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作品名:ジジイの回転 作者:石田徹男

第1回   corn
茹でたてのトウモロコシに齧り付いた。口にひろがる甘味を存分に楽しむ。
食べ方に性格がにじみ出る。
怜治くんは算盤の珠を一列ごとに弾くように食べ進む。決して列を乱さない。ゆっくりと優しく歯を立てて、トウモロコシの実を整然と剥がしていく。
 汚いのはイッシー。トウモロコシの実の並びなどには、まるでお構いなし。乱暴に無頓着に歯を入れる。ケモノが餌を食い荒らすようだ。
 トウモロコシで二人のお腹は膨れた。
 怜治くんは満足した。んで、口を開いて言葉を発した。
「イッシーの話を聞きたいですね。あんた何者ですか」
「バカだよ。お察しの通り」
「バカは分かってるんですけど。そういうことでなくて、あんたの人生について多少興味があるんです。教えてくれませんか」
「やだよ。それよか、おめえの身の上話しろよ」
「身の上といっても17歳の高校2年生ですから、そう深い話ないですよ」
「深くなくていいから教えろや」
「うーん、そうですね。基本、保守的ですね、ボクは」
「なんだ、保守的って、自民党か」
「政治の話でなくて、考え方です」
「保守的な考えって何だ」
「どうすかね、男尊女卑っていうか、家父長的っていうか」
「なにそれ。全然わからねえ。田舎者ってことか」
「当らずとも遠からずな気がします」
「もったいぶらなくていいから、正直なところ聞かせろや」
「さっきから言葉遣いが乱暴ですね。年上だから勘弁してますけど。あんまりなめたことぬかしてると殺しますよ」
「ごめんごめん。気を悪くしないでくれたまえよ」


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