茹でたてのトウモロコシに齧り付いた。口にひろがる甘味を存分に楽しむ。 食べ方に性格がにじみ出る。 怜治くんは算盤の珠を一列ごとに弾くように食べ進む。決して列を乱さない。ゆっくりと優しく歯を立てて、トウモロコシの実を整然と剥がしていく。 汚いのはイッシー。トウモロコシの実の並びなどには、まるでお構いなし。乱暴に無頓着に歯を入れる。ケモノが餌を食い荒らすようだ。 トウモロコシで二人のお腹は膨れた。 怜治くんは満足した。んで、口を開いて言葉を発した。 「イッシーの話を聞きたいですね。あんた何者ですか」 「バカだよ。お察しの通り」 「バカは分かってるんですけど。そういうことでなくて、あんたの人生について多少興味があるんです。教えてくれませんか」 「やだよ。それよか、おめえの身の上話しろよ」 「身の上といっても17歳の高校2年生ですから、そう深い話ないですよ」 「深くなくていいから教えろや」 「うーん、そうですね。基本、保守的ですね、ボクは」 「なんだ、保守的って、自民党か」 「政治の話でなくて、考え方です」 「保守的な考えって何だ」 「どうすかね、男尊女卑っていうか、家父長的っていうか」 「なにそれ。全然わからねえ。田舎者ってことか」 「当らずとも遠からずな気がします」 「もったいぶらなくていいから、正直なところ聞かせろや」 「さっきから言葉遣いが乱暴ですね。年上だから勘弁してますけど。あんまりなめたことぬかしてると殺しますよ」 「ごめんごめん。気を悪くしないでくれたまえよ」
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