋が冷たくなる。まさかとは思うけど…

「わぁたしぃ。実はお姉さんのことずーっと気になってたんですよぉ(^^♪」

舌足らずな声で言われ、私は反射的に距離を取った。
電車は動き出していて、ガタンゴトンと平和な音を立てている。
幸いまだ埼玉県の北部地方なので混んではいない。

暇そうな老夫婦と、何人かの小学生らしき子供がいるだけだ。

「そろそろ演技はやめてちょうだい。
 いったい何が目的なのかはっきりして」

「好きなんです」

「は?」

「坂上瞳さんのこと、ずっと好きだったんです」

私は次の駅で降りて帰ってしまおうかとさえ思った。
彼女はさっきの告白を真顔で言っているのが余計に気持ち悪い。
イチャイチャしてる時は笑顔なのに急に真顔になるから落差が激しい。

そもそも何がどうなってるのか理解に苦しむ。
美雪さんが私のことが好き? この子は賢人君にぞっこんで
メンヘラで自殺未遂をするほどの子だった。レズなわけがない。

『まもなく〜蓮田(はすだ)に到着いたします』

まずいわ。一駅通過するごとに人が増えていく。
大宮駅(埼玉で一番大きい駅)に着く頃には
たくさんの人にこの痴態を見られてしまうのだろう。

「お姉さん?( `ー´)」

この子は何を考えてるのか、また私の手を握ろうとしてくる。
私はどうしたらいいか判断に迷い、
ついに彼女の頬を叩いしてしまった。

パッシイイイイイン ←エコーの音を含む。

すごい音だった。さすがに乗客がこっちに注目してくる。
会社にいる時並みに気まずい状況だ。

会社なら顔見知りの従業員だからまだいいの。
見ず知らずの他人に茶番を見られてるのが恥過ぎて死にたくなる。
まさに身内の恥?

美雪さんは、しばらく呆然としていたが、電車の床に
女の子座りを下かと思えば、大きな声で泣き始めた。

「びえええええええええええん!!
 お姉さんがぶったぁあああああああああ!!」

幼児退行現象……?
この前、自宅でメンヘラを発動させた時もこんな感じだったわね。
騒ぎはどんどん大きくなり、ガタイの良い車掌さんが
隣の車両から様子を見に来てしまうほどになった。

私は平謝りし、精神的に不安定な子の付き添いをしている旨を説明し、
次の駅で下車した。何の特徴もない田舎の駅だ。周囲に住宅街しかない。

「あら。ヒトミさん」

お母さん!? なんでここに!?

私はホームに降りたら、たまたま私の母と会ってしまったのだ。
相変わらず少女漫画に出てくるお金持ちのママって感じのルックスだ。
これといって描写する必要がないほどに。

「今日は私の古い友人の方とお会いするのよ。
 蓮田市に住んでいる方なのね」

「そ、そうなんですか。お忙しそうですね。
 それじゃあ、私は用があるのでこれで」

「待ちなさいな。今日は平日よ。ペンタックはどうしたの」

「開園記念日……」

「それ言うなら創立記念日でしょ。開園だと幼稚園みたいじゃない」

「しまった!!」

「ヒトミはいくつになっても嘘をつくのが下手ねぇ」

「お母さま!! ごめんなさい。
 今日はペンタックの主任様に許可をもらって早退を……」

「いいのいいの。無理してそんなつまらない言い訳なんてしなくていいのよ。
 覚悟は良いわね? 坂上家では規則を破る人間には鉄拳による制裁が行われます」

「いやだああああ!!」

私はネズミを模倣した体制で逃げ出そうとしたが、すぐに
首根っこをつかまれてしまった。かあさまは運動神経が良いから
逃げられるわけがない。外出時は常に和服なのに無駄にすばしっこいから困る。

「一度寝たら良い子に戻るかもね。しばらく気絶してなさい。
 そのままの状態でペンタックの現場に送ってあげるわ」

また、地獄の腹パンが繰り出される流れでした。
私は全てを諦めて目を閉じ、神へ祈りました。

ところが、いつまで待っても私のお腹に
圧迫感を感じることはありませんでした。
何が起きたのかと、まぶたを開けてみると。

「ちょっとそこのバアサン。
 私のお姉さんにナニをしようとしていたの?」

母の魔界の拳を、ヒトミさんは片手で受け止めていました。
信じられません。私の母の戦闘能力は熊と素手で戦えるレベルなのに。

「わたくしは今娘のしつけをしているのよ。あなたの名前は渋谷美雪さんよね。
 人の家庭の事情に口を出すのは感心しないわ。
 それと、私のことをバアサンと呼んでいたのは気のせいかしら?」

「気のせいじゃないよ!! ババア!!」

あ、死んだ。
この子は確実に死んだ。
それは、かあさまに言ってはいけないワードのナンバーワン。

「年の割には若く見える」「40代かと思った」「歩き方が若い」

適当なことを言っておけば、社会人なのに毎月お小遣いがもらえたり、
5Gの携帯を買ってもらえたりと特権があるのに。

あんまり大きな声じゃ言えないけど、私はこの年でも
親戚のおじさん達からお年玉をもらっています。
私は子供がいないのでまだもらう側なのです。

ちなみに欲しい物がないので毎回貯金しています。

「あなたを亡き者するのは訳ないことだわ。
 物理的にでなく社会的に消してあげましょうか?」

私は怖くてただ震えてしました。
私には会社の上司より母の方がよっぽど怖いです。
理由は、この人に逆らうと毎月の生活費がもらえなくなるからです。

「そもそも気になることがたくさんあるわ。
 今日うちの娘と一緒に電車に乗っている理由をまず教えてくださる?
 東京にショッピングにでも行くつもりだったのかしら」

「その前にー!! まず説明したいことがあるんですよぉ!!( `ー´)ノ」

「……なにかしら」

「改めて自己紹介させてください。私はヒトミさんの彼女の渋谷美雪です☆
 今日は二人っきりでデートする予定だったんですよぉ(^^)」

時が止まった。

さすがの母様でもこの展開は予想できなかったみたい。
もちろん私も反応すらできないレベル。

もうね。話の流れが滅茶苦茶だよ。

こいつが私の彼女ってなに!?

……彼女!? 私は女子なんですけど!!

「それはつまり」

お母様はこめかみをおさえながら

「ヒトミは実はレズで、それを今日までずっと家族に隠していた。
 よって今までお見合いを断り続けていたってことを、
 遠回しに説明してるってことでいいのね?」

「そうでーす!!(`・ω・´)ゞ」

違うわ!! 

「ヒトミさん……あなたはどこで育て方を間違えたのか。
 確かに中高一気の女子高に通わせてはいましたが、
 まさか男性でなく女性を好きになってしまうとは」

「ほんと美人なのに男っ気がないのも分かりますよねー ( `ー´)ノ)」

だから違うって!! あと顔文字やめて!!

「で、どうなの瞳さん。今後も美雪さんとは真剣に
 お付き合いをするつもりなの? 世間が認めてくれないと思うけど」

「待ってよ、かあさま!! 私(ヒ☆ト☆ミ)がいつこの女と付き合ってるって
 本気で信じているんですか!? 全部そいつの言ってるデタラメですよ!!
 私はちゃんと男の人が好きですから安心してください!!」

「えっ。どっちの言ってることが本当なのかしら」

「聞いてくださいお義母さん。
 私は毎晩ヒトミさんと同じ布団で寝ています。
 夜は混浴しています( ゚Д゚)」

「それ以上余計なことしゃべらないでくれる!! 
 本気でぶっ飛ばされたいの、あんた!!」

「また殴るんですか? いいですよ。それでお姉さんの気が済むなら
 好きなだけ殴ってください。お姉さまはいつもそうよ。
 会社で嫌なことがあるとすぐ私に八つ当たりして(>_<)」

私は我慢の限界だったので全力でビンタしてしまった。
美雪の体が大きくのけぞる。

これは痛かったでしょ……。
坂上家は自宅にトレーニングジムがあって
限界まで体を鍛えるようしつけられていたから。

さらに私は小学3年から3年間、極真空手もやっていたから
その辺の女より戦闘力は高い方だと思う。

そしたら美雪は余裕の笑みで。

「ヒトミさんには家でもこんな感じで殴られています。
 私のお腹の周りとか、あざだらけだから
 人前で見せられません(>_<)」

「好きな女の子にDVしてちゃだめじゃない。瞳さん」

好きでも何でもない。
むしろウザすぎてそろそろ本気で死んでほしいくらいよ。
私はもはや言い訳は不可能だと判断し、走ってその場から逃げ出した。

ここどこだっけ? 蓮田市? 初めて降りた駅だけど、
適当に走り回ろう。私はジョギングが趣味だから25分程度なら
余裕で走り続けられる体力がある。

ちなみに握力も自慢で、女子にしてはリンゴを片手で握りつぶすくらいの力はある。
さっき全力びんたを食らった美雪が平気な顔してたのが今でも信じられない。

さすがにここまでは追いついてこれないでしょうね。
私がどや顔で後ろを振り返った時だった。

「ちゃんと前を向いて走らないと危ないですよ」
「は?」

なんか、普通にいた。
美雪さんは気が付いたら私と並走していたみたい。
二人で仲良く赤信号の交差点で止まっていた。

うそー(;´Д`)私ってお金持ちのお嬢様ってよく言われるけど、
10代の運動部の子にも負けないくらいの体力を維持しているのに。

※お金持ちは運動をよくする。
事実。お金持ちは平日の早朝や休日に体を鍛える人が多い。
不健康な人ほど年を取って病気になるリスクが高く、
医療費でお金がどんどん減っていくことを知っているからだ。

健康は金では買えない。
金があっても不健康では使えない。まされにこれ。
瞳は酒も飲むよりジョギングでストレス解消するのを好む。

「これは、さっきのおかえしです」

私はまともに腹パンを食らってしまい、しばらく地獄をさまようことになりました。
母さんの腹パンより重い。将来子供が生めなくなってしまうほどの強烈さでした。

30秒余りの呼吸困難から生起し、ようやく新鮮な空気を吸えるようになりました。

「今のは痛かったですよね?」
「ひぃ」

今の私にあるのは、渋谷美雪に対する恐怖のみです。
どう考えても美雪は私の戦闘力を凌駕しています。
年下だと思って舐めていました!!

「そんなに震えちゃって。脅えなくていいですよ。
 お姉さまをいじめるつもりはありませんから」

「美雪様、ごめんなさい、二度と逆らわないから許してください」

思わず命乞いをしてしまう。
だって美雪さんが真顔なんだもの。
基本的に顔文字のついてないセリフは全部真顔だと思ってくれていいわ。

「お姉さんも顔文字を使いましょうよ!!(^^)」

正直嫌だったけど、彼女を刺激すると
何をするか分からないから従うしかない

「こ、こんな感じで良いのかしら?(^-^)」
「そうそう。女の子なんだから顔文字使わなきゃ(^○^)」

駅前に四階にドンキホーテがある。
その近くにでっかいゲームセンターがあった。

今時お店単体のゲームセンターなんてあるのね。
イオンとかショッピングモールの中にあるなら分かるけどね。
なんと美雪はこのゲーセンでぬいぐるみをゲットしたいのだと言う。

「ちゃんと美雪ちゃんって呼んでくださいよ」
「えッ」
「呼び捨てにするなんてひどいじゃないですかぁ」

今のは私のモノローグに対する突っ込みだったようです。
この小説は心の中で考えてることまで突っ込まれるの!?

「ごめんなさい美雪ちゃんっ。そんなつもりはなかったのよっ。
 今度からは必ず美雪ちゃんって呼ばせてもらうわね」

そう言って彼女をやさしくハグしたのだが、
なぜか彼女の全身から貞子のような殺気を感じました。

「やっぱり、ヒトミさんって嘘つきですよね」

「ええっと……」

「口では二度と逆らわないとか言っているけど、
 本当は私のこと死ねばいいとか思ってるんですよね」

「な、なにを言ってるのかしら」

「だってこの話数を読み返してみると
 私の悪口ばっかり書いてるじゃないですか」

なんてこと……。私達は小説に出演していることを
自覚しているタイプのキャラなのでモノローグで
語った内容まで筒抜けってことです。

※小説に出演していることを自覚しているタイプのキャラ
  おそらく他の小説には存在しない特殊設定。
   キャラクター同士で作品に対する批評や
    作者への攻撃などが可能になる。

「そんなことより早くゲーセンに来ましょうよ!!
 ああ、ゲーセンなんて高校の時にプリクラを取って以来よ。
 楽しみねぇ。ユーフォ―キャッチャーでぬいぐるみを取るのね!!」

「その前に」

「(´・ω`・)え?」

「愛を証明してください」

「愛を……?」

「はい。愛です」

「あ、愛ってのは」

「このあいだ、ヒトミさんが私と兄にやらせた行為ですよ。
 忘れたとは言わせませんからね」

あのキスのこと根に持ってたのかしら。
美雪の真顔が死ぬほど怖い。
あ、やば。モノローグが漏れてるんだった。

「私に対する愛を証明してください」

キスしろってことか……

私達はまだゲーセンに入ってない。
往来のある交差点で話してる設定なのよね。
どんだけ人目で目立つことをすれば気が済むのよ。

あっ良いこと考えたわ。

「続きはWEBで」
「へ?」

私は次の話に飛ぶことにした。


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