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作品名:午後『2時55分』に何かが起きる 作者:なおちー

第12回   織田信長「そろそろ本気出すわwww」(^^♪
「今日の裁判の経過は気に入らないわね」

ママが不機嫌さを隠すことなく言う。

本村家のリビングである。ママとミホ、ロベスが
三者面談をするように一つのテーブルを囲んでいた。

テレビ画面は消されているが、その代わり
ホームシアターのスピーカーから優雅な管弦楽が流れている。

「ケイちゃんは何も考えてないように見せかけて
 しっかり対策を練ってる。口調はちょっとあれだけど指摘は鋭かったわ」

ミホはママと対面側のソファに腰を下ろし、眠そうにしていた。
テーブルの一角を見ているだけでママの言葉に返そうとしない。
ロベスピエールも同様である。彼はなぜか裁判のある日は
本村家に寄るよう命じられている。

ロベスピエールはこの家にいると落ち着かないので
早く帰りたかったが、お酒の入ったママ相手に
下手なことを言ったら説教されるかもしれない。

「ポト君の貞子に対する質問も見事だったわ。
 前にガンジー君とか言ってしまったことを謝りたいくらい」

部屋に漂う濃厚な赤ワインの香りは、中学生には毒のように感じられた。
三人とも夕飯は済ませており、現在は夜の10時過ぎ。

次回の裁判に対する作戦会議である。
弁護側がアントワネットの自宅を拠点にしているように、
検察側は本村家に召集されていた。
(トロツキーやバルサンなどソ連系はママが嫌うので除外)

「明日は私が中心で攻めていくわ。私はケイスケの母として
 息子を取り戻す正当な権利がある。貞子に人としての
 心が残っているなら、人の親から子を奪う残酷さが理解できるはずよ」

法的には妥当である。マリエにはケイスケに対して親権がある。
ケイスケが保護者の同意なしに移住先を変えることはよろしくない。
たとえば賃貸や売買など、未成年が勝手に決めた契約はのちに
取り消すことは可能である。

ミホは眠たい目をこすった。
今日の裁判はたった3時間とはいえ無駄に神経を使った。
容赦ない真夏の気温も彼女の体力を消耗させた。

マリエが熱がりなのでクーラーは効きすぎている。
ミホは逆に冷え性だから夏なのにひざ掛けをかけている。

今すぐベッドで横になりたいが、ママが納得するまで
話し合いをしなければ寝ることは許されない。
最近のママの暴君ぶりは目に余るものがあった。

「ミホもせっかくの裁判なのだから何か発言しなさい。
 今まで何も発言してないでしょ」

ママのセリフに合わせて、ロベスピエールの視線がミホに行く。
ミホはうつむいたまま小声で答えた。

「私が何言ってもポト君や兄貴に論破されそうで……」

「今日の議事録を信長君からもらってるでしょ。
 よく目を通して相手の論理に隙間を見つけなさい」

「よく読んだから無理だなって思ったんだよ。
 私は歴史上の人物じゃなくて普通の中学生だから。
 あいつらまじで口が強いよ。次元が違う」

「なによ。すっかり弱気になっちゃって」

ママは次にロベスに視線を移した。

「あなたも今夜は静かじゃない。昨夜はあんなに
 張り切って明日の裁判に臨みますって宣誓したのに」

「僕もミホさんと似たような心境です。予想以上に
 弁護人が手ごわい。たとえばアントワネット嬢なら
 即論破できる自信がありますが。どうにも僕は
 本村ケイスケ氏と相性が悪い。あっちのペースに乗せられてしまう」

「裁判の発起人のあなたがそんな調子じゃ、先が思いやられるわね。
 バルサン君もロベス君の太鼓持ちしかできないし、
 私一人で戦えっていうの?」

「こっちには織田信長がいます。奴は議事録係ですが。
 明日はバルサンと交代させます。バルサンも喜んで
 議事録係をやってくれるそうですから」

「あらそうなの。信長君は元戦国武将だけど検察役は大丈夫なの?
 江戸時代の知識とか出されても失笑ものよ?」

「あいつなりにいろいろ勉強したり下調べしてる
 みたいですから、期待しておきましょう。
 我々神セブンにバカはいないはずです」


そして翌日の裁判である。

午前中は雲が多く、すっきりしない天気であり、
裁判会場もみな顔が暗かった。裁判も三日目となれば
みな思うところがあるのか、当初と雰囲気が変わっている。

ママの被告人質問から開始された。

「まずケイスケが疾走した日を確認させてね。
 〇月×日。貞子はケイスケをその日に誘拐、もしくは拉致したのね?」

「その通りです。場所も言ったほうがいいですか?
 秋葉原のアニメイト本店、四階です。
 その後、向こうの世界で起きたことも話しましょうか?」

「いいえ。けっこうよ。私が問題にしているのは
 あなたのうちの息子への愛よ。もともとケイスケとは
 学校で少し話したことがある程度の仲でしょ。
 執着心が強すぎてドン引きよ。ストーカーの自覚はある?」

「あなたがそう思うなら、そうなのではないですか?」

「被告は真面目に質問に答えなさい」トロツキーだ。

「はいはい。途中までストーカーでしたね。
 現在に至ってはケイスケ君と相思相愛ですけど。
 ケイスケ君も私を全力で弁護してくれている。
 彼の愛の深さを感じますが、いかがですか?」

「バカそうな女かと思ったら以外に口が良く回るわね。
 しかも得意げな顔なのが最高に腹立つわ。
 ここが法廷じゃなかったら、ワンパン食らわしてるところよ」

「本村ママは発言に気を付けてください。
 不適切な発言や表現が多すぎますよ」

「ちっ。裁判官さん。悪かったわよ。
 次はケイスケに質問するわ」

「え? おれかよ」 

「ケイスケは貞子のことを愛してるの?
 それが事実だとしたら、愛の程度はどうなの?
 貞子の言うように愛が深いの?」

「そんなこと急に聞かれてもよ……」

「本村ケイスケさん。質問にはきちんと答えてください」←トロツキー

「く、分かってるって。愛してるよ。
 人前で言うと、くっそ恥ずかしいな」

「もう一つ質問するわ。
 ケイスケは実の母や妹よりも貞子を愛してるの?」

「な……」

「答えにくいなら別の言い方にするわ。家族より貞子を取るの?
 どちらか一つしか手に入らないと思うけど、
 どちらかを捨てる覚悟があるの?」

「うぐ……」

この質問は決定的であった。ケイスケは答えようがない。

哲学的に二律背反に当てはまるのだろうか。
恋人を取るか肉親を取るかなど、
とっさに聞かれて答えられるわけがない。

ケイスケとてこの質問を想定しなかったわけではないが、
あくまでロベスピエール中心に貞子の誘拐や殺人に関する
質疑が続くのかと思っていた。

そのロベスはすっかりおとなしくなり、攻勢をかけると
思われたミホも黙り、ママが検察側で一番目立っている。

「ケイスケさんは質問に答えましょう」

トロツキーは立場上、定型句を言うしかないが、
彼とてケイスケが最高に追い詰められているのは
もちろん承知している。

貞子には言い返す言葉があったのだが、今は発言権がない。

会場の全ての視線がケイスケに集中している。
ケイスケは、たとえどんな内容だろうと答える義務があった。

「俺は全員愛してる」

会場がざわついた。
どちらかを選べと言われているのに『全員』とは。
逃げと言われても仕方のない答えである。

「俺は、たまたま愛した人がたくさんいただけだ。
 愛に順序はつけられねえ」

「それは答えになっていませんね」(´・ω・`)

「うっせえ……」

ケイスケはズボンのポケットに両手を突っ込み、
床を見ながらふてくされた。あの夜、貞子を公園で
介抱していたのをママに見られた時と同じ仕草だ。

彼は都合が悪くなるとこういう癖がでた。

(奴のあの態度、良い展開だぞ。やはり奴は
 貞子との愛の逃避を正当化できない)

ロベスピーエルが微笑む。デスノートの夜神ライトが、
「計画通り」のシーンで微笑んだのと同じ顔である。
(↑デスノートを読んでない読者には全く伝わらなかった)

ロベスピエールは、裁判会場を見渡した。
みな、勝利を確信したというより、ざわめきの方が大きかった。

ポトは黙り、バルサンは議事録を書き留め、ミホは兄を注視している。
織田信長は裁判中なのにのんきな顔をし、トロツキー裁判官は
さらにケイスケを追い詰めるために質問を続けようとする。

被告人席の貞子は、何かを訴えたい思いでケイスケを見つめている。

「それの何がいけないのですか」

それは、喉の奥から絞り出したかのような声。
かすかな声だったが、お通夜状態の会場にはよく響いた。

トロツキーがその声の主を指して言う。

「今発言したのは……」

「私ですわ。弁護人のマリー・アントワネットです。
 これからケイスケさんと貞子さんの弁護をしようと思うのですが、
 発言してもよろしいですか?」

「ふむ……」

トロツキーがロベスピエールと視線を合わせた。
ロベスが強く頷いたので、マリーに発言許可を与えた。

「ありがとうございます。ただいまの質問でケイスケさんが
 答えに困っていたのは、決して彼が悪者だからではないです。
 また、貞子さんが彼を家族から引き離したということにもならない」

苦し紛れの弁護にすぎないなと、検察側は高をくくっていた。
その中でミホと信長だけはスキのない顔で彼女の声に耳を傾けている。

「まず、マリエ顧問の質問の仕方にも問題があります。
 家族を取るか、恋人を取るかと言われて即答できる人が
 いるでしょうか? 選ぶのが困難な事柄です。
 例えば右腕を取るか左腕を取るかと同じです」

「先日、ケイスケさんの発言でありましたが、貞子さんと交際
 することにより、我々神セブンの命を間接的に救ってくれたことは
 事実ですし、誰にも否定できないでしょう」

「彼に我々を救う意思があったか否かは問題ではなく、
 結果として人命を救っていることに注目してください」

「私はケイスケさんから、貞子さんと別世界で過ごした時の
 様子を書いた書類が手元にあります。これは事前に裁判官に
 提出していますが、みなさんの前で要点を読み上げたいと思います」

マリーは、フランス人特有の大げさな身振り手振りを
加えて一生懸命に話した。聴衆の感性に直接訴える手法である。
また彼女の性善説に基づいた優しさにあふれる主張である。

「……以上のことから、ケイスケさんは家族を見捨てるなどの
 意思はなく、自然と貞子さんと恋愛関係になり、
 また今現在も彼女との交際の継続を望んでいます。
 父上殿のすすめでおふたりが学校に復帰する可能性もありますし、
 やはり貞子さんを悪(罪)と断ずるのは無理があります」

小鳥がさえずる。アントワネットが歌う。裁判所で。(←書いてみたかった)

暖かさを感じさせる彼女の発言に水を刺したのは、日本の戦国武将だった。

「あっ、裁判官、さーせんwwww そろそろ俺も
 言いたいことあるんすけど、いいっすかwwww」

まさかの織田信長である。

このチャラい口調。とても元戦国武将とは思えない。
彼は何を考えているのか、ガムを噛んでいる。
ワックスで髪の毛を無造作に固めており、外見上もチャラい。

会場は別の意味で静まり返ってしまった。

「ちょwwwwなんでみんな固まってんすかwww
 俺も神セブンの一員っすよwww もちろん発言する権利あると
 思うすけどwww 裁判官。早く俺に発言許可くださいよwww」

「おまえは誰だ……」

比較的仲良しだったポトからもうこう言われてしまう。

信長は二重人格者のように口調が豹変している。
(www…の部分は、チャラさを強調するために用いる特殊な表現方法である)

トロツキー裁判官は職務上仕方なく信長を指名した。

「あざっすwww さーて、どっから反論しようかな。
 まずアントワネットさん。ケイスケさんが俺らの命を
 救たって主張してますけどwww それ、ちげえっすよww」

「なぜでしょうか?」

「あのwwwちょっとwww忘れないでほしいんすけどwww
 じいさんがクラスで暴れた日、覚えてるっすよね?
 あれって俺らが計画的に貞子を接待して…あっ、ゲームとかっすよwww?
 結果的に貞子にお帰りになってもらったじゃねーすかwwww」

「これって時系列的に考えて、ケイスケさんが
 誘拐される前であってますよねwwww? 裁判官」

「確かにその通りです」

「あざっすwww。今の発言聞きましたか、アントワネットさんwww
 俺らもバカじゃねえんで、ケイスケさんに頼らなくても
 貞子に殺されたりしねえっすよwww
 ちゃんと貞子対策できてたんでwwww」

「くっ」

アントネット嬢が悔しそうな顔をし、唇を噛んだ。
そんな様子もかわいかった。(個人の感想)

「あと家族か恋人かの件っすけど、www普通に考えて家族を選ぶべき
 じゃねえすかwww? ケイスケさんは高校生で未成年、親に扶養されている身で、
 勝手に家出したのが正しい行為だって認められるわけねえっすwww
 同じように貞子さんが彼を誘拐したのも明確なる犯罪行為っすwww」

「学業には復帰するかもしれないわ。あとは彼次第よ」

「そんなの簡単に通らねえっすよ。まず、本村のママが貞子との交際に
 大反対、つーか貞子個人を殺したいほど恨んでるのを忘れないで
 もらっていいっすかwwwwさせんwww」

「今現在はそうね。長い目で見れば貞子さんとママさんの間で
 話し合いの余地はあるわ。なぜ無理だと悲観的に考えるの」

「アントワネットさんはプラス思考なんっすねwww
 俺、戦国時代の人間だからかもしれねえんすけど、
 疑わしい奴とか過去に粗相をした奴は極刑っすかねwww
 そうでもしねえとあの時代は生き残れないんっすよwwwまじでww」

「ならば現代の感覚で考えなさいな。私も18世紀の人間だけど、
 しっかりと過去の行いを振り返って、正しい人生を歩んでいるつもりよ。
 過去を学ぶということは、自分を見つめなおすことにつながるのよ」

「勉強になるっすwwwあざーっすwww」

信長は終始チャラい態度を崩そうとしない。
アントワネットに真っ向から反論したのはいいとして、
その他の要素で真剣さが感じられない。

彼は発言時間中も平気でガムをくちゃくちゃと
噛んでいて、周りをドン引きさせていた。

「まだ反論していいっすかwwww 貞子は過去に大量殺人をしたわけっすけど、
 極めて危険人物と認められると思いますwww こんな人物が平気な顔で
 街中とか歩かれちゃ困るんすよねwww 参考までに強姦殺人とかで
 ムショ入りした奴の再犯率が7割超えって統計知ってますかwwww?」

「しかし、貞子さんは心を入れ替えると宣誓を……」

「そんなの口から出まかせかもしれねえっすよwwww?
 アントワネットさんは統計学を否定するつもりっすかwww
 一度殺人の味を覚えた人は、ふとしたきっかけで再販、じゃなくて
 再犯しますよwww 今変換間違えました、さーせんwww」

「それは絶対だと言い切れるの?」

「俺は神様じぇねえから未来のことは分かんねえっすけどwww
 例えばケイスケさんと不仲になって貞子がひとり身になったら、
 やりかねないっすよねwww ケイスケさんがチャラ男として
 学校で有名だったのは調べてありますよwwwwほらこれwww」

信長がA4サイズの紙をかかげ、周囲にみせびらかした。
スマホの電話帳やラインに乗っていた女の子の名前一覧が乗っている。
ケイスケがナンパするなどして捕まえた女の子達だ。

25名以上はいて、学年もバラバラ。友達の妹なども含まれている。
全員と付き合ったわけではないが、これだけ人数がいることに
ケイスケの女癖の悪さが良く出ている。

「うはwwwこれ、やばくねえっすかwww 優等生気取りなのに
 陰で女漁りとかパネえっすwww戦国武将並みの女好きっすよwww
 ケイスケさんが近い将来に貞子に飽きて
 捨てちまう可能性とか否定できますかwww?」

ケイスケ・チャラ男説。これも強力であった。
信長は口調こそどうしようもないが、
言っていることに説得力はある。

つまり貞子とケイスケの恋人関係が長続きするか、
それに伴う貞子の再犯率を争点にしているが、
確かに常識で考えれば明るい見通しは立たない。

「先ほど示された文章(証拠)ですが……」

トロツキーが厳しい顔でケイスケに問う。

「ケイスケさんは25名を超える女子生徒や一般女性と
 連絡先を交換していた事実を認めますか?」

「ああ、事実だよ。認めるよ馬鹿野郎。
 あの野郎。いつ調べたんだよ」

貞子はうなだれてしまう。彼氏の過去の女癖の悪さなど
こんな場所で聞いて愉快なわけがない。

「そろそろ王手かけさせてもらいますねwww
 以上の理由により、二人の交際は不適切であり、
 貞子は実刑に処されるべきだと考えているんすけどwww
 うちの担任を殺すのとかマジ勘弁してくださいよwww」

「おかげでうちらの授業、なくなっちゃったじゃねえすかwww
 学園側が俺らを隔離することを決めるとか、どんだけっすかwwww
 義務教育って国家が国民に貸した義務なんすけど、授業がねえとかwwww
 その辺も考慮してもらっていっすかwwwwおなしゃーっすwww」

「あなたは担任が消えてからPSPのゲームやってたじゃない。
 タイトルも覚えてるわ。織田信奈の野望でしょ?」

「はwwww信奈バカにしてんすかwwwwあれ面白いんすよwww
 アントワネットさんもお茶飲んでたじゃねえっすかwww
 人のこと言えねえっすよwww 本村もっすけどwww」

最後だけ子供っぽい喧嘩になってしまった。

ミホはこれまで展開されたレベルの高い討論に
ついていけず、ずっと固まっていた。
そのため自分が話題に出されても特に反応はない。

さて。今回の信長の攻勢はすさまじく、
彼一人によって弁護側を沈黙させるに至ってしまった。

信長のテンションはアゲアゲ↑MAXになってしまった。

「アントワネットさんが反論できねえとなると、
 うちらの主張が裁判で通るってことでいいんすかwwww?
 どうっすか裁判官wwww」

「弁護側の人間全員に全く反論の余地がないと判断されたら、
 その時点で検察側の主張が通ります。そして判決が下されます」

このままでは貞子の実刑が確定してしまう。
アントワネットたちにとり非常にまずい展開となってしまった。

どのくらいの危機なのかをスポーツで例えると、2017の夏の甲子園、
広陵VS天理の9回裏、天理の驚異的な猛攻にさらされ、
逆転負けの可能性におびえた広陵高校の選手の心境である。

もしくは2017年の閉会中審査でカケ学園問題について
野党一同から猛烈に問い詰められ、精神的に極限まで消耗し、
なんと衆議院の解散まで決定してしまった安倍首相である。

本日の検察側の動きは、ママの家族論から始まり、
それを信長が引き継いだ形になった。
これは事前に計画していたものではなく、偶然である。

(ポト君…) (分かってるよマリー)

目配せする中学生たち。彼ら弁護側は互いによく意思疎通しており、
もしものための非常措置を取っていた。
ポトが静かに挙手する。

「裁判官。僕は信長の主張に異議を唱える。
 そして証人を連れて来たので許可を願いたい」

「いいでしょう」

教室に入って来た人物はみんなを驚かせた。

「学校に来るのは何年振りかね」

証人は田舎のおばあさんだった。貞子の祖母である。
ポトが用紙を片手にさっそく質問を開始する。

「おばあさん。おばあさんの家での貞子の働きぶりを教えてください」

「真面目な子だね。熱い中家の周りの管理をよくやってくれたよ。
 屋敷の外周りだけじゃなくて家事もやってくれたね。
 料理も進んでやる家庭的な子に育ったみたいだね」

「コンビニ・エンスストアでもアルバイトをしていましたね?」

「毎週欠かさずよく働きに行っていたね。シフトを休んだことは
 一度も無いようだよ。私も客として何度か買い物に行ったことがあるが、
 親切に対応してくれたよ。店長からも重宝されていた」

「良いお孫さんのようですね」

「そりゃそうだ。私の孫だからね」

「次は無礼なことを聞きますが、
 お孫さんが将来犯罪者になると思いますか?」

「ないだろうね」

「それはどうしてでしょう?」

「私は貞子のことを大切に思っている。
 大切な貞子がどうして犯罪者になると思えるだろうか。
 あの子は短い期間だったけど、私の家でしっかり働いてくれた。
 立派な大人に育ったと感心していたんだがね、この裁判は残念だよ」

「すみません。できるだけ有利な判定に持ち込むつもりです。
 ケイスケさんについてどのような印象をお持ちですか?」

「別に何とも思ってないよ。今どきの元気な若者じゃないか」

「裁判中に女好きな男だと
 言われてることについてはどう思いますか?」

「男が女好きなのは当たり前じゃないか。でなきゃ人類が滅びるわい。
 私の世代の男たちは、若い娘に積極的に声をかけたものさ。
 今は草食系とかメディアが言うから
 おかしく感じるだけなんじゃないのかね」

「もう一つお願います。ケイスケさんと貞子さんは
 間違いなく恋人関係にありますね?」

「寝る時から起きる時間まで一緒だよ。
 強い愛の絆で結ばれてるね。初々しい限りだよ」

「ありがとうございます。質問は以上です」

おばあさんが着席し、ポトが両手を広げて話を始める。

「以上のようにケイスケさんは貞子さんと共に
 しっかりと共同生活を送っていたようです。
 その間、貞子さんが犯罪行為に走ったことは全くなく、
 その予兆もなかったそうです」

「ちょっといいですか?」

苛立った声の主は、本村ミホだった。
彼女がこの裁判で発言するのはこれが初めてである。

いちおう彼女がこの作品の主人公なのを
忘れてはならない(作者は最近まで忘れていた)

驚きの声と共に一同がミホの主張に注目した。

ミホはイライラと緊張と若干の恐怖を
内に秘めながら発言を開始した。

「おばあさんの立場なら貞子の肩を持つのは当たり前じゃないですか。
 私は本村家の家族として兄が家に戻ってくれることを望みますよ。
 兄のことはムカつくし、大っ嫌いだったけど、あいつがいないと
 家族みんなが困る。勝手な理由で肉親を奪われるのは納得しないよ」

彼女の少ない男友達のポトが反論する。

「待て本村。こちら側の要求は単純だ。ケイスケさんと貞子の交際さえ
 認めてくれればいい。アントワネットの言うように高校に
 通う方法を取れば、ケイスケさんは本村家に帰れるんだぞ」

「貞子と付き合うってのがアウトなんだよ。私もママと同じで
 そんなの認められない。大量殺人をした超犯罪者が裁かれないのも
 納得できない。貞子を裁けないなら司法って存在する意味あるの?」

同じことを自民党にも言いたい。

今期国会(2018)の裁量労働制に関する審議で
捏造データ(一般的なシャの平均労働時間)が明らかになったが、
もはや茶番を通り越して国家権力による犯罪である。

その不正調査に関わった厚労省と労働基準局は
間違いなく黒であり、仮に裁量労働制が営業職などの
一般労働者にまで拡大し、資本主義特有の『賃金奴隷』を
生み出したとしたら、これこそ極刑ものであると考える。

なぜ厚労大臣などは法の裁きを受けないのだろうか。
(答えは憲法で決まっているからである)

「ミホさんのお気持ちもわかるわ」

アントワネットが対応を引き継いだ。

「悪いことをしたから裁く。当然の感情よ。正義でもある。
 でも考えてみて。その人が本当に死ぬべき人なのかどうかを。
 貞子さんが殺人鬼になるきっかけは、生まれつきの環境的な
 要因が強いわ。あなたもWikiは何度も読んでいますよね」

「その考え、おかしくない? かわいそうな環境で育った人なら
 誰でも犯罪が許される理屈になっちゃうじゃん」

「そうやって憎しみだけで考えたらいけないわ。
 日本国憲法はどんな人にも人権があることを認めている。
 酷いことをした人にも人権はある。だから死刑囚でさえ
 すぐには刑が執行されないでしょ。日本は法治国家よ」

「そういうのが屁理屈なんだよ。貞子がたくさん殺した人たちの
 人権はどうなるの? 貞子にも人権があるとか
 普通に考えておかしいよね? 今すぐ死刑にした方が世の中のためだよ」

「前世での私の夫、ルイは罪なき罪によって死にました!!
 当時フランスの財務状況は国家歳入の4/5が借金の返済に使われてました。
 その財政状況の遠因は、祖父ルイ14世の代で作った対外債務。
 14世は外国とたくさん戦争をして借金を作り続けて、
 それが孫の代まで返しきれなかったの」

「フランスの歴史なんか興味ないし、知らないよ。
 その言い方だと貞子には責任がなくて
 周りの環境のせいにしたいんでしょ?」

「ミホさん。あなたはどうしても分かってくれないのね」

「分かるわけないよ。貞子が先天的な殺人鬼だとしたらどうするの?」

「え……」

「サイコパスだよ。貞子は殺人が大好きな先天的異常者。
 現に貞子は無差別に殺人を繰り返してたじゃん。
 本当に人が憎いなら自分の親とか関係者だけを殺しなよ。
 なんで4組の人まで巻き込んだの。関係ないじゃん」

これにはまた会場がざわついた。

甲子園の一回戦が開始された時の雰囲気である。

「すばらしい」

ロベスが手を叩き、ミホの活躍をたたえた。

やはり発言する人の数だけ新しい発想が生まれ、
論争が生まれる。これこそロベスの求める討論の形式であった。

「まもなく終了時間になります。
 次回の裁判は今日のミホさんの主張から始めよう」

裁判官他も同意し、法廷が閉じられることになった。

裁判によるストレスと精神的な消耗により、
貞子はうつ病になりかけていた。
(↑ドイツに侵攻された際のスターリン状態)

裁判を振り返ってみればゾンビと呼ばれたり、
サイコパス扱いされたりとさんざんである。
そのうえ被告なので自由に発言することも出来ず、
精神的にフルボッコにされていた。

心優しきアントワネット嬢と、彼女を慕う貴公子ポトの
懇願により、次回の裁判までに一週間の猶予が与えられた。


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