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作品名:『学園生活』改 〜愛と収容所と五人の男女〜 作者:なおちー

第14回   「相田トモハル君も共産主義者なの?」
〜斎藤マリエ〜

「収容所内の恋愛は自由である」

収容所の扉を閉めた執行部員の言葉が
いつまでも頭に残っていた。

三号室には私と太盛さんの他に三人の男女がいた。

まず一人目は、松本先輩という男性。

茶髪で不良っぽい外見だけど、中身は草食系なのか、
こちらが挨拶しても会釈(お辞儀)だけ返された。
いかにも無害そう。三年生だからもうすぐ卒業だね。

二人目は小倉カナ。

「太盛……どうして戻って来たのよ」
「へへ。俺だって好きで戻ってきたわけじゃないさ」

再開するなり抱擁してほほえみあっている。
私は激しく不愉快だったけど、事の成り行きに着いて行けず、
見守ることしかできなかった。

どうやら小倉先輩は太盛先輩と同じクラスで、
三号室では囚人仲間だったみたい。しかも彼女だったとか?
先輩……彼女いたんですか。しかも強制収容所で?

つっこみどころは満載だけど、まあいいや。

次に三人目の紹介を。

「あ? わたし? 横田リエっす。ちーっす」

このチャラい人は、なんと太盛先輩の元担任の先生だという。
最初は信じられなかったよ。化粧もしてないし、
髪の毛もボサボサ(ショートカット)

服も……私服? 一見するとジャージに見えるけど、
高級スポーツウェアみたい。
ジョギングする人が着るような感じの。

「あwwwwなにその顔? もしかして私が三号室行きに
 なった理由とか知りたいのwwww? 
 答えはwwww教えてあげないよwwwジャン♪」

なんですかそれ。お笑い芸人のネタですか?

「お笑い芸人wwwwそんなの知らないよwww
 私テレビ見ないしwww自分のネタに決まってるでしょwww
 見りゃわかるだろ普通www」

初対面の人をぶん殴りたくなったのは生まれて初めてです。
こんなアホっぽい女が太盛先輩たちの元担任?

二年一組って進学コースのトップじゃないんですか。

「だからその目やめろwwwうっざwww
 別に進学クラスとチャラさは関係ないからねwww
 頭良くてチャラい人とか世の中にいるっしょwww
 つーか進学コースとかwwwクソめんどくせーんだよwwww」

セリフに草生やしていると人間性を疑われますよ。
どうせ助言しても聞いてもらえないんでしょうけど。

とにかく私は三号室で暮らさないといけないんだ。
まずみんなの名前を覚えないと。
松本さんと小倉さんと横田さん。
一年生なのは私だけ。今みんなは諜報の時間でPCを…

「ちょっと〜、斎藤さーんwww」

なんですか横田さん? 今考え事してるんですけど。

「教員だった私がここに収容されてる理由を聞いてよw」

さっき教えてくれないって……

「いやいやwwwちゃんと理由言わないと
 物語として進展しないでしょwww」

物語? 元先生は得意げに語ってくれた。

まず驚いたのが、二年一組の人がクラスごと6号室行きに
なったこと。クラスごと……。そんな事例もあるんだね。
たぶん学園始まって以来だとは思うけど。

「私さーwww裁判にかけられたんだけどwww
 ありえなくないwwww? 
 なんか〜www 授業態度とかにぃwww
 問題あるとかぁww言われちゃってぇwwww」

6号室は、井上マリカという代表の元に一致団結し、
模範的な囚人生活を送っていた。その中で輪を乱す
大馬鹿がいたのだが、その馬鹿がなんと
横田リエだったとのこと。

「あいつら宗教集団なんだけどwwwマリカ様www
 マリカ様とか言ってwww私のことが不真面目で
 マリカ様に迷惑をかけてるって文句言うのよwww
 あのクソども、次会ったらボコボコにしてやるわwww」

不真面目って?

「ロシア語の授業とかだるいから、
 週〇少年ジャンプ読んでたのよ。
 そしたら隣の席の男子に注意されたわwww」

普通は注意するでしょう。

「そうかしらwww? あとソ連の歴史の授業は
 ビデオ見せられるのね? あの時はガム噛みながら
 IPODで両耳塞いでたらさすがに怒られたわwww」

怒られるってレベルじゃなくて
完全に喧嘩売ってますよね?

生徒会の人にばれたら
尋問室行きで拷問されてもおかしくありません。

「それがねwww大丈夫なのよwww」

マリカさんという人がかばってくれるから、だという。
その人は素晴らしく人間味にあふれる人で、
粗相を繰り返す先生をよくかばってくれた。

ロシア語教師の生徒会長殿も横田の奇行は
目にしていたが、優しいので見逃していた。

第五特別クラスは自治権が認められていたから、
内部粛清などは自分たちの裁量で行える。

横田さんはクラス中から非難の的になり、
まず代表の座から降ろされ、その後も第五特別クラスの
一員にふさわしくないとして、たびたび苦情が出された。

いっそ横田を切り離して生徒会へ突き出すべきだと。
ならば、まずはクラス裁判しかない。

でもマリカさんはすぐには裁こうとしなかった。
クラス裁判で有罪になった人は生徒会へ突き出す
約束になっている。

とはいったものの、マリカさんでも
クラス内部での反発の声は抑え切れなかった。

井上マリカ様を中心としたクラスの風紀を
罪としてついに裁判が開かれ、
たったの7分で有罪が決まった。

横田リエを弁護したいと思う人がついに
現れず、なんと弁護人なしでの裁判となったためだ。
これには裁判官のマリカさんもついに諦めてしまった。

「うちのクラスの子たちwwwwまじうざくないwwww?
 担任の先生を裁判にかけるとかwww
 ほんと終わってるわwww生徒としてwwww」

先生は今までのセリフを、
机の上に両足を伸ばした状態で言っていた。
両手は頭の後ろで組んで座っている。

不良系の男子がやりそうなポーズですよね。
とても23歳の女性がやることには見えません。

「はwwwww? 23とか意味不明だしwww
 私は永遠の16歳だからよろしくねwwww」

先生は小顔で美人だけど、さすがに10代とは違いますよ。
お肌とか、とっくに曲がり角でしょ。

「ちょwwww今ムカつくこと言われたんですけどww
 斎藤さんだっけ? ちょっと屋上来ようかwwww」

もうこの人の相手はよそう。

私は、大人しく席に座っている松本先輩には
目もくれず、カップル同然に一つのPCを
のぞき込んでいる先輩たちの方へ向かった。

「なんだ、マリー?」

なんだ、じゃありませんよ、太盛さん。
諜報活動だか知れないですけど、何その小倉さんって
人とイチャイチャしてるんですか。

「いや、久しぶりの諜報活動だからやり方
 忘れちゃったんだよ。今カナに教わってるから、
 あとでマリーにも教えてあげるからな」

問題はそこじゃありません。

先輩は私が怒ってる原因が分からないようなので
直接教えてあげることにしました。

「あの、小倉カナさんでしたよね?」

「あ、はい」

小倉さんは少し緊張してるのか、声が上ずっている。

「先輩に対して失礼だとは思いますけど、
 これだけは言わせてください。
 太盛は私の彼氏です」

小倉さんはインドネシアにあるブッダ像の
ように固まってしまった。

「はい?」

1分ほど沈黙した後に、小倉さんが
なんとかしぼりだしたのは、それだけだった。

「太盛は今年の夏休みから私と付き合っていました」

何気なく先輩の名前を呼び捨てにしてるけど、
こっちのほうが私の彼氏だって伝わるよね?

「うそ……。太盛。あんた、彼女いないんじゃなかったの?
 橘嬢とは付き合ってないって言ってたじゃん」

「いや……その。なんていうかさ……」

「嘘ついてたんだ。こんな可愛い彼女いたのに
 ごめんね? 収容所じゃ私しか女がいなかったもんね」

「ちょっと待ってくれよカナ。おい。ちょっと!!」

下の名前で呼ぶか。カナさんは部屋の隅まで机を持っていき、
PCを操作し始めた。いったい何を
調べてるのか知らないけど。どうでもいいや。

「カナ!!」 「話しかけないで!!」

部屋の隅で二人が犬も食わないような喧嘩をしている。
本当に仲が良かったんだろうな。
きっと喧嘩なんかしたことなかったんだよ。

太盛先輩は、収容所三号室であの女と一緒に過ごしていたのか。
毎日一緒に…。私は会いたくても会えなかったのに。

「太盛先輩は私のこと好きだと言ってくれました。
 そっちの女の人はもう赤の他人ですよね?」

私が先輩の隣でそう言うと、カナがすごい顔でにらんできた。
この人、ミウとは違う殺気を放っている。
直感で分かるけど、体育会系なのかな?

今にも拳が飛んできそうな雰囲気。
でも負けないよ。

「ああ、あんたのこと思い出した。一年のアイドルの
 斎藤マリエね。たしか太盛と同じ美術部の」

「よくご存じで。私は太盛先輩の家にも
 行ったことあります。私の家には夏休みの間
 毎日来てもらいました」

「は?」

今度は太盛先輩がにらまれた。

「太盛は嘘つきなんだね!! 私とは運命共同体で 
 卒業するまで一緒に過ごそうとか言ってたくせに!!」

「あの時は本当にそう思っていたんだよ!!」

「彼女連れて戻ってくるなんて
 なんのつもりなの? 嫌がらせ!?」

「そんなつもりはないよ!! 
 俺たちはミウの命令で
 仕方なくここに戻って来たんだ!!」

「仕方なく……?」

「い、いや。そういう意味じゃ」

「そんなにここにいるのが嫌なら、早く出て行ってよ!! 
 その子も連れてどこへでも行きなさいよ!!
 この嘘つき!!」

「カナ。気持ちは分かるけど、落ち着いて話を聞いてくれ。
 俺がここに来るまでの経緯を全部話すから」

「聞きたくない!!」

「カナ!!」

「今は一人にして!!」

松本先輩はこの修羅場を黙って見守っていたが、
そうじゃないのが一人いた。

「うはwwwwwまじうけるwwwwあんたら何
 昼ドラみたいなことやってんのwwww」
 しかもうちのクラスの子が争ってるのがうけるwww」

横田、静かにしてよ!!

「だって面白いじゃんwwwwリアルで昼ドラすんなよwww
 堀君が女たらしすぎてww笑いが止まらないwww
 ごめんwwwうちら教師陣は、堀君はエリカと付き合ってるの
 が公式見解だったんだけどwwwwなんで他の女に行ってるのwww」

黙れよ年増!!

「年増とか言われちゃったwwww私まだ23なのにwww
 大人の世界では若すぎるくらいよwwww
 つーか収容所で昼ドラとかwwwwマジ楽し〜www
 斬新ネタ、あざーっすwwww」

しょうがないか。私は子供頃に空手を習っていたから、
ここで発動することにするか。

「ごふwwww」

私の正拳突きを食らった横田が、数メートル吹き飛んだ。
その衝撃によって気絶してしまった。
よかった。これでしばらく静かになるだろう。

騒ぎ続ける太盛さんとカナ。
賢者の顔で、PCで諜報活動
(全校生徒のSNSチェック)を続ける松本先輩。

久しぶりに空手技を発動した疲れで、肩で息をしている私。

そんな茶番を続けていると、収容所の扉が開くのだった。

「失礼します!!」

生徒会のバッジを付けた男子が入って来た。
若いね。一年生?

「収容所の同士諸君らよ!! 私は諜報広報委員会から
 派遣された相田トモハルと申します!!
 ここに来るのは事前に
 高野ミウ副会長閣下に許可を得ております」

声がでかい。この人も体育会系ね。

「今日から私が三号室の看守として、
 みなさんを管理させていただきます!!」

あなた、一年生でしょ?
確か野球部のエース候補で一年から
控えのメンバーに入っていた…。

「同士・斎藤のおっしゃるとおりであります!!」

なんで敬語使うの? 
それに私たちは同士じゃなくて囚人でしょ?

「敬語は必要であります!! なにせここの方々は
 ほとんどが上級生でありますから!!
 呼び名に同士を使うのは……!!」

信じられないことを聞いたわ。
私たちは将来有望なボリシェビキ候補として
期待されているから、何人かは生徒会へ
引き抜きたいとのこと。

三号室ってそういう場所なの?
生徒会の幹部育成組織みたいだね。

すぐ隣の二号室が絶滅収容所なのとは
えらい違いだね。

「この教室での過ごしかた、規則等については
 私が決めたいと思っております。
 もちろんみなさんが話し合って決めていただいても
 よろしいのですが、先ほどの茶番をしているようでは
 難しいでしょう!!」

おっしゃるとおり。てか茶番見てたの?

「監視カメラが教室の天井の四隅に設置してあります!!」

あっそ。それより、さすが元野球部。声でかいねー。

「すみませんっ」

なんで謝るの。私、囚人なんだけど。

「同士・斎藤は会長からも期待されているほどの
 お方ですから、私も敬意を払うつもりであります」

褒められちゃったよ。
私、この人なら嫌いになれない。

小倉カナは、老女のような腰つきで
トモハルに話しかけるのだった。

「と、ともはる……あんた……どうしちゃったのよ」

「同士・小倉よ。いえ、同じ部活でしたから
 親しみを込めて同士・カナと呼ばせていただきましょう。
 私が生徒会に入った理由を聞きたのでしょう?
 包み隠さず教えてあげましょう!!」

彼はその場で演説を始めた。

マルクス・レーニン主義の合理性と先進性だ。

「唯物弁証法」「階級闘争」

この二つの単語について説明を始めた。

「階級闘争」は生活の資を得ようとするところから「唯物的」「経済的」
 な運動である。その運動は社会制度を作り、どの社会も時がたつと
 それ自身の否定を生み出すという意味で「弁証法的」「政治的」なのである。
 エンゲルスはこのようなマルクスの哲学への貢献を、
「自然と歴史の唯物論的解釈に弁証法を引き入れた」ことであると明記した。
 ヘーゲルにとって思惟の範疇と考えられた「弁証法」を、
 物質的な過程に置き換えることについての困難は、
 マルクスによって気づかれなかったか無視された。

↑(・ω・) 私たち囚人はこんな顔で聞いていた。

私も7号室時代にそんなこと聞かされたけど、
理解できないよ。言い方が小難しすぎるでしょ。

「社会主義理論とは、経済であり、哲学であり
 人類史そのものですから、自分も理解するまで
 ずいぶんとかかりました」

ならそんな難しいのを口頭で語らないでよ。

「日本の資本主義は堕落しています!!」

なにがどう堕落してるの?

「資本主義とはすなわち、資本家による生産手段の独占!!
 貧富の格差の拡大!! 無意味な競争と景気変動による
 雇用の不安定などを生みます!! 
 また、日本は社会保障制度も不十分であります!!」

ああ、社会保障って年金とか医療とかね。

「まず、日本の問題点は、金のない奴は死ね!! 
 これにつきます!!」

そうなの?

「自民党政府は金がないのは自己責任だと言います。
 確かに国民に財産の所有が許可されているから、お金を 
 どう使おうが個人の自由。貯めるのも無くすのも自由です」

「しかし、お金を持たない人は、老後など
 将来の生活に困り、飢え死にするかもしれません!!
 生活保護は在日朝鮮人を優先に支給され、たとえ70歳でも
 働ける見込みのある人にはまず支給されません!!」

「低賃金、高い税金、長く続くデフレによって貧困者の 
 割合は増える一方で、金融資産や生産手段のある富裕層は
 ますますもうける!! 若者には金を稼ぐ手段が限られ、
 その状態が未婚率に直結しています!!」

なるほど。確かに結婚する人は減ってるらしいね。

「労働者は低賃金で奴隷労働をさせられています!!
 日本はEUのように発展した地域と違い、
 国が企業の横暴を許しています!!」

残業時間は国会で審議されてるんじゃなかった?

「上限が月100時間とか、高プロ制度ですか?
 あんなの無駄です!! 喜ぶのは企業と経団連だけです!!」

残業時間規制には労働基準法の36協定があるが、
上限規制を守らないブラック企業は後を絶たない。

最近は少子化による影響で労働市場の
需給ギャップが発生。学生の売り手市場になり、
情勢は変わるかもしれないらしい。

なんか。そういう話聞くと将来働きたくなくなるよね。

「日本の資本主義の最大の問題は『労働時間』にあります!!
 ソ連では一日のノルマをこなせば帰れます!!
 職種にもよりますが、例えば工場なら
 普通の人なら8時間以内にノルマはこなせる量です!!」

「ところが、我が国はあらゆる職場で最少の人数で
 働かせられ、無意味な残業を強いられる!!」

過労死とかニュースでよく聞くものね。
先進文明が集まるEUには過労死って
概念がないそうだけど。

「確かに残業多くて困るわwww
 私も大学出る前はこんなに
 残業ばっかりだと思わなかったもんww」

横田リエも何か言ってる。いつ目が覚めたんだよ。
こいつは毎月30時間以上しているらしいけど、
過労死ラインほどじゃないと思う。

三学年を受け持つ進学クラスの先生は、
受験シーズンに月80時間くらい残業するらしいけど。

「収容所生活って残業なくて楽だわーwww
 私も学生と同じ時間に家に帰れるしwwww
 給料半分しか出ないけどねwww」

給料半減してたんですか。
先生一人暮らしでしたよね?
けっこうキツいと思うんですけど、
どうやって生活してるの?

「はwww? 私これでも
 副業やってるからwww楽勝っすwww」

どんな仕事なんだろ。怖くて聞く気にならない。

「説明を続けますが!!」

トモハル委員の説明を箇条書きするね。

日本の資本主義とは

・賃金奴隷制度(低賃金、長時間労働)
・自己責任型の破滅社会(社会保障は期待できない)

・『旧日本軍に変わって』企業が国民を使役し、虐待している。
 (政府が企業の力を制御できない)

・日本の企業とは何か? 
 利潤の追求のために人権を無視する組織である。
 人とは、家畜であり、ひとつの労働単位に過ぎない。

・公務員でさえ、例えば中学教員のブラック部活など、
 長時間労働が問題視されている。

・神風特別攻撃はなくなったが、過労死は存在。
 過労死とはすなわち、企業の命令で特攻したのと同義である。
 イスラム教徒が自爆テロで散るのと変わらない。

・15〜24歳までの自殺率、世界トップが日本。
・6%存在すると言われる資本家階級が全てを支配している。

・金融資産の7割は老人が保有。

・若者が結婚しても夫婦共働きはほぼ必須。

@仮に夫の給料が足らずに妻がフルタイムで働くと
 →認可保育園には数の制限有り。
 保育費用は家系に大きな負担。待機児童問題が発生する黄金パターン。
A国が保育所を増やしてもブラック保育園が多く、
 そもそも保育士の離職が止まらない。
(保育士1人で5人以上の子供を担当、女同士のいじめなど)

・若者が貧しい一方、国会議員の給料は『約3300万』
 航空機やJRの無償乗車などの
 議員手当を含めると『約4400万円』

・一度バブルがはじけた後のデフレが
 無限に続くのかとさえ思えるスーパーロング不景気タイム。

・2018年現在まで、年金の支給年齢を引き上げる一方であり、
 自民党は明らかに70歳まで国民に働かせようとしている。

・実質死ぬまで働けと言ってるのと変わらない。
・政府の負債の債務残高は深刻。(1080兆円以上)
・年金支払いは『債務の履行遅滞』が今後も続く。
(↑払わないとは言ってない)

(余談だが、『日本政府』が『債務不履行』になるのは、
 日本国が軍事攻撃によって壊滅した場合が考えられる。
 どれだけ政府が負債を抱えても年金を
 全く払えないというのは財政学的にはあり得ない。
 また、政府の借金を国民の借金と考えるのは誤りである)

「おいおい。日本ってそこまで悪い国だったの?
 賃金奴隷って言葉も初めて聞いたぞ。
 サラリーマンって奴隷だったのか?
 あと国会議員の給料高すぎないか?」

太盛先輩が呆れている。そうだよね。
賃金奴隷とか言われても私たちには実感がないな。
私の両親は銀行勤めで毎日夜遅くまで帰ってこないけど。

『賃金奴隷』はマルクスたちの作った用語らしいね。
 資本主義を批判するために。

どれだけ働いても裕福になれない人、
労働時間を企業に売ることでしか
お金を稼げない人達のこと、つまり私たちのことだね。

カナは太盛さんの隣に立って、腕組みをしている。

「東日本大震災の時、国会議員の給料を八割に削減しましたが、
 それを現在までに国民には内緒で十割(満額)に戻しているのです!!
 国民に重税を課しておきながら、許せません!!」

「私も政治のことは分からないけど、今の安倍政権が
 変わったら少しは良くなったりしないの?
 森友問題で奥さんが嘘ついて大変なことになってるんでしょ?」

そうらしいね。テレビでやってた。
安倍政権は森友問題で支持率が急降下してるらしいよ。
(2018年3月29日執筆)

「国家犯罪を犯した者は、
 旧ソ連なら強制収容所行きであります!!」

無理でしょ。ここは日本なんだから。
それにスパイかと思われる人とか政府批判を
した人も収容所行きになるでしょ。

「恐怖こそが国家を統制するのです!!
 日本人は徳川政権の崩壊、太平洋戦争の敗北の
 あと、手のひらを返したかのように国をがらりと
 変えた実績があります!!」

「国民は情勢に流されやすい特性を持つのでしょう。
 特に明治以降の全体主義的傾向は国民に広く浸透しました。
 社会主義革命が起きた時もすんなりと受け入れることでしょう」

はいはい。日本人は主体性のない人ばかりだからね。
それと明治維新の時は、西洋列強の侵略に
脅えて生まれ変わっただけでしょ。

「先ほども申し上げましたが、
 私は広報諜報院の所属であります。
 同士諸君らを勧誘するのも私の務め」

「どうですか同士諸君!!
 我々の考えに同意し、共に生徒会の同士と
 なってくれる人はいませんか!?」

私は動じない性格だからスルーだけど、
太盛さんとカナは深刻なレベルの衝撃を受けている。

特にカナは、オーストラリア北部に生息する
カンガルーの姿勢と顔で固まっている。

カナは変わり果てた後輩の姿に涙さえ流している。

「トモハル……どうしてそんな人になっちゃったの」

「強制収容所一号室の生活が私を変えたのです。
 私はあなたの知っている相田トモハルではありません」

「うぅ……ぐすっ」

カナが嗚咽してる……。そんなにショックなんだ。
太盛さんがカナの肩を優しく抱いてなぐさめている。
イチャイチャすんなよ、こら。

「革命なんか起こして何になるのよ。
 だいたい、貧乏人たちが国家を転覆させようとしたら、
 お金持ちの人達が怒るでしょ」

「既得権益者は強制収容所行きか国外追放します!!
 かつて同士レーニンがそうしたように!!
 彼らが保有している全ての資産を没収し、
 国民全員に均等に分配します!!」

「それは理想だけど、本当にそんなことしたら、
あとで遺族とかに復讐されない?」

「四親等内の者も全員殺すか、収容所行きにします。
 復讐防止のためには容赦しません」

四親等……。いとこ、自分の兄弟の孫まで含まれるのね。
やりすぎかもしれないけど、徹底してる。

ちょっと面白いかも。
この国には死んでほしい議員さんがたくさんいるね。

「ふむ。その表情から察するに、私の演説の
 効果は薄いようですね。まあいいです。
 私は諦めずに諸君らへの勧誘を続けます」

あっそ。用が済んだなら、
さっさと広報員のとこへ帰りなさい。

「え?」

えっ。

「私も今日からこの収容所で過ごしますよ?」

は……?

「私は看守であります。常駐型とでも言いますか、
 常に同士諸君らを監督指導するのが仕事です」

「うはwww毎日あんたにこの部屋で
 監視されるってことwwww? 
 深刻なレベルでうぜーwwww」

横田の話し方もうざい。
相手にすると疲れるから距離を置くか。

まさか生徒会の人が収容所に常駐することになるとは。
太盛先輩と一緒なのはうれしいけど、浮気相手のカナが
いたり、横田のアホがいたりで全然落ち着けない。

長くなったので次の話に行こうか。


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