解放された奴隷は疑い深そうな目つきで男を見上げる。一種の不思議な沈黙が流れる。信用できるかどうかを見極めている、そんな感じだった。こうして2人が向かい合って立つと巨塔のようだ。男は右手を差し出して握手を求める。 「Hey, it was really tough isn’t it?」 (大変だったな?おい) 「……Why you can speak our language? Who the fuck are you?」 (どうして俺たちの言葉を喋られるんだ?テメーはいったい何者だ?) 「I’m tired of hearing such a question like who are you. Come on can’t you thank me before asking a question? Aren’t you so rude?」 (それ系の質問にはウンザリだぜ、おいおいお前は質問の前に礼くらい言えないのか?そんな無礼だったとはな) 「Sorry, I really appreciate saving me. I cannot express my gratitude with just words. By the way can I ask a question? How did you learn to speak it? You seem to be a stranger here. And in my home country I have never seen a man like you」 (すまない、助けてくれたことには本当に感謝している、言い表せないくらいにな。それで質問いいか?どうやって身に着けたんだ?ここら辺じゃ見かけない顔だし、俺の故郷でも見たことない) 「If you really feel the appreciation, please give me a hand. I must catch these brats, when it is over, I will tell you all in detail」 (もし本当に感謝してるんなら手を貸してくれないか?俺はこのガキども捕まえなきゃなんだ、終わったら全部話してやるよ) ミラーノは自分には全く興味を示さないどころか敵意むき出しだった奴隷を相手に、流暢に言葉を操り語り合う男を見て益々正体が気になった。そして、どうしてこんな男と自分の世界一嫌いな兄がくっ付いたのかが不気味だった。 それに何やら相談をし終えた後のようで盛んにうなずいている。 「もう1回言うぞ。大人しく兄貴のところに帰る気はないのか?」 「嫌って言ってるでしょ、絶対に頼まれたって帰ってやるもんですか!」 断固とした拒絶の意思を見せるミラーノに男は長いため息を吐いて遂に直接行動に移る。 「誰も頼んでねーよ、嫌ならいい。拉致するだけだ」 短くそう言って相手が逃れようと反応するより速く手首をガッシリホールドする。体をよじってミラーノは逃げようとするがいかんせん体格差があり過ぎる。 「はぁ、止めて、止めてってば。大声で騒ぐわよ!本気よ、助け・・・・うぐっ」 大声を出して周囲の注目を引こうとするミラーノを手早く黙らせるために男は後頭部に手刀を見舞って気絶させる。ダラーンと体の力が完全に抜けて崩れ落ちるミラーノを素早く抱き留め今度はロイに向かう。ロイはその暴力的な行動へのショックで一時的に思考停止状態になったが、はっと気づいて相手に詰め寄った。 「何するんだ!?ミラーノを放せよ・・・・がっ」 完全に男に気を取られていたロイの背後に素早く奴隷の方が回って同様の手法でロイも気絶させて抱え込み、素早く背負いなおして気絶した2人を運び出す善意者の態を装う。 「Great job, man」 (グッジョブ) 「You're welcome」 (まぁな) パンとタッチを交わして2人はその場を離れた。
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