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作品名:午後『2時55分』に何かが起きる 作者:なおちー

第15回   ミホ「ふざけんじゃねえよ!!!」
『明日の朝話があるから、
 昇降口の前で待っててください』

ミホからロベスへ送られたメール(LINE)であった。

(本村さんからメールなんて珍しいな。
 裁判のことで話し合いたいことでもあるのか……?)

ロベスはミホに気があった。
裁判休止期間のこの一週間、本村ママを避けるために
遊びには行かなかったが、個人的にミホに会いたいとは思っていた。

神7という狭い世間(クラス)で隔離されたロベスが
ミホを意識するのは自然なことであった。

この小説ではミホの容姿を全く描写してないことに
今気づいたが、ショートカットで
髪留めをして、二重でえくぼが似合う美少女ということにしよう。

……いや。描写したかもしれない(髪留めに既視感)

「悪いね。待たせちゃったかな」

「私も今来たことろだから」

早朝。始業の一時間も前である。
この時間に来てるのは朝練に熱心な生徒か、先生方のみ。

人気がなく、朝特有の緊張感とさわやかさの
混じった不思議な空気の中である。

ロベスピエールらの容姿も描写してなかったかもしれないが、
Wikiなどで調べてもらえば肖像画が出るだろう。
あれが中学生になった感じで想像してもらえばいい。

「本村さん。話ってなんだ?」

「うん。手短に言うね」

ミホが、ロベスに一歩近づいた。至近距離である。

(ま、まさか……)

ロベスが期待し、顔が高揚してしまう。

「お願いがあるの。あなたにしか言えないことなの」

「僕は、君がどんなことを言っても受け入れるつもりでいるよ」

「ありがとう」

ミホがほほ笑んだ。本村家の子供は兄妹そろって美形だった。
ロベスピエールはうっとりしてしまう。

それが致命的な油断につながった。

「じゃあ、ぶっ飛ばすね?」

「ふぁ?」

ゼロ距離での右ストレート。

ミホは、決して助走をつけたわけでも、
腕を振りかぶったわけでもない。

感覚としては、右腕を彼のほっぺたに当てただけ。
それだけなのに、こんなにも激しい物理的な攻撃になってしまう。

「だゃああああああああああああああああああああああ!?」

ロベスは昇降口の壁をぶち破り、野球グランドの方へ飛んでいった。
旅立ちの日である。

ミホは手をハンカチで拭く。凄まじい攻撃のため、
激しい摩擦(まさつ)が生じ、少しだけ焦げてしまったのだ。

彼女の拳は、もはや重戦車の主砲と同等の破壊力と言えた。

「おはよう本村」

「おはよポト君。本村じゃなくてミホで良いよ」

「えっ。いいのか? 俺は彼氏でもないのに」

「気にしないで。なんか今日はそんな気分なの」

ミホはたまたま登校してきたポトと一緒に階段を登った。
2階の4組の教室に入り、壁に穴が開いてるのをポトが
見つけ、驚愕し、そのことをミホに問うた。

「いろいろあったんだよ」

「そうか……」

ミホが激しく機嫌が悪いのを察したポトは、
それ以上何も聞かなかった。

ついでに登校中に、ロベスと思わしき人が宙を飛んでいるのが
見えたが、気のせいだと思うことにした。

「今日もアッツイなー。日本の夏くたばれよ」

ミホは遮光カーテンを閉め、エアコンのスイッチを入れた。
彼女は不機嫌なときは男口調なのだ。
ポトは今日の裁判で必要な書類を机に並べる。

ポトミホは友達でもこの裁判では敵同士である。

「本村。その様子だと昨日のお兄さんとの
 話はうまくいかなかったようだな」

「ミホで良いってば。やっぱ兄と話すと喧嘩になっちゃうよね。
 抑えるつもりだったけど、あいつといるとついムカムカしちゃって」

「年頃の兄妹なんてみんなそんなものだろうな。
 気にしないほうが良い。君は真面目だし、よくがんばってるよ」

「ありがと。いつもフォローしてくれて」

「フォロー? 俺は普通に話してるだけだよ」

やはりポトは、信長のようなチャラ男や、兄のような腹が立つ奴とは違う。
話していてすごく楽だった。これでポトがイケメンだったら
本気で付き合っていたかもしれない。

「うふふ。おはようございます。
 今朝も日差しがすごいですわね」

麗しきマリー・アントワネット嬢の登場である。
元フランス王妃にして今次裁判では弁護側筆頭の人物である。

「そんなの説明されなくてもみんな知ってるよ」

「ミホさん、メタネタはその辺にしておきましょう。
 読者に飽きられますわ」

「とっくに飽きられてるでしょ。この作品読んでる人いるの?」

「どうなのでしょうね。私も気になりますわ」

「あー…裁判とかマジだるいよぉ…。
 もうやらなくていいじゃん。時間の無駄だよ」

「でも神7みんなで決めたことではないですか。
 それと、そこの壁の穴はどうしました? 
 昨日お兄さんと派手に喧嘩しましたの?」

「ごめん。説明するのだるい。
 裁判はもう始まらないと思うよ。
 私がロベスをぶっ飛ばしたから」

「え……」

さすがのアントネット嬢も困惑してしまう。
いきなりこんなことを言われたら誰だってこうなるだろう。

「諸君。おはよう」「はようっす」

続いてトロツキー、バルサンらも登校してきた。

「あいーっすwwwwおはざーっすwww」

そして信長もである。これで来てないのは、
ロベスの他にケイスケと貞子のみである。

ママは、今日は気分が乗らないので欠席である。

「話は聞きましたよwwwなんか大変そうっすねwww
 ロベスをまじでぶっ飛ばすとはwwwwあの野郎、もう死んだかなwww 
 これじゃ裁判始まらねえのかなwwwマジ帰りてーww」

「信長さんは不謹慎なことをおっしゃるのね。
 ミホさんだって殺すほどの力で殴ってはいないでしょう」

「はぁwwwwロベス様ってなんすかwwwその言い方うけるwwww
 元王妃のくせに庶民にビビってんじゃねえすよwwww」

「その無礼な口の聞き方を治しなさい。
 あなたのせいで日本の戦国武将の品格が疑われるわ」

「品格wwwwなんすかそれwwwうまいんすかwww
 戦国武将なんて裏切りとか闇討ちとか基本っすよwwww
 将来の政敵は幼いうちにぶっ殺すwwwwどこに品格があるんすかwww」

「そのwwwをつけるしゃべりかたをおやめなさい!!
 なんて不愉快な人なの!!」

「ひやぁぁあwww(^_^) お姫様が怒ったぁぁwwww!!」

ドゴオオオオオオオン

その轟音に一同は沈黙せざるを得なかった。

いったい何が起きたのか? 

毎度おなじみのパターンだが、
誰かが机などを叩いた可能性が高い。

またミホが暴れたのだろうか。

「そうだよ」

ミホの目の前にあった机が『粉々に』なっていた。

その破壊力は、旧ドイツ軍のティーゲル戦車の主砲(88ミリ)が
ぶち込まれたかのようだ。こんな一撃を食らったら全治三ヵ月とか
入院とかのレベルでは済まない。
人生に対してサヨナラホームランする覚悟が必要である。

ミホが静かに言った。

「おい信長。おまえ少し黙れ」

「はい」

信長は初めてwwwを使わずに返事をした。
そうせざるを得なかった。

あの信長が直立不動の姿勢でいるのだ。

(どうでもいいが、ミホが男口調だと性別が分かりにくくなるな。
 小説は文書だけのメディアなだけに)

ポトが密かにそう思った。

「みんな、聞いて」

ミホが一同を見渡す。顔は真剣である。少し怖い。

「まだ裁判が始まるまで一時間ある。(開廷時間は9時)
 クソカップル(兄たちのこと)が来るまで待とうか。
 私らは開廷の一時間以上前に来て陳述書とかを
 裁判官に手渡すのがルールだけど、
 あいつらは遅刻してくるんでしょ、きっと」

「その通りだな。俺たちが騒いだりしたらみっともない」←ポト

「ミホさんのおっしゃる通りにしましょう。
 ケイスケさんたちも支度などに
 時間がかかるのかもしれません」 ←マリー

「俺も同意だ」「俺も俺も」←バルサンとトロツキー

「おい信長」

「え」

信長はミホににらまれて硬直した。
いつものチャラ男ではなく、
トーテムポール(イースター島)の顔で緊張している。

「おまえも私らとおとなしく待ってなさいよ?
 途中でふざけたら本気でぶち殺すから」

「う、うっす」

信長はすっかり聞き分けが良い子になった。

部屋の隅に椅子を持ってきて、
図書館で借りた官能小説を読んでおり、
騒いだりする様子はない。

「ミ、ミホさん……。お茶でもいかが?」

「ありがと。この香りいいね。今日はハーブティー?」

「ええ。この香りが心を落ち着かせますわ」

「気を使ってくれて悪いね。アントワネットは優しいから好きだよ」

「お、おほほ。それは光栄ですわ」

「笑顔ひきつってるよ? 友達なのにビビんないでよ」

「そ、そんなこと…」

「あるでしょ。私がムカつくのは信長とバカ兄貴たちだけだから
 あなたがビビる必要ないのに」

「そうですわよね!! あはは。私ったらおかしいですわ」

アントワネットは大人びている割に怖がりだった。

「このクッキーうまいぞ。ミホも食べたらどうだ?」

「ほんと美味しいね。アントワネットの持ってくるお菓子、
 病みつきなっちゃうよ」

ポトもミホに気を使いながら会話を続けた。

一種の時間稼ぎである。

ケイスケたちが来る保証はない。
ロベスがどこまで吹き飛ばされたかも不明。
ポトとマリーは今日の裁判が中止になることを密かに望んでいた。

他方、バルサン、トロツキーコンビは小さな声で政治の話をしていた。
これもミホを刺激するのを恐れてのことだ

「最近自民党の暴走やべーよな」
「長期政権だからって調子こいてるよな」
「今日も国会中継始まるぞ」
「与党の奴らにワンパン食らわしてえ」
「ニコ生でどんどんコメント書こうぜ」

彼らは裁判が中止になったらPCで
予算委員会(参議院)を見るつもりだった。
裁判のない日は、どうせ他の神7は帰ってしまうのだから
教室は貸し切りなのである。

そんなこんなで時間は過ぎていった。

教室の時計の針が9時5分を指したが、
いまだにケイスケと貞子はやってこない。
あとロベスも。

「一時間たったね。今から兄貴に電話してみるよ」

ミホ以外の人達は静粛にした。
彼女の電話を邪魔したら大変なことになりそうだからだ。

「あー、兄貴? 今電話しても大丈夫?」

ミホが携帯越しに話している。
他の人に聞こえるのはミホの声ばかり。

「うん。うん。あっそうなの」

ミホは早口だ。相当にいらだっているのが伝わる。

「分かる。分かるんだけどさ。こっちはみんな揃ってるよ?
 あんたらのこと待ってるんだよ。
 それに約束だったよね? 約束だよ。日本語分からないの?」

「え? まだ準備ができてない?」

ミホの顔が、けわしくなっていく。

「今まで準備する時間たくさんあったよね?
 今更言い訳するとか、ふざけてるの?」

この後の展開がなんとなく予想できた神7達は、教室の隅に
移動するか机の下に避難するなどして被害に備えた。

「でも、でも、ってうっぜえな。
 ふざけてんじゃねえよ!! クソ野郎!!」

吠えた。

「来いって言っててんだよ!! ロベスはいないけど
 裁判はできるだろうが!! なに? 規則?
 確かに神7が全員揃わないと裁判ができない決まりだけど、
 そんなの関係ないだろおおお!!」

イスが、飛んできた。

バルサンは、サッカーのゴールキーパーがやる横っ飛びによって
回避に成功した。あともう少しで彼の顔面が陥没するところだった。
(もともとブサイクなので陥没してるようなものだが)

「じゃあ今ここにいるみんなに聞いてあげるよ。
 みんな!! ロベスがいなくても裁判できるよね!?」

「え」

ポトはいきなり話題を振られて反応できない。
アントワネットは思わずヨッシーの顔をしてしまい、固まった。
              (´・ω・`) ←たぶんこんなの

バルサンとトロツキーも辞任直後の福田首相の顔でおびえている。
織田信長は恐怖のあまり口のかみ合わせがあわないほどだった。

「みんなどうして黙ってるの?
 私が言ったこと聞こえなかった? 裁判はできるよね!?」

二度目の問い。ちゃんと答えなければミホを怒らせてしまう。
(すでに激おこだが)

その恐怖心でアントワネットは「できますわ!!」と答えた。
他のみんなも賛同し、「Yes we can」などと言って盛り上げた。

「だってさ。バカ兄貴。今の歓声、そっちにも聞こえてるだろ?
 30分だけ時間あげるから、すぐに支度してこっちに来なさい」

「……は? 貞子を病院に連れて行きたい? うつ病?
 そんなの関係ないんだよ!! 病気になるのはこっちだよ!!
 あんたたちがずっとふざけた真似してるからママもおかしくなるしさ!!」

ミホは机を片手で持ち上げ、床に何度も叩き落した。
まもなくして、机、だったものに変わった。

(なんて力だ……机のイス部分が全部折れてる)
   ポトがひたいの冷や汗をぬぐう。

「マジでぶち殺すぞこの野郎!! どうせなら昨日殴っておけばよかった!!
 なに? あと少し考える時間が欲しい? こっちは一週間も
 猶予与えてんだよ!! そろそろ作者のネタがつきそう? 
 それも関係ないだろうが!!」

関係ありまくりだ。ネタが尽きたら物語の続きが書けなくなる。
もちろん作中のキャラであるミホの出番もなくなる。

というわけで、今日の裁判は中止にしよう。

「この、クソやろおおおおおおぉぉお!!
 兄貴より先に作者をぶっ殺してやる!!」

ミホがどれだけ吠えようと、
作品の展開を変えることはできないのであった。

ミホは思春期とはいえ、狂暴な娘に育ったものである。
いったい本村家はどんな教育をしてきたのだろうか。

そもそも作者はミホをこんなキャラにする意図は全くなく、
書いているうちにこうなってしまった(恣意的)
これはこれで有りだとは思っているが。なにせ以前の
キャラでは空気が薄く、個性といえばジャニオタくらいしかなかった。

★★★

それにしても仕事帰りに小説の続きを書くのは
手間がかかるものである。

「あぁ……だりぃな」

PCの前で伸びをする男がいた。男の年は今年の2月で31になった。
世間ではまだまだ若造である。
平日は冴えないサラリーマン(賃金奴隷)として働いている。

定時帰りの時や休みの日など、わずかな暇を見つけては
PCの前に座り、小説の続きを書いていた。

中肉中背で短めの黒髪。一見して特徴がなく、平凡な男である。
元気のない表情から、うだつのあがらない日々を
送っているのが分かってしまう。

「この作品の終わらせ方、どうしようかな」

PCには 午後『2時55分』に何かが起きる、と書かれている。
つまりこの作品のことであるが。

作者は裁判で貞子を無罪にし、その過程で愛の強さ、
家族の絆などを描きたいと思っていた。
本来の予定なら14話程度で話は決着するはずだった。

裁判を一度始めたらあとはクライマックスとなる。
そのつもりで書き始めたら
思いのほか楽しいで筆が止まらなくなった次第である。

「ぶっちゃけ今回の作品はノリと勢いで書いてるので
 書き溜めとかしてないし、展開も滅茶苦茶。
 初期設定と矛盾してる内容がたくさんある」

自嘲気味に言う。自室には彼一人しかいないのに、
誰に対して話してるのだろうか。

ふと男は喉が渇いたのでコーヒーを淹れようと思った。
疲れ切っている体を奮い立たせ、席を立つ。

ずごおおおおおおん 

「な、なんだ?」

玄関の方から不思議な音がしたので見に行った。
玄関先に一人の男が倒れていた。

扉を開けると、ある少年が倒れていた。

「君はいったい誰だ? そしてなぜ俺の玄関の前で倒れている?」

「も、もとむらミホ……俺はあの女にぶっとばされ、
 こんなところまで来てしまったのだよ。
 あの女は絶対に許さんぞ」

なんと、そこにいたのはロベスピエールだった。
ミホの一撃を食らっても死んでないのだから
大した生命力である。

「大丈夫か君。今すぐ病院に連れて行ってやるからな!!」

「その必要はない。ちょっとお前のPCを借りるぞ」

「おい君!! 動けたのかよ。
 勝手に人の部屋に入ったら困るよ!!」

ロベスピエールはすぐに男の部屋にたどり着いた。
そして例の『PC』を発見した。
ロベスの表情が緩む。

「今からこのPCは私のものだ!!」

「な、なんだって―!!」

小説史上、類を見ない暴挙だった。

なにせ作中のキャラクターが作者から『続きを書く権利』
を奪おうとしているのである
当たり前だが、この作品は作者が管理し、著作権を有してる。
その権利を他者に譲渡するなど、基本的にあり得ない。

「これは私の遂行なる使命だ。
 邪魔をしないでくれたまえ!!」

「ああん!!」

作者は激しくビンタされ、尻もちをついた。
しかも女々しい悲鳴だった。

「くっふふふ。これから本村ミホが暴行罪等で裁かれる展開を
 書いてやる。そしてアントワネットは私の肉奴隷だ。
 貞子は死刑。ケイスケは彼女と別れさせてやる。楽しみだな」

イスに座り、PCでタイピングを始めるロベスピエール。
ろくでもない展開を書きたいようだが、実際に書かれて
投稿ボタンを押されてしまったら大問題である。

「それ以上書くのをやめろ!! 
 頼むから俺から書く権利を奪わないでくれ!!」

「ほざけ。貴様など作者失格だ。いつまでも
 ダラダラとつまらない展開を書くことしか
 できないのだろう。私が次に投稿するときに
 しっかりと『最終回』のタグをクリックしてやる」 

『20代から中高年の小説投稿サイト』では、最終回のタグに
チェックマークを入れると物語が完結してしまうのである。

もはや北朝鮮の弾道ミサイルが自宅に
着弾するのと同等の緊急時代となってしまった。

「それと貴様に良いことを教えてやろう。
 たしか少し前の話で信長が征夷大将軍など
 書いていたが、誤りだ。
 信長も秀吉も征夷大将軍になったことはないよ!!」

「うん。会社の休憩時間に、同僚にこの作品を
 読んでもらったら同じこと指摘されたよ。
 ぶっちゃけ俺、日本史に詳しくないから適当だよね」

「なら終わらせ方も適当でいいだろう!!」

ロベスは目にもとまらぬ速さでタイピングをしていく。

たとえばショパンのポロネーズとか、リストの超絶技巧練習曲での
ピアニストの指使いがそれだ。作者もタイプの速さには自信があるが、
ロベスはそのさらに上をいっていた。

「下書きが終わったぞ!!」

と彼が言うので作者も画面をのぞき込んでみた。
そしたらこんなことが書かれていた。

プロット

@裁判が再開される。ロベスの素晴らしい陳述が開始され、
Aミホが暴行罪などの罪を認めてロベスピエールにひざまずく。
B貞子も罪を認め、死刑になる。ケイスケは学校に復帰する
Cロベスピエールの勇姿に惚れたマリーが、最終的に彼と結婚する
Dハッピーエンド

犯罪レベルの駄作であるが、恐ろしいことにDまでの
内容がすでに全文書かれている。ギネス級の早業である。

我慢の限界に達した作者は、ロベスピエールに拳を振るった。

「おそい!!」

ロベスは軽くかわした。ミホに痛めつけられた割には余裕である。
やはり30過ぎの男では現役中学生相手に勝てないのだろうか。

作者は腹がたったので文章を書きなおした。

我慢の限界に達した作者は、ロベスピエールに拳を振るった。

「うわー」

ロベスは群馬県の方角(たぶん北西)にぶっとばされて星になった。
バイバイキーンである。

「ふぅ、すっきりした」

ロベスの書いた文章を全面的に削除したが、
まだ問題はたくさん残っている。

「ミホがめちゃ怒ってるんだよな。
 あの調子だとケイスケを殺しかねないぞ」

先ほどのミホとケイスケの電話のシーンを思い出してほしい。

ミホの要望→ 直ちに裁判に出席しろ
ケイスケ→  貞子が精神的にまいっている。今はいけない

こんな感じで大喧嘩していたようだ。

作者としてはミホがもう少し大人になって
ケイスケが出廷する日を待てばいいものを、と思う。

まるで他人事のように書いていると思われるだろうが、
小説を書き慣れてくると、作中のキャラが
自分の意図は関係なく勝手に動き回るものだ。
(頭の中で)

したがって作者の力でもミホの暴走を抑えるのは難しい。
当初、裁判を仕切るはずだったロベスは私がぶっ飛ばしてしまった。
おそらく今頃は群馬県の山中で大往生していることだろう。

さらにマリエもママ友とランチに行ってしまったらしい。
こうなったら作者が4組に出頭してミホと話をするしかないだろう。

というわけで、私は4組の教室へとワープした。


「あのー、ごめんくださーい」

ガラガラと教室の扉を開ける。
この引き戸の感触が懐かしい。
そして感慨深い。

子供の授業参観に行ったことのある人なら
誰でも感じる感覚である。
一度社会を知った後に訪れる学校は、
どうしてこんなにも別世界に感じるのだろう。

教室にはまだみんな残っていた。
アントワネットら神7のメンバーは、
突如入って来た30代の男に驚愕していた。

「じ、じいさん……!?」

ポトがそういう。目の前にいる男が、亡くなったはずの
担任の先生にそっくりだったから。作者をモデルにした
人物だったので当然だろう。

「私は爺さんではありませんが、
 この物語の展開に深くかかわっている者です」

「ま、まさか……」

アントワネットは賢いのですぐに事情を察した。
彼女は夫の浮気を見抜くのも得意だったという(うそ)

「おい、そこのあんた」

「な、なんだ」

ミホが目を細めて言うので、作者は緊張した。

「こんな茶番はどうでもいいんだよ。物語が全然
 先に進まないじゃない。早くクソ兄貴たちと
 裁判で決着付けさせてよ。白黒はっきりしないとだめだろ」

確かに、信長でさえおびえるのがよく分かる。
女子中学生とは思えぬほどの圧迫感である。

ミホの半径3メートル以内に巨大な壁というか
不思議なオーラが発せられていて、すごく居心地が悪い。

こんな女の子のどこが主人公なのだと文句の一つでもいいたk…

「はいはいそこまで。
 それ以上私を化物みたいに描写したらぶっとばすから。
 あんたの書いた地の分、私ら全部読んでるんだからね」

ミホは美しい瞳でそう言った。さすがこの作品の主人公にふさわしく、
今すぐ乃木坂からスカウトされてもおかしくないほどの美少女である。

「お世辞言ってんじゃねえ!! 
 そんなこと心にも思ってないくせに!!」

怒られてしまった。

「それよりこの後の展開、本当にどうするんだよ!! 
 もう八千文字超えてるから、あと少しで
 今回の話数使い切っちゃうぞ!!」

「確かにそうなんだけど、このまま貞子を無罪にして
 話を終わらせるにしてもちょっと納得がいかないんだよ」

「なんで?」

「一応作品を書くときにはテーマがあるんだけど、
 この作品では『家族の愛と絆』だよね。貞子が無罪になって
 ケイスケと交際を続けたらママとミホが認めるわけないし。
 かといって有罪になんてしたら誰得の展開だよ」

「話の終わらせ方を考えてないの?」

「実はそうなんだよ。むしろダラダラ続き書いてると
 仕事の嫌なこと全部忘れられる」

「バカなの? ちゃんと責任持ちなさいよ」

「すまん……」

筆者は同僚(22歳の男性)と休憩時間によく話をするのだが。
彼は小説家にな〇ろうやアルファ〇リスの愛好家なのだ。
彼が好きな作品に限って、エタる(更新が止まる)ことが多いらしい。

酷い作者だと、連載当初に週2回更新します(水土)と宣言しておきながら、
次第に更新回数が減っていき、1か月も続いたころには
すっかり音沙汰がないなど。他にも連載を中断した
理由を言わない人もたくさんいるようだ。

『一話あたりの文章量も少ないし、とにかく更新速度が遅い。
 きちんと連載を続けてる作者の方が少ないですよ。
 一つの作品が終わっていないのに、かけもちで
 別の作品の連載を始めたり、もうちょっと
 読者の気持ちを考えてほしいですよね』

同僚のT君はそう語る。彼は大変な読書家であり、
ネット小説はもちろん、家に文庫が500冊近くあるらしい。

その彼が言うことには説得力があり、筆者もよく
仕事の合間に彼の作品批評を聞くようにしている。

「ミホさんの言い方はちょっと厳しめかもしれませんよ?
 作者様は続きを書こうと努力はしているのですから、
 エタっている作品に比べたら良い方ですわ」

アントワネット嬢が微笑みながら言う。
凶悪面のミホトはえらい違いである。

「作者さん。俺はハッピーエンドにするのが一番だと思います。
 読者受けもいいですし、バッドエンドで人気が取れるのは
 よほどの力量が必要ですよ。作者さんでは無理でしょう」

ポト君に痛いところを突かれたが、
ハッピーエンドにしたいのは作者も同じである。

この作品は一話当たり一万文字の分量で買いている。
今、九千文字を超えた。そろそろ今回の話を締めないといけない。

ポトがさらに質問してきた。

「同僚の方にもこの作品を一部だけ読んでもらったんですよね?
 なんて言ってましたか?」

「ミホの苗字が分かりにくいとか言ってたな」

T君が指摘したのはいくつかあるが、

・本村       ←読みにくい。ふつうにモトムラと頭に浮かばない
・ミホの口調    ←ほぼ男。セリフ欄だけ読むと男かと勘違いする
・裁判の目的が不明 ←裁判が終わった後、どうしたいのか
・信長がチャラ男  ←史実を考えるとあり得ない

「逆に褒めてくれたところはありますか?」

「あるよ」

・話の更新速度(一話あたり一万文字であり、
         〜になろう! などの他作品の3〜4話に匹敵する)
・奇抜な内容 (キャラが話数や過去作品の話をするなど)
・貞子の起用 (なつかしい。リングを知らない人はいない)

以上である。T君に全てを読んでもらったわけではないが、
メタネタにしてもここまでフリーダムな作品は
読んだことがないとまで言われ、誇らしい気持ちである。

ここで信長が割り込んできた。

「あのーwwwもはや余談とかの次元超えましたよねwwwww
 こんなわけわかんない作品書いてる人、
 地球上を探してもいねえっすよwww」

「さーせんwwww」

「まじ続き書いてくださいよwwww貞子とケイスケさんが
 家にこもってるなら、そっちの話で書いたらどうっすかwww
 この作品、群像劇なんでしょwwww」

「そうするっすwwww助言あざ―――スwwww」

「それよりあんたさ、さっきも私の悪口書いてたでしょ。
 アントワネットとは大違いとか」

「えwwwwいきなりなんすかwwww」←作者

「覚悟はできてる? 約束通りぶっとばさせてもr」

殴られるのが怖いので次の話に進もう。

私の書く作品は暴力や収容所などやたらと物騒な表現が
多いが、決して野蛮人ではないから安心してほしい。


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