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作品名:『学園生活』改 〜愛と収容所と五人の男女〜 作者:なおちー

第9回   9
〜堀太盛〜

六号室で小規模な反乱が起きたらしく、
学内でうわさが飛び交っている。

よくも生徒会執行部に表立って
反乱する輩がいたものだ。
俺もミウに逆らったら人のことは言えないがな。

奴らは地下に送れられたのに、
俺は無罪なのだから天国と地獄の差だ。

生徒会は事後の処理に追われているようで、
ミウもクラスには顔を出さなくなった。
基本的に1組に彼女が来ない限り俺は平和だ。

もう一週間も会ってないから、
しばらくこのままの状況が続くかと
思っていた。だが甘かった。

「太盛君」

二時間目の休み時間だった。
ミウが教室の扉の前に立ち、俺を手招きした。

廊下は目立つからやめてほしかったのだが、
俺の腕を取り、捨てられた子犬のような目をして言った。

「この前はごめんね? 私ね、あれから考え直したの。
 斎藤マリエは太盛君の大切な友達だものね?
 エリカもそうだよね? 私、太盛君のお友達は
 大切にしようと思ってるの。だって君の友達でしょ?」

友達って言葉を何度繰り返したかな。
よほど強調したいのか。そして彼女らを
拷問しないことを誓ったという認識で良いのか?

「Yes. i can say that is right.」

また英語かよ。しかも貴族風の気取った表現だ。

なら俺がクラスでエリカと話をしても怒らないのか?

「正直ムカつくけど、太盛君に
 怒られちゃうから我慢するよ」

と笑顔で言った。こいつは二重人格なのだろうか。
生徒を取り締まる時と全然違う。副会長モードと
俺の彼女とで使い分けをしているにしても、違和感がある。

「最近、反乱の鎮圧とか会議とかで忙しくてさ。
 なかなか会えなくてごめんね?」

ミウはよく謝るな。むしろ会えなくてせいせいしたよ。
もっと鎮圧に手間取ってほしかったよ。

「これからはもっと会える時間を増やすからね。
 太盛君が三号室にいた時は全然会えなくてさみしかった。
 あの時があったから、今の私があるんだけどね」

そういえば、俺はミウが生徒会に
入った理由を知らなかった。
まあ興味もないのでどうでもいいや。

「斎藤に謝りたいと思ってるの。一緒に行こうか」

「今からか? 三時間目の授業始まるけど」

「そんなの休めばいいでしょ。
 私から先生に言っておくよ」

するとたまたま先生が通りかかったので
ミウがそのことを伝えた。

「行ってらっしゃいませ。副会長殿。
 堀君は出席扱いにしておきますので」

「Well, I thank you. my lovely teacher.
 my boy semaru. Hi is a student , but not ordinary.
 He is the man want to be one of our team.
 I just need him as a communist man, kind of bright.
 did you pretty understand it?」

「お、オウライト。まだむ」

ミウが身振り手振りを加えて話した。
首がカクカクした動作をするのは英国育ち特有か。
本国の英語は小鳥が歌ってるみたいに美しいな。

確かにアメリカの英語とは別言語に聞こえる。
そこにいるのは英語教師なんだが、
ミウの方が明らかに発音がきれいだ。

俺はミウと手をつないで歩いた。
手をつなぐの好きだな。

それよりエリカのことはスルーかよ。
一組にいたのに。
なんで先にマリーに謝りに行くんだよ。
エリカにも謝れよ。

「ここなら誰もいないから」

階段の踊り場に案内された。
ここは屋上の前じゃないか。

わざわざこんなところに連れて来るなんて。

「動かないでね?」

両手をぎゅっと握られてキスされた。
今さらイチャついても。うれしくもなんともない。

今俺の頭にあるのはマリーのことだけだ。
七号室に行けるなら早く連れて行ってくれよ。
あの子の顔を見ないと不安になる。

「マリエさんなら、すぐそこにいるよ?」

屋上の扉は解放されていた。
事前に鍵を開けてあったのか?

屋上は吹き抜けだから風が冷たい。
俺は自分の肩を抱きながら歩いた。
屋上の目立たない場所に一人の女子がいるぞ。

「マリン!!」

やべ。間違えてマリンって呼んじまった。
マリンでも違和感ないから不思議だ。

マリーは暗い顔で体育座りしていた。
俺に気付くと顔を上げてこっちを見た。

「先輩……」

うれしさ半分といったところか。
俺の隣にいるミウが視界に入ると表情が険しくなる。

「こんな寒いところで待たせちゃってごめんね?」

「いえ」

ミウが涼しい顔で言うが、マリエは殺気立っている。
確かにここは寒すぎるぞ。わざとか?
7号室で待ってもらえばよかっただろ。

「7号室だと目立つじゃない。囚人だけでなく
 執行部員もたくさんいるんだから」

それが理由なのか?

「マリエさん。私はあなたと仲直りしたいと思っているの。
 あなたは太盛君の大切な友達だから、この前のことは
 なかったことにして、これからは仲良くしましょう?」

「仲良くしろと言われましても、私は7号室の囚人です。
 副会長殿とは別世界の人間ですから」

「そうじゃなくて、一人の人間としてあなたのことを
 尊重したいと思っているの。太盛君がどうしてもって
 言うから仕方なくね」

「一人の人間として尊重していただけるのはありがたいです。
 私は7号室の囚人なのですが」

「じゃあ出してあげようか?」

「え?」

「7号室から出してあげようか? あなたが
 囚人のままだと、たぶん太盛君が嫌がるだろうから。
 今回は特別だよ? 私の慈悲の心に感謝してね」

マリエは俺とミウを交互に見比べて長考した。

破格の条件だ。副会長の権限で収容所から解放されるのだ。
これだけの条件を出されて断るはずがないと思われたが。

「のう、せんきゅう」

その答えが理解できず、ミウは目を見開いた。

「仕方なくとか、太盛先輩のためとか、そういう理由で
 解放されるなら、収容所にいたほうがましです」

おいおい。うそだろ…。

「あなたは認めたくないだろうけど、私は太盛先輩の
 友達じゃなくて彼女です。私は太盛先輩と両思いです。
 この前太盛先輩と抱き合ってキスもしました。
 あなたが私室を出て行った後にね。太盛先輩に
 力強く抱かれて好きだって言ってもらいました」
 
あまりの衝撃にミウは石のように固まった。
自慢じゃないが俺もだ。
俺とミウは屋上に鎮座するトーテムポールとなってしまった。

「話はこれで終わりですか? 
 なら私は収容所に帰りますね」

マリーが去っていくのを俺たちは止めることができなかった。
しばらく呆然としていたミウだったが、
お昼休みのチャイムが鳴り、我に返った。

今正午なのか。こんなに時間が経っていたとは。
修羅場は時間の経過を早くするんだな。

「ミウ。お昼食べようか」

「そう……だね」

階段の踊り場に戻る。そのまま階段を降りたかったのが、
ミウは歩みを止め、一瞬だけ俺を強くにらんだ。
さっきのマリエの話が本当か確かめたいんだろうな。
ああ、本当だよ。嘘じゃなく俺はマリーが好きだ。

「君は私が……生徒会に入った理由を知らないの?」

「ああ。まだ聞いてなかったな」

「太盛君を収容所から救い出すために頑張った結果だよ。
 組織委員会に入ると収容所の健康管理の仕事があるから、
 それで太盛君に会えると思ったの」

「君は俺のことをずっと好きでいてくれたのか。
 クラスの奴らは囚人のことをなんて
 興味もないし、忘れていたと思っていたよ」

「他の人達はそんな感じだったけど、私は違うよ。
 クラス中を敵に回してスパイ容疑がかかりそうに
 なったけど、アキラさんに助けてもらったり、
 ナツキ君に生徒会へ推選されたりとか色々あった」

今日の天気は曇り。陰鬱な空模様だ。
雲の隙間からふと太陽が見えて俺たちを照らすのだった。

「ねえ太盛君。私は太盛君が困るようなことは
 何もしてないつもりだよ。アキラは粛清した。
 もうあなたを収容所送りにする人はいない。
 私がやってることってそんなにおかしいかな?」

今までに感じたことのない殺気だった。
ミウは血のような涙を流していた。

漆黒の瞳の中にはどのような感情が込められているのか。
ミウは新たな怪物として覚醒しようとしているのか。

「太盛君は私の気持ちには答えてくれないんだね。
 私は君に愛を与えるだけで、私には何もくれないんだね」

ミウは俺の体を壁際に追い詰めた。
この状態だと俺は逃げることも出来ない。
まさしく恫喝(どうかつ)されている状態だ。

「私が今まで頑張っていたのはなんだったの?
 全部無駄だったの? ねえ、どうなの?
 答えてよ。答えてよ!!」

ミウが今まで俺に対して声を荒げることはなかった。
俺に対する遠慮の気持ちが消えたのか。

「私は太盛君にとってどうでもいい存在なの?
 だとしたら私は何のために生きてるの?」

どう答えればいい? 
これ以上ミウを刺激したら何をするか分からない。

prrrrrrrrrrrrr

やった。この無機質な着信はミウの仕事用の携帯の音だ。
仕事を理由に切り抜けてくれたら助かる…。

「うるさいな。こんな時に」

ミウは着信を切ってしまった。
俺の希望は一瞬で消えた。

「早く答えて」

がけっぷちまで追いつめられたようだ。
ここは屋上前の踊り場だが、俺の背後に
断崖絶壁が見えるようだよ。

「俺はミウのことも好きだ」

あいまいな回答。もちろんミウが
そんな答えを求めていたわけじゃないだろう。

「…も、って何?」

「みんな大切だと思っているってことだよ」

「私は太盛君の彼女なんだよね?」

「そうだな……」

「じゃあクソおん……マリエは?」

「早くお昼ご飯を食べよう」

「は?」

「早く教室に戻らないと昼休み終わっちまうぞ」

俺は無理やりミウの手を取り、歩き出そうとした。

「ちゃんと質問に答えてよ!!」

さすがにつっこまれた。
手を振りほどかれてしまったが、俺はひるまない。

「ミウ。落ち着け。今日のお前はおかしいぞ」

いつもおかしいがな。

「太盛君があいまいなこと言うからだよ!!
 なんで私をこんなに悲しくさせるの!?
 私たち付き合っていたはずなのに、
 どうして他の女のところに行こうとするの!?」

「黙れよ!!」

「えっ…」

「黙れって言ったんだよ!! 
 おまえさっきから取り乱しすぎだぞ!!
 昼休みにあんまり騒ぐと他の生徒にも
 聞こえるかもしれないだろ!!」

「いや!! 太盛君が私のことを一番に好きって
 言ってくれるまであきらめないから!!
 マリエもエリカも拷問して二度と太盛君の
 前に出られなくさせてやる!!」

「ミウ。いい加減に……しろぉ!!」

俺はミウの頬(ほほ)をひっぱたいた。

ミウは叩かれた衝撃で少しおとなしくなった。

「ぶつのが好きなら、好きなだけぶてば?
 あっ、太盛君は女の子を殴るのが趣味なの?」

「……殴ったのは悪かったよ。俺は中学時代
 荒れてたからつい手が出ちまうんだ」

俺も悪いとは思うが、ミウがマリエたちを
拷問すると言ったのでカッとなってしまった。

「今日の君はマリエと仲直りしようとしてくれた。
 それだけでも俺はうれしかったよ。マリエの態度は
 ちょっとあれだったかもしれないが、人間みんな
 考えていることは違うんだから、しょうがないよ」

そう言って抱きしめてあげた。
ミウは肩で息をして震えているじゃないか。
これで少しは涙が止まればいいのだが。

「初めからそうしてくれればいいんだよ。
 私だけを見てほしかった」

「悪いのは生徒会だ。今年の夏休み明けから
 俺は収容所行きになり、全てが狂ってしまった。
 あの事件がなければ俺はずっとミウと一緒にいられたと思う」

それはうそだと、ミウの冷たい瞳が告げていた。
確かにそうだな。俺はマリーの失語症の治療として
毎日彼女に家に遊びに行っていた。

どのみちマリエとミウが恋のライバルなことに変わりない。
今は互いの地位に天と地の差がついてしまっているだけだ。

ミウは携帯を取り出し、メールの文面を読んだ。

「このあと会議室に行かないといけないの。
 まだ話したいことあるけど、私行かなきゃ」

「お、おう」

「また暇なときに話そうね?」

ミウは俺のほっぺたにキスをしてから早足で去っていった。
なんとか切り抜けられたようだが、これが毎回続くのかと
思うと転校したくなる。

勝手な理由で転校の手続きを取ろうとしたら
速やかに収容所送りになるがな。
すでに15人以上送られた。




昼休みはまだ15分残ってる。
急いで食べないと五時間目の授業で腹が減ってしまう。

俺は量を食べないとダメなタイプなので
お弁当は大目に作ってもらってる。
家でも結構食べるけど、不思議と肥満になったことはない。
代謝が良いのだろうか? 運動部ではないのだが。

「太盛様。お待ちしておりました」

誰だ? 見た目はエリカに見えるが、口調が別人だ。
教室に入るなり、いきなりこの調子だから驚いた。

「副会長殿にご用があったようなのでお昼ご飯を
 食べるのが遅れてしまったのですね」

「お、おう。そうだが、まさかエリカも
 食べてなかったのか?」

「太盛様が来るのをずっと待っていました」

「なんでだよ? 友達と先に食べればよかっただろ」

「いいえ。私は以前から太盛様と
お昼をご一緒していたじゃないですか」

「いやいや。それはそうだけど、今俺とエリカが
 一緒に食べたら大問題だぞ。理由はあえて言わないが」

「それは問題ありませんわ」

なんと、ミウから正式な許可をもらっているとのこと。
太盛の『友達の範囲』として、
太盛と普通に接することが許されると。

なんだそりゃ。男女で食事するって、
学内では激しく目立つぞ。
会話はオッケーでもイチャイチャしても
良いとまではミウは言ってないだろうに。

ミウはいつの間にそんな許可を出してたんだ。
だからミウはエリカをスルーして
マリエに謝りに行ってたのか?

どっちでもいいや。

「じゃあ久しぶりだし、一緒に食べるか」

「はい」

俺とエリカは一つの机をはさむ格好で食事をした。
そういえばエリカと話すのは久しぶりだな。

他の生徒はとっくに食べ終わっていて、雑談したり
廊下を歩いたりと好きに過ごしている。
俺のことは誰も気にせず、空気のように扱ってくれて助かるよ。

俺は時間がないということもあり、早食いしていた。
品がないのは承知している。

「うふふ。太盛君、お腹すいてたのね?」

「ん? そりゃそうだ。神経使うことが多いから
 腹が減ってしょうがないよ」

「今度は私が作ってきましょうか」

「うれしいけど、しばらくは遠慮させてもらうよ。
 最近六号室でも反乱が起きたばかりで
 学内は殺伐としているからね」

「あらそう? 残念」

「さっきから気になるんだが、
 どうして俺に様をつけて呼ぶんだ?
 しかも敬語じゃないか」

「太盛様は私の未来の旦那様になるからです」

「あん?」

「私、決めたの。あとでお父様に話をつけて
 太盛様と婚約するって」

飲んでいたコーヒー牛乳を吹き出してしまった。

「私には太盛様しかいないって思ったの。
 冗談を言ってるように見える?」

あまりにも端的な説明だが、強い意志が感じられる。
前からエリカから好かれているのは知っていたが、
今度という今度はガチというわけか。

『婚約』

ミウが聞いたら激怒して即監禁拷問されても文句は言えない。
俺はエリカの勇気ある行動を称賛したい気持ちにもなる。
まだ社会にも出てない身で、一人の女の子から
ここまで愛されているのは自分でもすごいとは思う。

俺はまたトーテムポールの顔で固まっていた。
この学園の複雑な事情を考えたら
ポール(略した)になるのも無理はないだろう。

そのままの顔で昼休み終了のチャイムを向かえた。

「ふぇ……五時間目の授業をはじめますぅ。ひぃひぃ」

年寄りの現国の先生がやって来た。
杖を突かないと歩けないほどヨボヨボだ。
実年齢は82歳とか聞いたが、いつまで教師やってんだ。
早く引退しとけよ。

このじいさんは生徒達からもなめられている。
クラスの奴らは、隣の席の奴と雑談したり、
別の科目の内職をしたりと好き放題やっている。

俺は一応クラス委員なので真面目に聞くがな。
前に成績トップの女子が言ってたよ。

爺さんの話は遅いから、自分で参考書を開いて
予習したほうが効率いいと。悲しいが、事実だろうな。

「で、あるからですね……。先ほどの例文で
 この文章に対する比喩表現として……」

じいさん。おせえよ。確かに日が暮れるわ。

収容所から出て普通の授業を受けると
かえって新鮮だな。ここではロシア語を聞くこともない。
時間割りを見ると英語はあってもロシア語会話の時間はない。
当たり前だよな。

普通は日本の高校でロシア語なんて縁がないだろうよ。

そういえば、このクラスでも色々なことが
あったんだろうな。クラスメイトの顔が懐かしいよ。
みんな俺に異常にビビってるがな。

クラスメイト……。クラスメイトといえば……

脳裏に一人の女子が浮かんだ。
長い黒髪のポニーテール。シュシュ。

明るくて活発で、前向きで、覚えが早くて、
俺が収容所での生活の仕方を教えてあげて。

共に運命共同体を誓い合った……。

俺はバカだ。なんであの子のことを忘れてたんだ。

このクラスには足りない人がいるじゃないか。
小倉カナ。収容所で俺と一緒の日々を過ごしていたあの子だよ。

『諦めちゃだめだよ。いつかゴールは見えるから。
太盛も頑張って』

俺の肩を優しく叩いてくれた。
あの時のマラソンの時間を思い出す。
カナはいつも俺の味方だった。

『太盛と一緒にいると辛いのを忘れられる。
 たぶん卒業するまで収容所生活なんだろうけど、
 あと一年ちょっとだから我慢しようか』

収容所で交わした何気ない会話が、
俺にとっての最高の思い出だ。

そうだよ。俺は何を勘違いしていたんだ。

俺の本当に大切な人がまだ三号室にいるんだ。
それなのにこのクラスの奴らは、
のんきな顔で授業受けやがって。

「堀クぅン……? 急に席を立ってどぅーしましたかぁ」

爺さんの言葉は耳に入らない。

俺はクラス中を見渡してカナの席が
ないことを確認した。頭に血が上る。

「なんで小倉カナの席がないんだよ!!」

じいさんはびっくりして尻もちを着いた。
他の生徒は仰天している。
 
「おい!! みんな!! なに普通の顔して授業受けてるんだ!!
 カナの席はどうしたんだよ!! 片付けたのか!?
 誰がやった!? カナが永遠に収容所にいるとでも
 思ったのか!? カナに対して失礼だろうが!! おい!!」

俺はたまたまた近くにいた男子の胸ぐらをつかんだ。

「どうなんだよ!? 誰がカナの席を片付けた!?

「ぼ、ぼぼ、僕には分かりません!!」

「なんで知らねえんだこら!! 
 おまえは1組の生徒じゃないのか!!」

「そうですけどぉ……」

「なら早く答えろよ!! ぶっ飛ばされたいのか!!」

「ひぃ……太盛様。どうかお許しを」

そいつは俺の迫力に恐れをなして
頭をかかえて座りこんだ。
くそ。なら他の奴だ。

「おまえはどうなんだよ!!」

「ひぅ!」

適当な女子をつかまえて問い詰めたが、同じだった。
誰も知らないのか? なら全員問い詰めて……

「落ち着いてください太盛様」

エリカが俺の横に寄り添っている。

「小倉さんの席ならマサヤ君の指示で撤去しました」

「なんだと?」

エリカからそう言われ、俺はマサヤに駆け寄った。

「この野郎……マサヤぁぁぁああああ!!」

「うわああああああああ!!」

俺が怒鳴っただけで
マサヤは恐慌状態になり、腰を抜かした。

「おまえは……!! 男子の……クラス委員じゃなかったのか!!」

「そ、そうだよおぉおおお!! だからなんだぁああ!!」

「勝手にカナの席を撤去してんじゃねえ!!
 なぜ撤去する必要があった!?
 おまえもカナがずっとこのクラスに
 帰ってこないと思ったのか!?」

「お、俺はぁぁぁぁ!! 横田先生に
 指示されてやったんだぁぁああ!!
 俺の意思じゃねえええぇ!!」

こいつの口調は面白いな。おびえているくせに
半ギレ気味に言い返してくる。なんで語尾を伸ばすんだ?

横田は担任の若い女教師のことだよ。

「なら横田をあとで説教しないとな!?
 カナをバカにする奴は誰だろうと許せねえんだよ!!」

「す、好きにしろよおぉぉ!! だ、だがそんなこと
 言ってると生徒会のみなさんの逆鱗に触れるぞ!!
 俺は知らねえからな!! ふわああああああああ!!」

マサヤは何を思ったのか、扉を開けて走り去った。
すごい速さだった。あいつの前世は競走馬か?

俺は他のクラスメイトを見渡して言った。

「お前らに言っておくぞ!! カナの名誉を守れ!!
 カナがこのクラスの人だってことを忘れるな!!
 カナの席がないなんて、ありえないことだぞ!!
 なあ、分かったのかよおまえら!!」

シーン……。
まさにお通夜状態となった。
まあ俺は怒りに任せて怒鳴り散らしたからな。

クラス中から非難されてもおかしくない状態だが、
みんな俺と視線を合わせず、うつむいている。

確かに俺がミウの彼氏だと気まずいのだろう。
とはいえ、さすがに出しゃばり過ぎたか。

「私は太盛様を支持しますわ」

エリカが俺の腕を抱きしめながら言った。

「小倉さんはクラスメイトの一員よ。
 同じクラスの人を大切にするようにと朝礼でも
 言われているじゃない。それに反省室に入ったからって
 一生出られないわけじゃないわ。
 現に太盛様も今ここにいるのを忘れないでほしいわ」

そう言ってくれるか。
こんな俺の肩を持ってくれるのは君だけだよ。
俺の中でエリカの株が急上昇した。

「おい太盛。俺は戻って来たぞ」

誰かと思ったらマサヤか。
教室の扉の前で偉そうな顔をしてるのがカンに触る。

「太盛は現国の授業中に騒ぎ立て、授業妨害をした。
 これは学園では犯罪行為だぞ。しかも三号室の囚人の
 肩を持つとは、反革命的言動だ」

「なんだよ? 俺を生徒会に通報するつもりか?」

「それには及ばない。こちらに会長閣下がいらっしゃる。
 お前にも言い分があるのだろうから、
 ジャッジは閣下にお任せしようじゃないか」

なんということだ。あの生徒会長の高倉ナツキが
1組に入って来たぞ。副官のロシア女も一緒かよ。

おいおい。ミウが来るのは覚悟していたが、
まさかの会長かよ。まあミウが来たら
俺の主張を認めて終わりだろうからな。

マサヤの野郎。話をややこしくしやがって。


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