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作品名:『学園生活』改 〜愛と収容所と五人の男女〜 作者:なおちー

第15回   「私から太盛を奪わないでよ!!」
〜斎藤マリエ〜

「収容所内での恋愛は自由であります」

うん。知ってるよ、トモハル委員。
前の話の冒頭でも同じセリフあったでしょ。

「メタネタを使う人は反ボリシェビキですよ!!」

あっそ。つまんないの。

「我らはボリシェビキとして、この収容所三号室に
 集まった身です。これから共に学園生活を
 送る身ですから、改めて自己紹介をしましょう」

トモハル委員の説明はすでにしてある。
他の人は嫌そうな顔してる。
まあ、今更自己紹介なんてめんどくさいよね。

これ、新学期とかでやるオリエンテーション的なノリ?
誰も始めないなら、私からするか?

「私は元一年二組、元7号室の囚人。名前は斉藤マリエです。
 囚人番号202。現在は人権があるので実名を
 名乗らせてもらいます」

「斎藤さんはお綺麗ですね。彼氏とかいるんですか?」

と私にいきなり聞いてきたのは、なんと松本先輩だった。
この人。普通に話しかけてくるのね。
最初は無口な人だと思ってたのに。

「いや、松本先輩から話しかけて来るなんて
 かなりめずらしいことだぞ。
 俺なんて一度しか話しかけられたことがない」

ちなみに先輩はなんて話しかけられたのですか?

「堀君はどこから来てるのって?」

それだけ?

「おう」

話をするときはいつも太盛さんの側から。
しかも1分以上会話が続いたことはないらしい。

私が太盛さんと話していると、
松本さんが不愉快そうな顔をした。
なに? その渋柿でも食べたような顔は。

「斎藤さん。俺の質問に答えてよ」

「あっ。すみません。別に無視するつもりじゃ」

「分かってるよ」

口元だけで笑った。なんなの、この人。

「僕は君のことが好きだ」

なに……?

「実はファンだった」

先輩は、裏で流通していた私の写真を
多数所持していた事実を明らかにした。

「斎藤マリーファンクラブは非公式だが、
 実は大半が三年生」

斎藤マリー好きにはロリコンが多いって女子が
噂してるのはもちろん知っているよ。たしか、
アキラ会長の前に会長だった人? 分かりにくくてごめんね。

つまり前作『学園物語』で最初に会長やってた人も
私のファンだったみたい。私ってロリキャラなの?
なんか学内ではそういうことになってるみたいだけど。

「君が収容所に入って来た時、衝撃を受けた。
 できればすぐに駆け寄って抱きしめたかった」

……正直、ドン引きしちゃいました。

ひとつ気になったことが。
その割には私があいさつした時、そっけない
態度取りましたよね?

「緊張してた」

そうなの……? この人、しゃべり方が独特。
数少ないのはガチみたいね。

「君は俺と付き合うべき」

「いきなりそんなこと言われても困りますよ」

「収容所内は恋愛自由」

「そうかもしれませんけど、
 私は付き合ってる人がいますから!!」

と言って太盛さんを見た。
太盛さんも私と同じように困り果てている。

どうもこの松本先輩は模範囚の中でもとりわけ
生真面目で冗談の一つも言わない性格。
太盛とカナがイチャついても華麗にスルーするほどの
精神力の持ち主。

すぐ近くに美人の小倉カナがいるのに、まるで興味なし。
もしかしたら、女に興味ないんじゃないのか。
影でそう思われていたみたい。

「それは気のせいだ」

「はい…?」

「君が堀君と付き合ってるとか。
 それは気のせいだ」

先輩の意図が全く分からない。深読みしないと……

「なるほど。松本先輩の言うとおりね」

カナが得意げな顔で何か言ってる。

「斎藤マリエ。あんたが太盛と付き合ってるって。
 それは気のせいだったのよ」

いやいや。あんたにまで言われるとガチでムカつきます。
真顔で言うのやめてもらっていいですか?

「小倉さんも分かってくれた。
 堀君と斎藤さんの関係は気のせいだ」

「うんうん」

二人はなに意気投合してるの?
カナに正拳突き食らわせたいんだけど。

「あの……松本先輩」

太盛さんが申し訳なさそうに言う。

「さすがにそのジョークは面白くないというか……。
 俺とマリエは本当にカップルでして……。
 せ、先輩がマリエのファンだったとは
 知らなくて、ですね……その……」

かなり遠慮がちに言ってるな。
太盛さんは松本先輩を尊敬してたのか。

「いいって」

「え、いいんですか?」

「うん。気のせいは誰にでもある」

「へ?」

「堀君は夢でも見てたんだ」

それは、私たちの関係が夢だったと
言いたいんですか?
どう考えても現実ですよ

太盛先輩もあせって事実を説明するが…

「そういうの。もういいから」

と言って松本先輩は聞いてくれない。
なにこの状況?

松本イツキさん。三年生。一見すると
普通の男子生徒だけど、実はかなりの変わり者?

「ゲラゲラwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwww」

横田は笑いすぎて苦しそうにしている。
この女はいつまで床を転げ回ってるんだ。
早くこの収容所から出て行ってよ。

「マリエ、好きだ」

今のは太盛さんじゃなくて松本さんから言われた。
こんなみんなが見てる前で愛の告白されても
なにも響きませんよ。

「良かったね斎藤? おめでとう。
 いつまでもお幸せに」

おめでとう、じゃないんだよ、この小倉が。
なんで私が松本さんと付き合う流れになってんだ。
これでも食らえ。

「おっそ。止まって見えるよ?」

私のワンパンは軽くかわされてしまった。
嘘でしょ。これでも小さい頃にかなり鍛えられてたのに。

「収容所生活・初日からカップル成立ですね!! 
 おめでとうございます!!」

トモハル委員が力強く拍手すると、カナも続いた。
松本さんは照れ臭そうに笑っている。

ちょっとあんたら、ふざけるのもその辺にしましょうよ。

「ということで、同士・堀太盛の彼女は
 カナさんに決まりました。これは正式決定です」

トモハル委員? 正気ですか?

私はさすがに我慢できないのでキレてしまった。

「いい加減にしてよ!! 勝手に話をすすめないで!!
 私と太盛先輩の関係をどうしてあなた達が
 勝手に解消しようとするの!? あなた達にそんな
 権利があるの!? 私たちの関係に口出ししないでよ!!」

「太盛は、私の彼氏です!! 私が失語症になった時とか、
 彼すっごく優しかったんだから!! 毎日病院に
 お見舞いに来てくれて、それで家にも遊びに来てくれて!!
 他にも……」

ガッシャアアアアアアン

急に花瓶が床に落ちて粉々になった。
収容所に花瓶なんてあったんだ。

「わざとではありません!!」

トモハル委員……。私の話の腰を折るのが目的でしょう?

「何のことでしょうか? 先ほどから同士・斎藤は
 妄想を語っておりますが、それは事実ではありません。
 なお、同士カナと太盛が収容所カップルなのは
 生徒会が公認しております」

収容所カップルってなに? その理屈だと
ミウが太盛に手を出すのも違反にならない?

「うるさいのであります!!」

怒られちゃった。

「この三号室の中において、太盛同士とカナは
 カップルなのです!! この関係を否定する者は、
 反ボリシェビキとみなします!!」

横暴すぎるよ!! 無理やり私と太盛の仲を
引き裂きたいだけじゃない!! しかも私と
松本さんをカップルにさせたがるのも不自然。
誰かに命令されてやってるようにしか思えないよ!!

「決してミウ閣下に命令されてませんよ?
 自分は誇り高きボリシェビキでありますから!!」

誰もミウの話なんてしてないのに。
なるほどね。そういうことか。

「あははは。なんか面白い展開になってきた。
 ごめんね、斎藤さん。私と太盛が
 生徒会公認の関係みたいだから諦めてね?」

「小倉さん……。どうせあなたなんて
 太盛にとってはどうでもいい相手なのよ」

「ん? なんか言った?」

「太盛は大好きな私に会えなくてさみしかったから、
 あなたに寄り道しただけ。小倉さんは本命でも
 なんでもない。ただの暇つぶしだよ」

「太盛がそう言ったの?」

「え」

「だから、太盛本人がそう言ったの?
 今のはあんたの考えたことじゃない。
 太盛本人の意思なら私も納得するけど。
 ねえ。どうなの太盛?」

「あぃー……?」

太盛さんは昇天する直前のブッダになった。
確かに答えにくいよね。本人が目の前にいるんだから。

「太盛さー。私の前で何度も誓ってくれたじゃん。
 死ぬ時までずっと一緒だって。俺にはカナ以外の
 女性は考えられない。もし生きてここの学園を卒業したら、
 お互いの両親に婚約の話をしようって」

「なにそれ? そんなことまで話してたの!?」

私は衝動的に机を蹴飛ばしてしまった。はしたないよね。

「婚約ぅwwwww m9(^Д^)プギャーwwwww
 学生の分際で婚約とかwwwどんだけラブラブだったのwww
 それじゃ生徒会公認にもなるわwwww」

ついでに横田も蹴とばした。たぶん怒られないよね?

「怒るわwwwwしかも痛いしwwww
 なに当然のように教師を蹴ってんのwwwww」

元気そうでよかった。お尻を思い切り蹴っただけだから
大したダメージじゃないでしょ。

「他にもあるよ? 私がここ生活で心が折れそうになった時とか。
 たとえば……そうだね。地獄の登山の時。上の命令で
 途中で落伍した囚人を虐待した時だったかな。
 あの時の私は罪の意識で耐えられなくて」

「でも太盛は言ってくれた。お前はひとりじゃない。
 俺がいるだろって。そして優しく抱きしめてキスしてくれた。
 あの時の太盛。男らしかったな。私はずっと心臓が
 バクバクいってた。だから私も彼に返したの。大好きって」

「ねえ太盛? あなたの気持ちは本当にうれしかったよ。
 だからこそ、今太盛に改めて聞きたいの。
 太盛は私のこと愛してくれてるんだよね?
 私は太盛の気持ちが嘘じゃないって信じてるから」

カナは図に乗って太盛先輩の手を
握りながら↑のセリフを言っていた。

まだ太盛が何も言ってないのにトモハルと
松本さんが拍手して祝福している。

「そ、そろそろ休憩時間だな。お昼食べないと」

太盛の言う通り、時計の針が12時直前を指している。

「同士よ。逃げるのは感心しません」

トモハルは隠し持っていた拳銃を構えた。
安全装置を外し、トリガーを引くだけの状態にした。
銃口を太盛先輩の顔に向けている。

「今すぐ同士カナの気持ちに答えてください。
 できれば自分があなたの頭を
 ぶち抜く前にお願いします」

トモハルは真顔だった。さすがにネタなんだろうけど、
彼は生徒会の諜報委員の人間なんだよね。
本気でやりかねないから困るよ。

「……カナを愛してる。どうだ。これで満足したか?」

トモハルはつまらなそうに鼻を鳴らした。

「気持ちが伝わりませんな。
 資本主義者は口先だけでは何とでも言いますが、
 実行力がない。まさに同士・太盛の今がそれです。
 きちんと行動して愛を証明していただきたい」

「行動か……。分かったよ」

太盛さんはカナを抱きしめて耳元でささやいた。

「小倉カナ。俺は君のことが好きだ」

「うん。私も」

カナも抱きしめ返している。ガチでうぜー。
今すぐ引き裂いてやりたい。

「うはぁぁwwwwwwwwwwwwいいね今のセリフwww
 小倉カナ。俺は君のことが好きだwwww
 どこの三流ドラマのセリフだよwwwwwうけるwwww」

スルーするね。

「では恋人の証としてキスでもしていただこいう。
 男らしく太盛殿からどうぞ」

「と、トモハル委員殿。この状況でキスですか……」

「恥ずかしがることはありません。ソビエトの男なら
 好きな女性のために三時間もかけて自作の詩を朗読したり、
 毎日違う花束を持って行って告白したりなど日常です」

「俺は日本人なのですが」

「国籍は確かにそうですね。ですが、この学園の中では
 全ての人が差別なくソビエト人民として扱われます。
 あなたは日系ソビエト人です。ですから日本人的な
 恋愛など忘れてください」

「そうかい……」

太盛先輩はやけくそになった。
小倉カナの肩を力強く抱き、くちびるを奪った。
うわ……。舌まで入れてる。

そこに二匹のオットセイがいるように互いの唇を求めあった。

太盛先輩が生徒会によって奪われてしまった。
私はこの暴挙を黙って見守るしかなかった。
この屈辱は決して忘れない。

「心配ない。君には俺がいる」

「え? すみません。うざいです。死んでください」

松本先輩は両手を床につき、声を上げて泣いた。

泣いていいなら私だって泣きたいよ。

本当にこの学校ってうざいし、ムカつくし、疲れる。
こんなにストレスの溜まる学校ってこの世にあるの?

鉄条網とかは探せば他の学校にもあるのかも
しれないけど、恋愛関係まで強要されるってどうなの?

私と太盛が両思いなのはみんなが知っていることなのに。
裏でミウが手を回してるようだから、次会ったら
拷問されるのを覚悟でボコボコにしてやる。

もう許さないぞ。ついでにカナもぶち殺してやる。
私はカナから太盛を奪い返すことを心に誓うのだった。


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