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作品名:DEV 作者:Miami3

第30回   30
「おし、それじゃ予定の品として食料品2000人、三週間分だ。それに、衣料品を3番のコンテナいっぱいに積み込め。それにだ35番規格の弾丸を装てんした新型のライフル、小型の携行小銃、それと予備の弾丸をざっと20000発分は用意してくれ。最新兵器のマシンガンも忘れるな」
ジョーは早速現場に下りてアシクに直接命令を下して仕事ぶりを確認する。1つには念には念を入れるため、そしてもう1つはアシクが仕事をワザと適当にやらないか見張るためだ。
「はっ!」
一応応答だけはしっかりとした口調で次々に軍用の列車に物資を運び込む。これだけ積み込んでも基地の物資はまだまだ底を尽きないというのだから驚きだ。
「あぁ、それと頼んでおいた例の金属の用意は出来たか?」
「はぁ、もちろんですが・・・・あのようなガラクタを一体何にお使いで」
さっき倉庫の中で見つけた金属を外に運び出させておいた。ここではあれがどれほど恐ろしい物かをいまいち理解しきれていないようだ。安堵と同時にこの危機管理能力に若干の悪寒を感じた。
「あー、極めて政治的な問題になるが、そんなリスクを背負ってでもお前は聞きたいか?」
「いえ、とんでもない」
「そうか、おいそこの兵士、それは丁寧に扱ってくれ。特に水周りには近づけるな!!」
「はっ」
兵士がジョーの目に留まろうと思いきり気合を入れてドラム缶を運ぶ。だが当の本人は全く違う方向を見ている。
「よし、こっちの準備は大体できたな。あとは奴らがうまくやってくれれば」
「はぁ???」
訳の分からないジョーの発言にアシクが頓狂な声を上げた。
「まぁ、気にする。私から軍上層部にきちんとお前の働きぶりを伝えておこう、アシク兵長」
「はい、ありがたいお言葉です。特使様」
肩をポンポンと叩かれて気前のいいことを言われると意外そうな顔をしつつもアシクは深々と頭を下げた。

一方その頃真は仕事を片付ければすぐに自室に籠ってジョーから借り受けたタブレットの使い倒す日々だった。これは真が向うの世界にいた頃でさえ見たことも無いような代物でその魅力にすっかり虜になってしまったというところもあるが、それ以上に内蔵されている動画を見るのに時間を費やしているところも大きい。ジョーが真への指示として様々な予想を交えて的確なアドバイスをノータイムで送るため予め動画として保存して残しておいたのだ。動画ではジョーがどこかの椅子に腰かけて身振り手振りを交えて効果的に自分の容貌を伝えている。しかしそれにしても大して接点が無いクロフォードのことをロイと真の話からここまで正確に割り出すとは思いもよらなかった。
「ここから先はある程度お前に任せる。今回の計画のキーだ。奴は父親と強い確執を持ち、母親も夭折してる。メンタル的な弱点がここだ。そこを突け。つまり家族、妹だ。ミラーノと和解するようにお前が助け舟を出してやれ。奴は政治家で計算高い。自分にとって最も好都合な状況を常に望んでいる。奴はあのガキをコントロールしたいはずだ。いつまでも不機嫌なままじゃ政治的にも自分の精神的にも支障が大きすぎる。だから機嫌を直して結婚式に臨みたい。もしお前がそれを実現できれば奴にとっての超難問を解決だ。後はお前の話術次第でいくらでもミラーノを丸め込める。期待してるぜ」
動画を何度か見返してシミュレーションを怠らない。ミラーノにどこまで話をしてクロフォードをいかにして操るか、その最も難解でハードな現場での微妙なラインを総て自分に押し付けられていると考えればジョーに恨みごとの一つでも言いたいところだが、ある意味でそこに自由があればやりがいもある。頭の中で計画を練りながらバッテリー残量を確認して再びスリープ状態にする。そしてコーヒーを淹れてホッと一息ついたところで窓がドンドンと乱暴に叩かれた。使用人ならドアの方から入ってくるはずだし、大体こんな深夜に訪ねてくるはずがない。不審に思いながらも何となく答えを予想していた真にとって目の前の来客は一風変わった衝撃をもたらした。
「Bryant! Why the fuck are you here?」
「Please let me come in」
短く刈り込んだ頭から滝のようにひっきりなしに汗の粒が零れ落ちている様子を見てかなり慌てて駆け込んできたのだろう。それと同時に侵入者を何遍も許しているこの屋敷の脆弱な警備体制に苦笑いしながらドアを開けてブライアントを迎え入れる。こいつもジョーと同じように何の遠慮もせずいきなり飲みかけのコーヒーを一気に飲み干す。それだけならまだしも多分予想より苦かったんだろう、ぶーっと思い切り床に口の中身を吐き出してゲホゲホとむせ始めた。
「テメーら、ホント殺すぞ・・・・・・」
「ゲホゲホ、お前ホント気持ち悪い物飲んでるな。俺なんてここまで必死になって走って来たんだぞ。少しは労わってまともなものを出そうって気はねーのか?!」
お前が勝手に飲んで、勝手に他人の部屋で吐いたんだろ!!そう怒鳴りつけてもこいつらのことだ、自分の都合がいいところしかみないと半分諦めて適当にあしらった。
「それで何の用だ?てか、どうやったらお前ら貴族の屋敷にするする入ってこれるんだ?」
「酷い、酷いぞその対応。何かめんどくせーとか絶対思ってるだろ?せっかく手伝いに来てやったのに」
「っち、誰が来いって言ったんだよ?早く俺の質問に答えろよバカ」
「あぁ!?テメーこそ言葉に気を付けろよ。はっきり言ってこの屋敷の警備はゆるゆるだよ。まともの諜報員ならそこまで苦労しなくても侵入できる。広い敷地に効率の悪い警備態勢だからな。これなら最初から計画を立てて直接暗殺計画に乗り出せばよかった」
「ふ、コロンブスの卵だな」
「コロ、誰だそれ?」
「いや、気にするな。大体もう殺したところで戦争が止まるわけでもないだろ。バカなことを考えるなよ」
そう言って釘を刺しながら相手の顔を見ているとある考えがふと頭に浮かんだ。
「そうだお前、さっき俺を手伝いに来たと言ったな?ピッタリの役割がある」
「へ?」


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