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作品名:令和10年。財政破綻と強制労働と若い兄妹の絆の物語 作者:なおちー

第13回   美雪の父「美雪は可愛いなぁ」
※みゆきちゃん

細かいことは気にしたら負けだって前回書きました。
でもこの小説を読み返してみると誤字が多すぎると思いませんか?
もうちょっと気にしたほうが良いと思います。

余談はこの辺にして本編を始めます。

私は立川駅の駅ビルでウインドウ・ショッピングをすることにした。
ちょっとした気分転換です。私はヒトミさんと同じく物欲があまりないので
よっぽど気に入ったものがない限りお財布のひもが緩みません。
私は現金で払うのが好きなのでキャッシュレスもクレジットも使いません。

大学生になってから服はユニクロやしまむらで揃えることが多くなりました。
流行を追い駆けるのにも飽きてしまいつつあります。
こんなんじゃ女子力が下がる一方だとは分かっているんですけどね。

「美雪かい?」
「お父さん!?」

お父さんは、なぜか女性の下着売り場をうろついていました。
マネキン人形をじっと見てると変態に思われるかもしれないから止めなよ……。

「生きてたのね!!」

「別に僕は死んだわけじゃないからね」

「よかったぁ。心配してたんだからね。
 日本にいたんだったら、どうして連絡してくれなかったのよ!!」

お父さんは、話が長くなるからと喫茶店へ案内してくれました。
女性客が好みそうなお店じゃなくて、渋いおじさまが好きそうな
ウッドを中心としたアメリカンなデザインのお店です。

優雅なジャズのナンバーが流れています。
このまったりとしたアルトサックスの音色が、まさに大人の雰囲気。
夜の雰囲気。

「美雪。パパはお金がないからね。すまないがお金は出してくれるかい?」

私が出すの!!? まあ、いいや。
普段からお兄ちゃんと買い物する時も全部私が出してるから。

お父さんはエスプレッソのカップをゆっくり口へ運ぶ。
父はスラックスにポロシャツ姿。
家にいる時も外出時もほとんど服装は変わらない。

見た目は優しそうな人って感じ。実際優しいの。
中年太りでお腹が結構出てる。
髪型はホリエモンを意識して、ちょっとだけかっこつけてる。

「ママはね、まだ警察に使ったままなんだ」

私は信じられないことを聞いた。
パパたちは自民党一党独裁が続く日本を完全に見限った。

夫婦そろってニュージーランドへ逃亡しようとしたところ、
成田空港へ向かう電車の中で秘密警察に逮捕され、
爪をはがされるなどの拷問をされた。

「爪が綺麗になっちゃったよ。ほら」

私は、気絶しそうなほどのショックを受けました。
ピンク色の肌が丸見えになっている、両の手の爪。

私では想像もできないほど恐ろしい思いをしたのに
簡単に話すことができる父は偉大だ。

背中にむち打ちの刑も食らい、ミミズばれがひどいらしい。
さすがに私は傷跡を見る気にはならなかった。
夜は傷口がうずいて気が狂うほどの激痛となり
布団で仰向けに寝ることも出来ず、
一週間もその状態が続いたと言う。

「パパはね、昔のことはあまり気にしないタイプなんだ」

気にしなさ過ぎて吹くよ。
私は頼んだ紅茶を飲む気にすらならないんですけど。

「パパだけ命がけで脱出に成功したんだ。
 ママも近いうちに出て来るとは思うんだ。手は打ってある。
 で、パパとママは明後日に合流して再び海外を目指すことにした」

「まだ海外に逃げるつもりなの?
 そんなことしてもすぐ捕まるでしょ」

「今回は確実だよ。外国のスパイと連絡を密に取っているからね。
 パパの仕事のコネで外国人の知り合いがたくさんいるんだ」

ちょっとだけパパの顔が怖くなりました。
やっぱり父も大人だから私の知らない顔をいくつも持っているのかしら。

「パパはね、もうお金がどうとか、そういうのを考えるのが疲れちゃったんだ」

「お金のことは一生付きまとうことだから真剣に考えなさいって
 言ってたのはパパなのに」

「そうだったかな。今は状況が変わったんだよ。
 パパはもうお金なんて見たくもない。お金なんて必要ない、
 原始の世界に帰りたいと思っている。だから」

--------モンゴルに行こうと思うんだ。

父の決意は固そうだった。

私の疑問は一つ。なぜ、モンゴルなの?

「モンゴルへの逃避の影響だね」
「長い作品だったね。全部読んだの?」
「うん。獄中生活してる時に暇だったからね」

パパは大草原での原始的な生活に憧れているそうなの。
元銀行員で肉体労働なんてしたこともないのに、
体力は大丈夫なんだろうか。家畜の世話とか気候の問題とか、
遊牧民生活は言うほど簡単な仕事じゃないと思うけど。

「あれは作者さんの第二作として投稿されたものだったね。
 私は堀太盛君の考えに大いに共感したよ。
 父にとって娘はね、いくつになっても可愛いものだ」

「太盛さんの場合は、ただのロリコンじゃ……ううん。なんでもない」

私はあの作品に出てくる父親は気持ち悪いと思う。
娘もファザコン過ぎて変。

実の父じゃないとか、しばらく離れて暮らしていたわけでもなく、
お屋敷時代からずっと父にべったりしてて、実の母を
ライバル視して本気で父を奪おうとするなてやりすぎだよ。

私のパパも優しいから好きだけど、
それは父親としての好きであって恋愛感情なんて抱いたことないよ。

マリンちゃんみたいな女の子が現実にいたら近親相関一直線だよ。
絶対将来お父さんの子供を妊娠するパターンだよ。

「可愛い娘の美雪にね、私の資産をすべて譲渡しようと思っているんだよ」

父は本気だった。私にお金をくれる……?

「そもそもお父さんってお金いくら持ってるの」
「わかんない」
「え?」
「だから、わかんない。でもあげるよ」

昔から父は代わってない。

ちょっとだけ回想シーンを始めるね。
あの時は、私は大学の推薦が決まって暇だった頃。高校三年の真冬だね。
1月過ぎには合格をもらっていたから、
気になって家の財産のことをお父さんに訊いてみたの。

その時に父はこう言った。

「わかんない」

私は父の言っている意味がわからなかった。
お父さんは銀行では部下がいる立場なんだよね?
なのに家の財産を把握できてないの?

「お金のことはママに任せてあるからね」

でも現金預金の残高を調べればわかることでしょ。

「パパは現金をあんまり持たない主義なんだよ」

「だいたいで良いから教えてよ。もし生活が苦しんだったら
 大学生になって土日だけでもアルバイトするつもりだから」

「学生アルバイトとか、あんまり感心しないよね。
  美雪は経済学の勉強に専念してほしいなぁ」

のほほんと言い放つ。パパはよく紅茶かコーヒーを飲んでいた。
この日はアールグレイ。「ちょっと冷めちゃった」と言って
ティーポットへ新しいお湯を注ぐ。本当に良く飲むね。

パパはお金を掛けるのがもったいないからと、
安物のティーパックで満足してる。

「今、パパの通帳を見て来るから待っててね」

パパはすぐ戻って来た。

「あんまり入ってなかったよ。190万だった」

「たったの190万しかないの!?
 私の学費払えるの? 私立大だから半年で50万もかかるんだけど」

「大丈夫、大丈夫」

そう言って紅茶を美味しそうに飲んでいる。

「パパはね、現金以外の資産を持ってるんだよ」
「資産って何?」
「会計上では、お金に換算可能なすべてのものを差すよね。
 パパの場合は有価証券。株だね」

パパは、寝室でお昼寝をしていたお母さんに色々と聞きに行っていた。
すぐこのリビングに戻って来た。

「美雪と賢人が生まれる前からね、パパとママが持っていた株式があるんだよ。
 投資信託と言ってね。ファンド・マネージャー(プロ)に手数料を払て
 代わりに株を運用してもらうんだ。正直自分でやった方が早いんだけど、
 家に帰ってまでお金のことなんて考えたくないからね」

投資信託は、米国のS&P500 ETFにかなりの額を投資していたみたい。
毎月のお給料から一定の額を積み立てる形を取っていたんだけど、
なんと積み立てた年月が『27年』にも及ぶらしい。

「僕らが住んでいるのは古い民家だけど、ヒノキの柱を使ってるから
 すごい長持ちするんだ。おじいちゃんとおばあちゃんが
 一括で買ってくれた家だから大事に使わないとね」

パパ曰く、住居費のかからない家は、
ファイナンシャル・プランナーの視点からして最強の家計らしい。
収支のバランスが良好で毎月お金が余る。
余った分は、ほとんど投資に回していたとのこと。

「どのくらい積み立てていたの?」
「んー。月に10万くらいかなぁ」
「そんなに!?」

子供二人育てながら、よくそんなに大金を!!

「あと、ボーナスとか臨時収入的なものは全額株に投資してたけどね」

私達兄妹は私立高校を出てる。
お兄ちゃんの大学卒業まで相当な学費がかかったと思うのに!!

「まとまったお金が必要な時は、株を売却して現金化するんだよ。
 進学にかかる費用は、時期が決まっているから
 まとめて現金化するのはそんなに難しくないんだよ」

「ママも銀行でずっと働いてたから収入はそこそこあるもんね」

「あー。そうだよね。アケミの給料もずいぶん投資にお金を回してもらったよ。
 いくら投資してたのかは僕も把握してないけどね。
 さっき聞いたら明美は現金を40万しか持ってなかったよ」

「うっそぉ!! たったの40万!? 
 一家の主婦がそんなしょぼいお金で
 どうやって家を回していたのよ!!」

「最近は普通預金の金利がだいぶ安くなっているからね。
 現金はそんなに持ってなくても大丈夫なんじゃない?」

「うち、もしかして貧乏だったりする?」

「そうかもしれないね。他の家の基準が分からないけど」

「株の方はいくら持ってるの?
 なんだっけ? その…スタンダート、アンド、プアーズってのは」

「わかんない」

「は?」

「だから、よくわかんないんだよ。
 いくら持ってるかなんて、あんまり気にしたことないし。
 最後に見たのは美雪が高校に入学する時かな。
 あの時はまとまったお金が必要だったから、
 一部を売却して円安の時に円に両替したんだよ」

「その時はいくらあったの?」

「そうだねー。証券口座に残っていたのが4500万くらいだったかもね」

「4500万!? かなりの大金じゃない!!」

「まあ、そこそこあるほうじゃないかな。
 でも時価と為替で大きく変動するから、あんまり過信はできないよ」

「それでも十分すごいよ!! ねえ、今はいくらになってるの?」

「そんなに気になるのかい? 美雪も大学生になるから
 資産運用の勉強も兼ねてってことで良いかもね」

パパはリビングにIPADを持って来てくれました。

「久しぶりに開くから、ログイン・パスワードを忘れちゃった」

困った顔で古いノートを持って来て、SBI証券の口座を開きました。
私には専門的すぎて今開いてるページの内容なんてさっぱり分かりません。

口座管理? 外貨建て? 投資信託? ドル円換算? 評価損益? 分配金?

「おっ、けっこう増えてるね」

パパはめずらしくうれしそうな顔をしています。

「美雪は見方がわかるかい? ここのJPYをクリックすると、
 日本円(エン)での時価が表示される」

ええっと、桁が多くて数えるのが大変なんだけど、
私の目に狂いがなければ、9000万を超えてる!?

9000万!? たった3年でこんなに増えるの!?

「パパはただ株を持っていただけだよ。
 これといって何もしてないんだ。この画面を見るのも3年ぶりだよ」

じゃあ、どんな魔法を使ったらこんなに増えてるのよ!!

「現物株式にUSドルも含めて、総額が9100万円を超えてるようだね。
 今年の5月に国債の償還期限が来たようだ」

しょうかん、きげん、ってなに?

「10年物の米国債をずっと持っていたんだよ。
 うっかりしていたよ。あの分は資産として計算してなかったね
 いくらだったかな。当時は米国の長期金利が高い水準だったから、
 思い切って2000万円くらい買ってたかな」

2000万円!?
つまり株以外の資産がそんなにあったのね!!

「美雪が小学6年生の時だったと思うんだ
 おじいちゃん、つまり僕の父の遺産(現金)が相続された時があっただろう?
 僕はいらなかったから全部妻にあげたんだ。そしたらアケミ(妻)もいらないんだって。
 だって買いたい物とか何もないし。僕ら夫婦は休みの日は家でごろごろしてるからね。
 今後も使い道がなさそうなお金だったから米国債を買うのに使わせてもらったよ」

10年国債利回りの利回りは高く、3%もあったらしい。
10年間、半年ごとに複利で勝手に増えていく(利子所得は20%課税)
その後、国債の償還(返還のこと)期限が来て
USドル(現金)に戻ったころには、日本円で450万くらい増えていたそうなの。

複利ってすごい!!

「他にも短期の3年国債とか、信用性の高い国債に社債を交えた信託商品とか、
 安心して持ってられそうな商品も買ってたみたいだ。
 すっかり忘れていたよ。あれも資産の総額に含まれてるみたいだよ。
 あと賢人が卒業して学費が不要になったのも大きいね。
 積み立てる金額が加速度的に増えちゃったんじゃないかな」

つまり現金化されたドルも、その他の国債も今回の資産に含まれている!!

さらに3年間は適当な金額を投資信託に積み上げていたから、
配当金と共にどんどんお金が増えていく、こっちも複利の効果。

資産運用ってすごい。長期投資は「ただ株や債権を持っているだけ」でお金が増える。

「時間がない人に投資信託は有効だよね」

得意げな顔になって説明が始まる。
パパは金融の話をするのが大好きで、いつもより早口になる。

「株の素人は、短期の売買ですぐに利益に飛びつこうとするけど、
 そんなに資産運用は甘いもんじゃないよ。ゼロサム・ゲームと言って、
 運よく最初は買ったとしても次で負けちゃうんだ」

「そもそも株価や為替とか。市場の原理で勝手に動く
 ものに一喜一憂するのは典型的な素人なんだよ?
 証券会社の営業や銀行の投資相談窓口では、
 そういう連中はすぐカモにされちゃうよ。
 詐欺商品を一括で購入して、手数料ばっかり無駄に取られちゃう人たちだよね」

「例えば日本株で売却益を狙いたかったらこうだね。
 一度買ったら、一晩良く寝て、あとは忘れちゃう。
 数年して日経平均が爆上げみたいなニュースをやってたら、
 改めて見てみる。おっ、こんなに僕の株価が上がってたのか。
 それから売却を考えても遅くはない。せっかちな人は投資に向いてないんだ」

なるほど。何年も辛抱して待つ忍耐力が必要ってことか。

「すぐ儲かる!! みたいなことを投資の本に書いてるかもしれないけど
 宝くじとかロトシックスを買うのが好き人が読むレベルだよ。
 マーケットの基本原理はこれだ。じわじわ上がる。
 そして暴落はまさに一瞬!! 売り時は一瞬で消え去る!!
 リーマンショックが良い例だ。急激な下落!! 
 はあってもすぐ儲かるはあり得ない」

「投資信託は信託報酬がかかるから、割高だと思うかもしれないけど、
 専門家が分析したこのグラフを見てごらん。1年の短期と10年の長期では
 利益率が明らかに違う。投資信託は長期投資に向いているんだよ」

……パパの言う通りだ。明らかに長期投資をした方が利益が出るようになってる。
グラフの下降線(株価の下落)で一喜一憂してる人は、
いかにお馬鹿なタイミングで売却をしてるのか分かる。

持ち続けていれば、必ずもうかるタイミングが見つかるのに。
それに配当金(分配金)は安定して入ってくる。
そのためには、将来的に業績が安定する企業を選定しなければならない。
企業分析は簡単じゃない。
どんなに優良企業だと思っても数年後は誰にも分からない。

「投信もたくさん種類があるけど、これはすごいよ」

S&P500 ETF。これは、大富豪ウォーレン・バフェット氏を初め、
世界中の著名な株式投資家や専門家の間で
『株式投資の最適解の一つ』とされている。

アメリカの主要な株価の指標にスタンダード&プアーズがある。
その指標に連動して変動するのがS&P500 ETFなのである。
(スタンダード&プアーズ・ファイブ・ハンドレッド・イーティエフ)

つまり米国を代表する大手企業500銘柄にまとめて投資するってこと。

戦後から長い統計を取ってみても、最もパフォーマンスがよく、
めんどくさいことを考えるのが苦手な人は
とりあえずこれに投資しておけば問題ないとされています。

米国株式は、世界の株式市場の半数を占めるのに対し、
日本は一割にも満たないレベル。
さらに米国は移民国家で『人口増加傾向』にある。

トランプの法人税の減税効果と一国主義政策による
製造業の国内移転を勧めた結果、完全失業率が2.4パーセントまで減少。
実はこれ、奇跡に近い経済政策の結果なのです。
(2019年2月あたりの雇用統計を参照。小説でなく現実世界の設定)

日本が11パー。ドイツが16パー。いかに米国の失業率が低いか分かります。
マクロ経済の視点では、米国は完全雇用(3.4パー以内)をすでに達成しています。

失業者が減って消費者物価指数が高ければ景気動向は自然と上向きになります。
出生率が高まり、税収も上がり、インフレ率が高まると
中央銀行は気を良くして利上げもします。

日本と米国では長期金利の水準に100倍以上の開きがあるのです。
人口減少が「完全に止まらない」ことがすでに確定し、
成長性が見込めない日本の市場(マーケット)とは全然違います。

ちなみに国際通貨基金(IMF)の予想でも、
先進各国の中で日本のGDP成長率が『最低の水準』となっています。
(現実世界の2019〜2020までの予想を元にしています)

『労働人口の減少』『少子高齢化』 これは、資本主義では致命的です。

パパの分析によると、日本の最大の危機はまさにこれらしいです。
資本主義とはお金があらゆるところを循環して国家レベルの成長を促すための
システムなのですが、成長するには『人口の増加が不可欠』なのです。

厚労省の統計でも日本の人口減少に歯止めがかからないことが確定している。
日本が沈みゆく船なのは、資本主義経済を採用している限り避けようがありません。

今さら幼児教育を無償化しても遅すぎるし、増税分の負担が
多くの国民を苦しめます。子育てに一番必要なのは、会社のお給料です。
具体的には「基本給、ボーナスの引き明げ、各種手当の充実」
「雇用の安定」ですが、企業はどれも守ってくれそうにありません。

43歳以上の社員(東証一部上場企業)が容赦なしに
首を切られてる現状では怖くて子育てどころではありません。
若者の晩婚化、結婚離れが促進することは必死です。

私は令和10年に住んでいるはずなのに、気がついたら
現実世界の話をしていますが、軽くスルーしてください。

ただでさえ子供が少ないのに、子供の列に暴走した車が突っ込んだり、
乳幼児の虐待死が毎月報道されてるのが日本クオリティです。
いじめを苦に自殺する小中学生も増えてきました。

日本がかなり終わってることが分かると思います。

政府がどれだけ大本営発表で好景気をアピールしたところで、
厚労省の毎月勤労統計調査は不正でした。

調査対象の500の企業を意図的に入れ替えたり、
そもそも可処分所得でなく総所得で計算をしていたりと、
自民党は悪意に満ちた統計を平然と行い、
野党から批判の嵐をあびました。悲しいことに国会ではこれが日常です。

総所得金額が増えたたところで、特別復興税の導入、
各種保険料の引き上げが実施されたおかげで所得の高い人ほど
手取りの金額が減っているのです。つまり額面でなく
実際に使えるお金が明らかに減っていることが
明らかになっているのです。

なのに増税。オワタ(^○^)

ここ最近で可決された法案を見ても

裁量労働制              ⇒奴隷法案。すでに三菱電機のエリート数名が過労死
外人受け入れ拡大(出入国改正法?)  ⇒ 奴隷法案。一部の外人は原発作業へ

今後50年経っても絶対に国民の生活は楽にならないとパパは断言していました。
金融の専門家のパパが言うことだから説得力があります。

ちなみにデフレはあと『120年くらい』続くかもしれないそうです。

「この国はお金が流れないよね。
 お金は経済の血液だから、それが固まって動脈硬化みたいになって、
 そのままずるずる行っちゃうんじゃないかな」

つまり私たちが死ぬまでなのでしょうか。

さすがに全部とまで言わなくても、資産の一部は米国に対する投資に
向けるのは世界中の投資家が行っていることです。

パパは日経平均の下落傾向がとにかく嫌いなようですから、
投資は米国に限定しているようです。

「ユーロも絶対にダメだからね。
  この前の欧州議会選とかで右翼政党が躍進してるよ。
  英国の欧州中央に対するいい加減な態度も困るよね。
  あれさぁ、いつか共通通貨のユーロが崩壊しちゃうよね?」

パパの眠そうな口調でも、ユーロの恐ろしさはよく伝わりました。
2000年代にギリシャの債務不履行が話題になりまたね。
ああいうアホもユーロ内にいたら問題あり過ぎですよね。
スペインとイタリアも近年は債務が膨らみ続けて地味にやばいらしいです。

EUとは表面上は巨大で平和な経済圏を謳っているけど、
中身は何組もの婚寸前の夫婦がいがみ合うような、ひどい家庭状況。

欧州の政治は複雑怪奇。それは昔も今も変わらない。
人種・宗教・言語・歴史。
いくつもの強国が栄えては衰退することを繰り返した欧州。

物事の表層しかとらえられず、猿真似だけが得意な日本人に
欧州の実態は把握できるものではないそうです。

長くなりましたが、回想のシーンを終えて
パパと私が喫茶店にいる場面を思い出しましょうね。

「そういうわけだから、美雪に全部あげるよ。
 頑張って資産運用してね」

「この額だと譲渡税? 贈与税? がかかるんじゃなかたっけ?」

「めんどくさいから、課税率はゼロにしておこうか。
 小説だから何でもありだよね」

計算するのがめんどうなので課税率がゼロになりました。わーい。
(↑現実ではありえません)

私はたった一日で億に近いお金を手に入れたのでした。
私ったら、令和10年なのに、なんて人生イージーモード☆

「ただし、条件があるんだ」

ん……?

「必ず素敵な男性を見つけて結婚しなさい」

いやいや……

「いやじゃないよ。美雪は大人になってキレイになったんだから、
 それなりの男を見つけられると思うんだけどな」

「今はお兄ちゃんと一緒に住んでいるから
 それで満足してるんだけどなぁ」

「でたよ。まーた、お兄ちゃんか」

パパは、煙草をふかし始めました。
急に機嫌が悪くなったようです。

「かれ、まだ生きてるの?」

「生きてるよ!! お兄ちゃんはたとえ薄給でも死なないんだから。
 私が命に代えても守ってあげるんだもん」

お父さんは舌打ちしました。

「まったく、親が薦めた銀行はすぐに辞めるし、
 お金の使い方も荒くて全然貯金できないし、
 正直渋谷家の一員に相応しくないってずっと思っていた」

「パパはお兄ちゃんにはいつも厳しいよね」

「だって嫌いなんだだもん」

そう。父は私の兄に対し敵意むき出しなのです。
理由は単純。愛娘の私が兄にぞっこんだからです。

パパはお兄ちゃんに対する嫌がらせとして、
サラダにかけるドレッシングに激辛唐辛子を混ぜたり、
兄が持ってるAVを家族がいるリビングで
わざと上映したりと、子供みたいなことをよくやっていました。

「あんな男といたら美雪のためにならないよ」
「私は嫌じゃないんだから別にいいじゃん」
「口答えするなら資産はあげないよ」

それは……卑怯だよ。
私は賢人のこと好きなだけなのに。

この話の流れだと、お兄ちゃんが警察に捕まったことは
言わないほうがよさそうね。

「うそうそ。美雪もいつかあいつに愛想をつかすと思うからさ。
 まあ怪我とか病気しない程度に頑張ってね。それじゃあ逝ってくるよ」

誤変換では、ないんだね……。

モンゴルに行くってことは、命がけ。
パパは25年のロングステイをするつもりらしいから、
次に会う時は私がおばさんになってる頃だね。

あまりにも唐突な別れだけど、小説だから仕方ない。
さようなら。私の大好きだったお父さん。
お兄ちゃんには鉄格子越しに伝えておくからね。


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